転生精霊の異世界マイペース道中~もっとマイペースな妹とともに~

りーさん

文字の大きさ
上 下
7 / 30
第一章 辺境の街 カルファ

7. 入り口の検問

しおりを挟む
 厄介なトラブルに巻き込まれたものの、そこからは列は順調に進み、ついに僕たちの番になった。
 あの言い争っていた人たちがどうなったのかは知らないけど、街に入るとしても、並び直していることだろう。

「はい、次ーーって、子ども?」

 僕らを訝しく見るのは、先ほどの治安隊とは違う格好をした男の人。多分、門番のような役割をしてるんだろう。
 おそらく、立場としては兵士だろう。騎士の役目は、主に要人の護衛だけど、近くにそのような人は見当たらない。

「お前たち、親はいないのか?」
「うん。いないよ」

 治安隊の人にも同じこと聞かれたなと思いながらも、そう返事をすると、僕らを訝しく見る。

 まぁ、怪しいか。子どもだけなのは。

「子どもだけでどうやってここまで来た?荷物らしい荷物もほとんどないじゃないか。まさか、遊びに来たってわけじゃないだろ」

 兵士は、僕たちが背負っているカバンを見ながらさらに目を細める。
 僕らのカバンはリュックみたいになってるけど、決して大きさは大きくない。せいぜい、お尻に届くくらいの大きさだ。
 確かにこれでは、遠足に来た小学生のようにしか見えないけども。

「一応、僕たちも自衛できるくらいには戦えるから、護衛とかはいらなかったの。荷物は、このカバンに入れてるんだ。大きさ以上にいろいろ入るの。中が大きくなる魔法がかかってるから」

 僕は、肩からリュックを下ろしながら説明する。兵士の注目は、僕たちの戦闘能力よりも、カバンにいったようだ。

「へぇ~。マジックバッグか。このタイプは初めて見たが、そんな高価なものよく手に入ったな」

 兵士は感心するように僕たちのカバンを見る。その目は、疑っているというよりかは、興味深いものを見る目だ。

 そうか。空間魔法が使える人ってそんなに多くないから、こういうアイテムは貴重なんだっけ。父さんが当たり前のように量産するから、感覚が麻痺していたよ。
 まぁ、もらったって言うのが妥当かな。

「僕たちと一緒に住んでる人にもらったの。その人、空間魔法が使えるから」
「へぇ~、すごいやつだな」

 感心するだけで、疑いの目を向けてくることはない。どうやら、信じてくれたらしい。空間魔法使いは、少ないだけでいないわけじゃないしね。

「じゃあ、お前らはなんで自分たちだけで来たんだ?住んでるやつと一緒に来ればいいだろ?」

 当然の疑問が兵士から飛んでくる。
 一応、子どもだけの二人旅の理由は考えてあるので、問題はない。

「その人が、家を出ていってから帰ってこなくて、探しに来たの。こっちのほうに歩いていったから」

 養う人がいなくなったというのは、一番納得されやすい言い訳だ。
 人間は食べなくては生きていけないから、保護者を探そうとするのはおかしな考えじゃないし、どこに行ったのかわからないという理由ならば、いろいろなところをふらついていてもおかしくはないと思う。

「そうか……大変だったな」

 予想通り、納得してくれた。おかしな言い訳じゃないみたいだし、これからはこの言い訳を通していくとしよう。

「とりあえず、事情はわかった。だが、お前ら。身分証はあるのか」
「ううん。家を出てきたからないよ」
「じゃあ、手続きしてやるから、こっちに来てくれ」
「わかった。行くよ、ルーナ」
「あ~い……」

 僕は、うつらうつらとしているルーナの手を引いて、兵士についていく。ルーナも、目を擦って意識を覚醒させながらついてきた。
 離れてもいいのかと後ろを振り返ると、別の人が並んでいる人たちに対応しているのを見て、僕は再び前を向いた。
 
 そして、街の門の脇にある通用口のような場所から中に入ると、そこには小部屋があった。僕らが入ってきたドアの向かい側と右側にそれぞれ別のドアがある。
 構造からして、向かい側は、おそらく街に繋がっているのだろう。

 装飾はかなり質素で、テーブルもカウンターのようなものが一つ無造作に置かれてるだけなのに、椅子だけは十脚はありそうな数だ。
 客を案内するというよりかは、待機させるための部屋といったところかな?

「どこでも好きなところに座ってくれ」

 そう言われたので、僕は入ってきたドアの近くの椅子に座る。
 ルーナは、僕の隣の椅子に座った。

「じゃあ、これを持ってくれるか」

 そう言って渡されたのは、透明なビー玉のようなものだった。
 僕とルーナにそれぞれ一つずつ渡されて、僕らが手のひらに乗せると、ビー玉は白くて淡い光を放つ。

(うわっ!)

 まさか光るとは思っていなかった僕は、声には出さなかったけど、口を開けて驚く。
 ただのビー玉ではないと思ってたけど、これが手続きの道具なら、どうやって使うんだ?

 僕がまじまじと観察しているうちに、発光は収まり、ただのビー玉がコロンと乗っているだけになった。
 ルーナのほうを見ると、まだ光っていたけど、十秒くらいで収まった。ルーナのビー玉の発光が終わると、兵士は待ってましたとばかりに、僕たちの手のひらに乗ったビー玉を回収する。

「よし。じゃあすまねぇが、十分くらいここで待っててくれ」
「うん、わかった」

 僕の返事を聞くと、兵士は右側のドアのほうに歩いていき、部屋を出ていった。

 何の時間かは知らないけど、十分くらいなら大したことはない。
 ぽけーとしていたらいつの間にか二十分は過ぎているなんてざらにあるくらいなのだから。

 ルーナはどうせ寝るんだろうなと思いながらルーナのほうに視線を向けると、ルーナはふわぁとあくびして、僕のほうに視線を向ける。

「お兄ちゃん、ちょっと貸して」
「えっ?う、うん」

 一体何をと思っていると、ルーナは目を瞑り、僕の肩にこてんと首を乗せてくる。
 そして、一秒もかからずに、すーすーと寝息が聞こえてきた。

 こ、これって、肩枕ってやつじゃないの!?
 隣に座って眠りこけた美少女に肩枕させるなんて、男子なら一度は憧れそうなシチュエーションだ。相手は妹だけど!

 貸してって言ったのは、肩のことだったのか。確かに、このざらざらした壁にもたれて寝ても、休まらないだろうな。
 相手がまったく見知らぬお姉さんとかだったらドキドキしたかもしれないけど、自分と同じ顔をした妹の寝顔を見たところで、ただ微笑ましいだけだ。

 妹の寝顔を見ていたからか、それとも精霊の本能につられてか、僕も眠くなってしまい、気づいたらこてんとルーナに頭を預けて眠りに落ちていた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...