私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん

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第二章 学園生活の始まり

112.

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 お出かけのお誘いを受けてから三日後。私たちはお忍びで出かけることになった。
 視察のための服を買うから、貴族用の華美な服よりも機能性の高い庶民の服のほうがいいらしい。
 でも、そんな店に王子がぞろぞろとやってきたら大騒ぎどころではないので、お忍びで向かうわけだ。
 まぁ、お店の人は王家もお忍び用の服を買ったりして懇意にしているそうだから多分驚かないけどね。

 そのお忍びはというと、髪や瞳の色を変えて、服も飾り気のないものにするというもの。でも生地は最上のものだ。
 あくまでも貴族のお忍びというスタイルは変えずに、王子だと思われない程度にするってことみたいだ。
 完全に平民に溶け込むとトラブルに巻き込まれる可能性もあるからとのこと。まぁ、中身はともかく見た目は子どもだもんね。

 どうやって姿を変えるかというと、魔法を使うらしい。染め粉とかもあるんだけど、魔法のほうがムラが出ず、髪色を戻しやすい。髪も痛まないそうだ。

 姿を変える魔法は闇属性の魔法なので、ハーステッドお兄さまが行うことになる。
 ハーステッドお兄さまは手慣れているのかさっと髪色を変えてしまった。
 
 色は薄茶色で、心なしかわたしの髪色と同じに思える。
 お兄さまたちは嬉しそうにしていて、エルクトお兄さまだけが髪色を見て呆れていた。きっと、私と同じ感想を抱いていたのだろう。

 でも、それとは別にもう一つ気になることがある。

「ハーステッドお兄さま。目の色は変えないんですか?」

 変わったのは髪色だけで瞳は変わっていないのだ。私やハーステッドお兄さま、ルーカディルお兄さまはともかく、シルヴェルスお兄さまとエルクトお兄さまの金の瞳は王族の証なので、目を見られれば正体は一発でバレる。

「目は魔法具を使うんだよ。魔法を使って失敗したら、魔力が暴走して目が見えなくなる可能性があるから。魔法薬を使うこともあるけど……それも魔法よりはマシって程度だし」
「そうなんですか……」

 それは知らなかった。でも、魔力が神経を傷つけるというのはあり得なくはなさそうだ。
 だって、魔法は相手を傷つけることができるのだから。その元である魔力でも傷つけることはできてもなんらおかしくないし、むしろ当然のことといえる。

 でも、目の色を変えるってどうするのかな。

「よく使うのはこれだよ」

 シルヴェルスお兄さまが見せてくれたのは、一見するとどこにでもありそうなシンプルな作りのメガネだった。
 これが魔法具なの?

 私が訝しんでいるのを察したのか、シルヴェルスお兄さまはクスリと笑って眼鏡をかける。

(うわぁー!メガネ姿ヤバい!)

 イケメンがメガネをかけるという最高のシチュエーションに見惚れていると、瞳の色が一瞬で金から黒に変わってしまった。

 おおー、すごい!すごいん……だけど。

「なぜ瞳まで黒くした?」

 私の言葉を代弁するようにエルクトお兄さまが尋ねる。
 そんなエルクトお兄さまの瞳は青色なので、別に黒しかないというわけではなく、シルヴェルスお兄さまが自分の意思で黒色を選んだのだろう。
 でも、髪色も同じ感じなのに、瞳も黒かったら色合いが私と一致しますよね。

「お忍びでくらい色を揃えてもよいではありませんか。アナとは同腹ですが、あまり似ていませんし」

 確かに、私はシルヴェルスお兄さま……に限らず、同じく同腹のヴィオレーヌお姉さまとも似ていない。
 強いていえばシュリルカお母さま……?でも、それも共通点は童顔ってことくらいだしなぁ。

 隔世遺伝という可能性もあるだろうけど、どうしてこんな地味~な色合いなんだか。

「でも、兄上だけずるくない?僕だって目の色揃えたいのに」
「俺も……」

 いや、勘弁してください。お兄さまたちはただでさえ容姿端麗だというのに、色合いまで揃えたら確実に目立ちますよ。
 ある程度はバラバラのほうがある意味溶け込めると思うんですけど。

 エルクトお兄さまがはぁとため息をついて言う。

「お前たちは隠さないほうがいいだろう?」
「わかってますよ、そんなことは」

 エルクトお兄さまの言葉に内心でうんうんと頷いていると、ふと引っかかりを覚える。
 エルクトお兄さまの言葉はどういう意味だ?

 隠さなくてもいいとか、隠す必要がないならわかる。だけど、隠さないほうがいいというのは少しおかしくないだろうか。
 ハーステッドお兄さまはエルクトお兄さまの言葉がなんらおかしいとは思っていない様子。なら、何か意味があるんだろうけど……聞いたら教えてくれるだろうか。

「あのーー」
「無駄話していないでさっさと行くぞ」

 私が聞こうとした瞬間に、話を切り上げるようにしてエルクトお兄さまが先導する。なんか、パーティーでも同じことがあったような気がしますよ?
 あの時はお父さまたちが来たから聞けなかったけど、今回はそうはいかない。

「お兄さま。先ほどの言葉はどういう意味ですか?」

 私がエルクトお兄さまの服を引っ張って尋ねる。
 エルクトお兄さまはハーステッドお兄さまたちのほうを見ながら言う。

「気になるなら奴らに聞け」

 私もお兄さまたちのほうを見た。ハーステッドお兄さまはにこりと笑って言った。

「また今度ね」

 どうやら、私の疑問が解消されないのは変わらないみたいです。
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