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第一章 優しい家族
19. 改善の提案
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一度部屋に戻った僕だけど、ふと思い出したことがあり、今度は父さんのもとを訪ねた。今日は、食堂はお休みなので、父さんは部屋にいる。
「とーさーん」
「おー、ルイ。どうした?」
部屋で休んでいた父さんが僕に気づくと、しゃがんで僕に視線を合わせる。かと思うと、僕を自然な動作で抱き上げた。別に抱っこしなくていいのに。
「あのね、とーさんのおみせなんだけどね。ビュッフェやってみない?」
「ビュッフェ?」
僕はビュッフェの仕組みを詳しく説明する。たくさんの料理を作って、お客さんに自分で好きなものを食べてもらう。
そして、お会計のときは少し高めの値段を払ってもらうというものだ。
席番号は、何かメモがないと少し難しいかもしれないので、また今度の提案にとっておく。今日は、すぐに実行できそうなビュッフェだ。
「そしたら、かーさんもおりょうりはこばなくていいし、お金はらうのもかんたんだよ。たくさんたべたいけどお金がないひとにもいいよ」
「確かに、悪くはないが……いきなり経営方法を変えれば、客が困惑するだろう」
「それじゃあ、すこしだけやってみたら?スープを大きなおなべにいれて、おきゃくさんに自分でいれてもらったりとか。つめたくなったらとーさんのまほうでまたあたたかくすればいいし」
やっぱり長く話すとたどたどしくなるな。こればかりは体の発達を待つしかないんだけど。
父さんは、考える素振りをしていたけど、すぐに僕の頭を荒々しく撫でた。
「いや~、ルイはすごいな!どうやったらそんな方法が思いつくんだ?」
「と、とーさんたちがたいへんそうだったから、がんばって考えたの!とーさんたち、いそがしいからってぜんぜんルイとあそんでくれないんだもん」
正直言うと、僕は静かなほうが好きだから、そこまで遊びたいわけではないけど、寂しいのは本当だ。
父さんは食堂の経営、母さんはそれに加えて針子の仕事、レオンも最近はよくお店を手伝うようになって、一人の時間がさらに増えてきたのだ。
どうせならそばにいてほしいと思ってしまう。僕は、まだまだ甘えたい盛りの子どもなのだ。
「そうかそうか。父さん、もっとたくさん家に帰ってこれるようにするからな」
「わーい!ありがとう、とーさん」
やっぱり、息子には甘いね、僕の父さんは。
◇◇◇
お昼ごはんの時間になり、テーブルにはたくさんのサンドイッチが並べられていた。色とりどりの組み合わせで、本当にいろいろ試したらしいのが伺える。
「ルーシー、なんだこれは?」
「ルイが考えてくれたの。パンに切れ込みを入れて、いろいろな具材を挟むんですって」
「ルイって、ほんとにいろいろ思いつくよね」
レオンが笑顔で鋭い指摘をしてくる。レオンとしては、ただ褒めてるだけなんだろうけど、僕からすると冷や汗ものだ。
とりあえず、適当に笑ってごまかしておき、サンドイッチに手を伸ばした。
「かーさん、これおいしい!」
僕が食べたのは、スクランブルエッグとレタス……じゃなくて、エクテルのサンドだ。ちょうど、僕が作ったのと同じ組み合わせである。
エクテルは熱を通してあるとはいえ、食べるとシャキシャキといい音が鳴り、たまごとの相性も抜群である。
「ルイ、これもおいしいよ」
そう言ってレオンが差し出してきたのは、エクテルとオータを挟んだものだった。
オータというのは、地球で言うトマトのことで、オータモットという名前で売られているらしい。長いので、みんなオータと呼んでいるみたいだ。
これでベーコンがあれば立派なBLTサンドなんだけどな。薄い肉のステーキとかで代用してもらうのもいいかもな。
さすがにベーコンの作り方は知らないし。
僕は、そんなことを考えながらレオンのくれたサンドを食べる。うん、これもおいしい……と、言いたいけど、僕はあまり好きじゃない。
オータの瑞々しさと、エクテルの食感がいいんだけど、どうしても味が好きじゃない。特にこれは生だからなぁ……水洗いしただけだと思う。
だからこそ、余計にまずく感じる。
せっかくレオンがくれたものだし、残すと母さんが怖いから、頑張って食べてるけどね。
でも、父さんたちにはどれも好評みたいだから、サンドイッチは成功と言っていいだろう。
「かーさん。これ、リーリアさまのところいくとき持っていっていい?」
「これを?う~ん……」
母さんは頭を悩ませている。さすがに、食べ物関係はいろいろとまずいかなぁ……?
「そうね。事前にお話ししておけば大丈夫そうね」
「やったー!」
母さんからお許しが出て安心した。これから、リーリアさまとのお茶会。気を引き締めて挑まないとな。
「とーさーん」
「おー、ルイ。どうした?」
部屋で休んでいた父さんが僕に気づくと、しゃがんで僕に視線を合わせる。かと思うと、僕を自然な動作で抱き上げた。別に抱っこしなくていいのに。
「あのね、とーさんのおみせなんだけどね。ビュッフェやってみない?」
「ビュッフェ?」
僕はビュッフェの仕組みを詳しく説明する。たくさんの料理を作って、お客さんに自分で好きなものを食べてもらう。
そして、お会計のときは少し高めの値段を払ってもらうというものだ。
席番号は、何かメモがないと少し難しいかもしれないので、また今度の提案にとっておく。今日は、すぐに実行できそうなビュッフェだ。
「そしたら、かーさんもおりょうりはこばなくていいし、お金はらうのもかんたんだよ。たくさんたべたいけどお金がないひとにもいいよ」
「確かに、悪くはないが……いきなり経営方法を変えれば、客が困惑するだろう」
「それじゃあ、すこしだけやってみたら?スープを大きなおなべにいれて、おきゃくさんに自分でいれてもらったりとか。つめたくなったらとーさんのまほうでまたあたたかくすればいいし」
やっぱり長く話すとたどたどしくなるな。こればかりは体の発達を待つしかないんだけど。
父さんは、考える素振りをしていたけど、すぐに僕の頭を荒々しく撫でた。
「いや~、ルイはすごいな!どうやったらそんな方法が思いつくんだ?」
「と、とーさんたちがたいへんそうだったから、がんばって考えたの!とーさんたち、いそがしいからってぜんぜんルイとあそんでくれないんだもん」
正直言うと、僕は静かなほうが好きだから、そこまで遊びたいわけではないけど、寂しいのは本当だ。
父さんは食堂の経営、母さんはそれに加えて針子の仕事、レオンも最近はよくお店を手伝うようになって、一人の時間がさらに増えてきたのだ。
どうせならそばにいてほしいと思ってしまう。僕は、まだまだ甘えたい盛りの子どもなのだ。
「そうかそうか。父さん、もっとたくさん家に帰ってこれるようにするからな」
「わーい!ありがとう、とーさん」
やっぱり、息子には甘いね、僕の父さんは。
◇◇◇
お昼ごはんの時間になり、テーブルにはたくさんのサンドイッチが並べられていた。色とりどりの組み合わせで、本当にいろいろ試したらしいのが伺える。
「ルーシー、なんだこれは?」
「ルイが考えてくれたの。パンに切れ込みを入れて、いろいろな具材を挟むんですって」
「ルイって、ほんとにいろいろ思いつくよね」
レオンが笑顔で鋭い指摘をしてくる。レオンとしては、ただ褒めてるだけなんだろうけど、僕からすると冷や汗ものだ。
とりあえず、適当に笑ってごまかしておき、サンドイッチに手を伸ばした。
「かーさん、これおいしい!」
僕が食べたのは、スクランブルエッグとレタス……じゃなくて、エクテルのサンドだ。ちょうど、僕が作ったのと同じ組み合わせである。
エクテルは熱を通してあるとはいえ、食べるとシャキシャキといい音が鳴り、たまごとの相性も抜群である。
「ルイ、これもおいしいよ」
そう言ってレオンが差し出してきたのは、エクテルとオータを挟んだものだった。
オータというのは、地球で言うトマトのことで、オータモットという名前で売られているらしい。長いので、みんなオータと呼んでいるみたいだ。
これでベーコンがあれば立派なBLTサンドなんだけどな。薄い肉のステーキとかで代用してもらうのもいいかもな。
さすがにベーコンの作り方は知らないし。
僕は、そんなことを考えながらレオンのくれたサンドを食べる。うん、これもおいしい……と、言いたいけど、僕はあまり好きじゃない。
オータの瑞々しさと、エクテルの食感がいいんだけど、どうしても味が好きじゃない。特にこれは生だからなぁ……水洗いしただけだと思う。
だからこそ、余計にまずく感じる。
せっかくレオンがくれたものだし、残すと母さんが怖いから、頑張って食べてるけどね。
でも、父さんたちにはどれも好評みたいだから、サンドイッチは成功と言っていいだろう。
「かーさん。これ、リーリアさまのところいくとき持っていっていい?」
「これを?う~ん……」
母さんは頭を悩ませている。さすがに、食べ物関係はいろいろとまずいかなぁ……?
「そうね。事前にお話ししておけば大丈夫そうね」
「やったー!」
母さんからお許しが出て安心した。これから、リーリアさまとのお茶会。気を引き締めて挑まないとな。
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