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第二章 ユニークスキル
30. 冬支度 2
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リタちゃんの家から、さらにレオンは歩みを進めていく。どんどんと家から離れていっている。
「レオン。次はどこ行くの?」
「トールのとこの肉屋にお肉もらいにいくんだよ」
「お肉?」
トールくんの家が肉屋だったことにもまあまあ驚いたけど、それ以前に今からお肉をもらおうとしていることに驚いた。
お肉なんて、冷凍保存でもしておかない限り腐ってしまうのではないだろうか。
「冬に食べるの?」
「ううん。父さんの食堂で使う分だよ。冬支度のついでにもらってきてくれって父さんに頼まれたから」
「そうなんだ」
もらってくるということは、お金を払ってるわけではないのかな。それとも、さっきのリタちゃんのときみたいに物々交換だろうか。
「ほら、あそこがトールの肉屋」
レオンが指差す方を見ると、ちょうどトールくんが店の外で何やら作業をしている。この街では、平民の子どもが親の手伝いをするのは珍しい光景ではないけど、何してるんだろう?
「トール~!」
「トールお兄ちゃーん」
僕たちが呼びかけると、トールくんもこちらに気づいたようで、優しく微笑んで手を振ってくれる。
レオンもなかなかのイケメンだけど、こうしてみるとトールくんもなかなかの顔立ちなんだよな。レオンがカッコいい路線なら、トールくんは可愛い路線だ。
「ロードさんのおつかい?」
レオンは常連なのか、トールくんも僕たちが来た理由がわかっているようだ。
「うん。一塊くれる?」
「わかった。父さんたちに伝えてくるよ」
どうやら、トールくんのところは親がいるらしい。建物の中に入ってしばらくすると、男の人と一緒にトールくんが出てきた。
もしかして、あれがトールくんのお父さんなの?まったくと言っていいくらい似てないんだけど。
「よう、レオン。一ヶ月ぶりか?」
「久しぶり、ゲイルおじさん」
トールくんパパの名前はゲイルって言うのか。今後も会うだろうし、覚えておかないと。
「うん?そっちのチビは見たことないな」
「ああ、こっちは弟のーー」
「ルイです」
僕がレオンの言葉を引き継ぐように自己紹介すると、ゲイルさんは荒々しく頭を撫でてくる。
「俺はゲイルって言うんだ。トールからレオンの弟の話は聞いてたが、お前のことだったんだな」
「うん。一緒にフェラグやったよ」
まぁ、僕は途中で帰っちゃったんだけどね。リタちゃんに伝言を任せてしまったけど、トールくんたちを心配させちゃったかもな。
「そういえば、ルイくんも足が速かったってリタが言ってたけど、ルイくんも『疾走』を持ってたりするの?」
「僕は知らないんだよね。見たことないし」
そういえば、領主さまだけに見せて、レオンたちには見せてなかったっけ。あのおじいさん先生のところで調べたときも言ってなかった気がするし。普通なら、真っ先に見せる相手って家族だよね。これは失敬。
「気になるなら見る?」
「うん、見たい!」
僕は平民用のコントラクトカードに魔力を通して、レオンに渡す。貴族用はいろいろとまずいだろうからね。
「う~ん……『疾走』は持ってないみたいだね」
「えっ!それじゃあ、スキルなしでリタから逃げてたってこと!?」
「う、うん。まぁ……」
『複製』がどうのなんてややこしい話はできず、僕は曖昧に言葉を濁す。
子どもだから理解できないかな、なんて軽い思いだったんだけど……
「もしかして、この『複製』ってやつじゃない?僕、母さんから聞いたことあるよ?」
「もしかして、クラウディオのやつ?」
「そうそう!」
何それ。聞いたことないんですけど。
「クラウディオってなに?」
「あれ、母さんから聞いてない?」
僕がこくりと頷くと、レオンとトールくんが説明してくれる。
クラウディオというのは、昔の偉人の名前で、災厄の化身とも呼ばれる魔獣を退治したり、凶悪な魔族を根絶させたりと、いろいろな伝説を残しているらしい。そして、僕と同じ『複製』のスキルを持っていたのだとか。
「平民でも貴族でも語り継がれるから、みんなが知ってるんだよ」
「へぇ~」
だから『複製』が伝説扱いされてたのに知名度が高かったのか。そのクラウディオという人がどういう人かはわからないけど、伝説になるくらいならスキルを使いこなしてそうだなぁ……僕はいまだにわからないことだらけだし。
「ほら、肉持ってきたぞ。お前らは話に夢中になると止まらないからな」
「ご、ごめん……」
どうやら、クラウディオの話題で盛り上がっている間にゲイルさんはお肉を持ってきてくれていたらしい。
息子のトールくんはもちろんのこと、昔から交流していると、レオンの性格もわかりきってるんだろうな。
「じゃあ、ルイ。一旦家に戻ってから他の食べ物買いに行こうか」
「うん」
僕は、見送ってくれるトールくんに手を振りながら、帰路についた。
「レオン。次はどこ行くの?」
「トールのとこの肉屋にお肉もらいにいくんだよ」
「お肉?」
トールくんの家が肉屋だったことにもまあまあ驚いたけど、それ以前に今からお肉をもらおうとしていることに驚いた。
お肉なんて、冷凍保存でもしておかない限り腐ってしまうのではないだろうか。
「冬に食べるの?」
「ううん。父さんの食堂で使う分だよ。冬支度のついでにもらってきてくれって父さんに頼まれたから」
「そうなんだ」
もらってくるということは、お金を払ってるわけではないのかな。それとも、さっきのリタちゃんのときみたいに物々交換だろうか。
「ほら、あそこがトールの肉屋」
レオンが指差す方を見ると、ちょうどトールくんが店の外で何やら作業をしている。この街では、平民の子どもが親の手伝いをするのは珍しい光景ではないけど、何してるんだろう?
「トール~!」
「トールお兄ちゃーん」
僕たちが呼びかけると、トールくんもこちらに気づいたようで、優しく微笑んで手を振ってくれる。
レオンもなかなかのイケメンだけど、こうしてみるとトールくんもなかなかの顔立ちなんだよな。レオンがカッコいい路線なら、トールくんは可愛い路線だ。
「ロードさんのおつかい?」
レオンは常連なのか、トールくんも僕たちが来た理由がわかっているようだ。
「うん。一塊くれる?」
「わかった。父さんたちに伝えてくるよ」
どうやら、トールくんのところは親がいるらしい。建物の中に入ってしばらくすると、男の人と一緒にトールくんが出てきた。
もしかして、あれがトールくんのお父さんなの?まったくと言っていいくらい似てないんだけど。
「よう、レオン。一ヶ月ぶりか?」
「久しぶり、ゲイルおじさん」
トールくんパパの名前はゲイルって言うのか。今後も会うだろうし、覚えておかないと。
「うん?そっちのチビは見たことないな」
「ああ、こっちは弟のーー」
「ルイです」
僕がレオンの言葉を引き継ぐように自己紹介すると、ゲイルさんは荒々しく頭を撫でてくる。
「俺はゲイルって言うんだ。トールからレオンの弟の話は聞いてたが、お前のことだったんだな」
「うん。一緒にフェラグやったよ」
まぁ、僕は途中で帰っちゃったんだけどね。リタちゃんに伝言を任せてしまったけど、トールくんたちを心配させちゃったかもな。
「そういえば、ルイくんも足が速かったってリタが言ってたけど、ルイくんも『疾走』を持ってたりするの?」
「僕は知らないんだよね。見たことないし」
そういえば、領主さまだけに見せて、レオンたちには見せてなかったっけ。あのおじいさん先生のところで調べたときも言ってなかった気がするし。普通なら、真っ先に見せる相手って家族だよね。これは失敬。
「気になるなら見る?」
「うん、見たい!」
僕は平民用のコントラクトカードに魔力を通して、レオンに渡す。貴族用はいろいろとまずいだろうからね。
「う~ん……『疾走』は持ってないみたいだね」
「えっ!それじゃあ、スキルなしでリタから逃げてたってこと!?」
「う、うん。まぁ……」
『複製』がどうのなんてややこしい話はできず、僕は曖昧に言葉を濁す。
子どもだから理解できないかな、なんて軽い思いだったんだけど……
「もしかして、この『複製』ってやつじゃない?僕、母さんから聞いたことあるよ?」
「もしかして、クラウディオのやつ?」
「そうそう!」
何それ。聞いたことないんですけど。
「クラウディオってなに?」
「あれ、母さんから聞いてない?」
僕がこくりと頷くと、レオンとトールくんが説明してくれる。
クラウディオというのは、昔の偉人の名前で、災厄の化身とも呼ばれる魔獣を退治したり、凶悪な魔族を根絶させたりと、いろいろな伝説を残しているらしい。そして、僕と同じ『複製』のスキルを持っていたのだとか。
「平民でも貴族でも語り継がれるから、みんなが知ってるんだよ」
「へぇ~」
だから『複製』が伝説扱いされてたのに知名度が高かったのか。そのクラウディオという人がどういう人かはわからないけど、伝説になるくらいならスキルを使いこなしてそうだなぁ……僕はいまだにわからないことだらけだし。
「ほら、肉持ってきたぞ。お前らは話に夢中になると止まらないからな」
「ご、ごめん……」
どうやら、クラウディオの話題で盛り上がっている間にゲイルさんはお肉を持ってきてくれていたらしい。
息子のトールくんはもちろんのこと、昔から交流していると、レオンの性格もわかりきってるんだろうな。
「じゃあ、ルイ。一旦家に戻ってから他の食べ物買いに行こうか」
「うん」
僕は、見送ってくれるトールくんに手を振りながら、帰路についた。
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