11 / 49
第一章 優しい家族
10. お店の開店準備
しおりを挟む
フェラグの翌日、僕は部屋遊びをしていた。母さんから大説教を喰らい、外遊びを禁止させられてしまったためである。
レオンが、僕が転んで顔に土がついてしまった理由を事細かに説明したので、母さんにスキルを使ったことがバレてしまったのだ。
三歳児がどうやってスキルを使ったのかとか言及されることはなかったけど、多分怪しまれてるんだろうなぁ……
いや、まさか一発で成功してあんな風になるとは思わなかったんだよ。ほんの軽い気持ちでやらかしてしまったのだ。
今回は倒れずに済んだけど、あんなに気軽に使えてしまうなら、なおさら気をつけないといけないな。
「ルイ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いい?」
「はひ!?」
母さんが入ってきて、僕は体をびくりと震わせる。
な、何を聞かれるんだ……?
「どうやってスキルを使ったのかしら?」
やっぱりそれですよねー!わかってましたよ。
「あのね、つかまりたくなくてがんばったの!」
何もわからない子どもを演じてみる。この言い訳はレオンたちにも使ったから、たとえ聞いていたとしても大丈夫なはず。
「スキルは、常時発動以外は使おうと思わないと使えないはずよ?」
「かーさんがやってたもん」
見よう見まねということでごまかされてはくれないだろうか。
この際、僕が普通の子どもだと思われないことはいい。でも、転生者としてではなく、天才と思われるほうがまだましだと思う。
見て真似すること自体は、普通の子どもでもやることだと思うし。
「……そう。でも、もうやったらダメよ?」
「はーい」
どうやら、とりあえずは納得してくれたらしい。よかったよかった。
これからは、今まで以上に気をつけないと。
◇◇◇
その三日後、僕は父さんが経営している食堂へとやってきた。
部屋にいるのが暇すぎて、「とーさんと一緒にいた~い」と甘えたら、父さんは二つ返事で了承してくれたのだ。
でも母さんが、火を使ったりもするのにいきなり連れていくのは危険すぎるとして、準備期間を設けていたのだ。
準備といっても、側に椅子を置いておくだけで、ここに座ってなさいというものである。
じっとしてるのは性に合わないけど、一人寂しく部屋遊びをするよりは遥かにましだし。
そこで僕は、今日は少し早起きをして、両親が準備している横で椅子に座りながら水を飲んでいるのである。
座りながらだと視線が低いので、少し見にくいけど、今は食材を切っているところみたいだ。調理は頼まれてからやるんだろうけど、できる下準備は終わらせておくつもりらしい。
お肉も塩をかけて臭み取りしている。料理屋をやっているだけはあって、ある程度の調理の知識はあるみたいだ。
「かーさん。ルイ、いらないやつたべた~い」
料理屋を営んでいるのなら当然、まかないがあるはず。今日のお昼ごはんはそれがいい。
「じゃあ、お昼はこのお肉の切れ端でも食べる?」
「たべるー!」
おお、切れ端とな。こういうのが案外美味しかったりするんだよね。
母さんも食材を捨てずに済むから一石二鳥。
「ルイ、この野菜も食うか~?」
「……うん」
僕は、誰が見てもわかるほどにテンションが下がる。この体が子どもだからか、僕はどうも野菜が苦手だ。
この世界には、地球と似たような野菜がたくさんあるけど、そのほとんどを受け付けない。味はほとんど同じなのに、ものすごくまずく感じてしまう。
子ども舌は恐ろしい。
「野菜もちゃんと食えよ」
「わかってるもん!」
詳しい経済事情は知らないけど、今の暮らしは決して裕福というわけではない。母さんが領主のお嬢さまお抱えの針子のお陰で他の家よりは裕福だけど、それだけ。
フルーツとかは贅沢品だから滅多に買ってもらえないし、ご飯を残すなど言語道断。母さんたちも、僕が食べ終わるまでずっと監視してくるので、もそもそと食べているのだ。
お陰で、食わず嫌いは今のところ存在していない。
(でも、まずいものはまずいんだよ~)
どうにか、野菜を美味しく食べることはできないだろうか。前世のでは嫌いなものは残すか、どうしても食べないといけないときは他の食べ物と一緒に食べたりしてたけど、うーん……あっ、そうだ!
「かーさん。やってみたいことあるから、あとでいっしょにやろー」
「いいけど……お仕事終わってからね」
「はーい」
始まってもないのに、早く仕事が終わらないかと待ち焦がれながら、準備は進み、お店は営業を開始した。
レオンが、僕が転んで顔に土がついてしまった理由を事細かに説明したので、母さんにスキルを使ったことがバレてしまったのだ。
三歳児がどうやってスキルを使ったのかとか言及されることはなかったけど、多分怪しまれてるんだろうなぁ……
いや、まさか一発で成功してあんな風になるとは思わなかったんだよ。ほんの軽い気持ちでやらかしてしまったのだ。
今回は倒れずに済んだけど、あんなに気軽に使えてしまうなら、なおさら気をつけないといけないな。
「ルイ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いい?」
「はひ!?」
母さんが入ってきて、僕は体をびくりと震わせる。
な、何を聞かれるんだ……?
「どうやってスキルを使ったのかしら?」
やっぱりそれですよねー!わかってましたよ。
「あのね、つかまりたくなくてがんばったの!」
何もわからない子どもを演じてみる。この言い訳はレオンたちにも使ったから、たとえ聞いていたとしても大丈夫なはず。
「スキルは、常時発動以外は使おうと思わないと使えないはずよ?」
「かーさんがやってたもん」
見よう見まねということでごまかされてはくれないだろうか。
この際、僕が普通の子どもだと思われないことはいい。でも、転生者としてではなく、天才と思われるほうがまだましだと思う。
見て真似すること自体は、普通の子どもでもやることだと思うし。
「……そう。でも、もうやったらダメよ?」
「はーい」
どうやら、とりあえずは納得してくれたらしい。よかったよかった。
これからは、今まで以上に気をつけないと。
◇◇◇
その三日後、僕は父さんが経営している食堂へとやってきた。
部屋にいるのが暇すぎて、「とーさんと一緒にいた~い」と甘えたら、父さんは二つ返事で了承してくれたのだ。
でも母さんが、火を使ったりもするのにいきなり連れていくのは危険すぎるとして、準備期間を設けていたのだ。
準備といっても、側に椅子を置いておくだけで、ここに座ってなさいというものである。
じっとしてるのは性に合わないけど、一人寂しく部屋遊びをするよりは遥かにましだし。
そこで僕は、今日は少し早起きをして、両親が準備している横で椅子に座りながら水を飲んでいるのである。
座りながらだと視線が低いので、少し見にくいけど、今は食材を切っているところみたいだ。調理は頼まれてからやるんだろうけど、できる下準備は終わらせておくつもりらしい。
お肉も塩をかけて臭み取りしている。料理屋をやっているだけはあって、ある程度の調理の知識はあるみたいだ。
「かーさん。ルイ、いらないやつたべた~い」
料理屋を営んでいるのなら当然、まかないがあるはず。今日のお昼ごはんはそれがいい。
「じゃあ、お昼はこのお肉の切れ端でも食べる?」
「たべるー!」
おお、切れ端とな。こういうのが案外美味しかったりするんだよね。
母さんも食材を捨てずに済むから一石二鳥。
「ルイ、この野菜も食うか~?」
「……うん」
僕は、誰が見てもわかるほどにテンションが下がる。この体が子どもだからか、僕はどうも野菜が苦手だ。
この世界には、地球と似たような野菜がたくさんあるけど、そのほとんどを受け付けない。味はほとんど同じなのに、ものすごくまずく感じてしまう。
子ども舌は恐ろしい。
「野菜もちゃんと食えよ」
「わかってるもん!」
詳しい経済事情は知らないけど、今の暮らしは決して裕福というわけではない。母さんが領主のお嬢さまお抱えの針子のお陰で他の家よりは裕福だけど、それだけ。
フルーツとかは贅沢品だから滅多に買ってもらえないし、ご飯を残すなど言語道断。母さんたちも、僕が食べ終わるまでずっと監視してくるので、もそもそと食べているのだ。
お陰で、食わず嫌いは今のところ存在していない。
(でも、まずいものはまずいんだよ~)
どうにか、野菜を美味しく食べることはできないだろうか。前世のでは嫌いなものは残すか、どうしても食べないといけないときは他の食べ物と一緒に食べたりしてたけど、うーん……あっ、そうだ!
「かーさん。やってみたいことあるから、あとでいっしょにやろー」
「いいけど……お仕事終わってからね」
「はーい」
始まってもないのに、早く仕事が終わらないかと待ち焦がれながら、準備は進み、お店は営業を開始した。
2,056
お気に入りに追加
3,434
あなたにおすすめの小説

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*無断転載、無断翻訳を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!
小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。
しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。
チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。
研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。
ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。
新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。
しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。
もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。
実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。
結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。
すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。
主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生した元日本人ノエルは、父の急死によりエトワール伯爵家を継承することになった。
亡くなった父はギャンブルに熱中し莫大な借金をしていた。
さらに借金を国王に咎められ、『王国貴族の恥!』と南方の辺境へ追放されてしまう。
南方は魔物も多く、非常に住みにくい土地だった。
ある日、猫獣人の騎士現れる。ノエルが女神様から与えられた生産スキル『マルチクラフト』が覚醒し、ノエルは次々と異世界にない商品を生産し、領地経営が軌道に乗る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる