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第一章 優しい家族
14. ディアナ
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領主さまとの面会が終わり、僕たちはディアナお嬢さまにドレスを渡しに行くことになった。ちなみに、二日後に僕は話し相手として再び屋敷に来ることが決まってしまった。
三歳の僕に必要以上のマナーは求められないと思うし、多分母さんとかが一緒だとは思うけど、一応勉強しておこう。
十分くらい歩いて、ようやくお嬢さまの部屋に着いたようで、母さんがノックする。
「ディアナお嬢さま。ルーシーです」
母さんが声をかけると、中からパタパタと足音がする。
そして、勢いよくドアが開いた。ドアを開けたのは、小さな女の子。
藍色の髪に紫の瞳と清楚な見た目をしているけど、中身はだいぶ活発なようだ。
「待ってたわ、ルーシー!入って!」
女の子が母さんを案内しようとしたところで、向こうは僕の存在に気づく。
「ルーシー。この子は誰なの?」
「私の二番目の息子のルイです。今年で三歳になります」
「ルイです」
母さんの真似をするように自己紹介すると、なぜかじろじろと見られる。何か気になることでも。
「三歳ってことはリーリアと同い年ね。私はディアナよ。ルーシーの息子なら仲良くしてあげる」
あれ?なんか既視感のあるキャラだぞ?
僕は記憶を遡って、既視感の正体を探る。そして、一人の子に思い至った。
(ああ……リリーちゃんだ)
リリーちゃんにレオンの弟だから仲良くすると言われたことを思い出した。女の子って、みんなこんな感じなのかな。僕の家族が好かれてるのは嬉しいけど、なんか複雑。
「それじゃあ、ルーシー。新しいドレスを見せてちょうだい」
「はい、ディアナお嬢さま」
母さんは持っていたカバンから丁寧な手つきでドレスを取り出す。
ドレスは、ダークグリーンを基調としており、裾の部分に蔓と葉っぱの紋様が刺繍されていた。落ち着いた雰囲気はあるものの、結構主張しているデザインでもあるので、彼女にはピッタリだろう。
「あら、素敵ね。早速着てみたいわ」
「では、使用人の方をお呼びしましょうか」
「いえ、あなたが着せてちょうだい。できるでしょう?」
えっ、ちょっと待って?ここで着替えるの!?今!?
母さんは少し戸惑っているようだけど、「失礼します」と声をかけてお嬢さまのドレスに手をかけ始めた。
ちょ、ヤバイヤバイ。いくらこの世界では三歳児とはいえ、女の子の下着とか裸は見れないよ!
僕は、お部屋を見回すふりをして、お嬢さまに背を向ける。せっかくなので、部屋の観察をしてみる。
調度品の類いとかはよくわからないけど、豪華な装飾が施してあって、触れるのもおこがましいような空気を漂わせている。
天井のシャンデリアなんて、平民の給料何年分だろう?下手したら二十年分くらいあるんじゃないかな?
「どう、ルーシー?似合うかしら?」
お嬢さまの言葉で、着替え終わったことに気づき、僕は再び目を向ける。
そこには、母さんの持ってきたドレスに身を包み、くるくると回っているお嬢さまがいた。
おっ、可愛いじゃん。
「かわいー!」
僕が褒めると、お嬢さまは得意気な顔をする。どの世界でも、女の子はオシャレが好きなんだなぁ。
「私はなんでも似合うから当然ね!」
「はい。とてもよくお似合いです」
母さんがそう言うと、お嬢さまは母さんと顔を合わせる。
「これも気に入ったわ。次は、黄色いドレスを持ってきてちょうだい」
「かしこまりました。希望の柄はございますでしょうか」
「そうね~……」
お嬢さまはう~んと悩んでいる。お嬢さまはいつも違う柄を欲しがると言うし、まだ持ってない柄を考えているのかもしれない。
何の柄があるだろうな~。花柄はありふれてるし、葉っぱは母さんが今日持ってきている。他に女の子が好きそうな模様で、手縫いでもできそうな柄となると。
「だいやもんど……?」
僕のボソッとした呟きに真っ先に反応したのは、お嬢さまのほうだった。
「ダイヤモンドがどうかしたのかしら?」
「えっとね、こんなかたちなの!」
僕は、手でダイヤの形を作って見せる。でも、お嬢さまと母さんはあまりピンときていないような表情だ。
まぁ、この世界にもダイヤモンドはあっても、ひし形のことをダイヤとは言わないだろうからね。
「これはしかくでね、こうしたらダイヤなの」
今度は□の形を作ってから◇の形を作って見せた。相変わらずお嬢さまはピンときていない。しかし、母さんにはなんとなく伝わったぽくて、表情が変わる。
「なるほど。シンプルでわかりやすいわね。応用もできそうだわ」
そうそう。そこがいいんだよ。ダイヤは形がシンプルゆえに、デザインは無限大といっても過言ではない。ダイヤを並べてチェック柄のようにしたり、一部分にだけ模様をつけるのもいい。それぞれ別の色でデザインするのもいいだろう。
母さんなら、きっといい感じに仕上げてくれるはずだ。
「ディアナお嬢さま。柄はダイヤでもよろしいでしょうか」
「う~ん……柄がわかんないから、ここに書いてみてちょうだい」
お嬢さまは、紙とペンを母さんに持たせて、ダイヤを書かせる。
もし伝わっていなかったらと不安になり、僕も覗き込むように見たけど、母さんは見事な♢を描いた。
「このような模様をいくつかつけ足させていただきます」
母さんはそう言って、もう一枚の紙に手早く何かを描いていく。
観察しているうちに、それは服だと気づいた。どうやら、お嬢さまの服の図案らしい。
それは、二、三枚ほどあり、襟や裾にアクセントとして加えているのもあれば、チェック柄のようになっているのもある。
ダイヤ柄は初めて見るだろうに、早々にデザインに落としこめるのは母さんの才能だな。
「私、これが気に入ったわ」
お嬢さまは、真ん中の図案を手に取る。それは、ドレスの袖口や裾にダイヤの模様が入ったシンプルなもの。
確かに、普段使いするならこれくらいシンプルなのがいいかも。ダイヤ柄は、どうしてもパーティーには向かないだろうし。
「それでは、こちらを原案にドレスの作成をさせていただきます。ドレスが完成しましたら、再びお伺いいたします」
「ええ、頼んだわよ。もう帰っていいわ」
「では、失礼いたします」
「しつれーいたします」
母さんと同じように挨拶をして、僕は部屋を出た。まだ日が沈んでもないのに、どっと疲れたな……
三歳の僕に必要以上のマナーは求められないと思うし、多分母さんとかが一緒だとは思うけど、一応勉強しておこう。
十分くらい歩いて、ようやくお嬢さまの部屋に着いたようで、母さんがノックする。
「ディアナお嬢さま。ルーシーです」
母さんが声をかけると、中からパタパタと足音がする。
そして、勢いよくドアが開いた。ドアを開けたのは、小さな女の子。
藍色の髪に紫の瞳と清楚な見た目をしているけど、中身はだいぶ活発なようだ。
「待ってたわ、ルーシー!入って!」
女の子が母さんを案内しようとしたところで、向こうは僕の存在に気づく。
「ルーシー。この子は誰なの?」
「私の二番目の息子のルイです。今年で三歳になります」
「ルイです」
母さんの真似をするように自己紹介すると、なぜかじろじろと見られる。何か気になることでも。
「三歳ってことはリーリアと同い年ね。私はディアナよ。ルーシーの息子なら仲良くしてあげる」
あれ?なんか既視感のあるキャラだぞ?
僕は記憶を遡って、既視感の正体を探る。そして、一人の子に思い至った。
(ああ……リリーちゃんだ)
リリーちゃんにレオンの弟だから仲良くすると言われたことを思い出した。女の子って、みんなこんな感じなのかな。僕の家族が好かれてるのは嬉しいけど、なんか複雑。
「それじゃあ、ルーシー。新しいドレスを見せてちょうだい」
「はい、ディアナお嬢さま」
母さんは持っていたカバンから丁寧な手つきでドレスを取り出す。
ドレスは、ダークグリーンを基調としており、裾の部分に蔓と葉っぱの紋様が刺繍されていた。落ち着いた雰囲気はあるものの、結構主張しているデザインでもあるので、彼女にはピッタリだろう。
「あら、素敵ね。早速着てみたいわ」
「では、使用人の方をお呼びしましょうか」
「いえ、あなたが着せてちょうだい。できるでしょう?」
えっ、ちょっと待って?ここで着替えるの!?今!?
母さんは少し戸惑っているようだけど、「失礼します」と声をかけてお嬢さまのドレスに手をかけ始めた。
ちょ、ヤバイヤバイ。いくらこの世界では三歳児とはいえ、女の子の下着とか裸は見れないよ!
僕は、お部屋を見回すふりをして、お嬢さまに背を向ける。せっかくなので、部屋の観察をしてみる。
調度品の類いとかはよくわからないけど、豪華な装飾が施してあって、触れるのもおこがましいような空気を漂わせている。
天井のシャンデリアなんて、平民の給料何年分だろう?下手したら二十年分くらいあるんじゃないかな?
「どう、ルーシー?似合うかしら?」
お嬢さまの言葉で、着替え終わったことに気づき、僕は再び目を向ける。
そこには、母さんの持ってきたドレスに身を包み、くるくると回っているお嬢さまがいた。
おっ、可愛いじゃん。
「かわいー!」
僕が褒めると、お嬢さまは得意気な顔をする。どの世界でも、女の子はオシャレが好きなんだなぁ。
「私はなんでも似合うから当然ね!」
「はい。とてもよくお似合いです」
母さんがそう言うと、お嬢さまは母さんと顔を合わせる。
「これも気に入ったわ。次は、黄色いドレスを持ってきてちょうだい」
「かしこまりました。希望の柄はございますでしょうか」
「そうね~……」
お嬢さまはう~んと悩んでいる。お嬢さまはいつも違う柄を欲しがると言うし、まだ持ってない柄を考えているのかもしれない。
何の柄があるだろうな~。花柄はありふれてるし、葉っぱは母さんが今日持ってきている。他に女の子が好きそうな模様で、手縫いでもできそうな柄となると。
「だいやもんど……?」
僕のボソッとした呟きに真っ先に反応したのは、お嬢さまのほうだった。
「ダイヤモンドがどうかしたのかしら?」
「えっとね、こんなかたちなの!」
僕は、手でダイヤの形を作って見せる。でも、お嬢さまと母さんはあまりピンときていないような表情だ。
まぁ、この世界にもダイヤモンドはあっても、ひし形のことをダイヤとは言わないだろうからね。
「これはしかくでね、こうしたらダイヤなの」
今度は□の形を作ってから◇の形を作って見せた。相変わらずお嬢さまはピンときていない。しかし、母さんにはなんとなく伝わったぽくて、表情が変わる。
「なるほど。シンプルでわかりやすいわね。応用もできそうだわ」
そうそう。そこがいいんだよ。ダイヤは形がシンプルゆえに、デザインは無限大といっても過言ではない。ダイヤを並べてチェック柄のようにしたり、一部分にだけ模様をつけるのもいい。それぞれ別の色でデザインするのもいいだろう。
母さんなら、きっといい感じに仕上げてくれるはずだ。
「ディアナお嬢さま。柄はダイヤでもよろしいでしょうか」
「う~ん……柄がわかんないから、ここに書いてみてちょうだい」
お嬢さまは、紙とペンを母さんに持たせて、ダイヤを書かせる。
もし伝わっていなかったらと不安になり、僕も覗き込むように見たけど、母さんは見事な♢を描いた。
「このような模様をいくつかつけ足させていただきます」
母さんはそう言って、もう一枚の紙に手早く何かを描いていく。
観察しているうちに、それは服だと気づいた。どうやら、お嬢さまの服の図案らしい。
それは、二、三枚ほどあり、襟や裾にアクセントとして加えているのもあれば、チェック柄のようになっているのもある。
ダイヤ柄は初めて見るだろうに、早々にデザインに落としこめるのは母さんの才能だな。
「私、これが気に入ったわ」
お嬢さまは、真ん中の図案を手に取る。それは、ドレスの袖口や裾にダイヤの模様が入ったシンプルなもの。
確かに、普段使いするならこれくらいシンプルなのがいいかも。ダイヤ柄は、どうしてもパーティーには向かないだろうし。
「それでは、こちらを原案にドレスの作成をさせていただきます。ドレスが完成しましたら、再びお伺いいたします」
「ええ、頼んだわよ。もう帰っていいわ」
「では、失礼いたします」
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