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第二章 学園生活の始まり
108.
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魔力石に魔力を込めるということは、魔法を使うのと同じような感覚でいいのだろうか。
意識を集中し、手のひらの魔力石に魔力を集めるイメージをしてみる。すると、手のひらから何かが流れていくような感覚があった。
どうやら、魔力を込める作業はこんな感じでいいらしい。
そのまま魔力を込め続けると、あっという間にーー
「アナスタシアさま!」
ふらついた私の体をカイエンが支えてくれる。
ああー……この頭がボーッとする感じ……懐かしい。
「心配しないで。ただの魔力切れだから」
そう。私のしょぼい魔力はあっという間になくなってしまった。
魔法を使ったときと違って少しずつ減っていくから、限界が来る前にストップをかけることができて意識を失うことはなかったけど……
「本日はここまでにいたしましょう。このまま行けば遅くとも二週間ほどで終わると思われます」
「はい……」
うー……頭がくらくらするなぁ。抑えたつもりだったけど、やりすぎたかな。次はもうちょっと控えめにしなきゃ。
「では、こちらはお預かりいたしますね」
「はい、失くさないでください……」
私がそう言いながら魔力石を渡すと、ロジャード先生は無言のまま受け取った。
そこはもちろんですとか言ってよ、お願いだから。
「では、明日のこの時間で来てくだされば対応いたしますので」
「はい、それでは」
私はカイエンに支えてもらいながら部屋を後にする。
カイエンと知り合いっぽいロジャード先生はともかく、さすがに他の人に見られるのはまずいかと思って離れようとするけど、カイエンは放そうとしない。
「別に、一人でも歩けるよ?」
「その言葉が信用できない顔色をしていらっしゃいますので」
えっ?そんなに体調悪そうに見える?確かにふらつくけど、視界も良好だしちょっと熱っぽいだけだと思うんだけど。
「じゃあ、どこかで休んでいこう。あまりこういう姿は見られたくないし」
弱っている姿を見せないに越したことはない。特に、あの人たちに気づかれたら大変なことになりそうだし……
「ルナティーラ王女殿下ならば治療できそうですが」
カイエンの言葉に私は首をぶんぶんと勢いよく横に振る。
なんて恐ろしい提案をしてくれるんだ!お姉さまたちにこのことがバレたら、下手したらロジャード先生クビだよ!?
「では、ロジャード先生の研究室に戻りますか?」
「それはなんか気まずいし……」
さっき出てきたばかりなのに、また戻って休憩させてくださいなんて言う度胸は私にはない。
カイエンは私のわがままに辟易しているのかため息をついている。そんなカイエンの顔を見られずに私が目をそむけると、私の額にカイエンの手が当たる。
「本来は緊急時の応急処置なのですが」
カイエンがそう言うと、額に当てられた手がだんだんと冷たくなってくる。ちょっと熱っぽかったから、ひんやりとした手がとても気持ちいい。
それと同時に、だんだんと体が軽くなっていく感じがした。
「少しは楽になりましたか?」
「う、うん……何をしたの?」
「アナスタシアさまに俺の魔力を少し送っただけです。魔力切れへの一番の対処法は魔力を回復させることなので」
「そんなことできるの!?」
魔法を習い始めたばかりの時に魔力切れを起こしたときは、自然回復を待つだけだったんだけど。
そんなことができるなら、魔力が有り余っているであろう私の家族がやらないわけないんだけど。
「緊急時の応急処置だと言ったでしょう?他人に魔力を注ぐのはかなり危険な行為ですから」
「そ、そうなの?」
「相手の魔力総量を越えると魔力過剰症となりますから。咳や頭痛などで済めばいいほうで、手足が動かなくなったり記憶喪失になったりした事例もあるそうです」
「それを私にやったの!?」
ロジャード先生が聞いているかもとか、体の不調とか全部忘れて、私は叫んだ。
下手をすれば寝たきりの状態になっていたと思うと、体がブルブルと震える。家族が自然回復に任せるわけだと納得した。
カイエンの私に対する扱いが雑だなと感じてはいたけど、こんなに軽々しく扱われるなんて……!
「魔力石の様子を見ていたのでアナスタシアさまの魔力総量の目安はついていましたし、俺は魔力放出の微調整は慣れていますから。アナスタシアさまの保有魔力の半分以下になるように調整しました」
「えっと……もうちょっとわかりやすくお願い」
聞いたことのないワードがたくさんでてきて、ただでさえ本調子じゃない私の頭ではこんがらがってしまう。
つまりは、どういうことですか?
「アナスタシアさまのお体に不調が出ない量に調節したので問題ないという意味です」
「オッケー、理解した」
まだよくわからないけど、とりあえず手足が動かなくなったり記憶喪失になったりしないのはわかった。
「でもさぁ……それでもまったく危険がないわけじゃなかったんじゃないの?」
「アナスタシアさまがいろいろと注文をつけられたので」
それは私が悪いかもしれないけど……でも、リスクを説明してからでもよかったんじゃないの?
まぁ、今回は助かったから大目に見るとしても、次は絶対に言ってもらわなきゃ。
「今回はいいけど、次からは危険があるならちゃんと事前に言って。それを聞いて判断するから」
「かしこまりました」
本当にわかってるのかなぁ……?一応、念には念を入れておくか。
「次はお父さまたちに包み隠さず報告するから」
「それは俺に死ねって言ってるようなものですよ!?」
自覚があるんなら最初から気をつけろっての。
まぁ、カイエンのこういうところは、わりと嫌いじゃないんだけどね。
意識を集中し、手のひらの魔力石に魔力を集めるイメージをしてみる。すると、手のひらから何かが流れていくような感覚があった。
どうやら、魔力を込める作業はこんな感じでいいらしい。
そのまま魔力を込め続けると、あっという間にーー
「アナスタシアさま!」
ふらついた私の体をカイエンが支えてくれる。
ああー……この頭がボーッとする感じ……懐かしい。
「心配しないで。ただの魔力切れだから」
そう。私のしょぼい魔力はあっという間になくなってしまった。
魔法を使ったときと違って少しずつ減っていくから、限界が来る前にストップをかけることができて意識を失うことはなかったけど……
「本日はここまでにいたしましょう。このまま行けば遅くとも二週間ほどで終わると思われます」
「はい……」
うー……頭がくらくらするなぁ。抑えたつもりだったけど、やりすぎたかな。次はもうちょっと控えめにしなきゃ。
「では、こちらはお預かりいたしますね」
「はい、失くさないでください……」
私がそう言いながら魔力石を渡すと、ロジャード先生は無言のまま受け取った。
そこはもちろんですとか言ってよ、お願いだから。
「では、明日のこの時間で来てくだされば対応いたしますので」
「はい、それでは」
私はカイエンに支えてもらいながら部屋を後にする。
カイエンと知り合いっぽいロジャード先生はともかく、さすがに他の人に見られるのはまずいかと思って離れようとするけど、カイエンは放そうとしない。
「別に、一人でも歩けるよ?」
「その言葉が信用できない顔色をしていらっしゃいますので」
えっ?そんなに体調悪そうに見える?確かにふらつくけど、視界も良好だしちょっと熱っぽいだけだと思うんだけど。
「じゃあ、どこかで休んでいこう。あまりこういう姿は見られたくないし」
弱っている姿を見せないに越したことはない。特に、あの人たちに気づかれたら大変なことになりそうだし……
「ルナティーラ王女殿下ならば治療できそうですが」
カイエンの言葉に私は首をぶんぶんと勢いよく横に振る。
なんて恐ろしい提案をしてくれるんだ!お姉さまたちにこのことがバレたら、下手したらロジャード先生クビだよ!?
「では、ロジャード先生の研究室に戻りますか?」
「それはなんか気まずいし……」
さっき出てきたばかりなのに、また戻って休憩させてくださいなんて言う度胸は私にはない。
カイエンは私のわがままに辟易しているのかため息をついている。そんなカイエンの顔を見られずに私が目をそむけると、私の額にカイエンの手が当たる。
「本来は緊急時の応急処置なのですが」
カイエンがそう言うと、額に当てられた手がだんだんと冷たくなってくる。ちょっと熱っぽかったから、ひんやりとした手がとても気持ちいい。
それと同時に、だんだんと体が軽くなっていく感じがした。
「少しは楽になりましたか?」
「う、うん……何をしたの?」
「アナスタシアさまに俺の魔力を少し送っただけです。魔力切れへの一番の対処法は魔力を回復させることなので」
「そんなことできるの!?」
魔法を習い始めたばかりの時に魔力切れを起こしたときは、自然回復を待つだけだったんだけど。
そんなことができるなら、魔力が有り余っているであろう私の家族がやらないわけないんだけど。
「緊急時の応急処置だと言ったでしょう?他人に魔力を注ぐのはかなり危険な行為ですから」
「そ、そうなの?」
「相手の魔力総量を越えると魔力過剰症となりますから。咳や頭痛などで済めばいいほうで、手足が動かなくなったり記憶喪失になったりした事例もあるそうです」
「それを私にやったの!?」
ロジャード先生が聞いているかもとか、体の不調とか全部忘れて、私は叫んだ。
下手をすれば寝たきりの状態になっていたと思うと、体がブルブルと震える。家族が自然回復に任せるわけだと納得した。
カイエンの私に対する扱いが雑だなと感じてはいたけど、こんなに軽々しく扱われるなんて……!
「魔力石の様子を見ていたのでアナスタシアさまの魔力総量の目安はついていましたし、俺は魔力放出の微調整は慣れていますから。アナスタシアさまの保有魔力の半分以下になるように調整しました」
「えっと……もうちょっとわかりやすくお願い」
聞いたことのないワードがたくさんでてきて、ただでさえ本調子じゃない私の頭ではこんがらがってしまう。
つまりは、どういうことですか?
「アナスタシアさまのお体に不調が出ない量に調節したので問題ないという意味です」
「オッケー、理解した」
まだよくわからないけど、とりあえず手足が動かなくなったり記憶喪失になったりしないのはわかった。
「でもさぁ……それでもまったく危険がないわけじゃなかったんじゃないの?」
「アナスタシアさまがいろいろと注文をつけられたので」
それは私が悪いかもしれないけど……でも、リスクを説明してからでもよかったんじゃないの?
まぁ、今回は助かったから大目に見るとしても、次は絶対に言ってもらわなきゃ。
「今回はいいけど、次からは危険があるならちゃんと事前に言って。それを聞いて判断するから」
「かしこまりました」
本当にわかってるのかなぁ……?一応、念には念を入れておくか。
「次はお父さまたちに包み隠さず報告するから」
「それは俺に死ねって言ってるようなものですよ!?」
自覚があるんなら最初から気をつけろっての。
まぁ、カイエンのこういうところは、わりと嫌いじゃないんだけどね。
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