転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん

文字の大きさ
上 下
48 / 49
第二章 ユニークスキル

47. 家族のカタチ 1

しおりを挟む
 一週間後、延期になったリーリアさまの誕生日パーティーが開かれた。

 レオンたちには、魔法の特訓の合間にパーティーの日時を伝えておいたので、レオンたちも今日を楽しみにしてそわそわとしている。
 礼服に関しては、いつの間にか当主さまが用意していた。装飾は必要最低限で裕福な平民が着そうなレベルに抑えられており、サイズはピッタリ。測られた覚えがないんですけど、いつ僕たちの服のサイズを知ったのでしょうか?

 そんな些細なエピソードを挟みつつ、着々と準備は進められていた。
 僕はそんな裏で魔法の特訓を続けていて、三日前にメルゼンさんから合格をもらってからは、母さんの白魔法を【完全複製】するための特訓を開始してと、わりと多忙な日々を過ごしているうちに当日になってしまった。

 それでも、どうにかリーリアさまを喜ばせるプレゼントは用意できたはずなので、重労働も苦ではなかったけど。

「そういえば、レオンは当主さまには何か聞かれたりしなかったの?」

 僕はガチガチになっているレオンに声をかけると、普段は僕に声をかけられると瞬間的に僕のほうを向くレオンが、ワンテンポ遅れて僕のほうに顔を向けた。
 緊張しすぎじゃないと思わないでもないけど、貴族のパーティーに主役として参加するなら当然の反応かもな。

「い、一応聞かれたけど、あまり覚えてなくて」
「でも、レオンは自分から外に出ていったんでしょ?」
「そうみたいだね」

 ……うん?“みたい”?なんでそんな他人事のような言い方をするんだ?

「覚えてないの?」
「ルイが当主さまのお屋敷に向かったくらいまでは覚えてるんだけど、そこからがなんか記憶がぼんやりとしてて。家を出ていったのは覚えてるけど、そのとき何を言っていたかはちょっと」

 なんか、いろいろと複雑なことになっていそうだ。当主さまはきっと頭を抱えていることだろう。それでも、ちゃんと約束通り一週間後に開催してくれたから僕は何も言わないけど。

「レオン、ルイ。そろそろ行くわよ」
「「はーい」」

 母さんの後についていき、僕たちは会場に向かった。

 会場にはテーブルがいくつか置かれており、そこに軽食がセットされている。会場内にはすでに使用人が数名と少年式の日に見かけた親戚と思われる存在もいた。

「ねぇ、本当に僕も主役でいいの?」
「いいのいいの。当主さまがそう言ったんだし、リーリアさまも許したから誰も文句言わないって」

 というか、絶対に言わせない。特に、当主さまあたりには。

「ルイ!」

 僕を呼ぶ幼い声が会場に響く。声がしたほうを向くと、そこには笑顔でこちらに近づいてくるリーリアさまがいた。
 後ろからはゆっくりとディアナさまがついてきている。

「大地に芽吹きし良き日にお祝い申し上げます、リーリアさま」

 この世界流の誕生日おめでとうございますということを伝えると、リーリアさまは嬉しそうに「ありがとう」と言う。
 そして、僕の傍らに立っていた存在に視線を向けた。

「あなたがレオン?」
「は、はい。レオンと申します」

 レオンが挨拶を返すも、リーリアさまはじっと見つめるだけで何も言わない。だけど、すぐにクスリと笑い、静寂を破った。

「大地に芽吹きし良き日を祝います、レオン」

 リーリアさまの言葉に会場はざわつく。僕も、かなり動揺していた。
 通常、貴族が平民にお祝いの言葉を告げることはない。あったとしても、平民に礼を告げる際のついでのようなもの。
 レオンはまだ挨拶をしただけで、リーリアさまにお祝いの言葉はかけていない。わかってやったのだとしたら、かなり肝がすわっている。

「ありがとうございます。私も、リーリアさまの大地に芽吹きし良き日にお祝い申し上げます」
「ありがとう」

 内心はどう思っているのか知らないけど、リーリアさまは終始笑顔のままで、空気は和やかになっている。
 ひとまず、あのときのような一触即発のやうな雰囲気にはならなさそうで安心した。

「リーリアお嬢さま。当主さまはご一緒ではないのですか?」

 母さんの質問にリーリアさまは少し寂しそうにして答える。

「お父さまはやるべきことがあるそうなので、少し遅れると言っていました」
「わざわざ家庭教師の勉強を中止させてまで私を参加させようとしたのよ。お父さまだけが来ないなんて私が許さないわ」

 ディアナさまの言葉に私も心のなかで頷きまくる。
 当主さまがパーティーに来ないなんて絶対にない。もしあのことにかまけて来ないようなら、僕が引きずり出してやる。

「それは勘弁願いたいものだ」

 噂をすればというタイミングで声が聞こえる。
 僕は、声がしたほうを向き、声の主のほうにつかつかと歩いていく。

「遅いです。もう少しで引きずり出しに行こうかと思いましたよ」
「君が言うと笑えないな」

 僕が本気でそういうことを言っているのがわかっている当主さまは苦笑いする。

「だが、その対象は私だけにしておいてくれ。あまり無理をさせたくない」
「なんの非もない人にそんなことしませんよ」

 悪いのはあんただけだということを伝えると、当主さまも心当たりがあるのか「そうか」と呟いた。
 貴族流の会話に慣れていないレオンや父さんはもちろんのこと、僕たちの会話の意図が理解できていないリーリアさまやディアナさまはきょとんとしている。
 唯一事情を知っている母さんだけは口元を抑えて笑っている。

「それで、当主さまだけですか?」
「準備に手間取っていてな。少し一人にしてほしいと言われたから、私だけ様子を見に来たんだ」
「そうでしたか」

 まぁ、いろいろと心の準備とかあるだろうしね。無理もないか。

「だが、そろそろ迎えに行くとしよう」
「ちゃんとエスコートしてくださいよ」

 僕のエールに、当主さまは目だけで任せろという返事をした。
 よし、このパーティーを盛り上げる特大のサプライズまでもう少しだ。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬
ファンタジー
旧題 努力=結果  異世界の神の勝手によって異世界に転移することになった倉野。  実際に異世界で確認した常識と自分に与えられた能力が全く違うことに少しずつ気付く。  異世界の住人はレベルアップによってステータスが上がっていくようだったが、倉野にだけレベルが存在せず、行動を繰り返すことによってスキルを習得するシステムが採用されていた。  そのスキル習得システムと異世界の常識の差が倉野を最強の人間へと押し上げていく。  だが、倉野はその能力を活かして英雄になろうだとか、悪用しようだとかそういった上昇志向を見せるわけでもなく、第二の人生と割り切ってファンタジーな世界を旅することにした。  最強を隠して異世界を巡る倉野。各地での出会いと別れ、冒険と楽しみ。元居た世界にはない刺激が倉野の第二の人生を彩っていく。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。 しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。 チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。 研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。 ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。 新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。 しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。 もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。 実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。 結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。 すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。 主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

処理中です...