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第一章 優しい家族
7. スキル 2
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僕は、呆気に取られた。先生の反応からして、スキルに何かあるとは思ってたけど、複数ってなに!?
スキルは一個でもあれば充分なんですけど!?
それに、強力なだけじゃなくて、見たことないものもあるって言いませんでした!?
「なにがあったの?」
僕は詰め寄るようにして尋ねる。母さんがルイと名前を呼びながら制止してくるけど、そんなことで止まったりはしない。
先生は少しきょとんとしていたものの、すぐに笑顔を向けて、優しく話してくれた。
「ルイくんには『魔力強化』『複製』『複合』の三つのスキルがあるようです」
「『複製』って、あの伝説の!?」
母さんが声を荒らげるけど、僕は首をかしげる。母さんの言う伝説が、なんなのかさっぱりわからない。
何か、有名な昔話でもあるのだろうか?それとも、神話か何か?どっちにしろ、ヤバいスキルではありそうだ。
「おそらくはそうでしょう。ルイくんの魔力が暴走したのは、『魔力強化』が原因だと思われます。あの英雄も、制御に苦労したと聞いていますから」
「でも、ルイはそれに加えて、『複製』と珍しいスキルも持ってるんですよね?」
「ええ。『複製』は、生き物以外……つまりは、物や魔法、またはスキルすらも、見たことがあり、理解ができれば作り出すことができます。私が知ってるなかで、『複製』を持っていたのは百年前の記録が最後ですね」
はっ?えっ?えいゆう?えいゆうって、英雄?それに、『複製』は百年前が最後?
情報量が多すぎて、全然ついていけない。
「最後の『複合』に関しては、見たことも聞いたこともありません。なので、どんな力を持っているのかわからないのです」
最後のは手がかりすらなし!?『複合』が僕の知っている意味なら、二つのものを一つにするって感じなんだけど、それがスキルになるとどうなるのかわからない。
何か、二つのものを合体させる錬金術みたいなことができるんだろうか?
「あの……ルイはどうなるのでしょうか?」
「そうですね……『魔力強化』に加えて『複製』を持っていますから、学園入りは間違いないと思われます」
その言葉に、母さんはものすごくショックを受けたような顔をするけど、僕はさっぱりわからない。
「かーさん。学園ってなに?」
くいくいと引っ張りながら聞いてみるけど、母さんからの応答はない。どれだけショックなの?学園って、普通に考えたら学校のことだと思うけど、そんなにヤバイところなのかな。
「学園というのは、十歳から十三歳までの子どもが行く場所のことだ」
「なんでいくの?」
「お勉強するんだよ。力を悪いことに使わないようにね」
ふむふむ。地球の義務教育の学校とは少し違うのか。訓練学校のようなものかもしれない。
「かーさん。ダメなの?」
「ルイが行きたいなら行ってもいいけど……でも」
母さんはやはり行ってほしくないようだ。でも、続きを話してくれないから理由がわからない。
「学園は、都の中心にあるんだ。だから、今の家から通うことはできない。寮という別のお家に行かないといけないんだ」
寮?それって……
「……かーさんは?とーさんは?にーには?」
「まったく会えないわけじゃないけど、今みたいに毎日は難しいね。歩いていくには時間がかかるし、馬車はお金がいるから」
「じゃあやだ!行かない!」
ようやくこちらの生活にも慣れてきて、一緒にいてくれる家族もできたのに、どうして離れなければいけないのか。
中身は大人でも、心の根っこはまだ子どもなのだ。家族か学園なら、家族を選びたい。
「でも、間違いなくここの領主さまはルイくんを学園に入れたがるよ。ルイくんはそれだけの価値がある」
「ぜったいにいや!」
僕は、母さんにぎゅっとしがみつく。母さんも、同じように抱き締め返してくれた。
「……どうにか、できませんか?」
「ひとまず、領主さまへの報告は見送りましょう。ですが、少年式を行えば知れ渡ることですよ」
「……わかりました」
母さんは、諦めたようなため息をつく。異世界生活も、のんびりは難しそうだな。
◇◇◇
検査の翌日、僕は現状整理していた。強い力があるだけならまだしも、未知の力もあって魔力も平均以上とは思わなかった。
この結果だと、学園入りは決定だという。こういう検査は不正など起きないように厳正に行われるものだろうし、誤魔化すこともできないだろう。
まだ、基準が年齢だったら諦めもついたかもしれない。義務教育を受けてきた僕としては、嫌だけど踏ん切りがつく。
でも、スキルってなによ。しかも、親は一緒に来れないなんて、そんなことがあるのだろうか。魔法があるこの世界は、絶対に地球よりも危険だと思うのに、保護者の同伴がNGなんて、そんなことがある?
だぁー!どれだけ考えても全然納得できない!こんなスキルなんぞ捨ててしまいたい!
「……ルイ。ちょっといい?」
かーさんがドアを開けながら声をかけてきた。ノックしてよ、ビックリするから!
「……かーさん?どしたの?」
ベッドに突っ伏しながら悶々しているという幼児らしからぬ姿を見られたかと少し焦りながらも応答する。
「近いうちに、領主さまのところに行きましょう」
「りょーしゅさま?」
僕は理解ができないふりをして首を傾げるけど、内心はめちゃくちゃ焦っていた。
なんで!?なんでそうなった!?母さんも学園反対派だった気がするのに、どうしてそうなった!?
「ええ、とっても大きなお家に住んでる人よ。ルイのことをお話ししたいと思ってるの」
「こわいこと、ない?ルイ、かーさんといっしょがいい!」
「大丈夫よ。悪い人じゃないから」
そう言って、母さんは僕を優しく抱き締める。その温もりの暖かさには、いろいろな感情が混じっているのを感じた。
母さんも悩んだんだ。悩んで悩んで、この結論を出したんだと思う。
そうなると、僕もわがままは言えない。
「うん。いく。かーさんもいっしょ?」
「ええ、一緒よ。それじゃあ、領主さまの時間が取れたら行きましょう」
「あーい!」
領主さまか。どんな人かはわからないけど、嫌な人じゃなければいいなと願うばかりだ。
スキルは一個でもあれば充分なんですけど!?
それに、強力なだけじゃなくて、見たことないものもあるって言いませんでした!?
「なにがあったの?」
僕は詰め寄るようにして尋ねる。母さんがルイと名前を呼びながら制止してくるけど、そんなことで止まったりはしない。
先生は少しきょとんとしていたものの、すぐに笑顔を向けて、優しく話してくれた。
「ルイくんには『魔力強化』『複製』『複合』の三つのスキルがあるようです」
「『複製』って、あの伝説の!?」
母さんが声を荒らげるけど、僕は首をかしげる。母さんの言う伝説が、なんなのかさっぱりわからない。
何か、有名な昔話でもあるのだろうか?それとも、神話か何か?どっちにしろ、ヤバいスキルではありそうだ。
「おそらくはそうでしょう。ルイくんの魔力が暴走したのは、『魔力強化』が原因だと思われます。あの英雄も、制御に苦労したと聞いていますから」
「でも、ルイはそれに加えて、『複製』と珍しいスキルも持ってるんですよね?」
「ええ。『複製』は、生き物以外……つまりは、物や魔法、またはスキルすらも、見たことがあり、理解ができれば作り出すことができます。私が知ってるなかで、『複製』を持っていたのは百年前の記録が最後ですね」
はっ?えっ?えいゆう?えいゆうって、英雄?それに、『複製』は百年前が最後?
情報量が多すぎて、全然ついていけない。
「最後の『複合』に関しては、見たことも聞いたこともありません。なので、どんな力を持っているのかわからないのです」
最後のは手がかりすらなし!?『複合』が僕の知っている意味なら、二つのものを一つにするって感じなんだけど、それがスキルになるとどうなるのかわからない。
何か、二つのものを合体させる錬金術みたいなことができるんだろうか?
「あの……ルイはどうなるのでしょうか?」
「そうですね……『魔力強化』に加えて『複製』を持っていますから、学園入りは間違いないと思われます」
その言葉に、母さんはものすごくショックを受けたような顔をするけど、僕はさっぱりわからない。
「かーさん。学園ってなに?」
くいくいと引っ張りながら聞いてみるけど、母さんからの応答はない。どれだけショックなの?学園って、普通に考えたら学校のことだと思うけど、そんなにヤバイところなのかな。
「学園というのは、十歳から十三歳までの子どもが行く場所のことだ」
「なんでいくの?」
「お勉強するんだよ。力を悪いことに使わないようにね」
ふむふむ。地球の義務教育の学校とは少し違うのか。訓練学校のようなものかもしれない。
「かーさん。ダメなの?」
「ルイが行きたいなら行ってもいいけど……でも」
母さんはやはり行ってほしくないようだ。でも、続きを話してくれないから理由がわからない。
「学園は、都の中心にあるんだ。だから、今の家から通うことはできない。寮という別のお家に行かないといけないんだ」
寮?それって……
「……かーさんは?とーさんは?にーには?」
「まったく会えないわけじゃないけど、今みたいに毎日は難しいね。歩いていくには時間がかかるし、馬車はお金がいるから」
「じゃあやだ!行かない!」
ようやくこちらの生活にも慣れてきて、一緒にいてくれる家族もできたのに、どうして離れなければいけないのか。
中身は大人でも、心の根っこはまだ子どもなのだ。家族か学園なら、家族を選びたい。
「でも、間違いなくここの領主さまはルイくんを学園に入れたがるよ。ルイくんはそれだけの価値がある」
「ぜったいにいや!」
僕は、母さんにぎゅっとしがみつく。母さんも、同じように抱き締め返してくれた。
「……どうにか、できませんか?」
「ひとまず、領主さまへの報告は見送りましょう。ですが、少年式を行えば知れ渡ることですよ」
「……わかりました」
母さんは、諦めたようなため息をつく。異世界生活も、のんびりは難しそうだな。
◇◇◇
検査の翌日、僕は現状整理していた。強い力があるだけならまだしも、未知の力もあって魔力も平均以上とは思わなかった。
この結果だと、学園入りは決定だという。こういう検査は不正など起きないように厳正に行われるものだろうし、誤魔化すこともできないだろう。
まだ、基準が年齢だったら諦めもついたかもしれない。義務教育を受けてきた僕としては、嫌だけど踏ん切りがつく。
でも、スキルってなによ。しかも、親は一緒に来れないなんて、そんなことがあるのだろうか。魔法があるこの世界は、絶対に地球よりも危険だと思うのに、保護者の同伴がNGなんて、そんなことがある?
だぁー!どれだけ考えても全然納得できない!こんなスキルなんぞ捨ててしまいたい!
「……ルイ。ちょっといい?」
かーさんがドアを開けながら声をかけてきた。ノックしてよ、ビックリするから!
「……かーさん?どしたの?」
ベッドに突っ伏しながら悶々しているという幼児らしからぬ姿を見られたかと少し焦りながらも応答する。
「近いうちに、領主さまのところに行きましょう」
「りょーしゅさま?」
僕は理解ができないふりをして首を傾げるけど、内心はめちゃくちゃ焦っていた。
なんで!?なんでそうなった!?母さんも学園反対派だった気がするのに、どうしてそうなった!?
「ええ、とっても大きなお家に住んでる人よ。ルイのことをお話ししたいと思ってるの」
「こわいこと、ない?ルイ、かーさんといっしょがいい!」
「大丈夫よ。悪い人じゃないから」
そう言って、母さんは僕を優しく抱き締める。その温もりの暖かさには、いろいろな感情が混じっているのを感じた。
母さんも悩んだんだ。悩んで悩んで、この結論を出したんだと思う。
そうなると、僕もわがままは言えない。
「うん。いく。かーさんもいっしょ?」
「ええ、一緒よ。それじゃあ、領主さまの時間が取れたら行きましょう」
「あーい!」
領主さまか。どんな人かはわからないけど、嫌な人じゃなければいいなと願うばかりだ。
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