転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん

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第二章 ユニークスキル

32. 帰宅して

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 買い出しを終えて、帰宅しようというとき。

「重い……」

 僕は、十本のキャルを持っていた。でも、このキャルは、僕が見慣れているニンジンよりも一回り大きいから、十本でもかなりの重さだ。ニキロはあるんじゃないだろうか?まだあまりお手伝いをしていなくて、重いものを持ったことがない僕には充分な重さである。

「ルイ、大丈夫?僕がもう少し持とうか?」

 いや、もうそれ以上は持てないというか、持たないほうがいいよ!

 レオンは、ラディを四本、ポテトを二十個詰めた袋を持っている。ラディもポテトも、地球で見るような大根やじゃがいもよりも大きめだ。総重量は、確実に五キロを越えている。
 その細い体のどこにそんな力があるんでしょうか?

「ううん、大丈夫」

 心のなかの言葉をぐっと奥に仕舞いこみ、僕はレオンに笑いかけた。

「それじゃあ、最後に買って帰ろうか……」
「うん」

 レオンが指差したレーブを見て、僕は無感情で頷いた。

◇◇◇

 
 家に戻ってすぐに僕たちを待っていたのは、母さんである。
 そして、なぜか脇で父さんが正座をしていた。母さんは、にっこりと微笑んで僕たちを出迎える。

 その様子を見て、重い荷物による疲れは一瞬で吹っ飛んだ。

「お帰り、二人とも」
「「た、ただいま……」」

 僕とレオンの視線は、挨拶してくれた母さんよりも、正座している父さんのほうに向いていた。あの、何があったのでしょうか?

「父さん、どうしたの?」

 僕がおそるおそる尋ねると、母さんがしゃがみこんで、僕の肩にぽんと手を置いた。

「気にしないで」

 はい、気にしません。もう聞きません。

 僕が何度も何度も頷くと、母さんはゆっくりと立ち上がった。

「それより、買ってきたものを入れておいてくれる?」
「僕がやるよ!」
「僕も!」

 レオンが率先して冷蔵庫に向かったので、僕も急いでレオンの後を追う。野菜を仕舞っている途中でちらりと父さんの様子を伺うと、父さんが母さんに引きずられるようにしてどこかに消えた。

 父さん、お達者で。骨は拾っておくよ。

◇◇◇

 冬支度のための買い出しを終えたところで、僕は出かける前にやっていたスキルの使い道を再び考えていた。

 僕は、そのうちに二つに注目した。

 『愛嬌』:相手の気分を高揚させ、魅了する。本人の技量や魅力に依存する。
 『話術』:言葉で相手を操る。本人の技量や魅力に依存する。

「う~ん……『愛嬌』と『話術』って合わせられるのかなぁ……?」

 領主さまに頼まれたときは思いつかなかったけど、コントラクトカードの説明を見る限りはできなくはなさそうなのだ。 

 一度やってみたいけど……更新の道具がないとどんなスキルになったか、そもそも成功したかどうかもわからない。

 魔力の消費がスキルの成功時だけならいいけど。失敗したときにも消費する可能性はある。そうなると、成否はわからない。
 母さんを通じて領主さまに更新の道具を使わせてもらえるように頼もうか。僕の前世の知識と交換なら意外と貸してくれるかもしれない。

 料理のレシピとか?それか、前世の家電を元に魔法具の設計を提案するのもアリかも。

 領主さまにも喜ばれそうな料理のレシピで、この国では見たことがないものは……

「香草焼き……とかかな」

 香草は、薬草としての効能を持っているものが多い。
 この国でも医者や薬という概念はあるし、薬草もいくらかは存在しているだろう。種類にもよるだろうけど、そこらに生えているようなものなら安価で買えるだろうし、もしかしたら薬屋で交換してもらえる可能性もある。

 母さんにその辺りも含めて頼んでみよう。父さんのことが片づいたら……だけど。

「ルイ~!!ちょっと来て~!」
「は~い!」

 下からレオンが大声で呼んでいるのが聞こえて、僕は部屋から出て階段を駆け降りる。でも、下から聞こえた声は、どの部屋から聞こえたのかわからない。

「レオン、どこ~?」
「こっちこっち!食堂の調理場!」

 僕は廊下に通じている食堂の調理場の裏口のドアを開ける。
 そして、調理場にいるレオンの元に駆け寄った。

「レオン、どうしたの?」
「今日のお昼は、僕が料理当番なんだけど、火がつかないんだ。だから、ルイの赤魔法で火をつけてくれないかなって」

 我が家では、母さん、父さん、レオンがローテーションを組んでご飯を作っている。今日はレオンの番というわけだ。
 僕も、それなりの年齢になったらこのローテーションに加わることになるだろう。

「いいけど……なんで火がつかないの?」
「多分、魔鉱石の効力が切れたんだと思う。新しく交換するまでは、魔法で火をつけるしかないんだ」
「そっか……」

 魔鉱石って、寿命があるんだな。電池みたいなものなのだろうか。用途が限られている分、電池よりも不便な気がするけど。

「じゃあ、母さんに新しく買っていいか聞かないといけないよね」
「いや、魔鉱石はもう一度魔力を通せばまた使えるよ?」
「えっ、そうなの!?」

 訂正、再利用可能なんて電池よりも便利だ。しかも、再利用方法が魔力だからお金もかからないし。

「さすがに石が壊れたら無理だけど、それまでなら」

 さすがに無制限で使えるほど甘くはないか。それでも、かなりの性能だけど。

「じゃあ、僕が魔力をこめてみようか?」

 僕の魔力は貴族のリーリアさま並みにある。魔鉱石に魔力を充電させることくらいできるだろう。

「でも、かなり魔力を使うし、ルイは『魔力強化』もあるでしょう?魔力をこめすぎても魔鉱石は壊れるから」

 魔鉱石は便利だという言葉を訂正したくなってきた。
 僕の『魔力強化』はパッシブスキルだ。だから、僕が魔力の調整をすれば問題ないけど、僕が魔力を使ったのは赤魔法とスキルのときだけで、スキルは自動的に必要な魔力が消費されるし、赤魔法は一番弱い『ワール』しか使っていないのに加えて、その魔法を持続させたことがないから、魔力を使い続けるといった経験がない。

「それなら、父さんに頼めば……」
「今の父さんがそんなことできると思うなら、呼んできてくれない?」

 ……できないでしょうね、きっと。まだ母さんに叱られていてもおかしくないし。

「わかった。火をつけるよ」
「うん、よろしく」

 僕は、コンロの下にある薪に手をかざす。

「『ワール レドム』」

 僕がコードを唱えると、薪に小さな火が灯り、しばらくして燃え上がった。

「わぁ!ありがとう、ルイ」
「どういたしまして。その代わり、おいしいご飯作ってよ?」
「任せておいて!」

 自信満々に言うレオンに密かな期待を抱きつつ、僕は調理場を出ていく。
 ご飯を食べる頃には、母さんがいつもの状態に戻っていると信じながら。
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