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第一章 優しい家族
プロローグ 生まれ変わって
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僕は、いわゆる鍵っ子だった。
まだ幼稚園の時は、一緒に夜ごはんを食べたりもしていたけど、小学校三年生くらいからは、お母さんの作り置きが置いてあって、それをレンジで温める。
お風呂も、洗濯も、家事は全部一人でやって、その合間に宿題もしつつ、疲れきって寝る。その繰り返しだった。
大げさではなく、両親と一度も顔をあわせない日もあったくらい。
そんなんだから、授業参観とか、運動会とか、そういう学校のイベントに親がいることはなかった。
みんなは、親が来ると恥ずかしいって言っていたけど、僕は羨ましかったくらいだ。
僕は、家族で楽しそうにしているなか、ぽつんとしているだけだったから。
中学生になっても、それは変わらなかった。
これくらいの年になると、親がうざったくなるらしいけど、僕はそもそもそこまで関わりを持っていなかったから、そうなる気持ちもなかった。
だから、なんだろうか。
中学生になったあたりから、僕は、もし生まれ変われるなら、優しい家族とずっと一緒にいたい、と思いながら眠るようになっていた。それは認める。
ーーだからといって、これはなくない?
「おぎゃあっ!おぎゃっ……」
赤ん坊の泣き声が耳に響く。
その声に反応して、近くにいた女の人が椅子から立ち上がって、ベビーベッドに寝かされていた、小さな体を抱き上げる。
抱き上げられたのは、僕だ。
そう。僕は、本当に生まれ変わってしまった。しかも、赤子から。
「あら~、ルイ。どうしたの?」
よしよしとあやすように、優しく抱っこする。
この行いから見てもわかる通り、この女の人は母親である。
ダークブラウンの髪に、エメラルドグリーンの瞳を持った、きれいな人だ。中の上には余裕で入りそうな美貌である。
僕の名前も、この人が呼んでて知ったことだ。
最初は何を言ってるのかさっぱりだったけど、話しかけられるうちにわかるようになってきたのだから、赤ん坊は不思議である。
「おしめかしら?それとも、お腹が空いたのかしら?」
母は、僕を一旦ベッドに寝かせてから、服を脱がせ、あちらこちら確認する。
異常がないことがわかると、今度は胸のボタンを外そうとしだした。
「あーっ!あっ!」
胸を外そうとする母を、声をあげて止める。
ちがうちがう!ちょっと思い出にひたってただけ!
体に精神が引っ張られてるのか、よく泣いちゃうんだよね。
体をジタバタしながらアピールする。
「ちょっと待って。ボタン外すのって、ちょっと手間なのよ」
ちがーう!催促じゃなーい!なにも!なにもいらないから!ほんとに!
「ひっ……ひくっ……」
赤ちゃんは泣くのが仕事と言われるだけはあって、ちょっとでも感情的になると、すぐに涙が込み上げてくる。
でも、この涙は、母には催促の涙と取られてしまったらしい。
さっきよりも早い動作でボタンを外し、僕の口に胸を押し当てる。
うう……しゃべることができないって、こんなに辛いのか。
僕が、小さな手で胸を押し退けようとしたり、口をずらしたりして抵抗を見せると、母はきょとんとした。
「あれ……飲まない……」
そりゃそうだよ!お腹空いてないもん!
「うー……」
僕は、なんとかはだけた服を戻そうとするけど、赤ん坊の力では、まず服を引っ張れない。すぐに手からスルリと抜けてしまう。
ぬあ~!悔しい!
「いらないの?」
僕が服を戻そうとしていることに気づいたんだろう。
その言葉に、僕はうんうんとうなずく。
母は、少し戸惑いながらも、僕をベッドに寝かせ、はだけた服を戻した。
よしよし。
「じゃあ、さっきのはなんだったのかしら……。どこか痛かったの?」
僕は服を戻せて満足だけど、母はそうではないらしい。
前世の記憶を思い出してましたなんて、言葉にできたとしても信じてもらえないだろうし、このまま下手に心配させてしまうと、罪悪感がある。
ここは、必殺のあれをやろう。
「あぁ~い!」
僕は、両手を広げて、期待の眼差しを込めて母を見た。
母は、少し戸惑っていたようだけど、何度もアピールすると、母も気づいたようで、僕をそっと抱き上げる。
「よしよし。抱っこしてほしかったのね」
「あい!」
優しく抱いてくれる母に、僕も力の限りハグをした。
たまに、前世が懐かしくなっちゃうこともあるけど、家族が恋しかった僕にとって、この生まれ変わりは、最高である他なかった。
でも、前世のことは、トラウマになりかけているらしい。
今は構ってくれていても、もしかしたら、大きくなったら、前世の両親みたいに、放っておかれるかもしれない。
そんな考えが、たまによぎることもあって、僕は今のうちにとたくさん甘えまくっていたお陰で、僕は甘えん坊だと思われているらしい。
ちょっと恥ずかしいけど、前世の分も愛されてると感じるから、その恥ずかしさも許容範囲。
生まれ変わりに気づいてからは、この人生は、絶対に後悔しないように生きようと誓うのは、自然なことだった。
まだ幼稚園の時は、一緒に夜ごはんを食べたりもしていたけど、小学校三年生くらいからは、お母さんの作り置きが置いてあって、それをレンジで温める。
お風呂も、洗濯も、家事は全部一人でやって、その合間に宿題もしつつ、疲れきって寝る。その繰り返しだった。
大げさではなく、両親と一度も顔をあわせない日もあったくらい。
そんなんだから、授業参観とか、運動会とか、そういう学校のイベントに親がいることはなかった。
みんなは、親が来ると恥ずかしいって言っていたけど、僕は羨ましかったくらいだ。
僕は、家族で楽しそうにしているなか、ぽつんとしているだけだったから。
中学生になっても、それは変わらなかった。
これくらいの年になると、親がうざったくなるらしいけど、僕はそもそもそこまで関わりを持っていなかったから、そうなる気持ちもなかった。
だから、なんだろうか。
中学生になったあたりから、僕は、もし生まれ変われるなら、優しい家族とずっと一緒にいたい、と思いながら眠るようになっていた。それは認める。
ーーだからといって、これはなくない?
「おぎゃあっ!おぎゃっ……」
赤ん坊の泣き声が耳に響く。
その声に反応して、近くにいた女の人が椅子から立ち上がって、ベビーベッドに寝かされていた、小さな体を抱き上げる。
抱き上げられたのは、僕だ。
そう。僕は、本当に生まれ変わってしまった。しかも、赤子から。
「あら~、ルイ。どうしたの?」
よしよしとあやすように、優しく抱っこする。
この行いから見てもわかる通り、この女の人は母親である。
ダークブラウンの髪に、エメラルドグリーンの瞳を持った、きれいな人だ。中の上には余裕で入りそうな美貌である。
僕の名前も、この人が呼んでて知ったことだ。
最初は何を言ってるのかさっぱりだったけど、話しかけられるうちにわかるようになってきたのだから、赤ん坊は不思議である。
「おしめかしら?それとも、お腹が空いたのかしら?」
母は、僕を一旦ベッドに寝かせてから、服を脱がせ、あちらこちら確認する。
異常がないことがわかると、今度は胸のボタンを外そうとしだした。
「あーっ!あっ!」
胸を外そうとする母を、声をあげて止める。
ちがうちがう!ちょっと思い出にひたってただけ!
体に精神が引っ張られてるのか、よく泣いちゃうんだよね。
体をジタバタしながらアピールする。
「ちょっと待って。ボタン外すのって、ちょっと手間なのよ」
ちがーう!催促じゃなーい!なにも!なにもいらないから!ほんとに!
「ひっ……ひくっ……」
赤ちゃんは泣くのが仕事と言われるだけはあって、ちょっとでも感情的になると、すぐに涙が込み上げてくる。
でも、この涙は、母には催促の涙と取られてしまったらしい。
さっきよりも早い動作でボタンを外し、僕の口に胸を押し当てる。
うう……しゃべることができないって、こんなに辛いのか。
僕が、小さな手で胸を押し退けようとしたり、口をずらしたりして抵抗を見せると、母はきょとんとした。
「あれ……飲まない……」
そりゃそうだよ!お腹空いてないもん!
「うー……」
僕は、なんとかはだけた服を戻そうとするけど、赤ん坊の力では、まず服を引っ張れない。すぐに手からスルリと抜けてしまう。
ぬあ~!悔しい!
「いらないの?」
僕が服を戻そうとしていることに気づいたんだろう。
その言葉に、僕はうんうんとうなずく。
母は、少し戸惑いながらも、僕をベッドに寝かせ、はだけた服を戻した。
よしよし。
「じゃあ、さっきのはなんだったのかしら……。どこか痛かったの?」
僕は服を戻せて満足だけど、母はそうではないらしい。
前世の記憶を思い出してましたなんて、言葉にできたとしても信じてもらえないだろうし、このまま下手に心配させてしまうと、罪悪感がある。
ここは、必殺のあれをやろう。
「あぁ~い!」
僕は、両手を広げて、期待の眼差しを込めて母を見た。
母は、少し戸惑っていたようだけど、何度もアピールすると、母も気づいたようで、僕をそっと抱き上げる。
「よしよし。抱っこしてほしかったのね」
「あい!」
優しく抱いてくれる母に、僕も力の限りハグをした。
たまに、前世が懐かしくなっちゃうこともあるけど、家族が恋しかった僕にとって、この生まれ変わりは、最高である他なかった。
でも、前世のことは、トラウマになりかけているらしい。
今は構ってくれていても、もしかしたら、大きくなったら、前世の両親みたいに、放っておかれるかもしれない。
そんな考えが、たまによぎることもあって、僕は今のうちにとたくさん甘えまくっていたお陰で、僕は甘えん坊だと思われているらしい。
ちょっと恥ずかしいけど、前世の分も愛されてると感じるから、その恥ずかしさも許容範囲。
生まれ変わりに気づいてからは、この人生は、絶対に後悔しないように生きようと誓うのは、自然なことだった。
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