手加減を教えてください!

りーさん

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第二章 赤い月と少年の秘密

20 研究のお手伝い 2

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 まずは、物を片づけなければならないと、散らばっている紙を集める。

(へぇ~。魔道具の研究してるんだ)

 依頼書を読むために、両親から字を教わっていたルイスは、その紙に書かれた文字を読み、なんて書かれているのかは理解することができた。
 それは、ある魔道具の研究。
 いろいろと書かれていたが、魔道具らしい絵以外は、起動できるはずなのに、できないから悩んでいるということくらいしかわからなかった。
 ルイスは、マルスのほうに視線を向ける。
 そのときに、視線があったが、特に何も言われず、ルイスも何か言うこともせずに、視線をそらして、片づけの続きを始める。
 紙を集めたら、きちんと向きや端を合わせて、机に置いておく。
 その後は、床を箒で掃けばいいが……紙を置こうとしたところで、先ほど紙に描いてあった魔道具が視界に入る。
 これが魔道具かと、ルイスは触れる。
 邪魔じゃない位置にどかそうと思っただけだったがーー
 そのとき、ルイスの体にある何かが、魔道具のほうに流れていく。

(えっ?なに?)

 ルイスが訳もわからず困惑していると、ルイスの腕を誰かが強く掴む。

「何をしているんだ!」

 それは、マルスだった。
 
「す、すみません……。邪魔にならないように移動しようと思って……」

 ルイスが頭を下げて謝罪するも、マルスはなにも言わない。
 ルイスがおそるおそる頭を上げると、マルスは魔道具のほうをじっと見ていた。

「これは……まさか……!」

 マルスは、魔道具を持ち上げる。
 あらゆる角度から魔道具を確認するその顔は、何かの希望を見いだしているように見えた。

「君、ルイスくんと言ったね?」
「は、はい」
「ルイスくん、僕の弟子にならないか!?」
「……はい?」

◇◇◇

 これが、今でも交流が続いている理由だ。
 あのときは訳がわからなかったものの、ルイスは冒険者を続けていたかったので、断りを入れたのだが、なら指名依頼を入れるから定期的に来てくれと言われてしまい、今にいたる。
 レナにもある程度は話が来ていたようで、『自分が先に弟子になったから、ルイスは弟なのです!レナのことはお姉ちゃんと呼ぶのです!』と笑顔で言われてからは、ルイスはレナのことをお姉ちゃんと呼んでいる。

 片づけが終わると、マルスは待ってましたとばかりに、ルイスに声をかける。

「ルイスくん、今日も頼んでいいかい?」
「はい。それに魔力を注げばいいんですか?」
「うん。よろしくね」

 ルイスは、マルスから受け取った青い石に触れる。
 この青い石は、持っているだけでも魔力が吸われていく。
 そして、満タンまで溜まると、吸わなくなるので、そうなったらマルスに返している。

「本当に、ルイスくんは魔力量が多いんだね~。青の魔石は、かなりの量を溜められるはずなのに、すぐにいっぱいになるんだから」
「みんなから言われますけど、そんなに多いんですね」
「うん。僕が会った人間では、ダントツだよ。君が自分の力をうまく加減できないのも、それが理由だろう?」
「そうですね……」

 マルスは、ルイスの事情を知る数少ない人物となった。
 ルイスは話したりしていなかったが、このように魔力を注ぐようになってから、『ルイスくん、かなり魔力量が多いよね?冒険者をやってるみたいだけど、魔物を倒したりするときに、手加減できてるのかな?』と寒気を感じる笑みでそう言われてしまい、ルイスは全てを打ち明けた。
 教えるまで離さないとばかりに、肩を掴まれていたのもあるだろう。
 このことは、養父母にも報告済みだ。

「でも、君の魔力のお陰で、研究が進んでいるから、それは感謝しているよ」

 次はこれねと渡しながら感謝されても、ルイスは素直に喜べなかった。

「それはよかったですけど……なんで僕の魔力に反応したんでしょう?」
「それがまだわからないんだよね……。魔力量は十分だったはずだから、何かが足りなかった。その足りないものを、ルイスくんが持っていたということなんだけど……」
「足りないもの……」

 ルイスとマルスは、う~んと頭を悩ませた。
 だが、ルイスは、ある出来事が脳裏によぎった。

『お前らがそうやって頑なに隠すから、ルイスも日没後の危機感を持たねぇんじゃねぇか!』

 それは、ダグラスの言葉。ダグラスが、レカーティアに向かって怒鳴っていたときに言っていた言葉だ。
 あの日から、考えないようにしていた。でも、もしかしたらという考えがちらつく。

(僕には何か、秘密があるのかな……)

 レカーティアが話すわけにはいかないと言っていた何か。それは、日没に関係がある。

(そういえば、あの時……)

 ルイスは、レッドウルフのことを思い浮かべた。
 レッドウルフを倒したとき、意識が朦朧とし、血を飲もうとしたあの日。
 訳がわからなかったが、もし、秘密に関係あるのだとしたら。

(帰ったら、父さんと母さんに……聞いてみよう)

 ルイスは、手を握りしめる。
 その時、パキッと何かが割れるような音がした。
 うん?とルイスが握りしめた手を開くと、そこには粉々になった青い石があった。
 ヤバいと思うのもつかの間、ルイスの腕を掴んで、マルスが確認してきた。
 そして、ルイスをじっと見る。

「ルイスくん……?これで何回目かな~?」
「さ、さぁ?」

 ルイスがとぼけると、マルスは目を見開いた。

「君は力が強すぎるから、握りしめないでって何度も言ったよね!?青い魔石はすっごく高いんだから、買い直すのが大変なんだよ!」
「わ、わざとじゃないんです~!」
「だから余計にたちが悪いんじゃん!そもそも、石に魔力を込めてるときに考え事をするほうがおかしいの!いい?何度でも言うけどーー」

 マルスのルイスへの説教は、レナが止めに入るまで続いた。
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