転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん

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第二章 ユニークスキル

42. レオン捜索 2

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 僕は追いついてきた当主さまたちとともに建物の中に入る。
 ほとんどは万が一に備えて建物の外に待機しており、入っているのは僕と当主さま、ロナードさん、ロニーさん、タークスさんの五人である。
 相手にバレないようにできうる限り数を減らしたが、これ以上は危険ということで、五人未満にはできなかった。
 その建物には明かりがなく、外からの光しか光源がなかった。お陰で、入り口から少し離れるだけで暗闇に飲まれる。

 子どもの精神に引っ張られているのか、年甲斐もなく体を震わせながら歩みを進めていると、とたんに右手を握られる。

「ひっ……」

 叫ぼうとしたところで体を抱き寄せられ、口を塞がれた。僕が上を見上げると、そこには当主さまの顔が浮かんでいる。
 そして、人差し指を立てて静かにするように示してきて、囁くように言う。

「暗いからはぐれないようにする。いいな?」

 僕がこくこくと頷くと、ようやく口から手がどかされた。でも、きっちりと右手は握られたままだ。
 心臓に悪いことしてくるなぁ……さっきのお返しか?
 でも、手を繋がれたお陰か、少し震えが収まってきた。単純すぎるよ、子どもは。

「明かりってつけられませんか?」
「奥に人がいないとも限らないからな」
「そうですね……」

 明かりをつけたら、向こうにこっちの居場所だけバレちゃうからなぁ……懐中電灯みたいに遠くまで照らすか、明かりを遠くに飛ばせたらいいんだけど……あっ。

「ロナードさんの閃光弾を威力を抑えて使ったら明かりになりませんかね?」

 閃光だから怪しいけど、スキルの説明には魔力を消費して弾丸のように飛ばすとあったから、銃弾となってずっと光らないかなという密かな期待がある。
 それに、複合スキルがどんなものか単純に気になるし。

「私としては構いませんが……」

 ロナードさんは当主さまのほうを伺っている。まぁ、雇い主の許可無しには動けないわな。

「私としても気になる。魔力を最小限にすれば、何かに当たっても問題ないだろう」
「……かしこまりました」

 ロナードさんは渋々と言った様子で手をかざす。

「『閃光弾』」

 ロナードさんがスキル名を唱えると、ビー玉くらいの大きさの小さな光の球が前方に飛んでいく。数メートル離れたところで、ビカッと強く光った。
 突然のことでびっくりしたものの、元々の大きさが小さかったからか、眩しいほどではない。むしろ、ちょうどいい明るさで周囲を照らしている。

「……光が消えませんね」
「普段は消えるのか?」
「はい。『閃光』は二、三秒ほどで消えてしまいます」

 ほうほう。確かに閃光は一瞬だけ強く光る光のことだから、光る時間は短いだろう。でも、魔弾と複合したことで、その時間制限がなくなったのかもしれない。
 複合スキルとなったことで、『魔弾』の効果が切れるときが、『閃光』のスキルの時間制限になったのではないだろうか。
 スキル説明には書いてなかったけど、書いていることがすべてではないということなのだろう。

 いや、そもそもスキルとかそういうのもよくわからないんだけど。
 ここが魔法とかもある異世界だからで片づけていい問題ではないような気がしてならない。
 スキルはどうして存在するのか。どうして使うことができるのか。どうして念じるだけで効果を発揮することができるのか。
 考え出すとこれだけの疑問はすぐに浮かんできた。
 まぁ、たとえ謎を解き明かしたところでどうこうなる問題でもないし、今はレオンのことだ。

「じゃあ、それを明かりにして進んでみる?」
「そうだな。『閃光弾』を放って進んでみるとしよう。ずっと照らしていてはこちらに気づかれやすい」

 一瞬だろうが永続だろうがバレる確率は変わらないような気がするけど、それは心のうちにしまっておこう。
 ロナードさんは当主さまの意志に従い『閃光弾』を前方に放ちながら進む。

 『閃光弾』は、十秒くらいは光っていたけど、突然ふっと光が消える。でも、構造を把握するには充分な時間で、歩みは速くないものの、安全な道中だった。

 その途中でいくつかの部屋を見つけたけど、中はもぬけの殻だったらしく、何か手がかりのようなものは見つからない。
 ここはハズレかなと僕が諦めかけていたときだった。

「当主さま、また部屋があるようです」
「明かりを灯して確かめろ」

 さすがに部屋の中だと明かりに気づかれないように警戒する必要はないので、普通に赤魔法の火を灯すなどして確かめている。
 僕はというと、危険だからという理由で当主さまとともに待機中。部屋の中が危険なら側で待っていても意味ないと思うんですけどね。

「危険はないように思えます。お入りになりますか?」
「うん」

 当主さまではなく僕が返事をしてずかずかと部屋の中に入っていく。僕にも関わらせろってんだ。
 当主さまも僕が入ってしまったからか自分も確かめようかと思ったのか僕の後ろについてくるように中に入ってきた。
 今までの部屋と比べたら少し狭い気がするな。三分の二くらいの大きさしかないんじゃない?

(たまたまかなぁ……?)

 僕が壁のあちこちを撫でたりこんこんと叩いたりしてみるも、特に違和感はない。ゲームとかなら隠し扉とか隠し部屋とかあったりするけど、そんな都合よくはいかないか。

「この奥、何かあるな」
「えっ、ほんとに!?」

 当主さまが壁に手を当てながら呟いたその言葉に、僕は素で驚いた。
 他の人たちは僕の声に驚いているみたいだけど、これは仕方ない。
 いや、ゲームのようにはいかないよなと現実を見ていたところに隠し部屋あるよみたいな発言されたら誰だって驚くでしょ?

 しかも、さっき自分が確かめたはずのところに。

「あくまでも私の勘だが、私の勘はよく当たるのでな」

 そうだ。この人には『直感』というスキルがあるんだった。
 今は『英断』と複合して『大英断』という複合スキルになっているけど、複合スキルは元のスキルも使用可能なのだ。

「素晴らしい技をお持ちですね」

 自分が見つけられなかったのが思いのほか悔しくて、僕はふて腐れてしまう。

「そういうところは子どもらしいな」
「僕は六歳児ですからね!」

 さらにふんと顔をそむける。なんとでも言え。僕は前世の記憶があるとはいえ、この世界ではまだまだ子どもなのだ。

「タークス。『看破』で入り口を作ってくれ」
「はい」

 当主さまに呼ばれたタークスさんが壁に触れると、たちまち壁が崩れ落ち、通路が現れた。
 なにこれ!?さっき看破って言ってた気がするけど、これもスキルですか!?

「行くぞ、ルイ」
「は、はい!」

 当主さまの声で現実に戻ってきた僕は、すたこらと当主さまの後をついていった。
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