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第二章 ユニークスキル
28. 『複合』の効果
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領主さまは、わけがわからないといった顔をする。カードに書かれていたことをそのまま言っているだけだから無理もないだろう。
「この二つのものというのは、それぞれまったく異なるものだと思っています。領主さまが見せてくださった魔法に関する文献や、先ほどの鏡の件を踏まえても、そう考えるのが妥当かと」
あの鏡は、確かに割れて複数に分かれていたけど、元は一つの鏡である。『複合』というのが異なるものを一つにする力なのだとすれば、鏡の破片は対象外となってもおかしなことではない。
魔法の文献は、赤魔法と青魔法で完全に異なるものだ。ならば、『複合』で一つにすることができる可能性はある。
「……確かに一理あるな。だが、君は赤魔法しか使えない。二つ以上は無理だろう」
確かに、普通なら魔法適性を増やすことはできない。でも、僕には『複製』があるのだ。
「『複製』を使えば、魔法適性も増やすことができるかもしれません。できなかったとしても、スキルを『複製』することは可能なので、スキルを『複合』することができるかと」
「なら、私のスキルで試してみるか?」
領主さまはそう言って、僕にコントラクトカードを渡してくる。
そこには、領主さまのプロフィールが僕のものと同じように書かれていた。
**********
アレクシス・ルーバ・ヴァレリー
魔法適性:赤 黄 緑
魔法強度:八
スキル
『詠唱破棄』:魔法を使用する際、詠唱せずに発動することができる。
『剣術』:大剣、短剣、長剣を扱うことができる。本人の力量に左右される。
『直感』:周囲の状況、相手の言葉や態度から良し悪しを感じとる。本人の力量に左右される。
『英断』:優れた判断をくだすことができる。本人の力量に左右される。
『統制』:自分よりも下の人間を従わせる。反意を抱いている者や、自分よりも上の人間には効果がない。
**********
何この統治者になるために生まれたようなスキルの揃い踏みは。どこか油断できないと感じるのも当然かもしれない。
まぁ、本人の力量に左右されるものもあるから、領主さまとしての実力はあるんだろうけど。
さて、このなかで複合できそうなものか。
……いっそのこと、このスキル全部複合させてみる?『詠唱破棄』は難しくても、他のものはできそうな気がする。
いや、魔力の消費を考えると、まずは二つで試すのが無難かな。
と、なると……
「『直感』と『英断』を『複合』してみます」
「二つも『複製』すれば、魔力が足りなくならないか?」
「あっ、いえ。領主さまのスキルを直接『複合』させていただけないかと……」
領主さまを実験台にさせろと言っているようなものだし、さすがに難しいだろうか?
普通なら、自分のスキルでやれと思うかもしれないけど、『複合』できそうな組み合わせが思いつかない。できるだけ近い関係のものがいいと思うんだけど、それがない。
「そのようなことができるのか?」
「できなくはないと思います。ただ、身体にどのような影響があるのかわかりませんが」
「そうか……」
領主さまは、そう呟いただけだったけど、きっと脳内では思考を張り巡らせているのだろう。
「わかった。やってみてくれ」
「よろしいのですか?」
聞いておいてなんだけど、断られるものだと思っていた。
「私の『直感』がうまくいくと告げているのでな」
「かしこまりました」
僕は、領主さまに手をかざす。多分、スキルを使う上では必要ないんだろうけど、こうしたほうが僕のイメージがまとまる。
このまま……と思ったところで、頭の僕が待ったをかけた気がした。
こんな感じで、本当に成功するのだろうか。
『複製』は、イメージが曖昧なまま複製してしまったから、不完全になってしまった。もし、『複合』も中途半端になってしまったら、どんなことが考えられるだろう。
不完全な形で合わさってしまうのはまだいい。問題は、不完全に混じりあったせいでどちらのスキルも使えなくなってしまった場合だ。
半端にやってはダメだ。領主さまが信用してくれているんだから、全力でやらないと。
まず、スキルの情報整理からだ。
『直感』は相手の言葉や態度から良し悪しを感じとる。『英断』はすぐれた判断をくだす。
この二つが合わせるのであれば、相手の言葉や態度から良し悪しを感じとり、すぐれた判断をくだすということになるだろう。
そうなるように強くイメージして……
(『直感』と『英断』を……『複合』!)
僕が強く念じると、軽く力が抜ける感覚があった。どうやら、二つのものを複合するだけなら、大して魔力は消費しないらしい。それでも、二、三回が限度だろうけど。
「魔力が減った感覚があったので、スキルは発動したと思います。カードで確かめてもらえばわかると思いますが……」
「いや、このカードはあくまでも記録だからな。カードを更新しないと新しいスキルは確認できない」
う~ん……わりと不便なところもあるんだな。そんな都合よくはいかないか。
成功したか確かめたかったな。僕がはぁとため息をつくと、領主さまはソファから立ち上がって、近くの執務机に歩いていく。そして、引き出しから五十センチくらいの石板のようなものを取り出した。
「だから、これで更新する」
更新の道具持ってるんかい!それなら最初から用意してくれればいいのに。
領主さまはその板を持ってくると、中央の窪みにカードを嵌め込む。
その瞬間、カードを中心にその石板が光り輝く。これが、更新の光なのだろうか。
数秒ほどで光は収まり、領主さまはカードを取り出し、じっと見つめる。
おそらくは、スキルの確認をしているのだろう。その後、領主さまの口角があがったことで、僕はスキルの成功を感じ取った。
「うまくいきましたか?」
「ああ。見てみるか?」
領主さまは僕にコントラクトカードを見せてくれる。
カードのスキルの説明文を確認すると、確かに変わっていた。
**********
スキル
『詠唱破棄』:魔法を使用する際、詠唱せずに発動することができる。
『剣術』:大剣、短剣、長剣を扱うことができる。本人の力量に左右される。
『統制』:自分よりも下の人間を従わせる。反意を抱いている者や、自分よりも上の人間には効果がない。
複合スキル
『大英断』:周囲の状況、相手の言葉や態度から良し悪しを感じとり、優れた判断をくだすことができる。本人の力量にされる。『直感』と『英断』を複合したスキル。
**********
領主さまのカードには、新たに【複合スキル】という項目が追加され、『大英断』という名前のスキルとなっていた。
代わりに、『直感』と『英断』が消えている。
「これって、何か意味があるんですかね……?」
『大英断』というスキルは『直感』と『英断』が合わさったものだけど、ただそれだけだ。何か別の効果がついているわけでもないし、ただスキルの名前が変わっただけに見える。
これって、『複合』した意味があるといえるのだろうか?
「まだわからん。だが、『大英断』を使ってみればわかるだろう。何かわかればこちらから伝えさせてもらう」
「はい、ありがとうございます」
ひとまず、領主さまは満足してくれたみたいなので、それでよしとしよう。
その後、もう帰ってもいいと言われたので、部屋の前にいた母さんと一緒に家へと戻った。
「この二つのものというのは、それぞれまったく異なるものだと思っています。領主さまが見せてくださった魔法に関する文献や、先ほどの鏡の件を踏まえても、そう考えるのが妥当かと」
あの鏡は、確かに割れて複数に分かれていたけど、元は一つの鏡である。『複合』というのが異なるものを一つにする力なのだとすれば、鏡の破片は対象外となってもおかしなことではない。
魔法の文献は、赤魔法と青魔法で完全に異なるものだ。ならば、『複合』で一つにすることができる可能性はある。
「……確かに一理あるな。だが、君は赤魔法しか使えない。二つ以上は無理だろう」
確かに、普通なら魔法適性を増やすことはできない。でも、僕には『複製』があるのだ。
「『複製』を使えば、魔法適性も増やすことができるかもしれません。できなかったとしても、スキルを『複製』することは可能なので、スキルを『複合』することができるかと」
「なら、私のスキルで試してみるか?」
領主さまはそう言って、僕にコントラクトカードを渡してくる。
そこには、領主さまのプロフィールが僕のものと同じように書かれていた。
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アレクシス・ルーバ・ヴァレリー
魔法適性:赤 黄 緑
魔法強度:八
スキル
『詠唱破棄』:魔法を使用する際、詠唱せずに発動することができる。
『剣術』:大剣、短剣、長剣を扱うことができる。本人の力量に左右される。
『直感』:周囲の状況、相手の言葉や態度から良し悪しを感じとる。本人の力量に左右される。
『英断』:優れた判断をくだすことができる。本人の力量に左右される。
『統制』:自分よりも下の人間を従わせる。反意を抱いている者や、自分よりも上の人間には効果がない。
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何この統治者になるために生まれたようなスキルの揃い踏みは。どこか油断できないと感じるのも当然かもしれない。
まぁ、本人の力量に左右されるものもあるから、領主さまとしての実力はあるんだろうけど。
さて、このなかで複合できそうなものか。
……いっそのこと、このスキル全部複合させてみる?『詠唱破棄』は難しくても、他のものはできそうな気がする。
いや、魔力の消費を考えると、まずは二つで試すのが無難かな。
と、なると……
「『直感』と『英断』を『複合』してみます」
「二つも『複製』すれば、魔力が足りなくならないか?」
「あっ、いえ。領主さまのスキルを直接『複合』させていただけないかと……」
領主さまを実験台にさせろと言っているようなものだし、さすがに難しいだろうか?
普通なら、自分のスキルでやれと思うかもしれないけど、『複合』できそうな組み合わせが思いつかない。できるだけ近い関係のものがいいと思うんだけど、それがない。
「そのようなことができるのか?」
「できなくはないと思います。ただ、身体にどのような影響があるのかわかりませんが」
「そうか……」
領主さまは、そう呟いただけだったけど、きっと脳内では思考を張り巡らせているのだろう。
「わかった。やってみてくれ」
「よろしいのですか?」
聞いておいてなんだけど、断られるものだと思っていた。
「私の『直感』がうまくいくと告げているのでな」
「かしこまりました」
僕は、領主さまに手をかざす。多分、スキルを使う上では必要ないんだろうけど、こうしたほうが僕のイメージがまとまる。
このまま……と思ったところで、頭の僕が待ったをかけた気がした。
こんな感じで、本当に成功するのだろうか。
『複製』は、イメージが曖昧なまま複製してしまったから、不完全になってしまった。もし、『複合』も中途半端になってしまったら、どんなことが考えられるだろう。
不完全な形で合わさってしまうのはまだいい。問題は、不完全に混じりあったせいでどちらのスキルも使えなくなってしまった場合だ。
半端にやってはダメだ。領主さまが信用してくれているんだから、全力でやらないと。
まず、スキルの情報整理からだ。
『直感』は相手の言葉や態度から良し悪しを感じとる。『英断』はすぐれた判断をくだす。
この二つが合わせるのであれば、相手の言葉や態度から良し悪しを感じとり、すぐれた判断をくだすということになるだろう。
そうなるように強くイメージして……
(『直感』と『英断』を……『複合』!)
僕が強く念じると、軽く力が抜ける感覚があった。どうやら、二つのものを複合するだけなら、大して魔力は消費しないらしい。それでも、二、三回が限度だろうけど。
「魔力が減った感覚があったので、スキルは発動したと思います。カードで確かめてもらえばわかると思いますが……」
「いや、このカードはあくまでも記録だからな。カードを更新しないと新しいスキルは確認できない」
う~ん……わりと不便なところもあるんだな。そんな都合よくはいかないか。
成功したか確かめたかったな。僕がはぁとため息をつくと、領主さまはソファから立ち上がって、近くの執務机に歩いていく。そして、引き出しから五十センチくらいの石板のようなものを取り出した。
「だから、これで更新する」
更新の道具持ってるんかい!それなら最初から用意してくれればいいのに。
領主さまはその板を持ってくると、中央の窪みにカードを嵌め込む。
その瞬間、カードを中心にその石板が光り輝く。これが、更新の光なのだろうか。
数秒ほどで光は収まり、領主さまはカードを取り出し、じっと見つめる。
おそらくは、スキルの確認をしているのだろう。その後、領主さまの口角があがったことで、僕はスキルの成功を感じ取った。
「うまくいきましたか?」
「ああ。見てみるか?」
領主さまは僕にコントラクトカードを見せてくれる。
カードのスキルの説明文を確認すると、確かに変わっていた。
**********
スキル
『詠唱破棄』:魔法を使用する際、詠唱せずに発動することができる。
『剣術』:大剣、短剣、長剣を扱うことができる。本人の力量に左右される。
『統制』:自分よりも下の人間を従わせる。反意を抱いている者や、自分よりも上の人間には効果がない。
複合スキル
『大英断』:周囲の状況、相手の言葉や態度から良し悪しを感じとり、優れた判断をくだすことができる。本人の力量にされる。『直感』と『英断』を複合したスキル。
**********
領主さまのカードには、新たに【複合スキル】という項目が追加され、『大英断』という名前のスキルとなっていた。
代わりに、『直感』と『英断』が消えている。
「これって、何か意味があるんですかね……?」
『大英断』というスキルは『直感』と『英断』が合わさったものだけど、ただそれだけだ。何か別の効果がついているわけでもないし、ただスキルの名前が変わっただけに見える。
これって、『複合』した意味があるといえるのだろうか?
「まだわからん。だが、『大英断』を使ってみればわかるだろう。何かわかればこちらから伝えさせてもらう」
「はい、ありがとうございます」
ひとまず、領主さまは満足してくれたみたいなので、それでよしとしよう。
その後、もう帰ってもいいと言われたので、部屋の前にいた母さんと一緒に家へと戻った。
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