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早速耳に届く、「きゃ~♡」という女子生徒の黄色い声。
すわ、攻略対象か!と身構える私は女子生徒達の集団に紛れ、モブと化しながら情報収集を行う。
攻略などする気はなくとも情報は大事だ。
「氷の貴公子よ~♡」
「怜悧なお姿が堪らないわ~♡」
「眼鏡がお似合いだわ~♡」
彼女らの視線の先にはスラリとした高身長イケメン。皆様の感想通り、サラサラの青い長髪をハーフアップにした怜悧な印象の眼鏡である。
しかし『氷の貴公子』とか……ベタだな!
──ドドォン!! ガラガラッ
「!?」
「きゃー!」
謎の轟音と共に、今度は黄色くない普通の(?)悲鳴。
女子生徒モブから野次馬へと素早く役柄を移した私は、その他野次馬に紛れ悲鳴の方へと走る。
前方で氷の貴公子も走っていた。
走り方がなんとなくシュッとしてて忍び的なのがまた、氷の貴公子っぽい。
逃げ惑う人が言うに、中庭にあるパルテノン神殿っぽい建物の柱のひとつが崩れたらしい。
こいつァ朝から大事件だぜ!
「こっちです!!」
「皆は無事なのか?!」
「幸い殆どの者が逃げおおせたのですが、ひとり下敷きに……!」
「なんだと……!」
信頼が厚いらしい氷の貴公子と、彼を呼んだ生徒A(仮)の会話を拾いつつ、着いた現場。
倒壊による粉塵が薄く辺りを包む中、前のよりはやや小さな『ドン』という激しい音と、そちらから上がる砂煙。
「ふう……」
そこから出てきたのは、負傷した男子生徒を抱きかかえた燃えるような赤髪の筋肉イケメン。
さては……攻略対象だな?!
「きゃ~♡ 焔の貴公子様よッ!」
「男子生徒をお助けに……!」
「私も抱きかかえて助けて頂きたいわ!」
「否!! 男子だからこそ尊し!!」
なんかひとり腐ってやがる……!
しかし『焔の貴公子』とは……ベタな様でいて初めて聞いたわ!
「無事か?!」
「ああ……しかし彼が足を」
「私にお任せてください……!」
そしてやってきた緑髪の、穏やかそうなイケメン。
彼は緑色に輝く力を放ち、負傷男子の足を治す。
「癒しの貴公子様だわ……!」
「これで安心ね!」
「ああ……皆様のイチャイチャに私の心も癒されていく……」
やはり貴公子。きっと攻略(以下略)
おいそこの腐女子、自重せい。
緑は『癒しの貴公子』らしい。
ベタと言えばベタではあるものの、なんとなく適当さが醸し出されているような気がするのは何故だ。緑だからか。
つーか皆『貴公子』って付けなきゃ気が済まんのか。
まあ攻略対象がわかりやすくていいっちゃいいんだけどさ。
そしてカラーバランスに若干のレンジャーみを感じ、ピンクである私のヒロイン疑惑が高まったが、それはさておき。
次に出てくるのはきっと黄色に違いない。
乙女ゲームは兎も角、レンジャー的に。
黄色は個性派かピンクに代わる女性キャラのイメージがある。
『カレー大好き食いしん坊』は黄色のイメージに於いてベタなネタであると言えよう。
こうなるともう情報収集とか関係なく、単純にどんな貴公子か気になるところだ。
「きゃ~♡」
キター!!
後方からの黄色い悲鳴に、即座にそちらを振り返った私の視線が捉えたのは、それっぽい長い金髪をひとつに纏めたイケメン。 イケメンらしくキラキラしたエフェクトを纏っている。
『貴公子』縛りだとすると黄色は、一体なんの貴公子なのか!?
さあ女性徒達! 説明カモン!!
「黄金の貴公子様よ~♡」
黄金の貴公子……だと?!
『黄色≒黄金』。
まあ緑とか色関係ない『癒し』だしそこの繋がりはいいにしても、『黄金』とは如何に。
黄色に失礼かもしれないが、格が違う。
折り紙でも金と銀はレア扱いだし。
これは……テンプレ破りで黄色がセンターの流れなのか?!
「……ん?」
しかし、よく見ると周りもキラキラしてきた。そしてチラチラ視界に入る……黒子。
「やあ、これは大変だ。 修繕は僕に任せてくれたまえ」
ファッサー!と前髪を手で流しそう言った黄金の貴公子。
彼がパチンと指を鳴らすと、わらわらと現れし大工達──!!
それはまごうかたなき財力ムーブ……
『黄金』って、まんまじゃないか。
ちなみにエフェクトに使用していたのは砂金だった。黒子が撒いた砂金を回収にかかっている。
黒子大変だな?
すわ、攻略対象か!と身構える私は女子生徒達の集団に紛れ、モブと化しながら情報収集を行う。
攻略などする気はなくとも情報は大事だ。
「氷の貴公子よ~♡」
「怜悧なお姿が堪らないわ~♡」
「眼鏡がお似合いだわ~♡」
彼女らの視線の先にはスラリとした高身長イケメン。皆様の感想通り、サラサラの青い長髪をハーフアップにした怜悧な印象の眼鏡である。
しかし『氷の貴公子』とか……ベタだな!
──ドドォン!! ガラガラッ
「!?」
「きゃー!」
謎の轟音と共に、今度は黄色くない普通の(?)悲鳴。
女子生徒モブから野次馬へと素早く役柄を移した私は、その他野次馬に紛れ悲鳴の方へと走る。
前方で氷の貴公子も走っていた。
走り方がなんとなくシュッとしてて忍び的なのがまた、氷の貴公子っぽい。
逃げ惑う人が言うに、中庭にあるパルテノン神殿っぽい建物の柱のひとつが崩れたらしい。
こいつァ朝から大事件だぜ!
「こっちです!!」
「皆は無事なのか?!」
「幸い殆どの者が逃げおおせたのですが、ひとり下敷きに……!」
「なんだと……!」
信頼が厚いらしい氷の貴公子と、彼を呼んだ生徒A(仮)の会話を拾いつつ、着いた現場。
倒壊による粉塵が薄く辺りを包む中、前のよりはやや小さな『ドン』という激しい音と、そちらから上がる砂煙。
「ふう……」
そこから出てきたのは、負傷した男子生徒を抱きかかえた燃えるような赤髪の筋肉イケメン。
さては……攻略対象だな?!
「きゃ~♡ 焔の貴公子様よッ!」
「男子生徒をお助けに……!」
「私も抱きかかえて助けて頂きたいわ!」
「否!! 男子だからこそ尊し!!」
なんかひとり腐ってやがる……!
しかし『焔の貴公子』とは……ベタな様でいて初めて聞いたわ!
「無事か?!」
「ああ……しかし彼が足を」
「私にお任せてください……!」
そしてやってきた緑髪の、穏やかそうなイケメン。
彼は緑色に輝く力を放ち、負傷男子の足を治す。
「癒しの貴公子様だわ……!」
「これで安心ね!」
「ああ……皆様のイチャイチャに私の心も癒されていく……」
やはり貴公子。きっと攻略(以下略)
おいそこの腐女子、自重せい。
緑は『癒しの貴公子』らしい。
ベタと言えばベタではあるものの、なんとなく適当さが醸し出されているような気がするのは何故だ。緑だからか。
つーか皆『貴公子』って付けなきゃ気が済まんのか。
まあ攻略対象がわかりやすくていいっちゃいいんだけどさ。
そしてカラーバランスに若干のレンジャーみを感じ、ピンクである私のヒロイン疑惑が高まったが、それはさておき。
次に出てくるのはきっと黄色に違いない。
乙女ゲームは兎も角、レンジャー的に。
黄色は個性派かピンクに代わる女性キャラのイメージがある。
『カレー大好き食いしん坊』は黄色のイメージに於いてベタなネタであると言えよう。
こうなるともう情報収集とか関係なく、単純にどんな貴公子か気になるところだ。
「きゃ~♡」
キター!!
後方からの黄色い悲鳴に、即座にそちらを振り返った私の視線が捉えたのは、それっぽい長い金髪をひとつに纏めたイケメン。 イケメンらしくキラキラしたエフェクトを纏っている。
『貴公子』縛りだとすると黄色は、一体なんの貴公子なのか!?
さあ女性徒達! 説明カモン!!
「黄金の貴公子様よ~♡」
黄金の貴公子……だと?!
『黄色≒黄金』。
まあ緑とか色関係ない『癒し』だしそこの繋がりはいいにしても、『黄金』とは如何に。
黄色に失礼かもしれないが、格が違う。
折り紙でも金と銀はレア扱いだし。
これは……テンプレ破りで黄色がセンターの流れなのか?!
「……ん?」
しかし、よく見ると周りもキラキラしてきた。そしてチラチラ視界に入る……黒子。
「やあ、これは大変だ。 修繕は僕に任せてくれたまえ」
ファッサー!と前髪を手で流しそう言った黄金の貴公子。
彼がパチンと指を鳴らすと、わらわらと現れし大工達──!!
それはまごうかたなき財力ムーブ……
『黄金』って、まんまじゃないか。
ちなみにエフェクトに使用していたのは砂金だった。黒子が撒いた砂金を回収にかかっている。
黒子大変だな?
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