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第二章 あくまでも一人でいたい
16. 剣の訓練 2
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剣を構えたままお互いにしばらく動かなかった。でも、フェリクスの視線がわずかに右に動くと同時に踏み込んでくる。
何を狙っているかは想像がついた。
(右脇腹を狙った突き)
僕は左に移動して突きを避けたあと、振り払うように剣を振る。
僕も脇腹を狙ったつもりだったけど、相手の反応が速くて後ろに避けられた。
素早いな。
もう一度相手の目を見ると、目つきが鋭くなっている。
次は……
(横に凪払い)
僕はフェリクスと同じように後ろに下がって回避する。
だけど、フェリクスは一度避けるだけでは終わらなかった。
振り切った勢いを殺さずに手を動かしている。
(上からの振り下ろし!)
左足を狙うように斜め上から斬りつけてくる。さすがにこれを避けるのは難しい。なら、受け止めるしかない。
相手の剣と垂直になるように剣を構えて剣を受け止める。
「剣は得意ではないとおっしゃっていませんでしたか?」
「得意ではないのは本当だ。今も必死に食らいついている」
現に、僕はあまり余裕がない。相手を観察して動きを予測しながら避けているだけで、予測が間違って一撃をもらったらその時点で攻められて負けるだろう。
ここは、一度だけでも攻めるしかない。それにはまず、この状況をどうにかしなければ。
力はほぼ互角。むしろ僕のほうが負けているから、このまま押しきられるだろう。
それなら相手のバランスを崩してみるか。
僕はしゃがみこんで足払いをしてみる。でも読んでいたとばかりに避けられた。
よし、やるか。
僕はフェリクスと同じ動きをして突き技をしてみる。でも僕と彼では体つきも違えば鍛練してきた時間もおそらくはフェリクスのほうが長い。
見ただけでコピーなどできるはずもなく、フェリクスのと比べてずいぶんとブレブレな動きなってしまって、力がうまく乗せられない。
それでも、フェリクスは目を見開いて驚いていた。そのせいか回避が遅れ、一撃を与えることができた。
まぁ、力の乗せ方がへたくそな弱い一撃だったから大したことはなかったと思うけど。
「お前、今の……!」
「君の突き技をやってみただけだけど……。それより、お前ってなに?」
王子に対してどんな口の聞き方だ。思わず言ってしまったような感じだから悪気はないんだろうけど、周りはそう捉えてはくれない。
「申し訳ありません、殿下。ご無礼を働きました」
「別にいいよ。それで、何か気になったの?」
もう手合わせどころではなさそうだ。そんなにおかしな動きをしただろうか。確かにヘロヘロで見ていられるものではなかったかもしれないが、そこまで驚かれるほどではないと思う。
「殿下に失礼かと」
「そうやって上の空で相手するほうが失礼だと思うけど」
そこまで言ってようやく観念したのか、フェリクスは理由を話してくれる。
「殿下と昔の友人が重なりまして」
「昔の友人?どういう意味だ?」
フェリクスは今は十歳だ。昔といえるほどの過去があるわけではない。
「殿下と似たような友人が私にいたのです。ロボットみたいな奴で、相手の行動を予測したり、相手の動きを再現するのが得意な奴でした」
……今、こいつは何て言った?
「……お前、ロボットと言ったか?」
フェリクスはしまったというように口を塞ぐが、それで発言がなかったことにはならない。
この世界にロボットなど存在していない。クローディル兄さんにドールのアイデアを売りはしたけど、まだそれは世間には広まっていないだろうし、クローディル兄さんから試作品が送られていないということは完成しているわけでもないだろう。
たとえ知ったとしても、名前がドールなのだ。ロボットなどという言葉は出てくるはずがない。
僕と同じ……転生者でない限りは。
「副団長!」
「は、はい、王子殿下」
僕に呼ばれた副団長がその場で跪く。別に取って食ったりしないから普通にしててくれていいのに。
「少し話がしたいから令息を借りる。兄上もよろしいでしょうか?」
今は訓練中だ。退出するなら兄上の許可がいる。
「あ、ああ。構わないが、お前の授業は平気なのか?」
「後日、今日の分も含めて受けるとメアリーに伝えておきますので大丈夫です」
今の状態で訓練を続けても集中できないし。メアリーもこう言えば許してくれるでしょ、多分。
「そういうわけだ。フェリクス、ついてきてくれ」
「かしこまりました」
フェリクスは僕の顔色を伺うようにしてついてくる。
さて、どう相手するかな。
何を狙っているかは想像がついた。
(右脇腹を狙った突き)
僕は左に移動して突きを避けたあと、振り払うように剣を振る。
僕も脇腹を狙ったつもりだったけど、相手の反応が速くて後ろに避けられた。
素早いな。
もう一度相手の目を見ると、目つきが鋭くなっている。
次は……
(横に凪払い)
僕はフェリクスと同じように後ろに下がって回避する。
だけど、フェリクスは一度避けるだけでは終わらなかった。
振り切った勢いを殺さずに手を動かしている。
(上からの振り下ろし!)
左足を狙うように斜め上から斬りつけてくる。さすがにこれを避けるのは難しい。なら、受け止めるしかない。
相手の剣と垂直になるように剣を構えて剣を受け止める。
「剣は得意ではないとおっしゃっていませんでしたか?」
「得意ではないのは本当だ。今も必死に食らいついている」
現に、僕はあまり余裕がない。相手を観察して動きを予測しながら避けているだけで、予測が間違って一撃をもらったらその時点で攻められて負けるだろう。
ここは、一度だけでも攻めるしかない。それにはまず、この状況をどうにかしなければ。
力はほぼ互角。むしろ僕のほうが負けているから、このまま押しきられるだろう。
それなら相手のバランスを崩してみるか。
僕はしゃがみこんで足払いをしてみる。でも読んでいたとばかりに避けられた。
よし、やるか。
僕はフェリクスと同じ動きをして突き技をしてみる。でも僕と彼では体つきも違えば鍛練してきた時間もおそらくはフェリクスのほうが長い。
見ただけでコピーなどできるはずもなく、フェリクスのと比べてずいぶんとブレブレな動きなってしまって、力がうまく乗せられない。
それでも、フェリクスは目を見開いて驚いていた。そのせいか回避が遅れ、一撃を与えることができた。
まぁ、力の乗せ方がへたくそな弱い一撃だったから大したことはなかったと思うけど。
「お前、今の……!」
「君の突き技をやってみただけだけど……。それより、お前ってなに?」
王子に対してどんな口の聞き方だ。思わず言ってしまったような感じだから悪気はないんだろうけど、周りはそう捉えてはくれない。
「申し訳ありません、殿下。ご無礼を働きました」
「別にいいよ。それで、何か気になったの?」
もう手合わせどころではなさそうだ。そんなにおかしな動きをしただろうか。確かにヘロヘロで見ていられるものではなかったかもしれないが、そこまで驚かれるほどではないと思う。
「殿下に失礼かと」
「そうやって上の空で相手するほうが失礼だと思うけど」
そこまで言ってようやく観念したのか、フェリクスは理由を話してくれる。
「殿下と昔の友人が重なりまして」
「昔の友人?どういう意味だ?」
フェリクスは今は十歳だ。昔といえるほどの過去があるわけではない。
「殿下と似たような友人が私にいたのです。ロボットみたいな奴で、相手の行動を予測したり、相手の動きを再現するのが得意な奴でした」
……今、こいつは何て言った?
「……お前、ロボットと言ったか?」
フェリクスはしまったというように口を塞ぐが、それで発言がなかったことにはならない。
この世界にロボットなど存在していない。クローディル兄さんにドールのアイデアを売りはしたけど、まだそれは世間には広まっていないだろうし、クローディル兄さんから試作品が送られていないということは完成しているわけでもないだろう。
たとえ知ったとしても、名前がドールなのだ。ロボットなどという言葉は出てくるはずがない。
僕と同じ……転生者でない限りは。
「副団長!」
「は、はい、王子殿下」
僕に呼ばれた副団長がその場で跪く。別に取って食ったりしないから普通にしててくれていいのに。
「少し話がしたいから令息を借りる。兄上もよろしいでしょうか?」
今は訓練中だ。退出するなら兄上の許可がいる。
「あ、ああ。構わないが、お前の授業は平気なのか?」
「後日、今日の分も含めて受けるとメアリーに伝えておきますので大丈夫です」
今の状態で訓練を続けても集中できないし。メアリーもこう言えば許してくれるでしょ、多分。
「そういうわけだ。フェリクス、ついてきてくれ」
「かしこまりました」
フェリクスは僕の顔色を伺うようにしてついてくる。
さて、どう相手するかな。
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