転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん

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第一章 優しい家族

11. コロッケ

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 お店の営業は順調に進む。どうやら、父さんたちの料理の腕はそれなりにあるらしく、お客さんが途切れることがない。
 これを二人で回してるのはすごいなぁ……レオンも手伝えばいいのにね。見てるだけの僕が言えたことではないけど。

「ステーキお待たせしました!」

 基本的に、料理は父さんが担当していて、配膳や会計などは母さんが担当しているみたいで、できあがった料理を運んでいく。
 父さんも余裕ができたら食事を運んだりはしているけど、ほとんど調理している。
 でも、基本的に母さん一人しかいないので、必然と料理が来るタイミングは遅くなるし、注文も一グループずつしかできない。
 ここにはタッチパネルなんて便利なものはないから、母さんが覚えるしかないんだけど、誰が頼んだのかも覚えないといけないから大変そうだ。
 顔馴染みの客ならいいけど、そうじゃないお客さんは顔も覚えないといけない。

 これは、席番号をぜひとも導入するべきだ。それぞれ数字を割り振って、一番はステーキ、二番はサラダみたいにすれば、少しは覚えやすいんじゃないだろうか。
 後は、ビュッフェ形式とかにすれば、誰かに料理を運ぶ必要がなくなるから楽だし、お金も一律にしてしまえば計算も楽になる。

 お店が終わったら提案してみるとしよう。

 また水を飲もうとしたところで、コップが空だったのに気づく。
 僕は、椅子から降りて、父さんのほうに駆け寄った。

「とーさん、みずほしい」
「おう。ちょっと待ってな」

 僕からコップを受けとると、父さんは水差しから水を入れてくれる。
 その水差しの中央には青い石のようなものがあって、光に当たってキラキラときらめいていた。

「とーさん、これなぁに?」
「これは魔鉱石って言うんだ。この石が水を作ってくれるんだぞ」
「へぇ~、すごい!」

 水道らしきものがないのが気になっていたけど、ここから補給していたのか。魔法があるこの世界は、いろいろと常識が違うなぁ……慣れていかないと。

「火もつけられるの?」
「いや、これは青の魔鉱石だから、青魔法しか使えないんだ」

 なるほど、使えるものには限りがあると。そんな都合よくはいかないのね。なら、火を起こすには赤の魔鉱石が必要なのか。
 色魔法と同じ要領なら、他にもいろいろな色があるんだろう。家にあるようなら、他にも見せてもらおうかな。

「おーい、こっち頼む!」
「こっちも!」

 母さんを呼ぶ声があちらこちらから響く。大変だなぁ……。でも、僕も大きくなったら手伝うことになるかもしれないし、今のうちに仕事振りを覚えておかないと。

「はい、スープとパン」

 父さんがスープとパンを用意するけど、母さんはなかなか運び出さない。
 ……もしかして、誰が頼んだのか忘れちゃったのかな?メモができないんじゃ無理ないけど。

「かーさん。あそこ」

 僕は、少し奥のほうにある席を指差した。しっかりと母さんの仕事振りを観察していた僕は、誰が何を頼んだのかなんとなく覚えていた。

「ルイ、覚えてるの?」
「うん。ルイ、見てるだけだもん」

 母さんみたいに接客したり会計したりとかしてないから、オーダーを覚えていられる。
 母さんも、注文だけをやってれば普通に覚えられるんじゃないかな。

 母さんは、僕が指差した方向に料理を運ぶ。お客さんは、待ってましたという顔で料理を受け取った。

「ありがとうね、ルイ」
「うん!」

 よし、この調子で少しずつお店に貢献していこう!

◇◇◇

 そして、閉店時間を迎えたお店は、最後のお客さんが出ていったのを確認して戸締まりを始める。

「ルイ、やりたいことがあるって言ってたわよね?」
「うん!」

 あんなに忙しかったのに、約束をちゃんと覚えていてくれたらしい。さすがお母さん。

「コロッケにおやさい入れてたべたいの!」
「ころっけ……ってなに?」

 やっぱり、コロッケは知らないらしい。転生してから一度も見たことないもんね。
 でも、両親が多忙だった僕は前世で自分のお弁当や夜ごはんを作っていたので、料理もお手のものである。

「おいもをつぶしてね、まーるくして、そのなかにおやさいいれるの!」
「……それ、おいしいの?」

 なるべく子どもっぽく説明してみたけど、母さんの視線は厳しい。
 やっぱり、三歳児がこんなこと言い出すのはおかしいよね。

「やれるだけやってみよう。ルイが進んで野菜を食べてくれるようになるかもしれないぞ」
「……そうね」

 父さんの説得で、母さんもしぶしぶ納得してくれた。
 そこから、僕はたどたどしく説明する。別に子どもっぽく振る舞っているわけではなく、三歳児の舌だと、たくさん話すとどうしてもたどたどしくなってしまうのだ。

 ポテトを茹でて柔らかくしてもらい、それをすりつぶす。
 そして、僕の嫌いな野菜を細かく刻んでもらい、それをすりつぶしたポテトと一緒に炒めてタネにする。
 今度はそれを丸く成形する作業なんだけど……

「ルイやりたい!」

 手伝えるところは手伝いたいというのもあるけど、単純に成形をやってみたい。前世ではコロッケを作ったことあるけど、この世界では作ったことないからね。

「じゃあ、かーさんたちにお手本を見せてくれる?」
「はーい」

 僕は、踏み台を用意してもらい、ポテトを成形していく。完全な丸でもいいけど、今回は少し楕円形ぎみになるように成形した。
 僕が成形した種を見ながら、母さんたちも成形していく。

 この後は、本当なら小麦粉と卵とパン粉をつけるんだけど、さすがにいきなりそんなに複雑な行程を話してしまえば、天才児どころではなくなってしまうので、揚げないコロッケを作る。
 本当ならパン粉がいいんだけど、パンを削るための削り機的なものがないので、小麦粉で代用する。
 次は絶対にパン粉でやってやる!

 作ったタネの両面に小麦粉をまぶす。量はお好みだけど、粉っぽさがなくなるように余分な粉は落としたほうがいい。

「これをステーキみたいにジューってやるの。くずしちゃダメだからね!」

 僕がそう言うと、父さんは再び火をつけて、タネを崩さないように炒めてくれる。普段からステーキを焼いているだけはあり、うまくひっくり返して両面を焼いてくれた。

「こんな感じか?」
「うん!」

 僕は、いい感じの焼き目がついたコロッケを見る。中身はすでに火を通してるから、おいしそうな見た目になったらそれでオーケーなのだ。

「かーさん、たべてみて!」

 せっかくなので、一番躊躇していた母さんに味見をしてもらう。
 母さんは、おそるおそるといったようにコロッケをスプーンで小さく切り分けて口に含む。

「あら、おいしいわね」

 母さんはハマってしまったみたいで、もう一口、さらにもう一口と食べていく。ちょっとちょっと!僕の分がなくなるって!

「ルイの分!」
「あっ、ごめんなさいね」
「ルイには新しく焼いてやるから待ってろ」

 父さんは笑いながら他のタネに小麦粉をまぶして焼いていく。一連の動きには一切の無駄がなく、さすがは現役の料理人だと納得する。
 少しして、父さんが新たに焼いてくれた出来立てのコロッケを食べる。

 うん、おいしい!これなら苦手な野菜も食べられそうだ。でも、どうせならパン粉を使いたい。こうなったら、削り機を作ってもらわないと。木工屋に頼んだら作ってくれるかな。
 今度、父さんか母さんに頼んでみよう。

「確かに、これはうまいな」

 僕がコロッケを堪能している間に、いつの間にか三枚目を焼いていたらしく、父さんもコロッケを食べていた。
 ふふん、今度はもっとおいしいコロッケを教えてあげるよ。

「おやさいじゃなくて、お肉いれてもおいしいとおもうよ!」

 というか、間違いなくおいしいよ。ほとんどのコロッケにはお肉入ってるもん。

「確かに、いろいろと混ぜてみるのも面白いかもな」
「そうね。お客さんにも味見してもらってもいいかもしれないわ」
「それなら、一皿二個くらいがいいかもな」

 完全に父さんたちが商売の話を始めてしまったので、僕は一人でコロッケを堪能することにした。
 この調子で、いろんな料理を作っていきたいな。
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