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第二章 ユニークスキル
33. 噂話
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その翌日、本格的な冬を迎える前にと、僕たちは近所の子どもたちと遊んでいた。
今はお屋敷も冬支度で忙しいのか、あまりリーリアさまの話し相手としてお呼びがかかることがなくなり、時間ができたのだ。
「そういや、あの話聞いたか?」
遊びの休憩中のときに、サンくんが話を切り出した。
「あの話って?」
レオンが聞き返すと、サンくんは「決まってるだろ」と説明する。
「最近、この街にフードを被った変な集団がいるって噂のことだよ」
「あっ、わたしもお母さんから聞いたことあるよ!」
「僕も」
リタちゃんとトールくんがサンくんの話にうんうんと頷く。
反対に、リリーちゃんとレオンは心当たりがなさそうだ。僕もさっぱりわからない。
「なあにそれ?」
僕が代表して尋ねると、トールくんが説明してくれる。
「最近、黒いフードを被った人たちが集まっているのを見たって人たちが何人もいるんだ。それも、一人や二人じゃなくて、五人とか、八人くらいいたって言う人もいるよ」
多っ!?僕が外に出るようになってから三年間、そんな怪しい集団見たことないよ!?
「その人たち、危ないの?」
「何もしないって聞いたよ。お母さんからは、街の人と目が合うとどこかに逃げていっちゃうんだって」
今度はリタちゃんが代わりに答えてくれた。それを聞いて、ますます不信感が増す。
街の人と目が合うだけで逃げるなんて、やましいことがあるとしか思えない。そんな人たちがこの街をうろついているのか……
「だから、母ちゃんに太陽が地面にもぐる前に帰ってこいって言われてんだよ。そいつら、夜に見ることが多いみたいだからな」
いや、それは不審者がいなかったとしても子どもなら当たり前なのでは?この街には街頭もないし、お巡りさんとかもいないから余計にだよ。
「まぁ、冬ごもりすることになれば、そもそも外に出ねぇだろうけどな」
冬ごもりというのは、そのままの意味で、冬に家にこもることである。冬は雪がたくさん降るし、吹雪が吹くこともあるから、冬に外に出るのは危ないのだ。
冬支度が早かった理由がこれである。本格的な冬になったら外に出られないし、そもそも何も売ってない。
その黒フード集団が何者かはわからないけど、さすがにそんな悪天候のなかで妙なことはしないだろう。……しないよね?
その後、黒フード集団の件もあり少しだけフェラグで遊び、日が沈む前に帰宅することになった。
◇◇◇
帰宅した僕たちは、食事のときに両親に先ほどの話を聞かせる。
「父さんと母さんは知らない?」
母さんの機嫌は、まだいいとは言えない。僕たちにはいつも通りだけど、父さんとあまり顔を合わせようとしない。
二人が夫婦喧嘩することはあったけど、ここまで長期戦になったのは初めてではないだろうか。
だけど、今だけは二人はお互いに顔を見合わせる。でも、何も言うことはなく、静かにお互いに目をそらした。
知らないのかと思ったとき、父さんが口を開いた。
「それなら、常連客の噂話で聞いたことあるけど、あまり気にしてなかったな」
「私は知らなかったわ。最近、領主さまの屋敷に行ってて近所の人とお話ししてなかったから」
母さんは、元々ディアナお嬢さまの針子だったのに加えて、今はリーリアさまの針子もやって、僕がリーリアさまの話し相手として屋敷に訪問するときに保護者代わりについてきたりもしていた。
下手をすれば、屋敷で過ごした時間のほうが長いなんてこともあるかもしれないくらい、屋敷を行き来していたほどだ。
近所の人との付き合いが希薄になっていてもおかしくない。
「それって、ただうろうろしてるってだけだろ?格好は妙かもしれないが、旅人って可能性もあるしな」
「でも、噂話になるってことは、ずっと目撃されてるってことじゃないかしら。何日も何もしないまま街にいるのって不気味じゃない?」
父さんはそうか?とでも言いたげな顔をしているけど、僕は母さんの言葉に全面的に同意する。何もしていないからこそ、目的がはっきりしていなくて怖いのだ。
父さんの言うように、ただの旅人かもしれないし、そうだったらありがたい。でも、そういう希望的観測は外れるというのは世の中の法則というものだ。
今の僕にできたのは、家族が巻き込まれることないことと、早く二人が仲直りするように祈るだけだった。
今はお屋敷も冬支度で忙しいのか、あまりリーリアさまの話し相手としてお呼びがかかることがなくなり、時間ができたのだ。
「そういや、あの話聞いたか?」
遊びの休憩中のときに、サンくんが話を切り出した。
「あの話って?」
レオンが聞き返すと、サンくんは「決まってるだろ」と説明する。
「最近、この街にフードを被った変な集団がいるって噂のことだよ」
「あっ、わたしもお母さんから聞いたことあるよ!」
「僕も」
リタちゃんとトールくんがサンくんの話にうんうんと頷く。
反対に、リリーちゃんとレオンは心当たりがなさそうだ。僕もさっぱりわからない。
「なあにそれ?」
僕が代表して尋ねると、トールくんが説明してくれる。
「最近、黒いフードを被った人たちが集まっているのを見たって人たちが何人もいるんだ。それも、一人や二人じゃなくて、五人とか、八人くらいいたって言う人もいるよ」
多っ!?僕が外に出るようになってから三年間、そんな怪しい集団見たことないよ!?
「その人たち、危ないの?」
「何もしないって聞いたよ。お母さんからは、街の人と目が合うとどこかに逃げていっちゃうんだって」
今度はリタちゃんが代わりに答えてくれた。それを聞いて、ますます不信感が増す。
街の人と目が合うだけで逃げるなんて、やましいことがあるとしか思えない。そんな人たちがこの街をうろついているのか……
「だから、母ちゃんに太陽が地面にもぐる前に帰ってこいって言われてんだよ。そいつら、夜に見ることが多いみたいだからな」
いや、それは不審者がいなかったとしても子どもなら当たり前なのでは?この街には街頭もないし、お巡りさんとかもいないから余計にだよ。
「まぁ、冬ごもりすることになれば、そもそも外に出ねぇだろうけどな」
冬ごもりというのは、そのままの意味で、冬に家にこもることである。冬は雪がたくさん降るし、吹雪が吹くこともあるから、冬に外に出るのは危ないのだ。
冬支度が早かった理由がこれである。本格的な冬になったら外に出られないし、そもそも何も売ってない。
その黒フード集団が何者かはわからないけど、さすがにそんな悪天候のなかで妙なことはしないだろう。……しないよね?
その後、黒フード集団の件もあり少しだけフェラグで遊び、日が沈む前に帰宅することになった。
◇◇◇
帰宅した僕たちは、食事のときに両親に先ほどの話を聞かせる。
「父さんと母さんは知らない?」
母さんの機嫌は、まだいいとは言えない。僕たちにはいつも通りだけど、父さんとあまり顔を合わせようとしない。
二人が夫婦喧嘩することはあったけど、ここまで長期戦になったのは初めてではないだろうか。
だけど、今だけは二人はお互いに顔を見合わせる。でも、何も言うことはなく、静かにお互いに目をそらした。
知らないのかと思ったとき、父さんが口を開いた。
「それなら、常連客の噂話で聞いたことあるけど、あまり気にしてなかったな」
「私は知らなかったわ。最近、領主さまの屋敷に行ってて近所の人とお話ししてなかったから」
母さんは、元々ディアナお嬢さまの針子だったのに加えて、今はリーリアさまの針子もやって、僕がリーリアさまの話し相手として屋敷に訪問するときに保護者代わりについてきたりもしていた。
下手をすれば、屋敷で過ごした時間のほうが長いなんてこともあるかもしれないくらい、屋敷を行き来していたほどだ。
近所の人との付き合いが希薄になっていてもおかしくない。
「それって、ただうろうろしてるってだけだろ?格好は妙かもしれないが、旅人って可能性もあるしな」
「でも、噂話になるってことは、ずっと目撃されてるってことじゃないかしら。何日も何もしないまま街にいるのって不気味じゃない?」
父さんはそうか?とでも言いたげな顔をしているけど、僕は母さんの言葉に全面的に同意する。何もしていないからこそ、目的がはっきりしていなくて怖いのだ。
父さんの言うように、ただの旅人かもしれないし、そうだったらありがたい。でも、そういう希望的観測は外れるというのは世の中の法則というものだ。
今の僕にできたのは、家族が巻き込まれることないことと、早く二人が仲直りするように祈るだけだった。
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