転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん

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第二章 ユニークスキル

26. 『複合』とは?

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 選定の儀を終えた三日後、僕は母さんと共に屋敷に出向いていた。
 迎えに来た使いの人に、貴族用のカードを持ってくるように言われたので、それを持って向かっていた。

 屋敷は三年間ずっと来ていたので、使用人のほとんどと顔見知りになっており、目が合うと手を振ってくれるので、振り返す中になっている。さすがに仕事中に気軽に話しかけることはしないし、話しかけられることはない。
 三年間ずっと屋敷に通い続けて信用されているのか、今ではメルゼンさんの案内もない。時々屋敷内で見かけると、すぐに僕たちに気づいて微笑みかけてくれる。

 この後の展開を想像すると憂鬱だけど、使用人たちの温かい対応にはほっとするのだった。

◇◇◇

 応接室に着くと、すでに領主さまが待っており、僕たちは向かいに座る。

「さて、コントラクトカードはあるか?」
「こんと……?」

 僕が首を傾げると、母さんがこそっと教えてくれる。

「少年式のときにもらったあのカードのことよ」 

 へぇ~。あれって、コントラクトカードって言うんだ。契約するときに使うからかな?

「持ってくるように頼んでいたと思うのだが」
「はい、持ってます」

 僕がカードを取り出して領主さまのほうに渡そうとするけど、なぜか受け取ろうとしない。

「説明不足だったな。これに魔力を通して、スキルの詳細が見られるようにしてほしいんだ」
「あっ、ごめんなさい」

 すっかり忘れてたよ。そうしないと情報が見られないんだったね。
 僕は、カードに魔力を通して、文字が浮かび上がったのを確認して、再び領主さまに渡した。

 おそらく、僕が少年式のときに確認した文が書かれているはすだ。

「君は、すでに確認しているか?」
「はい、少年式のときに」
「なら、少し確かめたいことがある」

 領主さまはそう言って席を立つ。そして、部屋を出ていってしまった。
 ぽつんと残された僕たちは、しばらく無言の時間を過ごす。

 でも、それに耐えられなくなったのか、母さんが話しかけてきた。

「ルイ、魔法の練習はしてるの?」
「うん。ちゃんと『ワール』だけやってるよ」

 僕の魔力強化は、当然だけど魔法自体も強くしてしまうので、母さんには一人のときは『ワール』しか使ってはいけないと約束させられた。
 僕も危険性は重々承知しているので、その約束を守って練習している。

 今のところ、母さんたちが懸念しているような自体にはなっていない。

「父さんにもいろいろ教えてもらってるの。お水をお湯にしたりしたよ」

 父さんは、普段から料理をしているだけはあって、調理関係の魔法の扱いはうまい。
 たとえば、お水をお湯にしたり、火の強さを調節したり。

 火の強さの調節は役に立ちそうなので、父さんに教えてもらっている。『魔力強化』が影響してか、まだまだ父さんのように上手にはできないけど、コツコツと練習するのが大事だ。
 早く『詠唱破棄』がほしいなぁ……。あれがあれば、魔法の練習のスパンが減るのに。
 
 はぁとため息をつくのと同時に、ドアがガチャリと開く。不意に視線をあげると、領主さまが何かを持って部屋に入ってきていた。

「待たせたな。これを見てもらいたいんだ」

 領主さまが机の上に並べたのは、割れた鏡のようだった。
 側には、破片も転がっている。

「この鏡を直せるか試してほしい」
「これを直すんですか?」

 鏡は粉々とまでは言わなくても、ヒビが入って、破片になってしまっているのもある。スキルには詳しくないからわからないけど、この場合は『修繕』のようなスキルを持っている人に任せるべきではないのだろうか。

「本来なら『修繕』のスキルを持つ者に頼むのだが、『複合』の説明には、二つ以上のものを一つにするとあった。ならば、物の修繕も可能なのではないかと思ったんだ」

 ふむふむ、なるほど。確かに、複合の意味をよく知らない人なら、あの説明だとそう思うのも無理ないかも。
 でも、さすがに修繕はできないと思う。

「わかりました。やってみます」

 できないとは思うけど、領主さまの命ならやってみるしかない。もしかしたら、スキルの『複合』ならできるのかもしれないし。
 僕は『複製』スキルを使ったときのことを思い出しながら、鏡に触れる。

(破片とフレームを『複合』)

 そう強く念じてみるけど、あのときのように力が抜ける感覚はなく、当然のように鏡はくっついていない。

「できません」
「そうか……。なら、元に戻せるというわけではないのかもしれないな」

 領主さまはぶつぶつと呟きながら推測している。う~ん……複合の意味を教えるべき?でも、推測をしても確信を持って答えても子どもらしからぬ行動だ。
 敬語を使っている時点で普通ではないけど、それはリーリアさまの話し相手として失礼のないように教育されたからだ。

 別に、普通じゃないと思われたくないわけじゃない。ただ……不気味とか恐ろしいとか、そんな目で見られて、離れていってほしくないだけ。
 すでに家族の愛にたっぷりと浸かっている僕は、それがゼロになるどころか、マイナスになることが恐ろしくて仕方ない。

 あの家族ならそんなことはないと頭ではわかっていても、心がついてきてくれない。

「……ルーシー。君は、席を外してくれないか」
「で、ですが、ルイを一人にするわけには……」
「部屋の前で待っていてくれればいい。少し二人で話したいことがあるだけだからな」
「……かしこまりました」

 母さんは、仕方なくというように頭を下げて、部屋を出ていく。何度も、僕のほうを不安げに見ながら。

「さて、ルイくん。少し大人の話をしようか」

 そう言ってニヤリと笑う領主さまを見て、僕は背筋に寒気が走るのを感じた。
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