私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん

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第二章 学園生活の始まり

100.

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 どうにかフウレイの用意した教材をすべて読破し、パーティー当日を迎えた。
 以前、お姉さまたちとお出かけした際に注文したドレスに身を包んだ私は、小さくため息をつく。

『ねぇ、ついてきてくれたりしない?』
『行かねぇって言ってるだろ』

 私は、部屋でくつろいでいるライに念を送るものの、ライからの返答は冷たいものばかり。

『だって一人で行くのはやっぱりつらいし』
『どうせ話しかけるなって言うんだろ。なら、俺がいようが変わらんだろうが』
『そ、それはそうだけど、もっとちゃんとした理由もあるの』
『さっきのがちゃんとしてないって言ってるようなものじゃないか』

 ペンダントの野次は無視して、私は理由を話す。

『指輪が乱入してくるかもしれないでしょ?』

 吸魔の指輪という神器は、リルディナーツさまに回収を命じられた神器の一つでありながら、なぜかペンダントーー水鏡のことを狙っている。
 あの時はライに敵わないと踏んで逃げられたけど、また来る可能性はある。だからこそ、ライに側にいてほしい。

『それなら、しばらくは大丈夫だろ。あのバカでもお前が俺の主ってことには気づいてるだろうから、俺を警戒して現れないはずだ』
『でも、神器ってお互いの気配を感じ取れるんじゃないの?』

 ライもペンダントの気配を感じて私を外に連れ出していたし、ペンダントも指輪の気配を感じ取っていた。
 それなら、指輪がペンダントの気配だけを感じ取れば仕掛けてくる可能性はありそうだ。

『察知できるのは実体化してる神器だけだよ。主の精神と同化してると、主の魔力に溶けてる状態になるから、その主に触れでもしない限りは察知できない』

 ペンダントが代わりに答えてくれて、なるほど~と私は納得したけど、ライはなぜかじっとペンダントのほうを見ている。

『ライ、どうかした?』
『……いや、なんでもねぇ。それより、さっさと行きな。遅れたら意味ねぇだろ』
『はーい……』

 ふぅと一息ついて、ドアノブに手をかける。
 私はげんなりとした気持ちをなるべく隠しながら部屋を出た。

◇◇◇

 離宮の外に出た私は、すでに待機していた兄姉たちに出迎えられた。

 新入生歓迎パーティーなので、学生は基本的に全員参加。そしてなんと、お父さまやお母さまたちも参加するんだって!
 レーシャン・マナに通う生徒たちは、国の未来を担う人材と言っても過言ではない。そんな彼らに顔出ししておくのは国王として意味のあることなのだろう。
 でも、普段のお仕事もあるから、本当に顔見せするだけらしいけど。

 そんなわけなので、参加はするけど出迎えてくれてるのは兄姉たちだけなのだ。
 そして、当たり前だけどパーティーなのできらびやかな衣装を身に纏っている。
 その眼福過ぎる光景に、感嘆のため息がこぼれる。

(全員別格だぁ……!)

 ヴィオレーヌお姉さまは紺色を基調としたドレスに銀糸で刺繍が施されており、まるで夜空を纏っているかのようだ。袖口や裾のフリルも黒く、シックな雰囲気がある。
 夜の女神とたとえられそうな佇まいに圧倒される。

 あっ、新入生歓迎パーティーは、招待状さえあれば生徒以外も参加可能ですよ。いろいろな家と繋がれるチャンスなので、どうにか招待状を手に入れて参加している貴族も多いみたいだ。
 ヴィオレーヌお姉さまはすでに学園を卒業しているけど、パーティーには出てくれるみたい。ありがたいような、不安が募るような、複雑な心境ですけども。

 エルクトお兄さまは黒のジャケットコートを身につけている。襟や袖口には金糸で細やかな刺繍が施されていた。
 今のお兄さまはまるで騎士みたいだ。とても強いし気遣いもできるから頼りがいがある騎士さまだ。

 ルナティーラお姉さまは私がチョイスしたドレス。クリーム色に銀糸で刺繍がされている。袖口や裾には白いフリルがあしらわれており、胸元にはブラウンのリボン。
 やっぱりお姉さまに似合う!あれにして正解だった!

 シルヴェルスお兄さまは紺色のフォーマルジャケットに金糸で細やかな刺繍が施されている。デザインはエルクトお兄さまと似ているけど、色合いや雰囲気から、シルヴェルスお兄さまは貴公子みたいだ。
 これは、さぞモテモテでしょうなぁ~。でも、やっぱりかわいいんだよな、お兄さまは。

 ハーステッドお兄さまはダークヒーローにしか見えない。白いフリルシャツ、黒のロングコートに赤い紐リボン。シンプルだけどそれがハーステッドお兄さまのダークな雰囲気を引き立てている。
 これは刺さる人には刺さるタイプだ。私は好き。

 ルーカディルお兄さまはもう直視できない。青緑のフォーマルジャケットに青い蝶ネクタイの姿が尊すぎる。
 あの姿で微笑まれでもしたら、信者をさらに増やしかねない。

 私は完全にドレスに負けているけど、お兄さまたちはさらに磨きがかかっている。

 このお兄さまたちの中に混じるとなると、空気になるどころか異物になりそうで、今にも不安が最高潮に達しそうだ。

「わぁ、アナかわいいね!」

 真っ先に私を褒めてくれたのはシルヴェルスお兄さま。

「ありがとうございます。お兄さまもかわいいです!」
「やっぱりかわいいなんだね……」

 シルヴェルスお兄さまはしょんぼりとしてしまう。だってかわいいんだから仕方ない。

「俺は?」
「僕はカッコいいでしょ~?」

 ルーカディルお兄さまとハーステッドお兄さまが褒めてとばかりにキラキラとした目で私を見る。

「ハーステッドお兄さまはカッコいいですけど、ルーカディルお兄さまは尊いとしか言いようがありません……」
「尊いってなんだ……?」

 私の言葉が理解できないのかルーカディルお兄さまは首を傾げる。やっぱり尊いとしか言いようがありませんよ。

 制服のときに褒めたときもそうだったけど、もしかしたらこの国には尊いという言葉はないのかもしれない。それか、褒め言葉としては使わないのかも。
 でも、尊いという言葉は説明する言葉ではない。インスピレーションで感じ取ってもらおう。

「アナ~!私は~?」
「ルナティーラお姉さまもとってもかわいいです!」

 私がチョイスしたドレスだから当然だけど、実に私好みです。今日しか見られないと思うと実にもったいない。

「今度は私もアナにドレス選んであげるからね」
「はい!」

 私は元気に返事をするけど、なぜか周りの空気が冷たい。
 うん?と思い周囲に視線を向けると、なぜかこちらに冷たい視線を向けてくる兄たちがいた。
 参加していないのはヴィオレーヌお姉さまとエルクトお兄さまくらいで、この二人は呆れた視線を向けている。

「ルナティーラ姉上。私もってどういう意味ですか?」

 シルヴェルスお兄さまの言葉に、ルナティーラお姉さまはなぜか勝ち誇ったように答える。

「このドレスはアナが選んでくれたのよ。だから、今度は私が選んであげるってこと」

 ちょっとお姉さま!この人たちにそんなこと言ったら……!

「姉上だけずるい!僕だって選んでもらいたいのに!」
「俺だって……」

 ハーステッドお兄さまとルーカディルお兄さまから不満の声があがる。
 シルヴェルスお兄さまはと思っていると、シルヴェルスお兄さまが私のほうに近づいてきて言う。

「アナ、今度は僕と一緒に出かけようか」
「えっ?で、でも……」

 お姉さまたちと違って、王位継承権一位で正妃の息子であるお兄さまは、そうほいほいと出かけられないのでは……?

 そんな心の声が顔にでも出ていたのか、シルヴェルスお兄さまは「安心して」と私の肩に手を置く。

「理由ならいくらでも作れるから」

 あれ?理由って作るものでしたっけ?

「じゃあ、僕とも一緒にお出かけしよー」

 ハーステッドお兄さまがシルヴェルスお兄さまの手を引き離しながら私に笑顔で提案する。
 引き剥がされたシルヴェルスお兄さまは不満げな顔をしている。

「俺も……」

 ハーステッドお兄さまの袖をくいくいと引っ張りながらルーカディルお兄さまが訴える。
 同い年だけど、こういうところは弟っぽいな。
 ハーステッドお兄さまは嫌そうな顔をしているけど、仕方ないとばかりにため息をついた。

 なんか、お兄さまたちとのお出かけが決定したっぽい……?なら、護衛騎士の三人に話を通しておかないと。

「話はそのくらいにしておけ。そろそろ行くぞ」
「はーい」

 私がエルクトお兄さまの言葉に従って馬車のほうに向かうと、肩にぽんと手を置かれる。

 この流れはもしかして……?

 私がおそるおそる振り返ると、そこにはルナティーラお姉さまがいた。

「アナは私と一緒に行きましょ」
「姉上は帰りでいいでしょう。行きは僕が一緒に乗ります!」
「ええー!僕も行きがいい!」
「俺も……」

 いつぞやのときのように誰が私と一緒の馬車に乗るかの争いが始まりました。
 以前と違うのは、行きと帰りで別れようという考えはあることだろうか。

 多分、しばらくはお互いに譲らないんだろうな。この意地っ張りな兄姉たちは折れるまでとても時間がかかるから。
 本音を言うなら、パーティーに参加したくないけど、参加しなければならないのならさっさと終わらせてしまいたいから、折れるのを待ってなんていられない。

「私はエルクトお兄さまとヴィオレーヌお姉さまと一緒に行きますから」

 学園のときとは違って、今回は七人揃っているので、四人と三人でバランスよく分かれることができる。
 それに、エルクトお兄さまだけでなくヴィオレーヌお姉さまもセットなので、いつものずるい発言はしにくいはずだ。

 お兄さまたちはショックを受けたような顔をしてはいるものの、その口から文句が出てきたりはしなかった。

 そんな兄姉たちに、エルクトお兄さまとヴィオレーヌお姉さまは冷たい目を向ける。

「行くぞ、アナスタシア」
「参りましょう、アナスタシア」
「は、はい……」

 チラチラと後方を気にしながらも、私はエルクトお兄さまとヴィオレーヌお姉さまの乗る馬車に乗り込んだ。
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