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図太い眠り姫(仮)と、コミュ障の王子様(仮)※フローラルの香り付き②

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(──違う!! っていうか、何故こんなところで寝ている!?)

ベネディクトはオロオロした。

起こすの自体は簡単だ。
だが起こすのに手間取ったりしたり、もし先の自分のようにやや寝惚けていた場合、大変な想像しかできない。
嫌悪感を露に『誰!?』とか言われようものならキレられ反論もできるが、もしビクビクおどおどされたらどうしよう。
おそらく理由を言えないでモゴモゴしてしまったり変な間が空いてしまったりすることは確実。
そうすれば下心を疑われ、口に出さないまでも『なにこの人、キモッ』と感じるに違いないのだ。
そして決してなにか余計なことをする気などなくとも、果たして自分に『全く下心などない!』と言えたものだろうか。(※拗らせた末の明後日の方向への潔癖さ発動)
だが『キモい』は男子が女子に(以下略)





ベネディクトは起こすか否かで大いに葛藤し、寝ているリリアンの横でひざまずき、肘を曲げた上腕を身体に付け両手を前に出したまま、固まった。
折角の小粋な紳士然とした格好も虚しく、普段はあまりかかない汗をビッシリとかいている。

それにより立ち上がる、石鹸フローラルの香り。

「はっ……!」

そしてその香りに目覚めるリリアン。

「あっ……?! すっ、すすすすみませっ……ひゃぁっ?!」

先程のは認識されてなかったようなのでニアミスとしても、おそらく話を聞いているであろう今回。
そののっけからの失態にアワアワしたリリアンは、掛けていた自身の上着に足を取られバランスを崩した。

「危ないッ!」

咄嗟に魔術を発動し、リリアンを助けるベネディクト。
「そこは近くにいるんだから身を呈して受け止めるとかしろよ」等と思ってはいけない……ただでさえガリガリでしかも寝不足、今の彼はなんなら並の成人女子より非力なのである。





──なんでこんなことになっているのかを一言で言うと、『ニコラスのウッカリのせい』。

想定していたとおり、ものの十分程でキリのいいところまで作業を終えたリリアン。
空き箱など明日も使いそうな物は資料室の片隅に纏め、使用した筆記用具を鞄にしまい上着を羽織ると、軽く全体を見回す。

ベネディクトは気難しいらしいので、忘れ物ひとつでも不愉快に思うかもしれない。
しかも先程は、どうも自分の使う空き箱のせいで、彼が転んでしまったようだった。

初日からこれ以上、失態を重ねたくはないのでチェックは入念。

「……ヨシ!」

さあ帰ろう、とリリアンはドアノブに手をかけたのだが……

「──あれ?」

開かない。

「え? ……アレッ?! あれあれあれあれ?!」

何度ガチャガチャしても、開かない。


──そう、ニコラスの『ウッカリ』はコレ。

研究棟の許可証は持っていても、リリアンは研究室・・・の許可証は持っていない。

研究室の許可証は魔導具である。
鍵が開いていても扉が閉まっていれば入れないのと同様、持たない者が入って扉が閉まっていれば出られない・・・・・
だから、最初にベネディクトが来た時、入口扉が開いていたのだ。

ニコラスはそれを伝え忘れてしまっていた為、許可証を持っている彼を見送った後、リリアンは扉を閉めてしまった。
そのせいで、一時的にここに閉じ込められていたのだ。

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