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第一章 優しい家族
15. リーリア
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その日の夕食では、領主さまの屋敷であったことを母さんが話していた。
母さんの話を聞いているうちに、レオンが叫びだした。
「ええ!?ルイがリーリアお嬢さまの話し相手!?」
「そうなのよ~。だから、もう一回お屋敷に行くことになるの」
母さんはあっけらかんと言うけど、レオンと父さんはだいぶ硬直してる。
まぁ、そうだよね。僕のスキルについて話をしに行ったと思ったら、お嬢さまの話し相手になってるんだもん。
「ルイ!絶対に失礼なことしちゃダメだからね!?」
「うん……」
ごめん、お兄ちゃん。もう領主さまにだいぶ失礼な態度を取ってしまったんだ。
まだ身分差が理解できない(と思われてる)子どもだから許されるだけで、同じことをレオンがやってたら一発アウトだと思う。
「私も一緒に行くから大丈夫よ」
「僕も行きたいのに……」
いや、それは僕が嫌だ。もしお嬢さまたちの前でブラコン全開になったら、僕は精神的に死んでしまう。
穴があったら入りたいというけど、僕は自分で掘り出しそう。
レオンは賢い子だから、多分大丈夫とは思うけど、それでも不安になるくらいに普段のブラコンぶりがひどいのだ。
「ルイ、出かけるときは早く起きるのよ」
「はーい」
前の日は、ちゃんと早寝しないとな。
◇◇◇
領主さまの屋敷に訪れてから三日後、今度はリーリアさまの話し相手として訪問することとなった。
いきなり一日中一緒にいろというのは僕にとってもリーリアさまにとっても負担でしかないので、まずは十五分ほどで様子を見て、よさそうなら少しずつ増やしていこうということになった。
以前は午後に訪問していたけど、今日はリーリアさまのスケジュールの都合上午前の訪問である。
あのときと同じように出迎えられ、僕と母さんはリーリアさまの部屋に向かう。領主さまと会った応接室とは違い、リーリアさまの部屋はお屋敷の二階にあるので、階段を登らないといけないんだけど、この階段がめちゃくちゃ長い。
いや、段数からしたら大したことないんだろうけど、家の階段の二倍はある。
オシャレな螺旋式なんだけど、ぜひとも踊り場をつけてもらいたい。一気に登るのって体力使うからさ~。動き盛りの子どもだからまだましだけど。
「こちらがリーリアお嬢さまのお部屋となります」
メルゼンさんに案内されたのは、一番奥の部屋。ここがリーリアさまのお部屋かぁ……
「リーリアお嬢さま。ルーシーさまとルイさまをお連れしました」
「……はいって」
中からものすごいか細い返事が返ってくる。耳をすませないと聞こえないレベルだ。
返事が返ってきたので、僕たちが部屋のなかに入ると、そこはものすごく暗い雰囲気の部屋だった。
調度品などは、ディアナお嬢さまの部屋とほとんど変わらないのに、どこかくすんで見える。空気が重くて、よどんだ感じがする。
部屋の主と思われる少女は、ぬいぐるみを抱いて、床に座っていた。
ディアナさまと正反対の子みたいだな、リーリアさまは。そりゃあ、領主さまも僕なんかでも話し相手にしようとするわけだ。
このままだと将来が心配になる。
「リーリアお嬢さま。息子のルイです」
「ルイです」
僕が自己紹介しても、リーリアさまはこくりと頷くだけ。これ、いくら社交性があっても厳しいんじゃないですかね……?
でも、これに僕の学園行きがかかってるのだ。諦めるわけにはいかない。
「ねぇ、その子ってリーリアさまのおともだち?」
僕はリーリアさまと視線を合わせるように床に座って話しかける。
「……うん。ロアっていうの」
「ちかくで見てもいい?」
「うん、いいよ」
キツネみたいな見た目の動物のぬいぐるみを見せてくれる。
少し触ってみると、かなりふわふわしていて触り心地がいい。生地が高級なのかな。
「この子、だれにもらったの?」
「おかーさまがね、つくってくれたの」
リーリアさまはふにゃっと緩く笑う。最近まで交流していただけはあって、お母さんのことが好きなんだな。
「ほかにもおともだちいるの?」
「いるよ」
リーリアさまが立ち上がって、ベッドの側に置いてあった一回り大きいぬいぐるみを持ってくる。
「この子はアンナっていうの。おかーさまがさいしょにくれた子なの!」
「へぇ~、そうなんだ」
リーリアさまのお母さん……奥さまは、裁縫が得意みたいだな。母さんも裁縫は上手だし、ぬいぐるみが作れるか聞いてみようかな。
作れるようだったら、リーリアさまのために作ってもらうのもいいかも。
「リアはね、いつもアンナといっしょにねてるの。おちゃかいもしたんだよ」
「わぁ~!ルイもやってみたい!おちゃかいってどうやるの?」
「えっとね~……」
リーリアさまは楽しそうにお茶会の説明を始める。
最初は難しいかと思ったけど、話し始めたらすごく楽しそうで、明るく見える。なんでこの子が最初はあんな感じだったんだろう?大人が怖いのかな?
「おちゃかい、ルイもできるかな?」
「おかーさまが、おちゃかいはたくさんじゅんびがいるっていってたから……」
「じゃあさ、つぎあったらリーリアさまとおちゃかいしたい!じゅんびしてくれない?」
「うん、いいよ!」
リーリアさまは、今日一番の返事をする。おちゃかいの構想を思い浮かべてるのか、楽しそうに笑っている。
この調子なら、話し相手としてやっていけそうかな。
「申し訳ございません、リーリアお嬢さま。そろそろ私たちは帰らなくてはならないので……」
ありゃりゃ。もう十五分経ちましたか?あっという間だったなぁ。
「じゃあ、つぎはおちゃかいしよう!」
僕は、リーリアさまに小指を差し出す。リーリアさまは、不思議そうに首をかしげた。
「これはね、やくそくなの。こうするんだよ!」
僕は、リーリアさまの手を取り、小指を立たせる。そして、自分の小指を絡めた。
そう。指切りである。約束ならこれが定番だ。
「や~くそ~くし~ましょ、う~そつ~いちゃ、ダ~メ~よ!」
さすがに指切り拳万とか針飲ますとかは言えないので、適当に考えた歌詞で約束をする。もし領主さまの耳に入ったらと思うと寒気しかしないからね。
「それじゃあ、またね!」
「うん……」
リーリアさまは、少し寂しそうだ。僕しか話し相手がいないなら無理ないけど、う~ん……あっ、そうだ。
「せっかくのおちゃかいだからさ、みんなでやろ!ディアナさまとかりょーしゅさまとか!」
僕がそう提案すると、リーリアさまも顔を輝かせる。
「わかった。おねーさまとおとーさまも呼ぶね!」
「うん、やくそくね」
僕が小指を立てると、リーリアさまも小指を立てる。
「バイバイ、リーリアさま」
「ばいばーい」
僕とリーリアさまは笑顔でお別れする。こうして、初日の交流は大成功で終わった。
母さんの話を聞いているうちに、レオンが叫びだした。
「ええ!?ルイがリーリアお嬢さまの話し相手!?」
「そうなのよ~。だから、もう一回お屋敷に行くことになるの」
母さんはあっけらかんと言うけど、レオンと父さんはだいぶ硬直してる。
まぁ、そうだよね。僕のスキルについて話をしに行ったと思ったら、お嬢さまの話し相手になってるんだもん。
「ルイ!絶対に失礼なことしちゃダメだからね!?」
「うん……」
ごめん、お兄ちゃん。もう領主さまにだいぶ失礼な態度を取ってしまったんだ。
まだ身分差が理解できない(と思われてる)子どもだから許されるだけで、同じことをレオンがやってたら一発アウトだと思う。
「私も一緒に行くから大丈夫よ」
「僕も行きたいのに……」
いや、それは僕が嫌だ。もしお嬢さまたちの前でブラコン全開になったら、僕は精神的に死んでしまう。
穴があったら入りたいというけど、僕は自分で掘り出しそう。
レオンは賢い子だから、多分大丈夫とは思うけど、それでも不安になるくらいに普段のブラコンぶりがひどいのだ。
「ルイ、出かけるときは早く起きるのよ」
「はーい」
前の日は、ちゃんと早寝しないとな。
◇◇◇
領主さまの屋敷に訪れてから三日後、今度はリーリアさまの話し相手として訪問することとなった。
いきなり一日中一緒にいろというのは僕にとってもリーリアさまにとっても負担でしかないので、まずは十五分ほどで様子を見て、よさそうなら少しずつ増やしていこうということになった。
以前は午後に訪問していたけど、今日はリーリアさまのスケジュールの都合上午前の訪問である。
あのときと同じように出迎えられ、僕と母さんはリーリアさまの部屋に向かう。領主さまと会った応接室とは違い、リーリアさまの部屋はお屋敷の二階にあるので、階段を登らないといけないんだけど、この階段がめちゃくちゃ長い。
いや、段数からしたら大したことないんだろうけど、家の階段の二倍はある。
オシャレな螺旋式なんだけど、ぜひとも踊り場をつけてもらいたい。一気に登るのって体力使うからさ~。動き盛りの子どもだからまだましだけど。
「こちらがリーリアお嬢さまのお部屋となります」
メルゼンさんに案内されたのは、一番奥の部屋。ここがリーリアさまのお部屋かぁ……
「リーリアお嬢さま。ルーシーさまとルイさまをお連れしました」
「……はいって」
中からものすごいか細い返事が返ってくる。耳をすませないと聞こえないレベルだ。
返事が返ってきたので、僕たちが部屋のなかに入ると、そこはものすごく暗い雰囲気の部屋だった。
調度品などは、ディアナお嬢さまの部屋とほとんど変わらないのに、どこかくすんで見える。空気が重くて、よどんだ感じがする。
部屋の主と思われる少女は、ぬいぐるみを抱いて、床に座っていた。
ディアナさまと正反対の子みたいだな、リーリアさまは。そりゃあ、領主さまも僕なんかでも話し相手にしようとするわけだ。
このままだと将来が心配になる。
「リーリアお嬢さま。息子のルイです」
「ルイです」
僕が自己紹介しても、リーリアさまはこくりと頷くだけ。これ、いくら社交性があっても厳しいんじゃないですかね……?
でも、これに僕の学園行きがかかってるのだ。諦めるわけにはいかない。
「ねぇ、その子ってリーリアさまのおともだち?」
僕はリーリアさまと視線を合わせるように床に座って話しかける。
「……うん。ロアっていうの」
「ちかくで見てもいい?」
「うん、いいよ」
キツネみたいな見た目の動物のぬいぐるみを見せてくれる。
少し触ってみると、かなりふわふわしていて触り心地がいい。生地が高級なのかな。
「この子、だれにもらったの?」
「おかーさまがね、つくってくれたの」
リーリアさまはふにゃっと緩く笑う。最近まで交流していただけはあって、お母さんのことが好きなんだな。
「ほかにもおともだちいるの?」
「いるよ」
リーリアさまが立ち上がって、ベッドの側に置いてあった一回り大きいぬいぐるみを持ってくる。
「この子はアンナっていうの。おかーさまがさいしょにくれた子なの!」
「へぇ~、そうなんだ」
リーリアさまのお母さん……奥さまは、裁縫が得意みたいだな。母さんも裁縫は上手だし、ぬいぐるみが作れるか聞いてみようかな。
作れるようだったら、リーリアさまのために作ってもらうのもいいかも。
「リアはね、いつもアンナといっしょにねてるの。おちゃかいもしたんだよ」
「わぁ~!ルイもやってみたい!おちゃかいってどうやるの?」
「えっとね~……」
リーリアさまは楽しそうにお茶会の説明を始める。
最初は難しいかと思ったけど、話し始めたらすごく楽しそうで、明るく見える。なんでこの子が最初はあんな感じだったんだろう?大人が怖いのかな?
「おちゃかい、ルイもできるかな?」
「おかーさまが、おちゃかいはたくさんじゅんびがいるっていってたから……」
「じゃあさ、つぎあったらリーリアさまとおちゃかいしたい!じゅんびしてくれない?」
「うん、いいよ!」
リーリアさまは、今日一番の返事をする。おちゃかいの構想を思い浮かべてるのか、楽しそうに笑っている。
この調子なら、話し相手としてやっていけそうかな。
「申し訳ございません、リーリアお嬢さま。そろそろ私たちは帰らなくてはならないので……」
ありゃりゃ。もう十五分経ちましたか?あっという間だったなぁ。
「じゃあ、つぎはおちゃかいしよう!」
僕は、リーリアさまに小指を差し出す。リーリアさまは、不思議そうに首をかしげた。
「これはね、やくそくなの。こうするんだよ!」
僕は、リーリアさまの手を取り、小指を立たせる。そして、自分の小指を絡めた。
そう。指切りである。約束ならこれが定番だ。
「や~くそ~くし~ましょ、う~そつ~いちゃ、ダ~メ~よ!」
さすがに指切り拳万とか針飲ますとかは言えないので、適当に考えた歌詞で約束をする。もし領主さまの耳に入ったらと思うと寒気しかしないからね。
「それじゃあ、またね!」
「うん……」
リーリアさまは、少し寂しそうだ。僕しか話し相手がいないなら無理ないけど、う~ん……あっ、そうだ。
「せっかくのおちゃかいだからさ、みんなでやろ!ディアナさまとかりょーしゅさまとか!」
僕がそう提案すると、リーリアさまも顔を輝かせる。
「わかった。おねーさまとおとーさまも呼ぶね!」
「うん、やくそくね」
僕が小指を立てると、リーリアさまも小指を立てる。
「バイバイ、リーリアさま」
「ばいばーい」
僕とリーリアさまは笑顔でお別れする。こうして、初日の交流は大成功で終わった。
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