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第一章 優しい家族
3. お出かけ
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時間が過ぎるのは早いもので、僕も三歳になりました。
走り回ることもできるようになった僕の行動範囲はますます広がり、家も手狭になってきています。
でも、この家は、決して裕福というわけではないみたいで、僕が走り回れるような庭などはなく、お家もそんなに広くはありません。
でも、僕は動きたい盛りの子ども。体に精神が引っ張られているせいで、動かないとむずむずして仕方ない。
「にーに!おしょとー!」
「わかった。行こうか」
そのため、僕は、兄とともにお外で遊ぶことにしました。兄も、すんなりと了承してくれる。
歩けるようになった僕は、誰かと一緒なら外出が許可されたんだけど、手間がかからなくなって、母が働きに出るようになった結果、両親はあまり長い時間が取れないんだよね。
でも、母と代わるように家にいてくれるようになった兄のおかげで、ようやく外に出られる。
僕が兄と一緒に階段を降りると、一階で仕事をしていた両親が気づいたみたいで、キッチンに繋がるドアから顔を出して声をかけてくる。
「外に行くの~?気をつけなさいよー」
「あんまり遠くに行くんじゃないぞー!」
僕たちは、くるりと振り返って、手を振る。
「あーい!」
「わかってるよ、母さん!父さん!」
お仕事の邪魔にならないうちに、僕たちは裏口からそそくさと外に出た。
そして、裏口と面している脇道を抜けると、大通りに出る。
そこには、今まで見たことのない世界が広がっていた。
「ほわぁー!」
僕は、よくわからない感嘆の声をあげてしまう。
そして、キョロキョロと辺りを見渡した。
「にーに!あれ!あれなに!?」
「あれは果物を干しているだけだよ」
「あしょこは!?」
「露店街だね。あそこで食べ物や布を購入しているよ」
「ふわぁー!」
外に出るのが初めてな僕は、興奮が収まらない。
ちょっと考えればわかるようなことも、兄に聞かずにはいられなかった。
土を踏む感触、往来する人々、騒がしいくらいの人の声は、前世で飽きるほどに経験してきたことなのに、とても新鮮だ。
「ルイ、くだものほしい!」
せっかく外に出られたのだ。ショッピングくらいはしたい。
果物は、この辺りでは栽培されておらず、輸送費がかかる分、平民から見ると、少し高値で販売されている。
家でも、果物が出たことは一度もなく、兄も、十年近く生きてきて、二度しか口にしたことがないそうだ。
またいつ出られるかわからないし、ちょっとした贅沢のおねだりくらいは許してもらおう。
「じゃあ、少し買っていく?お金に余裕はないから、一つか二つになるけど……」
「ほしい!たべたい!」
転生してから、一度も甘味を口にしていない。果物を、一口くらいかじってみたい。
「じゃあ、行ってみようか」
「やったー!」
僕は、子どもらしく両手をあげて無邪気に喜ぶ。この体の本来の精神に引っ張られるので、感情が正直に表に出るところはあるけど、こういう大げさな動作は、大抵は演技だ。
家族には、転生のことは秘密にしている。不気味に思われたくはないし、変な団体に目をつけられたりしても困る。
ラノベとかでは、転生者という理由で頼られたり狙われたりもするらしいからね。
そんなことで、この幸せな生活を壊したくはない。
「にーに。これなぁに?」
露店街にたどり着いた僕は、真っ先に目についた、リンゴらしきものを指差す。
「ああ、それはエルパだよ。少し酸っぱいけど、甘くておいしいよ」
おお、リンゴの特徴だ。名前がちがうだけで、リンゴっぽいね。
僕も、リンゴは好きだし、これは購入候補に入れておこう。
「あれは~?」
今度は、赤いこぶりな果実を指差した。
「あれはベリーの実だね。同じ時期にできるけど、エルパより酸っぱいから、エルパのほうが売れるみたいだよ。僕は食べたことないからわからないけど」
うん、イチゴだね。イチゴ。
日本の食材と同じような名前もあれば、まったくちがう名前もあるけど、味とか見た目は同じみたい。
魔物とかがいる世界でも、植物は似てくるものなのかも。前世の記憶が邪魔にならなさそうで助かる。
他の果物も露店街に並んでいるけど、兄のお財布事情を考えると、このどちらか一つに絞られるみたい。
リンゴとイチゴ。どっちもおいしいけど、僕の今の気分は……
「にーに!エルパたべたい!」
「わかった。一緒に買おうか」
兄は、僕の手をひきながら、先ほどの道を引き返して、エルパの店の前に立った。
「エルパを一つ」
「三十リエだよ」
兄は、懐から銅色のお金らしきものを三枚取り出して渡す。
ほほう。銅貨は、一枚十リエで、日本と価値が同じなら、一リエは十円くらいかな?
自分も買い物することがあるかもしれないし、覚えておこう。
兄が、エルパを一つ取り、僕に渡してきたので、僕はそれを受け取って、がぶりと噛みつく。
味は、前世で食べたリンゴと変わらないどころか、こちらのほうが甘味が強くておいしかった。
これで三百円は安い!
「にーに、エルパおいしい!」
僕が無邪気に喜んでいると、エルパの店のおばさんが、ふふっと笑いながら言う。
「甘いだろ?これは、ローツェンっていう北の土地で採れたものなんだが、その土地に満ちている魔力が、エルパをさらに甘くしてくれてるんだよ」
おお。寒いところだと、甘味が凝縮されるのと、同じ感じかな?それとも、それに加えて、魔力が相乗効果を生み出してるのかな?
どっちにしても、植物には、魔力を使ったほうがいいのかもね。植物を育てるかはわからないけど、機会があったときのために覚えておこう。
「ルイはまだ三歳だから、そんなこと言われてもわからないと思いますよ」
「ははっ。そうかもね」
「う~?」
本当は理解できているけど、僕はすっとぼけた声をだした。
走り回ることもできるようになった僕の行動範囲はますます広がり、家も手狭になってきています。
でも、この家は、決して裕福というわけではないみたいで、僕が走り回れるような庭などはなく、お家もそんなに広くはありません。
でも、僕は動きたい盛りの子ども。体に精神が引っ張られているせいで、動かないとむずむずして仕方ない。
「にーに!おしょとー!」
「わかった。行こうか」
そのため、僕は、兄とともにお外で遊ぶことにしました。兄も、すんなりと了承してくれる。
歩けるようになった僕は、誰かと一緒なら外出が許可されたんだけど、手間がかからなくなって、母が働きに出るようになった結果、両親はあまり長い時間が取れないんだよね。
でも、母と代わるように家にいてくれるようになった兄のおかげで、ようやく外に出られる。
僕が兄と一緒に階段を降りると、一階で仕事をしていた両親が気づいたみたいで、キッチンに繋がるドアから顔を出して声をかけてくる。
「外に行くの~?気をつけなさいよー」
「あんまり遠くに行くんじゃないぞー!」
僕たちは、くるりと振り返って、手を振る。
「あーい!」
「わかってるよ、母さん!父さん!」
お仕事の邪魔にならないうちに、僕たちは裏口からそそくさと外に出た。
そして、裏口と面している脇道を抜けると、大通りに出る。
そこには、今まで見たことのない世界が広がっていた。
「ほわぁー!」
僕は、よくわからない感嘆の声をあげてしまう。
そして、キョロキョロと辺りを見渡した。
「にーに!あれ!あれなに!?」
「あれは果物を干しているだけだよ」
「あしょこは!?」
「露店街だね。あそこで食べ物や布を購入しているよ」
「ふわぁー!」
外に出るのが初めてな僕は、興奮が収まらない。
ちょっと考えればわかるようなことも、兄に聞かずにはいられなかった。
土を踏む感触、往来する人々、騒がしいくらいの人の声は、前世で飽きるほどに経験してきたことなのに、とても新鮮だ。
「ルイ、くだものほしい!」
せっかく外に出られたのだ。ショッピングくらいはしたい。
果物は、この辺りでは栽培されておらず、輸送費がかかる分、平民から見ると、少し高値で販売されている。
家でも、果物が出たことは一度もなく、兄も、十年近く生きてきて、二度しか口にしたことがないそうだ。
またいつ出られるかわからないし、ちょっとした贅沢のおねだりくらいは許してもらおう。
「じゃあ、少し買っていく?お金に余裕はないから、一つか二つになるけど……」
「ほしい!たべたい!」
転生してから、一度も甘味を口にしていない。果物を、一口くらいかじってみたい。
「じゃあ、行ってみようか」
「やったー!」
僕は、子どもらしく両手をあげて無邪気に喜ぶ。この体の本来の精神に引っ張られるので、感情が正直に表に出るところはあるけど、こういう大げさな動作は、大抵は演技だ。
家族には、転生のことは秘密にしている。不気味に思われたくはないし、変な団体に目をつけられたりしても困る。
ラノベとかでは、転生者という理由で頼られたり狙われたりもするらしいからね。
そんなことで、この幸せな生活を壊したくはない。
「にーに。これなぁに?」
露店街にたどり着いた僕は、真っ先に目についた、リンゴらしきものを指差す。
「ああ、それはエルパだよ。少し酸っぱいけど、甘くておいしいよ」
おお、リンゴの特徴だ。名前がちがうだけで、リンゴっぽいね。
僕も、リンゴは好きだし、これは購入候補に入れておこう。
「あれは~?」
今度は、赤いこぶりな果実を指差した。
「あれはベリーの実だね。同じ時期にできるけど、エルパより酸っぱいから、エルパのほうが売れるみたいだよ。僕は食べたことないからわからないけど」
うん、イチゴだね。イチゴ。
日本の食材と同じような名前もあれば、まったくちがう名前もあるけど、味とか見た目は同じみたい。
魔物とかがいる世界でも、植物は似てくるものなのかも。前世の記憶が邪魔にならなさそうで助かる。
他の果物も露店街に並んでいるけど、兄のお財布事情を考えると、このどちらか一つに絞られるみたい。
リンゴとイチゴ。どっちもおいしいけど、僕の今の気分は……
「にーに!エルパたべたい!」
「わかった。一緒に買おうか」
兄は、僕の手をひきながら、先ほどの道を引き返して、エルパの店の前に立った。
「エルパを一つ」
「三十リエだよ」
兄は、懐から銅色のお金らしきものを三枚取り出して渡す。
ほほう。銅貨は、一枚十リエで、日本と価値が同じなら、一リエは十円くらいかな?
自分も買い物することがあるかもしれないし、覚えておこう。
兄が、エルパを一つ取り、僕に渡してきたので、僕はそれを受け取って、がぶりと噛みつく。
味は、前世で食べたリンゴと変わらないどころか、こちらのほうが甘味が強くておいしかった。
これで三百円は安い!
「にーに、エルパおいしい!」
僕が無邪気に喜んでいると、エルパの店のおばさんが、ふふっと笑いながら言う。
「甘いだろ?これは、ローツェンっていう北の土地で採れたものなんだが、その土地に満ちている魔力が、エルパをさらに甘くしてくれてるんだよ」
おお。寒いところだと、甘味が凝縮されるのと、同じ感じかな?それとも、それに加えて、魔力が相乗効果を生み出してるのかな?
どっちにしても、植物には、魔力を使ったほうがいいのかもね。植物を育てるかはわからないけど、機会があったときのために覚えておこう。
「ルイはまだ三歳だから、そんなこと言われてもわからないと思いますよ」
「ははっ。そうかもね」
「う~?」
本当は理解できているけど、僕はすっとぼけた声をだした。
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