私は前世の記憶を持つピンク髪ですが、この世界は『乙女ゲーム転生系のナニカ』のようです。

砂臥 環

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そんなこんなでのっけから事件は起こりつつも、傍観を決め込んだ私。
この後ちゃんと入学式は開始され、恙無く終わった。

ちなみに四人は生徒会メンバーだった。
私は『絶対生徒会には近寄らない』と決めた。

しかし私は運営(※勿論学園の)から目を付けられていたらしく、半ば強制的に生徒会に入れられた。

なんでだ。
ピンクだからか。
……ピンクだからか!?

「いや、君魔力量多いし」
「そもそも密命で捕か……ゲフンゲフン、保護されたあたりで察して?」

抵抗したら凄い普通にそう返された。
マトモかよ。

──そんなわけで。

結局関わらざるを得なくなったレンジャーメンバー達。
せめてピンクレンジャーになるのはご勘弁願いたいところ。
いくら美少女に生まれたからと言って、私にお色気担当は無理だ。

いや、当初の想定は『乙女ゲーム転生系のナニカ』であり、奴らは『攻略対象』だった筈。

あまりのカラーバランスと、前世で乙女ゲームを実際にはやったことがないのが災いし、自分の脳がやや混乱していると感じる。

私に振られるのは地味で簡単な書類作業のみ。あとは勉強を教わっており、書類作業もその一環的な実施に過ぎない。密命云々は事実らしい。
まあ、孤児だったしね。

貴公子達とは絡むは絡むが、ほぼほぼ真面目に勉強を教わるだけである。

一般的な勉強と魔法座学を教わるのは氷の貴公子と癒しの貴公子で、魔法実技を教わるのが焔の貴公子。
黄金の貴公子は、概ねお食事おやつの差し入れ係だ。ちなみに生徒会室には奴専用の豪華な椅子がある。流石は財力ムーブ。他にも私財を投入して色々カスタマイズしてそう。

幸い余裕のある孤児院だったのか読み書きだけは教えて貰っていたが、前世の記憶が無かったら計算とかはもうどうにもならないレベル。
前世の記憶が仕事していても全く学園の授業についていけない私に、補講は大変有難く、文句はない。美味しいごはんとおやつも頂けるし。
強いて文句を言うなら焔の貴公子の教え方がなかなか酷いくらい。
擬音と感覚に頼る説明はやめてほしいと切実に思う。




しかし、そんな日々を送っていたら、当然やっかまれる。
案の定、私は女子に囲まれた。

場所は連れ出された学舎裏という、なかなかベタな少女漫画展開だ。
やはりこれは『乙女ゲーム転生系のナニカ』なのでは。

「貴女のような男爵令嬢如きが、貴公子達の中にいるなんて羨まおかしいですわ!」
「マナーも所作もなってないくせに!」
「薔薇の園に女人は要らぬ……!」

意外にも虐めメンバーに加わっている腐女子の存在が気になるが、お怒りはごもっとも。

もとより別段歯向かうつもりもない。
こちらとしても勉強とごはんは有難いがこれ以上のフラグは要らんので、早々に撤退したいのだ。
問題なさそうな部分のみ抽出して説明し、彼女らに勉強を見て貰えば生徒会メンバーから抜け出せるのでは、と考えた私は、調子よく合わせようと試みることにした。

「いやいやいやいや皆様……(※揉み手で下から擦り寄るイメージで)」

しかし──

「お止めなさい……」

「はっ?!」
「何奴ッ?!」

いや、『何奴』って。
どうにも腐女子のキャラが濃い件。

「あっ貴女は……!」

声の先には、豊かで艶やかな黒髪を靡かせた神秘的な美少女。

「黒百合の姫君……!!」

『黒百合の姫君』……だと?!

なんと、『貴公子』だけでなくカラード・アナザーネームをお持ちの方が女性にもいらしたとは。

「くっ公爵令嬢様にそう仰られては引くよりありませんわ……!」 

はい、補足説明あざーす!

わかりやすい説明を加えてくれた上で『覚えてらっしゃい!』とお決まりの台詞を私に吐き、女性徒達は蜘蛛の子を散らすように逃げ去ってしまった。

いや、待って……!
もっとお話ししましょうよ!?

「貴女。 助けたわけじゃなくてよ……勘違いなさらないでね……」

黒百合の姫君は、私に向けて一方的にツンデレ的な台詞をクールに残したあと、黒髪を靡かせながらカッコよく踵を返した。
登場時も去る時も、風が味方してるのでは……と言う程に実にイイ感じで髪が靡き、花びらやら葉っぱやらが程良く舞っている。

『悪役令嬢』とも取れるが、その佇まいはむしろ『敵か味方か……謎の六人目! ブラックレンジャー!!』って感じなのが気になるところだ。

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