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第一章 悪役王女になりまして
13. まさかとは思うが
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さすがに退屈すぎる。
彩花はそう思いながら、惰眠をむさぼっていた。むさぼりたくてむさぼっていたわけではない。出ようとしても、アルフォンスがなんだかんだ理由をつけて、ここから出してくれないのだ。
あのときお願いしたように、イルーミアには会わせてくれた。エルルーアを心配していたようで、少しお話ししてから、女子寮に戻っていった。それから3日。ずっとここにいる。
さすがに、ずっと王族として生きてきたアルフォンスと、馬鹿だった王女の記憶しかない元子役の女子大生では、口で負けてしまうので、結局は彩花がいつも折れていた。
こっそり抜ければいいだろうと思われそうだが、アランとレンが見張りについているので無理だ。
そして、彩花は、授業にも出ていない。そのため、一日中、男子寮にいることになる。
最初は、アルフォンスの部屋にある本でも読んでいたが、台本を読み漁って、速読の技術があった彩花は、数日もあれば読破してしまった。
そのために、本当に何もすることがない。部屋でだらけているだけだ。
とりあえず、ベッドから起き上がって、窓の外を見る。
ベッドも、新しく用意されていた。部屋が広いので、もう一つ一人が寝るくらいの寝具をいれることはできた。
(今は午後かな……)
窓から見える太陽は、空高くにあった。昼休憩だからか、外に出ている制服姿の子供も見える。
制服姿を見て、彩花は自分の着ている服を見た。
(私は制服すら着ていない、と……)
授業に出ないんだからとかそんな理由で、エルルーアは普段着を着ている。
外を見るのも飽きて、また横になるかとベッドに向かおうとすると、アルフォンスの執務机が目に入った。その上には、いろんな書類が山になって置かれている。
(うわ。見にくいなぁ……)
それぞれ、書き方が異なっており、すぐに確認がしにくかった。所属などの名前だって、一番上に書いてあるものもあれば、最後に書いてあるのもある。
そもそも、あまり内容がまとまっていないのも。
(どうせ暇だし……)
彩花は、ドアの外から顔を出す。そして、見張りについていた一人に頼み事をした。
「白紙の紙を持ってきてくれませんか?」
「紙ですか?何枚ほど……?」
「う~ん……50枚くらいですかね!」
少し考えるような動作をしてから、右手をパーの形にして、笑いかけた。
本当は、あの書類と同じくらいあればかまわないが、失敗するのも入れて、多めにお願いした。
一瞬嫌そうな顔をしたが、主の妹の頼みは断れないようで、もう一人にエルルーアを託して、その場を離れた。
しばらくすると、戻ってきたので、彩花は紙を受け取って、ドアを閉める。
「よし!やってやろうじゃない!」
彩花は、椅子に座って、羽ペンを持って意気込んだ。
*ー*ー*ー
アルフォンスが、授業を終えて、自分の部屋に戻ってきた。
「あいつの様子は?」
「ほとんど横になっていますね。本調子ではないのかもしれません」
「そうか」
「あっ、でも……」
「どうした?話せ」
少し言いにくそうにしているレンに、アルフォンスは命令口調にたずねた。
「白紙を50枚頼んだくらいで……」
アランの言った言葉が、アルフォンスは一瞬理解できなかった。でも、絵でも描いていたのかもしれないと、アルフォンスは判断して中に入ると、エルルーアは、ベッドですーすーと寝息をたてていた。なぜか、白紙の紙を掴みながら。
のんきだなと思いつつも、起こさないように、握っている手を開いて、紙を取り上げる。そして、掛け布団がずれていたので、掛けなおした。
休む前に、生徒会の書類と向き合おうとしたとき、あることに気づいた。
元々あった紙とともに、新しい紙がセットになって置いてある。
書かれている内容は同じだが、すべて書かれ方が異なる。
新しい紙は、書かれ方がすべて揃っている。一番上に、何についてのことか、大きく見出しのように書いてある。その次に、内容を箇条書きにして、最後に、どこが出したのか。
大きく三つに分けて書いてあった。
(誰がやったんだ?)
アルフォンスはこれを書いた正体を考える。アランかレンは、書類などに勝手に触れたりなどはしない。もし、書いたとしても、もっと前からやっていただろう。
最近になって、ここに来た者で、部屋に出入りしているのは、一人しかいない。
アルフォンスの視線は、寝息をたてているエルルーアに向けられた。
(まさか……)
そんなはずはないと思ったが、エルルーアは、白紙の紙を握っていた。それに、エルルーア以外の心当たりはない。
「お前がやったのか?」
一人言ともとれるような感じに寝ているエルルーアにたずねる。当然、返事は返ってこない。
アルフォンスは、なぜこんなことをしたのかもわからないが、こんな方法を思いついたのかも不思議だった。
エルルーアは、王族の中では、一番の馬鹿と言われていた。それくらいに、エルルーアが賢くない者なのは周知のことだった。それを、表向きは言葉に出すものは少なかったが、ほとんどの者が、そう思っていただろう。
だが、実際は、要点をわかりやすくまとめるくらいの賢さを持っている。
(もしかして、今まで隠していたのか?)
それならば、なぜ隠していたのか。なぜ、今になって隠さなくなったのか。疑問は多かったが、とりあえず、わかりやすく整えてくれたことにありがたく思いながら、書類決裁を進めた。
彩花はそう思いながら、惰眠をむさぼっていた。むさぼりたくてむさぼっていたわけではない。出ようとしても、アルフォンスがなんだかんだ理由をつけて、ここから出してくれないのだ。
あのときお願いしたように、イルーミアには会わせてくれた。エルルーアを心配していたようで、少しお話ししてから、女子寮に戻っていった。それから3日。ずっとここにいる。
さすがに、ずっと王族として生きてきたアルフォンスと、馬鹿だった王女の記憶しかない元子役の女子大生では、口で負けてしまうので、結局は彩花がいつも折れていた。
こっそり抜ければいいだろうと思われそうだが、アランとレンが見張りについているので無理だ。
そして、彩花は、授業にも出ていない。そのため、一日中、男子寮にいることになる。
最初は、アルフォンスの部屋にある本でも読んでいたが、台本を読み漁って、速読の技術があった彩花は、数日もあれば読破してしまった。
そのために、本当に何もすることがない。部屋でだらけているだけだ。
とりあえず、ベッドから起き上がって、窓の外を見る。
ベッドも、新しく用意されていた。部屋が広いので、もう一つ一人が寝るくらいの寝具をいれることはできた。
(今は午後かな……)
窓から見える太陽は、空高くにあった。昼休憩だからか、外に出ている制服姿の子供も見える。
制服姿を見て、彩花は自分の着ている服を見た。
(私は制服すら着ていない、と……)
授業に出ないんだからとかそんな理由で、エルルーアは普段着を着ている。
外を見るのも飽きて、また横になるかとベッドに向かおうとすると、アルフォンスの執務机が目に入った。その上には、いろんな書類が山になって置かれている。
(うわ。見にくいなぁ……)
それぞれ、書き方が異なっており、すぐに確認がしにくかった。所属などの名前だって、一番上に書いてあるものもあれば、最後に書いてあるのもある。
そもそも、あまり内容がまとまっていないのも。
(どうせ暇だし……)
彩花は、ドアの外から顔を出す。そして、見張りについていた一人に頼み事をした。
「白紙の紙を持ってきてくれませんか?」
「紙ですか?何枚ほど……?」
「う~ん……50枚くらいですかね!」
少し考えるような動作をしてから、右手をパーの形にして、笑いかけた。
本当は、あの書類と同じくらいあればかまわないが、失敗するのも入れて、多めにお願いした。
一瞬嫌そうな顔をしたが、主の妹の頼みは断れないようで、もう一人にエルルーアを託して、その場を離れた。
しばらくすると、戻ってきたので、彩花は紙を受け取って、ドアを閉める。
「よし!やってやろうじゃない!」
彩花は、椅子に座って、羽ペンを持って意気込んだ。
*ー*ー*ー
アルフォンスが、授業を終えて、自分の部屋に戻ってきた。
「あいつの様子は?」
「ほとんど横になっていますね。本調子ではないのかもしれません」
「そうか」
「あっ、でも……」
「どうした?話せ」
少し言いにくそうにしているレンに、アルフォンスは命令口調にたずねた。
「白紙を50枚頼んだくらいで……」
アランの言った言葉が、アルフォンスは一瞬理解できなかった。でも、絵でも描いていたのかもしれないと、アルフォンスは判断して中に入ると、エルルーアは、ベッドですーすーと寝息をたてていた。なぜか、白紙の紙を掴みながら。
のんきだなと思いつつも、起こさないように、握っている手を開いて、紙を取り上げる。そして、掛け布団がずれていたので、掛けなおした。
休む前に、生徒会の書類と向き合おうとしたとき、あることに気づいた。
元々あった紙とともに、新しい紙がセットになって置いてある。
書かれている内容は同じだが、すべて書かれ方が異なる。
新しい紙は、書かれ方がすべて揃っている。一番上に、何についてのことか、大きく見出しのように書いてある。その次に、内容を箇条書きにして、最後に、どこが出したのか。
大きく三つに分けて書いてあった。
(誰がやったんだ?)
アルフォンスはこれを書いた正体を考える。アランかレンは、書類などに勝手に触れたりなどはしない。もし、書いたとしても、もっと前からやっていただろう。
最近になって、ここに来た者で、部屋に出入りしているのは、一人しかいない。
アルフォンスの視線は、寝息をたてているエルルーアに向けられた。
(まさか……)
そんなはずはないと思ったが、エルルーアは、白紙の紙を握っていた。それに、エルルーア以外の心当たりはない。
「お前がやったのか?」
一人言ともとれるような感じに寝ているエルルーアにたずねる。当然、返事は返ってこない。
アルフォンスは、なぜこんなことをしたのかもわからないが、こんな方法を思いついたのかも不思議だった。
エルルーアは、王族の中では、一番の馬鹿と言われていた。それくらいに、エルルーアが賢くない者なのは周知のことだった。それを、表向きは言葉に出すものは少なかったが、ほとんどの者が、そう思っていただろう。
だが、実際は、要点をわかりやすくまとめるくらいの賢さを持っている。
(もしかして、今まで隠していたのか?)
それならば、なぜ隠していたのか。なぜ、今になって隠さなくなったのか。疑問は多かったが、とりあえず、わかりやすく整えてくれたことにありがたく思いながら、書類決裁を進めた。
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