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第一章 優しい家族
17. 食堂のお手伝い 2
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僕は、次々とオーダーを取っていく。最初はあの男みたいに子どもの僕を訝しく見る人も多かったけど、丁寧な口調で対応をしたらすぐに注文してくれた。
レオンも僕が手伝っていることに少し驚いていたみたいだけど、父さんがなにも言わないからか、特に何も言ってこない。
それどころか、レオンは会計と配膳、僕が注文を受ける係と役割分担していた。お陰で早い早い。
「にーに、それあっち!」
「わかった!」
僕は、自分が注文を受け付けた料理が完成しているのを確認したら、レオンにどこに運ぶのかを指示する。
いくら注文の受付しかやってないとはいえ、一気にたくさんのオーダーを受けたらさすがに覚えられないので、一度に二組までという制限を自分のなかで設けている。
それに、レオンも会計と配膳をいつもやってるわけじゃないので、手が空いたら注文を受けている。
でも、大変なものは大変だよ~!頭がぐるぐるしてきた……
「次、こっち来てくれ!」
「は~い……」
声が聞こえたほうに僕は駆け足で向かう。下手したら、フェラグで遊んだときよりも疲れているかもしれない。
母さーん!一旦こっち来てよー!
「お待たせしました~。ご注文はーー」
「おい、いつまで待たせんだ!!」
僕が注文を受けようとしたところで、どこかから怒声が聞こえる。
僕が反射的に声がしたほうを見ると、明らかにイライラした様子の男がレオンに何か言っている。先程の怒声は大声だったためはっきりと聞こえたけど、今はボリュームを下げているのと、周囲のざわめきが混ざりあっていてよく聞こえない。
「すみません。ちょっと待っててください」
お客さんに断りを入れて、僕はレオンのほうに駆けつける。
「ねぇ、どうしたの?」
「ルイ、こっちに来ちゃーー」
「どうしたもこうしたもねぇんだよ!」
レオンが僕を引き離そうとする前に、男は僕にどなり散らす。
クレーマーかな?それとも、レオンが何かミスでもしちゃったのかな?言い分があるなら一応聞いておくか。
「さっきから待ってるのに全然来ねぇじゃねぇか!」
はい、クレーマー確定。丁寧に相手する価値なし。
「うん。だっておじさん、ちゅーもんしてないもんね」
僕は注文を受けていないときは注文を待ってる客がいないか常に観察していたので、当然この男のことも視界に入っていた。
でも、この男は店に入ってから手を上げたり声をかけたりしていなかったので、僕も聞きに行かなかったし、レオンに聞きに行くように頼んだりもしなかったのだ。
「てめぇらが聞きに来ねぇからだろ!」
「だって、なにもしないんだもん。あの人はルイのことよんでくれたよ?だからルイも聞きにいったんだよ」
僕は先ほど僕のことを呼んだお客さんを指差した。まだ呼んだのに気づいてもらえなかったとかならまだしも、こいつは呼んですらいないからね。ちょっと生意気に言い返したところでバチは当たるまい。
「それに、まってるのおじさんだけじゃないよ?あのひとも、あのひとも、みーんなまってるよ!」
「そうだ!俺たちだって待ってるんだよ!」
「注文すらしてないようなやつがいっちょまえに喚くんじゃねぇ!」
みんなも食事が来ないことでイライラしていたのか、僕の言葉を皮切りに一斉に男のことを責めだす。
最初は強気だった男も、さすがに大勢に責められるのは耐えられなかったのか、「もういい!」と捨て台詞を吐いて店を出ていった。
ふぅー、なんとかなったか。
「ルイ、大丈夫だった!?」
「うん、へーき。にーには?」
目立った外傷はなさそうだけど、心はどうだろう。レオンはしっかりしているとはいえ、まだ十歳にも満たない子ども。大の大人に理不尽に責められることに恐怖してもおかしくない。
「僕は大丈夫だけど……」
レオンは、なぜか僕から目をそらして、少し上のほうを見上げる。うん、どうしたの?
「ル~イ~?」
後ろからものすごく寒い気配を感じて、ゆっくりと振り向く。
そこには、今まで見たこともないほどの冷酷な雰囲気を纏った父さんだった。
「と、とーさん……?」
「なんであんな危ない真似をしたんだ!」
父さんの大声が店に響く。父さんの怒る姿を見るのは初めてだな。普段は親バカだから。
「だって、にーにのことおこるんだもん。にーに悪くないのに」
僕だって身勝手じゃない。レオンが何かミスをしてしまって怒られるんだったら、あまり強く言わないでほしいとは思うけど、怒ることを止めたりはしない。
でも、理不尽なクレームなら話は別だ。レオンが辛い思いをする前に止めなくてはならない。
「だからって、あんな無謀なことをすれば、ルイも危なかったんだぞ。今回はなんともなかったが、殴られでもしたらどうするつもりだったんだ?」
「いーっぱい泣く。みんなにきこえるくらいにおおっきく!」
涙は女の武器とはよく言うけど、子どもの武器でもある。僕が近所の人におじさんに虐められた~とでも言って泣きつけば、すぐさまその悪評は伝わるし、同じ子どもを持つ親は、関わりを持たなくなるだろう。
目には目を歯には歯を。クレームにはクレームである。ぜひとも、クレームを受けたらどんな目に遭うのか、その身で味わって生きてもらいたいものだ。
まぁ、今回はこの店のお客さんから否応なしに話は広まるだろうけど。
「……それでもダメだ。父さんはルイたちにケガをしてほしくない。次からは父さんに言うように」
「はーい……」
僕は、小さく返事をした。
レオンも僕が手伝っていることに少し驚いていたみたいだけど、父さんがなにも言わないからか、特に何も言ってこない。
それどころか、レオンは会計と配膳、僕が注文を受ける係と役割分担していた。お陰で早い早い。
「にーに、それあっち!」
「わかった!」
僕は、自分が注文を受け付けた料理が完成しているのを確認したら、レオンにどこに運ぶのかを指示する。
いくら注文の受付しかやってないとはいえ、一気にたくさんのオーダーを受けたらさすがに覚えられないので、一度に二組までという制限を自分のなかで設けている。
それに、レオンも会計と配膳をいつもやってるわけじゃないので、手が空いたら注文を受けている。
でも、大変なものは大変だよ~!頭がぐるぐるしてきた……
「次、こっち来てくれ!」
「は~い……」
声が聞こえたほうに僕は駆け足で向かう。下手したら、フェラグで遊んだときよりも疲れているかもしれない。
母さーん!一旦こっち来てよー!
「お待たせしました~。ご注文はーー」
「おい、いつまで待たせんだ!!」
僕が注文を受けようとしたところで、どこかから怒声が聞こえる。
僕が反射的に声がしたほうを見ると、明らかにイライラした様子の男がレオンに何か言っている。先程の怒声は大声だったためはっきりと聞こえたけど、今はボリュームを下げているのと、周囲のざわめきが混ざりあっていてよく聞こえない。
「すみません。ちょっと待っててください」
お客さんに断りを入れて、僕はレオンのほうに駆けつける。
「ねぇ、どうしたの?」
「ルイ、こっちに来ちゃーー」
「どうしたもこうしたもねぇんだよ!」
レオンが僕を引き離そうとする前に、男は僕にどなり散らす。
クレーマーかな?それとも、レオンが何かミスでもしちゃったのかな?言い分があるなら一応聞いておくか。
「さっきから待ってるのに全然来ねぇじゃねぇか!」
はい、クレーマー確定。丁寧に相手する価値なし。
「うん。だっておじさん、ちゅーもんしてないもんね」
僕は注文を受けていないときは注文を待ってる客がいないか常に観察していたので、当然この男のことも視界に入っていた。
でも、この男は店に入ってから手を上げたり声をかけたりしていなかったので、僕も聞きに行かなかったし、レオンに聞きに行くように頼んだりもしなかったのだ。
「てめぇらが聞きに来ねぇからだろ!」
「だって、なにもしないんだもん。あの人はルイのことよんでくれたよ?だからルイも聞きにいったんだよ」
僕は先ほど僕のことを呼んだお客さんを指差した。まだ呼んだのに気づいてもらえなかったとかならまだしも、こいつは呼んですらいないからね。ちょっと生意気に言い返したところでバチは当たるまい。
「それに、まってるのおじさんだけじゃないよ?あのひとも、あのひとも、みーんなまってるよ!」
「そうだ!俺たちだって待ってるんだよ!」
「注文すらしてないようなやつがいっちょまえに喚くんじゃねぇ!」
みんなも食事が来ないことでイライラしていたのか、僕の言葉を皮切りに一斉に男のことを責めだす。
最初は強気だった男も、さすがに大勢に責められるのは耐えられなかったのか、「もういい!」と捨て台詞を吐いて店を出ていった。
ふぅー、なんとかなったか。
「ルイ、大丈夫だった!?」
「うん、へーき。にーには?」
目立った外傷はなさそうだけど、心はどうだろう。レオンはしっかりしているとはいえ、まだ十歳にも満たない子ども。大の大人に理不尽に責められることに恐怖してもおかしくない。
「僕は大丈夫だけど……」
レオンは、なぜか僕から目をそらして、少し上のほうを見上げる。うん、どうしたの?
「ル~イ~?」
後ろからものすごく寒い気配を感じて、ゆっくりと振り向く。
そこには、今まで見たこともないほどの冷酷な雰囲気を纏った父さんだった。
「と、とーさん……?」
「なんであんな危ない真似をしたんだ!」
父さんの大声が店に響く。父さんの怒る姿を見るのは初めてだな。普段は親バカだから。
「だって、にーにのことおこるんだもん。にーに悪くないのに」
僕だって身勝手じゃない。レオンが何かミスをしてしまって怒られるんだったら、あまり強く言わないでほしいとは思うけど、怒ることを止めたりはしない。
でも、理不尽なクレームなら話は別だ。レオンが辛い思いをする前に止めなくてはならない。
「だからって、あんな無謀なことをすれば、ルイも危なかったんだぞ。今回はなんともなかったが、殴られでもしたらどうするつもりだったんだ?」
「いーっぱい泣く。みんなにきこえるくらいにおおっきく!」
涙は女の武器とはよく言うけど、子どもの武器でもある。僕が近所の人におじさんに虐められた~とでも言って泣きつけば、すぐさまその悪評は伝わるし、同じ子どもを持つ親は、関わりを持たなくなるだろう。
目には目を歯には歯を。クレームにはクレームである。ぜひとも、クレームを受けたらどんな目に遭うのか、その身で味わって生きてもらいたいものだ。
まぁ、今回はこの店のお客さんから否応なしに話は広まるだろうけど。
「……それでもダメだ。父さんはルイたちにケガをしてほしくない。次からは父さんに言うように」
「はーい……」
僕は、小さく返事をした。
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