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第一章 優しい家族
13. 領主との面会 2
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領主さまは、明らかに僕に目線を向けている。三歳児がまともに受け答えができると本気で思っているのだろうか?それとも、僕の心を見透かそうとでもしているのか。
「『魔力強化』だけでも我が領地にとって益となるというのに、それに加えて伝説の『複製』まで持っているのだろう?それを捨て置くわけにはいかない」
やはりというかなんというか、領主としては僕のような人材は放っておいてくれないらしい。まぁ、僕の両親はこの領地の民で、僕もこの領地で生まれ育った身である。利用することにはなんの問題もない。
でも、僕が嫌だ。力を使うなら、自分の意志がいい。
「ルイ、がくえんやだ!」
必殺、駄々をこねる!普通なら平民が貴族に逆らうなど言語道断だけど、僕は三歳児だ。駄々をこねるのは許される年齢である。
領主さまも、それがわかっているのか腹を立てることはなく、諭すように言い聞かせてくる。
「今すぐという話ではないさ。それに、家族と離れたくないというのなら、私の権限で共に暮らせるようにすることもできる」
ぐぬぬ。痛いところを突いてくる。僕が学園に行きたくない一番の理由は、家族と離ればなれになるからだ。
それを見抜くとは……この領主、なかなかのやり手だ。
「サンおにーちゃん、トールおにーちゃん、リタおねーちゃん、リリーおねーちゃん!」
今度はお友達と別れたくないと言ってみる。
「上の息子であるレオンの友人です。以前に共に遊んでいたことがあったようで……」
元々レオンの友達だからか、母さんも名前を聞くだけですぐにわかったようで、領主さまに補足説明をする。
ふふん、どうだい。さすがに友達は無理だろう?
「学園でも仲のいい友人は作れるだろう。平民も学園にはそれなりの数がいる」
「やっ!」
それはあくまでも可能性の話。友達ができない場合だってあるし、平民もということは、貴族もいるのだ。
貴族とは関わらないに越したことはない。平民の僕は、貴族の理不尽には耐えなければならないけど、本当に腹が立ったときにはやり返してしまう可能性もある。
それでは、一族郎党この地から消え失せるといっても過言ではないのだ。
ならば、最初から貴族と関わらなければいいだけだ。名前も知らないような見ず知らずの人間を恨む人はいない。
「がくえんやだ!おうちにいるもん!すきるつかわない!」
僕の要求を聞かないなら、領主さまのためにスキルを使ってやらない。子どもに理詰めで言い聞かせることはできないし、そのまま押しきれば今は大丈夫だ。
もう少し大きくなったら……そのときはそのときに考えよう。
「……君の気持ちはわかった。だが、ルーシーがどう思うかだな」
なっ、それは卑怯だ!母さんは身分差が理解できる大人だから、断るわけないじゃないか。お嬢さまの針子なんだからなおさらだ。
「私は、ヴァレンの民です。当主さまのご命令には従わせていただきます」
ヴァレンというのは、この国か領地の名前だろう。
「ですが、一人の母親としては、ルイを学園にやりたいとは思いません」
母さんは、僕を抱き寄せて、領主さまを見据える。普段は優しくて、ちょっと怖いところもある母さんだけど、今の母さんはすごくカッコいい。
「……そこまで言うのなら、学園行きは見送ろう。ただし、条件がある」
条件とな。僕のスキルを使って領地の強化とか?それとも、学園ではなくここで勉強しろというのだろうか。
「毎日でなくていい。私の娘の話し相手になってもらえるか」
…………はい?
あまりにも想定外の答えすぎて、言葉が出てこないんですけど。
「娘……となりますと、ディアナお嬢さまでしょうか?」
「いや、末のリーリアだ。ちょうど三歳になる」
領主さまは詳しく説明してくれる。
いわく、領主さまには一人の息子と二人の娘がおり、一番上の息子は学園に通っているので長期休暇の時にしか帰ってこない。姉のほうはディアナという名前で、社交界デビューに向けたレッスンをしているそうだ。ちなみに、母さんがドレスを作っているのもこのディアナさま。
そして、末っ子のリーリアさまは、引っ込み思案な子どもらしい。いつも部屋に引きこもってばかりで、話し相手は使用人と家族だけ。
でも、お兄さんは学園。お姉さんは勉強。お父さんは領主としての仕事に忙しく、使用人以外はほとんどお母さんが相手していたそうだ。
そのお母さんはというと、元々病弱だったらしく、今は風邪を拗らせてしまい寝込んでいるらしい。使用人たちもその世話に追われるようになって、以前の余裕がなくなったので、最低限の世話しかできていない状況とのこと。
つまりは、リーリアさまの話し相手がいないということだ。
「彼は、初対面の私にもはっきりと言葉を発するほど社交性に長けているようだし、君は娘の針子だ。屋敷に出入りする理由は簡単に作れる」
「ルイ、どうする?お友達ほしい?」
僕は、う~んと思考を張り巡らせる。貴族とは、関わらないに越したことはない。でも、相手は母さんが針子をしているお嬢さまの妹ということで、まったくの無関係というわけでもないし、領主さまは毎日でなくてもいいと言っている。
週に一度とか、それくらいのペースでいいなら……
「うん、いいよ」
僕が了承したことで、僕は末のお嬢さまの話し相手となることが決定したのだった。
「『魔力強化』だけでも我が領地にとって益となるというのに、それに加えて伝説の『複製』まで持っているのだろう?それを捨て置くわけにはいかない」
やはりというかなんというか、領主としては僕のような人材は放っておいてくれないらしい。まぁ、僕の両親はこの領地の民で、僕もこの領地で生まれ育った身である。利用することにはなんの問題もない。
でも、僕が嫌だ。力を使うなら、自分の意志がいい。
「ルイ、がくえんやだ!」
必殺、駄々をこねる!普通なら平民が貴族に逆らうなど言語道断だけど、僕は三歳児だ。駄々をこねるのは許される年齢である。
領主さまも、それがわかっているのか腹を立てることはなく、諭すように言い聞かせてくる。
「今すぐという話ではないさ。それに、家族と離れたくないというのなら、私の権限で共に暮らせるようにすることもできる」
ぐぬぬ。痛いところを突いてくる。僕が学園に行きたくない一番の理由は、家族と離ればなれになるからだ。
それを見抜くとは……この領主、なかなかのやり手だ。
「サンおにーちゃん、トールおにーちゃん、リタおねーちゃん、リリーおねーちゃん!」
今度はお友達と別れたくないと言ってみる。
「上の息子であるレオンの友人です。以前に共に遊んでいたことがあったようで……」
元々レオンの友達だからか、母さんも名前を聞くだけですぐにわかったようで、領主さまに補足説明をする。
ふふん、どうだい。さすがに友達は無理だろう?
「学園でも仲のいい友人は作れるだろう。平民も学園にはそれなりの数がいる」
「やっ!」
それはあくまでも可能性の話。友達ができない場合だってあるし、平民もということは、貴族もいるのだ。
貴族とは関わらないに越したことはない。平民の僕は、貴族の理不尽には耐えなければならないけど、本当に腹が立ったときにはやり返してしまう可能性もある。
それでは、一族郎党この地から消え失せるといっても過言ではないのだ。
ならば、最初から貴族と関わらなければいいだけだ。名前も知らないような見ず知らずの人間を恨む人はいない。
「がくえんやだ!おうちにいるもん!すきるつかわない!」
僕の要求を聞かないなら、領主さまのためにスキルを使ってやらない。子どもに理詰めで言い聞かせることはできないし、そのまま押しきれば今は大丈夫だ。
もう少し大きくなったら……そのときはそのときに考えよう。
「……君の気持ちはわかった。だが、ルーシーがどう思うかだな」
なっ、それは卑怯だ!母さんは身分差が理解できる大人だから、断るわけないじゃないか。お嬢さまの針子なんだからなおさらだ。
「私は、ヴァレンの民です。当主さまのご命令には従わせていただきます」
ヴァレンというのは、この国か領地の名前だろう。
「ですが、一人の母親としては、ルイを学園にやりたいとは思いません」
母さんは、僕を抱き寄せて、領主さまを見据える。普段は優しくて、ちょっと怖いところもある母さんだけど、今の母さんはすごくカッコいい。
「……そこまで言うのなら、学園行きは見送ろう。ただし、条件がある」
条件とな。僕のスキルを使って領地の強化とか?それとも、学園ではなくここで勉強しろというのだろうか。
「毎日でなくていい。私の娘の話し相手になってもらえるか」
…………はい?
あまりにも想定外の答えすぎて、言葉が出てこないんですけど。
「娘……となりますと、ディアナお嬢さまでしょうか?」
「いや、末のリーリアだ。ちょうど三歳になる」
領主さまは詳しく説明してくれる。
いわく、領主さまには一人の息子と二人の娘がおり、一番上の息子は学園に通っているので長期休暇の時にしか帰ってこない。姉のほうはディアナという名前で、社交界デビューに向けたレッスンをしているそうだ。ちなみに、母さんがドレスを作っているのもこのディアナさま。
そして、末っ子のリーリアさまは、引っ込み思案な子どもらしい。いつも部屋に引きこもってばかりで、話し相手は使用人と家族だけ。
でも、お兄さんは学園。お姉さんは勉強。お父さんは領主としての仕事に忙しく、使用人以外はほとんどお母さんが相手していたそうだ。
そのお母さんはというと、元々病弱だったらしく、今は風邪を拗らせてしまい寝込んでいるらしい。使用人たちもその世話に追われるようになって、以前の余裕がなくなったので、最低限の世話しかできていない状況とのこと。
つまりは、リーリアさまの話し相手がいないということだ。
「彼は、初対面の私にもはっきりと言葉を発するほど社交性に長けているようだし、君は娘の針子だ。屋敷に出入りする理由は簡単に作れる」
「ルイ、どうする?お友達ほしい?」
僕は、う~んと思考を張り巡らせる。貴族とは、関わらないに越したことはない。でも、相手は母さんが針子をしているお嬢さまの妹ということで、まったくの無関係というわけでもないし、領主さまは毎日でなくてもいいと言っている。
週に一度とか、それくらいのペースでいいなら……
「うん、いいよ」
僕が了承したことで、僕は末のお嬢さまの話し相手となることが決定したのだった。
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