転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん

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第二章 ユニークスキル

31. 冬支度 3

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 一度家に戻った僕たちは、お肉を届けるために父さんのいる食堂へと顔を出した。
 糸は母さんの部屋に置いてある。直接渡さないのは、母さんがディアナお嬢さまにドレスを届けに行っており不在のためだ。冬用のドレスは、雪が積もる前に届けておくらしい。僕たちが買い出しを終える頃には帰ってくると思うけど。

「父さーん。もらってきたよー」
「おー。ここに入れておいてくれ」

 父さんが箱のようなものの扉を開く。レオンがそこにお肉を入れるのを見て、僕は父さんに尋ねた。

「父さん。これってなに?」
「これは、食材を冷やしておく魔法具だ。青の魔鉱石を使っているんだ」

 そう言いながら、父さんが上のほうを示す。そちらの方を見ると、水差しのものよりも一回り大きな青い石がついていた。
 これが箱の中身を冷やしてくれているというわけか。まんま冷蔵庫だな。

「氷も作れるの?」
「いや、さすがにそれはできない。あくまでも冷やしておくだけだ」

 なるほど、冷凍庫の機能はついていないのか。この辺りの気候は、冬は寒く夏は少し涼しげと、東北や北海道の気候に近い。
 だけど、夏が暑くないわけではない。氷を作れるのならほしいけど、氷を生み出すのはかなり難易度の高い青魔法らしく、レオンもできないらしい。
 リーリアさまならできるかもしれないけど、さすがに領主のお嬢さまを冷凍庫扱いはできない。でも、この冷蔵庫の技術を応用して、冷凍庫を作り出すことはできるのではないだろうか。

「氷を作るやつはないの?」
「あるにはあるが、相当質の高い魔鉱石がいるからな。値段も高くなるし、貴族の屋敷くらいにしかないぞ」

 くぅ……経済力の壁がここにも……。それなら、領主さまのお屋敷にはあるってことかな。

「ルイ、氷がほしいのか?」
「うん。ジュースに入れたら冷たくておいしそうだもん」

 この地域は冬が寒いから、水を外に置いておけば凍りそうではあるけど、それは冬にしかできない方法だ。どうせなら、一年中安定して手に入れたい。
 それに、冷たい飲み物は夏にこそ需要があるものだから。
 もし凍らせることができるようになれば、アイスクリームとかも作ってみたいんだけどな。

「それなら、俺のほうでもなんとかできないか試してみるから、ルイも考えておいてくれ」
「うん!ありがとう、父さん」

 まずは、領主さまにおねだりしてみることから始めようと思うよ。

◇◇◇

 ちょっと家に寄り道したけど、また冬支度のための買い出しを再開。今度は、保存のきく食材を買いだめしておくらしい。
 実りの多い今の時期が一番安いから、この時期に買っておくのが普通だと道中でレオンに教えてもらった。

「お野菜とか買うの?」
「それもそうだけど……あれもかな」

 レオンが指差した場所には、ボトルのようなものが並べられている。ビンのような形だけど、素材は木製のようだ。
 一体、これは?

「これ、なんなの?」
「…………レーブ」

 ボソッと呟いたレオンの言葉に、僕の感情は無になる。
 レーブというのは、地球で言うお酒のことだ。お酒のなかでも、ビールのことをレーブということが多い。
 
 この国では、お酒の購入に年齢制限はないので、誰でも買うことができる。
 そして、我が家でお酒を求めるのは一人しかいない。

「……父さんが買ってきてって言ったの?」
「うん……」

 まったく。いくら母さんに怒られるからって、子どものおつかい、しかも冬支度で頼むのはどうなんだ。
 母さんも、父さんにはワーワー文句を言うけど、僕たちには甘い傾向にあるので、買ってきたことを叱ったりはしない。家にさえ持ち込められればなんとかなると本気で思ってるのがすごいよ。絶対、そんな簡単にはいかないに決まってるのに。

「これは後でいいんじゃない?」
「そうだね。先に奥のほうに行こうか」

 母さんに見つかったら、父さんに頼まれたで押し通すことにしよう。ついでに、お酒を使う料理を提案すれば母さんの機嫌は取れるかも。

「レオン。どういうの買うの?」
「う~んと……まずはポテトかな?後は、ラディとキャルを買えばいいと思うよ」

 ポテトはそのままじゃがいも。ラディは大根でキャルはニンジンである。冬の備蓄なので長く保存できる根菜などを中心に購入するらしい。
 凍らせることができれば葉物とかも買えるんだけどなぁ……。これは、早急に冷凍庫作りに取りかからなければ。

「とりあえず、そこにあるポテトから……」
「レオン。家から遠いほうから買ったほうがいいよ。買うとどんどん重くなるから」

 元鍵っ子の僕は、買い出しをやることもあった。一応、必要な食材は両親が週末にまとめて買い物をしていたけど、予想よりも早くなくなってしまった食材などは、僕が学校帰りに購入していたのである。
 そんな状態での買い物は、元々重い教材に加えて、かごに詰めた商品でどんどんと重くなる。買い物中はカートが使えたからいいけど、帰りなんて地獄だった。免許証を持っていなかったから、歩いて帰るしかなかったのだ。

 そんな経験をしている僕は、帰り道の大荷物というものがどれほどきついかわかる。手前から買っていった結果、全部買い終わった頃には、家までの距離が長くなるというのは避けた方がいい。

「そうだね。奥から行こうか」

 僕の言葉に納得してくれたようで、レオンはポテトを買わずに素通りする。
 そして、奥の区画にあったキャルから手に取る。

「キャルを十本」

 十本もいるの!?
 さすがにそんな買いだめをした経験はないため、僕が驚くものの、店番のおじさんは驚く様子もなく値段を提示する。

「百リエだ」

 レオンは小銭を入れた袋から百リエを取り出して店番に渡し、キャルを十本持っていく。あれ、この量ってもしかして普通ですか?

「ルイもやってみる?」
「どれくらいいるかわかんないし……僕はお野菜持つよ」

 これからは、金銭感覚もこちらに合わせないとな……
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