7 / 36
第一部 身の程知らずなご令嬢 ~第一章 毒花は開花する~
7. 婚約者の勤め
しおりを挟む
リネアがどのような動きをするのか、見張りをつけていたが、さすがに周りから二人も高位貴族がいなくなればまずいと思ったのか、行動を自重しているようだ。
だが、マリエンヌは、それが嵐の前の静けさのように思えて仕方がない。まだ、警戒を解くつもりはなく、そろそろ、根回しを始めようかと思っていたのだが……
「まさか、レオナルドさまから交流会の提案をされるなんてね」
手紙の内容としては、以前の交流会を直前になって中止させてしまったことの詫びと、その交流会の代わりを、三日後に行いたいというものだった。
だが、このタイミングで届くなんて、どう考えてもリネア案件だ。まだ行動を開始して間もないが、レオナルドには気づかれたらしい。
ライオネルの件だとすれば、いくらなんでも早すぎるので、アレクシスがばらしたのだろうと推測している。
(これからは、もっと慎重にやらなきゃダメね)
レオナルドから慈悲深き王妃となってほしいと頼まれて優しい令嬢を演じ続けていたなか、久しぶりに楽しめそうだったので、少し急ぎすぎていたかもしれない。
次は根回しを行うつもりだったが、それは一ヶ月ほどで終えるつもりだった。
だが、こんなにもレオナルドがマリエンヌの本性が目覚めているのに気づいているのであれば、もっと時間をかけて、じっくりと行ったほうがよいかもしれない。
部屋に戻ったら、再び計画の練り直しを行うことを決め、レオナルドに了承の返事を出した。
◇◇◇
三日後の、お茶会当日。
レオナルドとマリエンヌは、お互いに一言も話さずに、お茶とお菓子に手をつけるだけだ。
(なんで黙ったままなのよ)
なかなか話し出そうとしないレオナルドに、マリエンヌはだんだん苛立ちを覚えてくる。
自分が話すわけにもいかないから、レオナルドが話すのを待っているというのに、かれこれ五分は言葉を発していない。
「……マリエンヌ」
そろそろ適当な理由をつけて帰ろうかと思っていた矢先、レオナルドが声を発した。
「なんですか、レオナルドさま」
「そなたは、私がお茶会を開いた理由がわかるか?」
「先日の詫びなのでは?わたくし、当日に中止されたのは初めてなので、驚いたのですよ」
マリエンヌが首をかしげると、「とぼけるな」とレオナルドは冷たく言う。
「アレクシスから話は聞いている。ライオネルともひと悶着あったらしいな」
やっぱりその件かと思いつつも、すでにライオネルのことまで調べあげていることに、正直に驚く。まだ、そこまで時間がたっているわけでもなく、学園に噂が広まってもいないはずだ。
だが、あの感情的になっていたライオネルのことなので、いずればれるだろうとは思っていたが。
「そのような言い方ですと、まるでわたくしが悪いことをしているようではありませんか」
先に行動に移したのはそちらでしょう?という意味を込めての発言だったが、レオナルドにはしっかりと伝わっているらしく、はぁとため息をつく。
「確かに、無断で婚約者ではない女性と行動を共にしていたのは、こちら側に非がある。だが、それとそなたの個人的な制裁は話が別だ」
「別ではございません。リネアさまに反省の色が見られないので、ちょっとお灸を据えようとしただけのことですわ」
「じゃあ、もう充分だろう?何もしないよな?」
レオナルドの問いかけに、マリエンヌは、にこりと笑みを返すだけだった。
「……そこはやらないと言え、マリエンヌ」
「わたくしからすれば、まだまだ序の口ですもの。リネアさまがあの程度で諦めるとは思えませんわ」
周りから男たちを引き離すだけで諦めるのであれば、マリエンヌが動く前に、レオナルドたちがやっていただろう。
レオナルドがマリエンヌのことをわかっているように、マリエンヌもレオナルドのことをわかっている。
自分たちが直接対応を引き受けたのは、もうそれ以外に手がないと考えたからだ。それほどに、リネアは質が悪い。
まぁ、婚約者たちに根回しくらいはするべきだったと思っているが。
「それに、実家のほうも問題です。わたくしに交渉に来るくらいなのですから、それくらいは調べあげておられるのでしょう?」
「ああ、娘のことを問題視してはいても、援助があるから、切り捨ててはいないようだ。それが、余計に彼女が図に乗る原因でもーー」
そこまで言ったところで、レオナルドは、はっとした表情でマリエンヌを見る。
マリエンヌは、にこりと微笑むだけだ。
「そなた、実家にも手を出すつもりか!?さすがに婚約者としての役割を逸脱しているぞ!」
「あら、王国の不穏分子を排除するのは、未来の王妃たるわたくしの役目ですもの。逸脱してなどおりませんわ」
「王妃の役目は、王の身と心を支えることだ。王を差し置いてでしゃばることではない。不穏分子の排除は私の役目だ」
せっかくの自分の楽しみを、なんとか言いくるめようと邪魔してくるレオナルドに、マリエンヌは仕方なく奥の手を使う。
「その役目を、果たせていないではありませんか」
マリエンヌだって、立場をわきまえようとする理性はあった。だからこそ、友人関係に口出しするべきではないと友人たちに宣言し、成り行きを見守ろうとしたのだ。
それが、今はどうだ。
リネアを止めきることができておらず、それどころかマリエンヌは、明らかにリネアに見下されている。
レオナルドも思うところがあるのか、押し黙った。
マリエンヌは続ける。
「わたくしの手の者の情報では、『マリエンヌさまはお優しいから、反省する素振りを見せれば、すぐに帰ったわ』と友人に漏らしていたそうですよ。明らかに、未来の王妃たるわたくしを見下す発言ではありませんか」
そんなことされたら誰でも動く。
そう伝えたかったのだが、レオナルドが引っかかったのはそこではなかった。
「……それは初耳だ。私たちのことも、どう言いふらされているかわからんな」
レオナルドのボソッとした呟きに、マリエンヌはやばいと焦る。
公爵家のマリエンヌだけならまだしも、リネアが王族のことも悪し様に友人たちに話していたら、それだけで不敬罪だ。
そうなると、あっという間に実家は取り潰しとなり、リネアは、処刑とまではいかなくても、平民として惨めな生活を送ることは確定だ。
それは、マリエンヌが最終的に望む結末ではあるが、こんな形は望んでいない。
悪人は、自分の手で追いつめて絶望させるのが心地いいというのに、それではマリエンヌの楽しみが半減してしまう。
リネアが、そこまでの愚か者ではないことを願うしかないが、往来の場で異性と腕を組んだり、友人にマリエンヌを見下す発言をする危機感のなさでは、あり得ない話ではない。
「では、わたくしがお調べいたしましょう」
「いや、私が調べておこう。そなたに任せたら揉み消されそうだ」
失礼なと言いたいところだったが、自分だったらやりかねないと脳裏によぎったマリエンヌは、口をつぐむ。
「すまないが、時間がなくなってしまった。ブラットン男爵令嬢のことは、早めに対処をするから、そなたは友人たちと交流を深めておくといい」
レオナルドは、疲れきった様子でそう言う。
このままでは、徹底的に邪魔されるだろう。それならば、邪魔できない方法を取ればいいだけだ。
「かしこまりました。レオナルドさまの婚約者として、もっと交流を持てと申すのですね」
「いや、そんなことは言ってないが……。だが、広げられるのならば、広げてくれるほうが助かる」
すでに疲れきっているからか、マリエンヌの裏の言葉に気づく様子はなく、マリエンヌの言葉を肯定する。
マリエンヌは、心のうちでニヤリとほくそ笑みつつ、レオナルドに微笑む。
「ええ、婚約者の勤めですもの。当然ですわ」
今までにない笑顔でそう言ったマリエンヌに、レオナルドはなんともいえない悪寒を感じる。
(……本当に、おとなしくしてくれるのか?)
その疑問は、なぜか口にできず、レオナルドは立ち去り、お茶会は終わった。
だが、マリエンヌは、それが嵐の前の静けさのように思えて仕方がない。まだ、警戒を解くつもりはなく、そろそろ、根回しを始めようかと思っていたのだが……
「まさか、レオナルドさまから交流会の提案をされるなんてね」
手紙の内容としては、以前の交流会を直前になって中止させてしまったことの詫びと、その交流会の代わりを、三日後に行いたいというものだった。
だが、このタイミングで届くなんて、どう考えてもリネア案件だ。まだ行動を開始して間もないが、レオナルドには気づかれたらしい。
ライオネルの件だとすれば、いくらなんでも早すぎるので、アレクシスがばらしたのだろうと推測している。
(これからは、もっと慎重にやらなきゃダメね)
レオナルドから慈悲深き王妃となってほしいと頼まれて優しい令嬢を演じ続けていたなか、久しぶりに楽しめそうだったので、少し急ぎすぎていたかもしれない。
次は根回しを行うつもりだったが、それは一ヶ月ほどで終えるつもりだった。
だが、こんなにもレオナルドがマリエンヌの本性が目覚めているのに気づいているのであれば、もっと時間をかけて、じっくりと行ったほうがよいかもしれない。
部屋に戻ったら、再び計画の練り直しを行うことを決め、レオナルドに了承の返事を出した。
◇◇◇
三日後の、お茶会当日。
レオナルドとマリエンヌは、お互いに一言も話さずに、お茶とお菓子に手をつけるだけだ。
(なんで黙ったままなのよ)
なかなか話し出そうとしないレオナルドに、マリエンヌはだんだん苛立ちを覚えてくる。
自分が話すわけにもいかないから、レオナルドが話すのを待っているというのに、かれこれ五分は言葉を発していない。
「……マリエンヌ」
そろそろ適当な理由をつけて帰ろうかと思っていた矢先、レオナルドが声を発した。
「なんですか、レオナルドさま」
「そなたは、私がお茶会を開いた理由がわかるか?」
「先日の詫びなのでは?わたくし、当日に中止されたのは初めてなので、驚いたのですよ」
マリエンヌが首をかしげると、「とぼけるな」とレオナルドは冷たく言う。
「アレクシスから話は聞いている。ライオネルともひと悶着あったらしいな」
やっぱりその件かと思いつつも、すでにライオネルのことまで調べあげていることに、正直に驚く。まだ、そこまで時間がたっているわけでもなく、学園に噂が広まってもいないはずだ。
だが、あの感情的になっていたライオネルのことなので、いずればれるだろうとは思っていたが。
「そのような言い方ですと、まるでわたくしが悪いことをしているようではありませんか」
先に行動に移したのはそちらでしょう?という意味を込めての発言だったが、レオナルドにはしっかりと伝わっているらしく、はぁとため息をつく。
「確かに、無断で婚約者ではない女性と行動を共にしていたのは、こちら側に非がある。だが、それとそなたの個人的な制裁は話が別だ」
「別ではございません。リネアさまに反省の色が見られないので、ちょっとお灸を据えようとしただけのことですわ」
「じゃあ、もう充分だろう?何もしないよな?」
レオナルドの問いかけに、マリエンヌは、にこりと笑みを返すだけだった。
「……そこはやらないと言え、マリエンヌ」
「わたくしからすれば、まだまだ序の口ですもの。リネアさまがあの程度で諦めるとは思えませんわ」
周りから男たちを引き離すだけで諦めるのであれば、マリエンヌが動く前に、レオナルドたちがやっていただろう。
レオナルドがマリエンヌのことをわかっているように、マリエンヌもレオナルドのことをわかっている。
自分たちが直接対応を引き受けたのは、もうそれ以外に手がないと考えたからだ。それほどに、リネアは質が悪い。
まぁ、婚約者たちに根回しくらいはするべきだったと思っているが。
「それに、実家のほうも問題です。わたくしに交渉に来るくらいなのですから、それくらいは調べあげておられるのでしょう?」
「ああ、娘のことを問題視してはいても、援助があるから、切り捨ててはいないようだ。それが、余計に彼女が図に乗る原因でもーー」
そこまで言ったところで、レオナルドは、はっとした表情でマリエンヌを見る。
マリエンヌは、にこりと微笑むだけだ。
「そなた、実家にも手を出すつもりか!?さすがに婚約者としての役割を逸脱しているぞ!」
「あら、王国の不穏分子を排除するのは、未来の王妃たるわたくしの役目ですもの。逸脱してなどおりませんわ」
「王妃の役目は、王の身と心を支えることだ。王を差し置いてでしゃばることではない。不穏分子の排除は私の役目だ」
せっかくの自分の楽しみを、なんとか言いくるめようと邪魔してくるレオナルドに、マリエンヌは仕方なく奥の手を使う。
「その役目を、果たせていないではありませんか」
マリエンヌだって、立場をわきまえようとする理性はあった。だからこそ、友人関係に口出しするべきではないと友人たちに宣言し、成り行きを見守ろうとしたのだ。
それが、今はどうだ。
リネアを止めきることができておらず、それどころかマリエンヌは、明らかにリネアに見下されている。
レオナルドも思うところがあるのか、押し黙った。
マリエンヌは続ける。
「わたくしの手の者の情報では、『マリエンヌさまはお優しいから、反省する素振りを見せれば、すぐに帰ったわ』と友人に漏らしていたそうですよ。明らかに、未来の王妃たるわたくしを見下す発言ではありませんか」
そんなことされたら誰でも動く。
そう伝えたかったのだが、レオナルドが引っかかったのはそこではなかった。
「……それは初耳だ。私たちのことも、どう言いふらされているかわからんな」
レオナルドのボソッとした呟きに、マリエンヌはやばいと焦る。
公爵家のマリエンヌだけならまだしも、リネアが王族のことも悪し様に友人たちに話していたら、それだけで不敬罪だ。
そうなると、あっという間に実家は取り潰しとなり、リネアは、処刑とまではいかなくても、平民として惨めな生活を送ることは確定だ。
それは、マリエンヌが最終的に望む結末ではあるが、こんな形は望んでいない。
悪人は、自分の手で追いつめて絶望させるのが心地いいというのに、それではマリエンヌの楽しみが半減してしまう。
リネアが、そこまでの愚か者ではないことを願うしかないが、往来の場で異性と腕を組んだり、友人にマリエンヌを見下す発言をする危機感のなさでは、あり得ない話ではない。
「では、わたくしがお調べいたしましょう」
「いや、私が調べておこう。そなたに任せたら揉み消されそうだ」
失礼なと言いたいところだったが、自分だったらやりかねないと脳裏によぎったマリエンヌは、口をつぐむ。
「すまないが、時間がなくなってしまった。ブラットン男爵令嬢のことは、早めに対処をするから、そなたは友人たちと交流を深めておくといい」
レオナルドは、疲れきった様子でそう言う。
このままでは、徹底的に邪魔されるだろう。それならば、邪魔できない方法を取ればいいだけだ。
「かしこまりました。レオナルドさまの婚約者として、もっと交流を持てと申すのですね」
「いや、そんなことは言ってないが……。だが、広げられるのならば、広げてくれるほうが助かる」
すでに疲れきっているからか、マリエンヌの裏の言葉に気づく様子はなく、マリエンヌの言葉を肯定する。
マリエンヌは、心のうちでニヤリとほくそ笑みつつ、レオナルドに微笑む。
「ええ、婚約者の勤めですもの。当然ですわ」
今までにない笑顔でそう言ったマリエンヌに、レオナルドはなんともいえない悪寒を感じる。
(……本当に、おとなしくしてくれるのか?)
その疑問は、なぜか口にできず、レオナルドは立ち去り、お茶会は終わった。
1,170
お気に入りに追加
3,257
あなたにおすすめの小説
もう、あなたを愛することはないでしょう
春野オカリナ
恋愛
第一章 完結番外編更新中
異母妹に嫉妬して修道院で孤独な死を迎えたベアトリーチェは、目覚めたら10才に戻っていた。過去の婚約者だったレイノルドに別れを告げ、新しい人生を歩もうとした矢先、レイノルドとフェリシア王女の身代わりに呪いを受けてしまう。呪い封じの魔術の所為で、ベアトリーチェは銀色翠眼の容姿が黒髪灰眼に変化した。しかも、回帰前の記憶も全て失くしてしまい。記憶に残っているのは数日間の出来事だけだった。
実の両親に愛されている記憶しか持たないベアトリーチェは、これから新しい思い出を作ればいいと両親に言われ、生まれ育ったアルカイドを後にする。
第二章
ベアトリーチェは15才になった。本来なら13才から通える魔法魔術学園の入学を数年遅らせる事になったのは、フロンティアの事を学ぶ必要があるからだった。
フロンティアはアルカイドとは比べ物にならないぐらい、高度な技術が発達していた。街には路面電車が走り、空にはエイが飛んでいる。そして、自動階段やエレベーター、冷蔵庫にエアコンというものまであるのだ。全て魔道具で魔石によって動いている先進技術帝国フロンティア。
護衛騎士デミオン・クレージュと共に新しい学園生活を始めるベアトリーチェ。学園で出会った新しい学友、変わった教授の授業。様々な出来事がベアトリーチェを大きく変えていく。
一方、国王の命でフロンティアの技術を学ぶためにレイノルドやジュリア、ルシーラ達も留学してきて楽しい学園生活は不穏な空気を孕みつつ進んでいく。
第二章は青春恋愛モード全開のシリアス&ラブコメディ風になる予定です。
ベアトリーチェを巡る新しい恋の予感もお楽しみに!
※印は回帰前の物語です。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
最後に、お願いがあります
狂乱の傀儡師
恋愛
三年間、王妃になるためだけに尽くしてきた馬鹿王子から、即位の日の直前に婚約破棄されたエマ。
彼女の最後のお願いには、国を揺るがすほどの罠が仕掛けられていた。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
追放された悪役令嬢は辺境にて隠し子を養育する
3ツ月 葵(ミツヅキ アオイ)
恋愛
婚約者である王太子からの突然の断罪!
それは自分の婚約者を奪おうとする義妹に嫉妬してイジメをしていたエステルを糾弾するものだった。
しかしこれは義妹に仕組まれた罠であったのだ。
味方のいないエステルは理不尽にも王城の敷地の端にある粗末な離れへと幽閉される。
「あぁ……。私は一生涯ここから出ることは叶わず、この場所で独り朽ち果ててしまうのね」
エステルは絶望の中で高い塀からのぞく狭い空を見上げた。
そこでの生活も数ヵ月が経って落ち着いてきた頃に突然の来訪者が。
「お姉様。ここから出してさし上げましょうか? そのかわり……」
義妹はエステルに悪魔の様な契約を押し付けようとしてくるのであった。
強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。
お父様お母様、お久しぶりです。あの時わたしを捨ててくださりありがとうございます
柚木ゆず
恋愛
ヤニックお父様、ジネットお母様。お久しぶりです。
わたしはアヴァザール伯爵家の長女エマとして生まれ、6歳のころ貴方がたによって隣国に捨てられてしまいましたよね?
当時のわたしにとってお二人は大事な家族で、だからとても辛かった。寂しくて悲しくて、捨てられたわたしは絶望のどん底に落ちていました。
でも。
今は、捨てられてよかったと思っています。
だって、その出来事によってわたしは――。大切な人達と出会い、大好きな人と出逢うことができたのですから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる