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第一章 優しい家族
16. 食堂のお手伝い 1
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リーリアさまとのお話しについては領主さまに報告が行き、今度はもう少し時間を伸ばそうということになった。
領主さまの様子からして、僕が領主さまもお茶会に誘ったらとリーリアさまに提案したことは知らなさそうだ。
リーリアさまが話すきっかけになるかと思っての提案だったけど、報告した人も気を遣ったのだろうか?それとも、知ってて知らないふりでもしていたのだろうか?
どちらにしても、ありがたい配慮だ。
リーリアさまと話した翌日、ドレスを作っている母さんに早速聞いてみた。
「かーさん、ぬいぐるみってつくれる?」
「やったことはないけど、できるんじゃないかしら」
おお、さすが母さん。
「じゃあ、なにかつくってくれない?リーリアさまとあそぶから!」
「リーリアさまと?そうねぇ……」
母さんは悩む素振りを見せる。さ、さすがに無茶振りだったか……?
「さすがに次の時には間に合わないと思うけど、このドレスが完成したら作ってあげるわ」
「わーい!ありがとう!」
さすが母さんだ。ぬいぐるみを作ったことのない僕でも、ぬいぐるみ作りが大変そうなのはわかるし、別にリーリアさまと約束したわけではないから、いつでも待てますとも。
「何か作ってほしい動物とかいる?」
「う~ん……」
そう言われても、この世界の動物って何がいるのか知らないんだよ。会ったこともないし、会話に出てきたこともないから。
「ロアがいい!」
仕方ないので、リーリアさまが抱いていたあの赤いキツネっぽいものにしておく。母さんも側にいて、僕たちの会話を聞いていただろうから、ぬいぐるみの名前を言えばわかるだろう。
「あのレッドフォックスのことね。わかったわ」
あっ、名前そのままなのね。それじゃあ、猫とかはキャットって言うのかな?それなら覚えやすくていいかも。
でも、念のためいろいろと聞いておいたほうがいいだろうな。この世界にないことを当たり前のように言って怪しまれるのは、転生もののあるあるだ。
僕も、前世の知識チートはコロッケくらいまででセーブしているくらいなんだから。これ以上ペラペラと話すと口を滑らしかねない。
一回、ダイヤモンドでやらかしたからね。ディアナお嬢さまはあまり気にしてなかったみたいだけど、母さんは不思議に思ってるだろう。
三歳児の頭じゃ、考え事するとするっと口から漏れちゃうんだよな。思ったことを口にしてしまうから。
「あれ、レッドフォックスっていうの?」
「そうよ。あのぬいぐるみみたいに赤くてね、とても温かいからお貴族さまは毛皮を巻いていたりするらしいわ」
ふーん、そうなのか。毛皮目的で密漁とかされてないといいけどな。
でも、マスメディアとかのないこの世界で、平民の母さんにすら容姿が知られているのなら、そこまで珍しい存在ではないのかも?
それなら、いつか実物を見てみたいなと思いながら、母さんの作業を見守るのだった。
◇◇◇
翌日、僕は食堂へとやってきた。母さんはドレス作りに着手しているため、今日もレオンが母さんの代わりに店番をすることに。
母さんは基本的にドレスを作るときには一人になりたいらしく、今日は父さんと一緒にいなさいと言われてしまったので、僕は食堂に来たというわけだ。
僕はというと、椅子に座って水を飲んでます。僕個人としては、全然お手伝いはできると思うんだけど、やっぱり三歳児の体だと重いものは全然運べないし、そもそもテーブルが高いから背伸びしないとコップとかも置けない。
でも、一人なにもしないでここにいるのはなんかむずむずして落ち着かない。
「おい、こっち来てくれ!」
一人の男が呼んでいるけど、レオンは別のお客さんの相手をしており、気づいていないか、いたとしても相手をしには行けなさそうだ。
あまり待たせてお客さんを不機嫌にするのもよくないし、僕がなんとかしてみるか。
「おじさん、どうしたの?」
僕はレオンを呼んでいた男のところまで行き、用件を尋ねる。
男の人は、僕に気づくとかなり驚いた顔をした。
「お前、何しに来たんだ?」
「ルイが聞いてあげる!とーさんにいってくるよ!」
さぁ、どんなオーダーでもカモンカモン。
「お前にできんのかぁ?」
「できるもん!」
僕は自信を持ってそう言うけど、男はいまだに疑いを持っているようだ。ならば仕方ない。できれば年相応の子どもを演じていたかったんだけど……
「ご注文はなんですか?お客さま」
僕が丁寧な言葉遣いをすると、男は今まで以上に驚愕する。
まぁ、さっきまでたどたどしくため口をきいていた子どもが流暢な敬語を話し始めたらそうなるよね。
「父に伝えてきますので、お教えいただけますか?」
「す、ステーキ……」
「かしこまりました」
僕はペコリと頭を下げて、父さんのもとに向かう。
「とーさん、ステーキ一つ」
「おう……って、ルイ!?」
反射的に返事をしてしまったようだけど、相手が僕だと気づくと、父さんは目を見開いた。
「お前、何してんだ!」
「ルイもおてつだいやる!」
「おてつだいって……」
お前は何を言ってるんだとでも言いたげな目をしている。
大丈夫。注文を受けてここに来るまでの間に言い訳は考えておいた。
「かーさんとにーにみたいにやればいいんでしょ?ルイにもできるよ!」
そう。真似っこである。三歳児はなんでも真似したがるものなのだ。
「……わかった。でも、料理を運ぶのはレオンだけだからな」
「はーい!」
しぶしぶではありそうだけど、父さんからの許可も降りた。許可をもらったからには、ちゃんとやらないとと、僕は次のお客さんの元に向かった。
領主さまの様子からして、僕が領主さまもお茶会に誘ったらとリーリアさまに提案したことは知らなさそうだ。
リーリアさまが話すきっかけになるかと思っての提案だったけど、報告した人も気を遣ったのだろうか?それとも、知ってて知らないふりでもしていたのだろうか?
どちらにしても、ありがたい配慮だ。
リーリアさまと話した翌日、ドレスを作っている母さんに早速聞いてみた。
「かーさん、ぬいぐるみってつくれる?」
「やったことはないけど、できるんじゃないかしら」
おお、さすが母さん。
「じゃあ、なにかつくってくれない?リーリアさまとあそぶから!」
「リーリアさまと?そうねぇ……」
母さんは悩む素振りを見せる。さ、さすがに無茶振りだったか……?
「さすがに次の時には間に合わないと思うけど、このドレスが完成したら作ってあげるわ」
「わーい!ありがとう!」
さすが母さんだ。ぬいぐるみを作ったことのない僕でも、ぬいぐるみ作りが大変そうなのはわかるし、別にリーリアさまと約束したわけではないから、いつでも待てますとも。
「何か作ってほしい動物とかいる?」
「う~ん……」
そう言われても、この世界の動物って何がいるのか知らないんだよ。会ったこともないし、会話に出てきたこともないから。
「ロアがいい!」
仕方ないので、リーリアさまが抱いていたあの赤いキツネっぽいものにしておく。母さんも側にいて、僕たちの会話を聞いていただろうから、ぬいぐるみの名前を言えばわかるだろう。
「あのレッドフォックスのことね。わかったわ」
あっ、名前そのままなのね。それじゃあ、猫とかはキャットって言うのかな?それなら覚えやすくていいかも。
でも、念のためいろいろと聞いておいたほうがいいだろうな。この世界にないことを当たり前のように言って怪しまれるのは、転生もののあるあるだ。
僕も、前世の知識チートはコロッケくらいまででセーブしているくらいなんだから。これ以上ペラペラと話すと口を滑らしかねない。
一回、ダイヤモンドでやらかしたからね。ディアナお嬢さまはあまり気にしてなかったみたいだけど、母さんは不思議に思ってるだろう。
三歳児の頭じゃ、考え事するとするっと口から漏れちゃうんだよな。思ったことを口にしてしまうから。
「あれ、レッドフォックスっていうの?」
「そうよ。あのぬいぐるみみたいに赤くてね、とても温かいからお貴族さまは毛皮を巻いていたりするらしいわ」
ふーん、そうなのか。毛皮目的で密漁とかされてないといいけどな。
でも、マスメディアとかのないこの世界で、平民の母さんにすら容姿が知られているのなら、そこまで珍しい存在ではないのかも?
それなら、いつか実物を見てみたいなと思いながら、母さんの作業を見守るのだった。
◇◇◇
翌日、僕は食堂へとやってきた。母さんはドレス作りに着手しているため、今日もレオンが母さんの代わりに店番をすることに。
母さんは基本的にドレスを作るときには一人になりたいらしく、今日は父さんと一緒にいなさいと言われてしまったので、僕は食堂に来たというわけだ。
僕はというと、椅子に座って水を飲んでます。僕個人としては、全然お手伝いはできると思うんだけど、やっぱり三歳児の体だと重いものは全然運べないし、そもそもテーブルが高いから背伸びしないとコップとかも置けない。
でも、一人なにもしないでここにいるのはなんかむずむずして落ち着かない。
「おい、こっち来てくれ!」
一人の男が呼んでいるけど、レオンは別のお客さんの相手をしており、気づいていないか、いたとしても相手をしには行けなさそうだ。
あまり待たせてお客さんを不機嫌にするのもよくないし、僕がなんとかしてみるか。
「おじさん、どうしたの?」
僕はレオンを呼んでいた男のところまで行き、用件を尋ねる。
男の人は、僕に気づくとかなり驚いた顔をした。
「お前、何しに来たんだ?」
「ルイが聞いてあげる!とーさんにいってくるよ!」
さぁ、どんなオーダーでもカモンカモン。
「お前にできんのかぁ?」
「できるもん!」
僕は自信を持ってそう言うけど、男はいまだに疑いを持っているようだ。ならば仕方ない。できれば年相応の子どもを演じていたかったんだけど……
「ご注文はなんですか?お客さま」
僕が丁寧な言葉遣いをすると、男は今まで以上に驚愕する。
まぁ、さっきまでたどたどしくため口をきいていた子どもが流暢な敬語を話し始めたらそうなるよね。
「父に伝えてきますので、お教えいただけますか?」
「す、ステーキ……」
「かしこまりました」
僕はペコリと頭を下げて、父さんのもとに向かう。
「とーさん、ステーキ一つ」
「おう……って、ルイ!?」
反射的に返事をしてしまったようだけど、相手が僕だと気づくと、父さんは目を見開いた。
「お前、何してんだ!」
「ルイもおてつだいやる!」
「おてつだいって……」
お前は何を言ってるんだとでも言いたげな目をしている。
大丈夫。注文を受けてここに来るまでの間に言い訳は考えておいた。
「かーさんとにーにみたいにやればいいんでしょ?ルイにもできるよ!」
そう。真似っこである。三歳児はなんでも真似したがるものなのだ。
「……わかった。でも、料理を運ぶのはレオンだけだからな」
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