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謁見、そして叱責

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「全く、馬鹿としか言えんな。 何故相談せぬのだ」

王宮、謁見の間。
事の次第を耳にし、クロヴィスとマリリンのふたりを回収して話を聞いた国王陛下は呆れていた。

「私も『陛下に相談なさったら』『せめてナディーヌ様に計画をお話になったら』と申しましたが……」
「……自信がなかったのです」

そう、別に所謂『試し行動』的な意味でナディーヌに言わなかったわけではない。

自分との婚約のせいでナディーヌに大変な思いをさせてしまっていることに罪悪感を抱えつつも、彼女の努力を目にしているだけに言うことができないという負のループ。
ギリギリまで悩みに悩んだせいで、結局それを一番台無しにする方法を選択する羽目に陥った自縄自縛なクロヴィスは、『いっそ嫌われてしまおう』という破滅的思考に囚われてしまったのである。

また、王太子にならない自分と『共に生きてくれ!』とかなんとか言う自信もなかった。
彼のアイデンティティは『王太子になる』と『聖女である』ことの二点に強く支えられていたのだから。

ただナディーヌは兎も角として、王には相談することができた筈……しかし普通に考えたら『馬鹿じゃねぇの』と思うような行動を敢えてしてしまうのが、追い込まれている人間の不思議。
そう──クロヴィスは追い込まれていたのだ。

だが追い込まれているからだけではなく、純粋過ぎる程の気持ちが根底にあった。

「陛下!! この『聖女』クロヴィス一生の願いにございます! せめて……ナディーヌの自由意思にて選択を!!」

結局のところコレが一番の気持ちだ。
ナディーヌの気持ち……クロヴィスの気持ちや立場を含めた全ての外圧を無視し、彼女の望むままにさせてあげたいのだ。
ナディーヌに言えなかったのはその為。
きっと自分の希望と向き合うより先に、誰かのことを考えてしまう、そういう人だから。

「愚かな……」

王は嘆息した。
この一言に尽きる。

「貴様は自らが吐かした通り、王太子にすら相応しくない! 王命のなんたるかもわかっていない愚か者めが!!」
「……」
「『勇者』と『聖女』の婚姻は王命である・・・・・・! 」
「!?」
「よいか、反逆罪に問われたくなければ王命を遂行せよ・・・・・・・。 貴様はなんとしてでも『勇者』を口説き落としてこい」
「……!」

瞠目し混乱を隠せないまま、クロヴィスは思わず頭を上げた。
父である王と目が合うと、彼を睥睨したまま静かに王は告げる。

「──クロヴィス。 彼女の幸せは、貴様がなんとかする・・・・・・・・・のだ。 まだ『聖女』への報奨は与えておらん」

クロヴィスはの想いと優しさを察した。

「…………!」

臣下を見渡すも、皆温かい目で見守ってくれている。

「拝命……致しましたッ……!」

クロヴィスは感動し涙を流しながら立ち上がり、駆け出した。
愛しい勇者の元へ。

勝手に追い詰められて自ら地位を失う暴挙に及んだ挙句、他人に強く背中を押されるまで動けなかった情けない自分のまま。

まずは、そのありのままの言葉を伝えに。
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