私は前世の記憶を持つピンク髪ですが、この世界は『乙女ゲーム転生系のナニカ』のようです。

砂臥 環

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そんなある日のこと。
焔の貴公子に教わっていても、イマイチ本来の力を出せるようにならない私に氷の貴公子は言う。

「う~む、君はどうも魔力の解放が苦手なようだ」
「魔力の解放……っすか」

曰く、持ち合わせた魔力量より圧倒的にショボイ力しか出せていないらしい。
基礎の上級魔法『火球ファイヤーボール』(これまたベタだな)は出せるようになったが、確かに圧倒的ショボさである。

しかし、んなこと言われても。
焔の貴公子の説明は『今だッ! こうギュ~ンとしてバーンッて感じで!!』とかサッパリわからんし。

そう言うと、焔の貴公子の擬音部分を氷の貴公子が言語化して説明してくれる、という流れになった。

「そうだな……『ギュ~ン』というのは」

氷の貴公子がいざ説明に取り掛かろうとした──その時だった。

「大変です!」

焦った感じでやってきた癒しの貴公子。

やっぱり『癒しの貴公子』っていまいちカラーがわかりにくいな。
あ、緑の人ですよ。(※親切設計)

「学園に魔物が入り込みました!!」

ナ、ナンダッテ──!?!?

妙な展開がやってきたもんだ。
私の知る小説や漫画では、そういうのって大概もっと色々あってからだったような?

「皆の安全は我々が守る……いくぞ!!」
「おう!」
「君は安全なところへ!」
「あっハイ」

やっぱコレ、レンジャーモノじゃないの?
『貴族学園☆セレブンジャー~学園の平和は我々が守る!~』とかじゃないの?

──それは一旦置いとくとして。

生憎私は無力な民なので、『私も戦います!』などと言う気はサラサラないのである。そこに足を引っ張りたくない、などという殊勝な気持ちも特にない。

まあ普通に心配はしてるけど、レンジャーモノは応援と心配をする一視聴者でありたい。メンバーとか勘弁しろ。

良かった、「いくぞ!」の中に私も含まれてなくて。

カラード貴公子の皆様が出陣した中、とりあえず『安全なとこってどこやねん』と校内を彷徨う私。

なにしろ私ときたらお勉強ができないせいで補講ばかり。
自分の教室と生徒会室と黄金の貴公子のお陰で早々にリニューアルを果たした武道場くらいしか行ったことがないのである。
あとは連れ出された学舎裏か。

……学園生活とは一体。

若干遠い目になったが、その遠い目のお陰か少し遠くにウロウロしている腐女子を発見した。

『補足説明だけでなく安全な場所への案内もヨロ!』という気持ちで腐女子についていく。




──だが、この選択が自らの首を締めることになるとは。
この時の私は思っていなかったのである。

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