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1巻
1-3
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◇◇◇
アナスタシアが出ていった部屋には、先ほどの雰囲気とは一転し、重い空気が流れていた。
給仕としてこの場に残っているヒマリ・メリバは、先ほどから心臓がキリキリと絞られているような気がしていた。
実際にキリキリしているのは胃だ。
「それで、アナスタシアに席を外させたということは、例の調査を終えたのか」
この重い空気の中、最初に発言したのは国王だった。
ヒマリは、無意識のうちに国王に視線を向ける。
「はい。まともなのはおよそ一割ほど。残りの九割は、仕事はしているものの、アナスタシアを王女として扱っていない者ばかりです」
ルナティーラはどこからか資料を取り出して説明する。
それに、エルクトが反応した。
「それだけか?」
「いえ。アナスタシアも気づいているようですが、装飾品や支度金にも手をつけております」
「どうやら、しばらく顔を出さぬうちに、あそこには命知らずが集うようになったらしいな」
ここまで話されれば、話題がアナスタシアの使用人についてだということがわかる。
国王は、かなり腹を立てている様子だった。いや、国王だけではないだろう。おそらく、この場にいる全員がだ。
その様子を見て、ヒマリは知らない顔も多い離宮の使用人たちを憐れんだ。
離宮の使用人たちは、普段は陛下たちと交流がないから知らないのだろう。国王も妃も王子たちも王女たちも、皆がアナスタシアを王女として扱っているどころか、妹、または娘として可愛がっていることを。
普段会いに行かないのは、時間が取れないのと、頻繁に会いに行くと、貴族の重鎮たちがうるさいからだ。
そして、アナスタシアがいない時の王家の方々の集まりでは、こんな寒々しい空気が流れることも知らないに違いない。
こんな方たちに喧嘩を売るような所業は、よほどの能無しでなければやらないことだ。
重鎮たちも、頻繁に会うのはどうかと苦言を呈することはあっても、会うなとは言わない。
そんなことを言えば、王家の方々が自分たち相手にどんな手段に出るかわかったものではないからだ。
普段からこんな姿の国王たちを見ているからこそ、王宮の使用人たちのアナスタシアへの評価は高い。彼女が来るだけで、一気に雰囲気が柔らかくなるからだ。
先ほどアナスタシアを少々強引に追い出したのは、こんな話題の会議でこの姿を隠し通せるとはお思いになられなかったからなのだろうなと、ヒマリはぼーっと国王を見つめていた。
「ヒマリ・メリバ」
「は、はい! 私ですか!?」
急に王妃であるシュリルカに指名されて、ヒマリは体を強張らせる。ぼーっとしていたから、余計に。
他の者たちは、ヒマリを同情の視線で見ている。彼らが使用人を役職名だけでなく、家名も含めて呼ぶ時は、何かしら処罰を下す時がほとんどだからだ。
ヒマリは何かしらの罰を受けるのかと、今までのことを思い返して心当たりを探した。体からは大量の汗が流れている。
「あなたは、王宮付きの使用人だったわね」
「は、はい。給仕を担当しております」
「他の仕事はできるかしら」
「……はい。洗濯や掃除も担当しておりましたので……」
処罰されると思っていたヒマリは、予想外の質問が飛んできたことに困惑しながらも答える。
自分は処罰されないの? なぜこんなことを? とヒマリが目を白黒させていると、王妃の言葉を継ぐように、ルルエンウィーラが聞いてきた。
「王宮の給仕の仕事は、一人抜けても平気かしら?」
「あっ、はい。毎日二人は休暇として休んでいますので、一人くらいでしたら……」
「それなら、仮としてあなたがアナスタシアの離宮の使用人になってくれる?」
質問の形ではあるものの、有無を言わさないような言い方だった。
その言葉に、ヒマリは思わず驚愕する。
「わ、わ、私が……ですか?」
「あら。まさか、嫌なのですか?」
ルナティーラが冷たい視線でヒマリを見てくる。
ヒマリはルナティーラに向かって、慌てて弁明した。
「い、いえ! そのようなことはありません! アナスタシアさまにお仕えできるなんて光栄です!」
ここでアナスタシアさまにお仕えしたくないなどと口走ろうものなら、明日の朝日は拝めなくなっていただろう。離宮で働いていた使用人のほとんども、クビどころか家族とすら会えなくなるのではないのだろうか。
離宮の使用人たちは、これを予想できなかったのだろうか。いや、できていたらこんな馬鹿なことはしていなかったに違いない。王家の方々の表面的な態度しか見ず、アナスタシアが冷遇されていると勘違いを起こし、アナスタシアを粗雑に扱ったのだから。
(ほんと、寿命が縮むわ。この方たちの相手は)
ヒマリは、心の中で深くため息をついた。
「あの……いつから参りましょうか」
「今からに決まっているだろう。言われなくてはわからないのか?」
「は、はい! ただいま!」
エルクトに冷たくそう言われて、ヒマリは慌てて部屋の外に向かう。
「後は、わたくしの宮からも送っておきましょうか。人が余っておりますし」
「あっ、僕のとこからもー!」
「……なら、俺も」
退出しようとしたヒマリの耳に、ヴィオレーヌ、ハーステッド、ルーカディルの声が届く。
ヒマリは怒られないうちに、さっさとアナスタシアの住む離宮に向かった。
その場に残された他の侍従たちが羨ましそうな顔でこちらを見ていたが、ヒマリができることはなかった。
◇◇◇
晩餐会を追い出されたので、私はとぼとぼと廊下を歩く。
いまだに、なんで追い出されたのかまったくわからない。
「アナスタシアさま、どうかなさいましたか」
「いえ、なんでもないでしゅ」
私の様子がおかしいことに気づいたのか、騎士様が声をかけてきたので、私はとっさに作り笑いをしてごまかした。
あっ……そういえば……
「騎士しゃん。お名前、なんて言うのでしゅか?」
まだ名前を聞いていなかったことを思い出して、後ろを振り返って聞いてみると、真顔で返事が返ってきた。
「ダレスと申します」
「ダレしゅ……ダレスしゃんでしゅね!」
一回目は、"しゅ"になってしまったけど、なんとか"す"を意識して正しく発音ができた。
常にちゃんと発音ができるようになりたーい!
◇◇◇
離宮に戻った私は、いつもと違う違和感に首を傾げる。
圧倒的に人が少ないのだ。前は視界に必ず二人は入るくらいに使用人がいたはずなのに、今は探そうとしないと見つけられないくらいには人数が減っている。
私は、着替えを手伝いに来てくれたザーラさんに聞いてみた。
「ザーラしゃん。にんじゅうがしゅくないようでしゅが、なにかあったのでしゅか?」
呂律の回らない私の言葉もちゃんと聞き取ってくれたようで、ザーラさんは望む答えを返してくれた。
「実は、ここにいる使用人のほとんどが別の宮に配属が決まってしまいまして……まだ代わりの使用人たちが来ておりませんので、人数が少ないのです」
「なんで、しょんなきゅうに?」
「陛下の指示としかうかがっておりません。これ以上はお話できかねます」
「しょうでしゅか」
なんか、皆私の家族のことになると話したがらないというか、すぐに話題をそらしたがるというか……やっぱり私には話しにくいのかな?
――カツ、カツ、カツ。
不意に、靴音らしき音が外から聞こえてくる。
「ザーラしゃん。だれかきたみたいでしゅ」
「そうですね。出てきますので、少々お待ちください」
ザーラさんに案内されて入ってきたのは、女の人……あれれ? この人、どこかで見たような……?
ザーラさんに連れられてきた女の人は、私を見ると、手を胸に当てて跪く。
「直接ご挨拶させていただくのは初めてですので、名乗らせていただきます。元王宮勤めで給仕をしておりました、ヒマリ・メリバと申します」
「あっ! お食事会の時にいたしようにんしゃん!」
給仕をしているという言葉で思い出した。
先ほどのお食事会で、お料理を私たちのほうに運んでいた人たちの一人だ。
……って、うん? 元王宮勤め? あれ、今は?
「あの……なんでここに?」
「シュリルカ王妃殿下のご命令で、アナスタシアさまにお仕えさせていただくことになりました」
「おかーしゃまの!?」
なんで? なんでお母さまが? もしかして、使用人たちの一斉異動はお母さまたちが関わっているの? ……いや、関わってるよね。本来使用人の管理をするのは王妃であるお母さまだもん……使用人の異動を管理するのもお母さまに決まってるよね。
でも、なんで急に異動させて新しい人を送り込んできたんだろう?
「後日、他の王女殿下や王子殿下のもとにいた使用人も送られてくると思いますが、よろしいでしょうか?」
「あっ……はい。大丈夫……でしゅ」
そのうち私は、考えるのを止めた。
◇◇◇
晩餐会から三日後のこと。
ヒマリさんの宣言通り、新たな使用人たちが送られてきた。
その使用人たちは私に優しくしてくれる人ばかり。ばかりなんだけど……
「あの~……」
私は、近くで拭き掃除をしていた使用人さんに話しかける。
話しかけられた使用人さんは体をびくっと震わせた。
「は、はい! いかがされましたか? アナスタシアさま」
「お水をいただけないかと……」
「は、はい! ただいま持ってまいります!」
そのまま使用人さんは電光石火のごとく走り去ってしまった。
そう。悩みは、なぜかほとんどの使用人さんに怯えられること。優しくしてくれるんだけど、どこかぎこちないというか。
私に怯えないで接してくれるのは、ザーラさんのように元々ここの離宮にいた人たちを除けば、ヒマリさんくらいだ。
お母さまたちに何か言われたのかな~と思って聞いてみても、「いえ、そんなことはありません」という答えしか返ってこない。
お母さまたちに何か言われたわけではないみたいだけど、私に対して怯えているのは間違いない。毎日観察していたのだから。
王族でもほとんど娯楽のないこの世界では、子どもは人間観察くらいしかやることがないんだよね。
だからこそ、仲よくしたいなと思ってるけど、怯えられている原因がわからない以上はどうしようもない。
「アナスタシアさま。ご所望のお水を持ってまいりました」
「あ、ありがとうございましゅ」
いや! ご所望って! そんな大それたお願いはしてないよ! お水持ってきましたよ~くらいでかまいませんって!
そんな動揺が思わず言葉にも出てしまう。優しく微笑もうと努力しているけど、表情にも少し出ているだろう。
もうちょっと、気楽に接してもらいたい。でも、私がそんなことを言っても、「アナスタシアさまにそのようなことはできません」って返ってくるだけなんだよな……
王族である私には、気楽に接するというのは難しいことというのはわかっている。でも、あまり気張らずにリラックスしてほしいなと思う。
何か、いい方法はないかなぁ……
◇◇◇
私は、着替えをしている最中に、あることを提案してみた。
「おにわに出かけたいでしゅ!」
これは、使用人たちと仲よくなるための手段である。
私はここ一ヶ月、どうやったら使用人たちと仲よくなれるか考えた。
それで思いついたのが一緒にお出かけすればいいんじゃない? ということだ。シンプルではあるものの、一番いい考えだと思っている。
単純だけど、一緒に過ごすこと以上に仲よくなる方法はないと思う。お互いを知ることで、真の意味で仲よくなれるはずだ。
「かしこまりました。どちらに行かれますか?」
「バラ園に行きたいでしゅ。ザーラしゃんもヒマリしゃんもみんなでいっしょに!」
「わ、私どももですか?」
一緒に私の着替えを手伝っていたヒマリさんが戸惑っている。
ぶっちゃけ、私を避けている使用人たちと仲よくなるための案だから、絶対にヒマリさんがいなくてはだめなわけではないけど、人数は多いほうが絶対に楽しいから、一緒に行きたい。
「はい。ヒマリしゃんとお出かけしたことなかったから」
「そ、そうでございますね……ですが、陛下たちともお出かけなさったことはありませんよね?」
「しょういえばしょうでしゅね」
いつも週に一度は会っているからか、あまり実感がなかった。確かに、家族とお出かけは経験ないな。
でも、今はお父さまたちよりも使用人さんと仲よくなりたいのだ!
「でも、おとーしゃまたちはいしょがしいでしゅ」
国王ともなれば、そう簡単には休めない。当然、突然出かけるなんてもってのほか。いくらお城の中とはいえ、急に予定を調整するなんて不可能だろう。
お妃さまたちは……案外なんとかなりそう。お姉さまとお兄さまも。
でも、まずは使用人さんからだ。家族とは週に一回くらいだけど、使用人たちとは毎日顔を合わせるのだから、どちらと早めに仲よくするほうがいいかと言えば使用人たちのほうだろう。
「アナはヒマリしゃんたちとお出かけしたいでしゅ!」
「そ、そうでございますか……」
てっきり喜ばれるかと思っていた私は、その微妙な反応に首を傾げてしまう。
気を遣わせてしまっているのだろうか。でも、嘘は言ってないんだけどな。
「かしこまりました。では、陛下に許可を取ってまいります」
「おにわでも許可がいるのでしゅか?」
さすがにお城の外に出るのなら外出許可はいるだろうけど、別にお庭なら報告くらいでいいんじゃない? と思ってしまう私がいる。
それに、今までもちょこちょこ外に出てたよ?
そう思ったのは私だけのようで、ザーラさんはもちろんのこと、私の部屋の掃除をしていた使用人も私の着替えを手伝っていた侍女も「「「いります!!!」」」と目力も込めて訴えてきた。
「わ、わかりまちた……」
大人三人に凄まれて、完全にビビってしまったチキンの私であった。
◇◇◇
使用人たちに提案してから三日。
いよいよ! 今日は! 使用人たちとバラ園へお出かけの日だー!! とは言っても、庭先だからピクニックみたいなものだけど……
いや~……昨日が雨だったから、お出かけ中止になるのかとハラハラしたよ!
ほとんどの使用人さんがうまく都合をつけてくれたらしく、最低限管理に必要な使用人さんは離宮に残しているものの、新入りさんの七割くらいは一緒に来てくれる。
私の離宮が小さいのもあって、前からいた使用人たちを入れても、合計は三十人くらいしかいないから、大した人数にはならないけど。
ちなみに、他のお姉さまたちのところは余裕で五十人は超えてるらしいからすごいよね。だからこそ、私に使用人たちを送る余裕があったのだろう。
「あっ、あしょこかな?」
少し歩くと、きれいなバラが広がっている美しい景色が視界に入る。
いや~、ほんとにきれい! バラなんてものを愛でるような前世ではなかったから、こういうのは本当に新鮮だった。
それぞれのバラの前に看板が立っていて、品種が書かれている。
シェーラン
一番最初に目に入ったのはそれだった。きれいな朱色で、他のバラよりも花弁が多い。
元々、花弁が多い種類なのかも。
「青いバラとかないのかな~」
なんとなく、ボソッと独り言のように呟く。
青いバラは、地球では自然界には存在しなかった。私は結構きれいで好きなんだけど、ないものはしかたない。無い物ねだりはよくないからね。
私の独り言に答えるように、ザーラさんが答えてくれる。
「青いものはありませんが、透明なバラでしたらありますよ?」
「えっ!? しょうなの!?」
透明なバラ!? 何それ! 前世だったら存在してない! 少なくとも、私は聞いたことがないよ!?
そんな好奇心をうずかせるバラは見てみたい!
「どこにあるんでしゅか!?」
「こちらです」
使用人さんの案内に、私はワクワクしながらついていく。
十分くらい歩くと、隔離されているエリアがあり、そこに透明なバラがあった。
「ふぉーーー!!!」
あまりにもきれいで、変な声が出てしまった。
てっきり、一、二本くらいだと思っていたのに、そこは透明なバラがあたり一面に広がっていた。その透明な花びら一枚一枚に陽光が当たって、キラキラと煌めいている。
私がそのバラに近づいてみると、花びらに水滴が。どうやら、透明なのもあるけど、朝露に光が当たって煌めいていたようだった。とても幻想的な光景だ。
「すっごくきれいでしゅ!」
「アナスタシアさまは、このようなものがお好きなのですか?」
近くにいる使用人さんが話しかけてくる。
……あれ? こんな人、私の離宮にいたっけな?
まぁ、少ないといってもそれなりの数の使用人さんがいるし、私とあまり顔を合わせない仕事しかしない使用人さんもいるから、知らなくてもおかしくはないかも。
とりあえず、聞かれたことには答えることとしよう。
「キラキラしているものを見るのは好きでしゅ」
キラキラしているものが好きなの~とか言おうものなら、それをどこかから聞きつけたルナティーラお姉さま辺りから宝石とかが送られかねない。
それは、私の心臓に会心の一撃を受けるかもしれないので、お断りしたいところ。
「では、アナスタシアさまは、宝石などにも興味が?」
「見るのは好きでしゅ。買ったりはしましぇん」
宝石が部屋に置いてあるなんて、絶対に耐えられませんもの。
お姫さまだろと言われても、中身は一般ピーポーの日本人だよ? ムリムリ。
「アナスタシアさま。そろそろお昼に」
「はーい」
ヒマリさんに呼ばれて、私はヒマリさんのほうに向かう。
「アナスタシアさまがご希望された通りに作らせましたが……これでよろしいのですか?」
「はい! これがいいでしゅ!」
ヒマリさんが持っていた籠の蓋をあけると、中にはぎっしりと中身がつまったサンドイッチが!
やっぱりピクニックにはサンドイッチが一番だよね! 人数が人数だから、パーティーみたいなサンドイッチの数だけどね。
実は、この国にはサンドイッチの文化がないらしいの。
それは、こういう風にお出かけする時は、ほとんどが現地のレストランなどで食べるから。つまりは、お弁当の文化がない。
だからこそ、ほとんどの食事は、手間暇かけて作られるのだ。
特に貴族は、見映えを好む。
イスに座って、テーブルの上に並べられた料理をスプーンとかフォークを使って食べるのが最低限なのだ。
そんなわけだから、この国には軽食という文化がそもそもない。祭りの日とかに、出店みたいなのがあるくらい。
それらも肉とか野菜を串に刺して豪快にだったり、一口サイズのお菓子だったりするので、それを食事にする人はほとんどいないのだ。あくまでも、間食程度なのである。
だがしかし! 私はそれを食事にしたのだ!
パンとサラダ、お肉やチーズはあるから、私がサンドイッチを提案して、料理人に作ってもらったというわけ。前世でレトルトや冷凍食品に頼ってた私でも、サンドイッチの作り方は知ってたから。
さすがに、お姫さまが直接厨房に行くのは、ザーラさんとヒマリさんを筆頭にほぼ全員に止められたので、伝言という形でレシピを伝えてもらったのです。
さすがにツナはなかったけどね。ツナサンドも食べたかったけど、ないものはしかたない。
照り焼きサンドも最高なんだけど、照り焼きもなかった。
今度、照り焼きとかも提案してみようかな。豪華な感じがするから、貴族風にアレンジすれば普通の食事としても出せそうだしね。
調味料があるかわからないけど……
照り焼きのあの甘さが最高だったなぁ……
「みんなも食べてみて~」
私はタマゴサンドを食べながらそう言うものの、誰の手も伸びない。でも、これは予想していたことなので、焦ったりはしない。
事前に考えた作戦を決行するとしよう。
私は、一人の使用人さんに視線を向ける。
私と目があった使用人さんは、遠慮なくサンドイッチに手を伸ばした。
そして、そのままぱくんと食べる。
アナスタシアが出ていった部屋には、先ほどの雰囲気とは一転し、重い空気が流れていた。
給仕としてこの場に残っているヒマリ・メリバは、先ほどから心臓がキリキリと絞られているような気がしていた。
実際にキリキリしているのは胃だ。
「それで、アナスタシアに席を外させたということは、例の調査を終えたのか」
この重い空気の中、最初に発言したのは国王だった。
ヒマリは、無意識のうちに国王に視線を向ける。
「はい。まともなのはおよそ一割ほど。残りの九割は、仕事はしているものの、アナスタシアを王女として扱っていない者ばかりです」
ルナティーラはどこからか資料を取り出して説明する。
それに、エルクトが反応した。
「それだけか?」
「いえ。アナスタシアも気づいているようですが、装飾品や支度金にも手をつけております」
「どうやら、しばらく顔を出さぬうちに、あそこには命知らずが集うようになったらしいな」
ここまで話されれば、話題がアナスタシアの使用人についてだということがわかる。
国王は、かなり腹を立てている様子だった。いや、国王だけではないだろう。おそらく、この場にいる全員がだ。
その様子を見て、ヒマリは知らない顔も多い離宮の使用人たちを憐れんだ。
離宮の使用人たちは、普段は陛下たちと交流がないから知らないのだろう。国王も妃も王子たちも王女たちも、皆がアナスタシアを王女として扱っているどころか、妹、または娘として可愛がっていることを。
普段会いに行かないのは、時間が取れないのと、頻繁に会いに行くと、貴族の重鎮たちがうるさいからだ。
そして、アナスタシアがいない時の王家の方々の集まりでは、こんな寒々しい空気が流れることも知らないに違いない。
こんな方たちに喧嘩を売るような所業は、よほどの能無しでなければやらないことだ。
重鎮たちも、頻繁に会うのはどうかと苦言を呈することはあっても、会うなとは言わない。
そんなことを言えば、王家の方々が自分たち相手にどんな手段に出るかわかったものではないからだ。
普段からこんな姿の国王たちを見ているからこそ、王宮の使用人たちのアナスタシアへの評価は高い。彼女が来るだけで、一気に雰囲気が柔らかくなるからだ。
先ほどアナスタシアを少々強引に追い出したのは、こんな話題の会議でこの姿を隠し通せるとはお思いになられなかったからなのだろうなと、ヒマリはぼーっと国王を見つめていた。
「ヒマリ・メリバ」
「は、はい! 私ですか!?」
急に王妃であるシュリルカに指名されて、ヒマリは体を強張らせる。ぼーっとしていたから、余計に。
他の者たちは、ヒマリを同情の視線で見ている。彼らが使用人を役職名だけでなく、家名も含めて呼ぶ時は、何かしら処罰を下す時がほとんどだからだ。
ヒマリは何かしらの罰を受けるのかと、今までのことを思い返して心当たりを探した。体からは大量の汗が流れている。
「あなたは、王宮付きの使用人だったわね」
「は、はい。給仕を担当しております」
「他の仕事はできるかしら」
「……はい。洗濯や掃除も担当しておりましたので……」
処罰されると思っていたヒマリは、予想外の質問が飛んできたことに困惑しながらも答える。
自分は処罰されないの? なぜこんなことを? とヒマリが目を白黒させていると、王妃の言葉を継ぐように、ルルエンウィーラが聞いてきた。
「王宮の給仕の仕事は、一人抜けても平気かしら?」
「あっ、はい。毎日二人は休暇として休んでいますので、一人くらいでしたら……」
「それなら、仮としてあなたがアナスタシアの離宮の使用人になってくれる?」
質問の形ではあるものの、有無を言わさないような言い方だった。
その言葉に、ヒマリは思わず驚愕する。
「わ、わ、私が……ですか?」
「あら。まさか、嫌なのですか?」
ルナティーラが冷たい視線でヒマリを見てくる。
ヒマリはルナティーラに向かって、慌てて弁明した。
「い、いえ! そのようなことはありません! アナスタシアさまにお仕えできるなんて光栄です!」
ここでアナスタシアさまにお仕えしたくないなどと口走ろうものなら、明日の朝日は拝めなくなっていただろう。離宮で働いていた使用人のほとんども、クビどころか家族とすら会えなくなるのではないのだろうか。
離宮の使用人たちは、これを予想できなかったのだろうか。いや、できていたらこんな馬鹿なことはしていなかったに違いない。王家の方々の表面的な態度しか見ず、アナスタシアが冷遇されていると勘違いを起こし、アナスタシアを粗雑に扱ったのだから。
(ほんと、寿命が縮むわ。この方たちの相手は)
ヒマリは、心の中で深くため息をついた。
「あの……いつから参りましょうか」
「今からに決まっているだろう。言われなくてはわからないのか?」
「は、はい! ただいま!」
エルクトに冷たくそう言われて、ヒマリは慌てて部屋の外に向かう。
「後は、わたくしの宮からも送っておきましょうか。人が余っておりますし」
「あっ、僕のとこからもー!」
「……なら、俺も」
退出しようとしたヒマリの耳に、ヴィオレーヌ、ハーステッド、ルーカディルの声が届く。
ヒマリは怒られないうちに、さっさとアナスタシアの住む離宮に向かった。
その場に残された他の侍従たちが羨ましそうな顔でこちらを見ていたが、ヒマリができることはなかった。
◇◇◇
晩餐会を追い出されたので、私はとぼとぼと廊下を歩く。
いまだに、なんで追い出されたのかまったくわからない。
「アナスタシアさま、どうかなさいましたか」
「いえ、なんでもないでしゅ」
私の様子がおかしいことに気づいたのか、騎士様が声をかけてきたので、私はとっさに作り笑いをしてごまかした。
あっ……そういえば……
「騎士しゃん。お名前、なんて言うのでしゅか?」
まだ名前を聞いていなかったことを思い出して、後ろを振り返って聞いてみると、真顔で返事が返ってきた。
「ダレスと申します」
「ダレしゅ……ダレスしゃんでしゅね!」
一回目は、"しゅ"になってしまったけど、なんとか"す"を意識して正しく発音ができた。
常にちゃんと発音ができるようになりたーい!
◇◇◇
離宮に戻った私は、いつもと違う違和感に首を傾げる。
圧倒的に人が少ないのだ。前は視界に必ず二人は入るくらいに使用人がいたはずなのに、今は探そうとしないと見つけられないくらいには人数が減っている。
私は、着替えを手伝いに来てくれたザーラさんに聞いてみた。
「ザーラしゃん。にんじゅうがしゅくないようでしゅが、なにかあったのでしゅか?」
呂律の回らない私の言葉もちゃんと聞き取ってくれたようで、ザーラさんは望む答えを返してくれた。
「実は、ここにいる使用人のほとんどが別の宮に配属が決まってしまいまして……まだ代わりの使用人たちが来ておりませんので、人数が少ないのです」
「なんで、しょんなきゅうに?」
「陛下の指示としかうかがっておりません。これ以上はお話できかねます」
「しょうでしゅか」
なんか、皆私の家族のことになると話したがらないというか、すぐに話題をそらしたがるというか……やっぱり私には話しにくいのかな?
――カツ、カツ、カツ。
不意に、靴音らしき音が外から聞こえてくる。
「ザーラしゃん。だれかきたみたいでしゅ」
「そうですね。出てきますので、少々お待ちください」
ザーラさんに案内されて入ってきたのは、女の人……あれれ? この人、どこかで見たような……?
ザーラさんに連れられてきた女の人は、私を見ると、手を胸に当てて跪く。
「直接ご挨拶させていただくのは初めてですので、名乗らせていただきます。元王宮勤めで給仕をしておりました、ヒマリ・メリバと申します」
「あっ! お食事会の時にいたしようにんしゃん!」
給仕をしているという言葉で思い出した。
先ほどのお食事会で、お料理を私たちのほうに運んでいた人たちの一人だ。
……って、うん? 元王宮勤め? あれ、今は?
「あの……なんでここに?」
「シュリルカ王妃殿下のご命令で、アナスタシアさまにお仕えさせていただくことになりました」
「おかーしゃまの!?」
なんで? なんでお母さまが? もしかして、使用人たちの一斉異動はお母さまたちが関わっているの? ……いや、関わってるよね。本来使用人の管理をするのは王妃であるお母さまだもん……使用人の異動を管理するのもお母さまに決まってるよね。
でも、なんで急に異動させて新しい人を送り込んできたんだろう?
「後日、他の王女殿下や王子殿下のもとにいた使用人も送られてくると思いますが、よろしいでしょうか?」
「あっ……はい。大丈夫……でしゅ」
そのうち私は、考えるのを止めた。
◇◇◇
晩餐会から三日後のこと。
ヒマリさんの宣言通り、新たな使用人たちが送られてきた。
その使用人たちは私に優しくしてくれる人ばかり。ばかりなんだけど……
「あの~……」
私は、近くで拭き掃除をしていた使用人さんに話しかける。
話しかけられた使用人さんは体をびくっと震わせた。
「は、はい! いかがされましたか? アナスタシアさま」
「お水をいただけないかと……」
「は、はい! ただいま持ってまいります!」
そのまま使用人さんは電光石火のごとく走り去ってしまった。
そう。悩みは、なぜかほとんどの使用人さんに怯えられること。優しくしてくれるんだけど、どこかぎこちないというか。
私に怯えないで接してくれるのは、ザーラさんのように元々ここの離宮にいた人たちを除けば、ヒマリさんくらいだ。
お母さまたちに何か言われたのかな~と思って聞いてみても、「いえ、そんなことはありません」という答えしか返ってこない。
お母さまたちに何か言われたわけではないみたいだけど、私に対して怯えているのは間違いない。毎日観察していたのだから。
王族でもほとんど娯楽のないこの世界では、子どもは人間観察くらいしかやることがないんだよね。
だからこそ、仲よくしたいなと思ってるけど、怯えられている原因がわからない以上はどうしようもない。
「アナスタシアさま。ご所望のお水を持ってまいりました」
「あ、ありがとうございましゅ」
いや! ご所望って! そんな大それたお願いはしてないよ! お水持ってきましたよ~くらいでかまいませんって!
そんな動揺が思わず言葉にも出てしまう。優しく微笑もうと努力しているけど、表情にも少し出ているだろう。
もうちょっと、気楽に接してもらいたい。でも、私がそんなことを言っても、「アナスタシアさまにそのようなことはできません」って返ってくるだけなんだよな……
王族である私には、気楽に接するというのは難しいことというのはわかっている。でも、あまり気張らずにリラックスしてほしいなと思う。
何か、いい方法はないかなぁ……
◇◇◇
私は、着替えをしている最中に、あることを提案してみた。
「おにわに出かけたいでしゅ!」
これは、使用人たちと仲よくなるための手段である。
私はここ一ヶ月、どうやったら使用人たちと仲よくなれるか考えた。
それで思いついたのが一緒にお出かけすればいいんじゃない? ということだ。シンプルではあるものの、一番いい考えだと思っている。
単純だけど、一緒に過ごすこと以上に仲よくなる方法はないと思う。お互いを知ることで、真の意味で仲よくなれるはずだ。
「かしこまりました。どちらに行かれますか?」
「バラ園に行きたいでしゅ。ザーラしゃんもヒマリしゃんもみんなでいっしょに!」
「わ、私どももですか?」
一緒に私の着替えを手伝っていたヒマリさんが戸惑っている。
ぶっちゃけ、私を避けている使用人たちと仲よくなるための案だから、絶対にヒマリさんがいなくてはだめなわけではないけど、人数は多いほうが絶対に楽しいから、一緒に行きたい。
「はい。ヒマリしゃんとお出かけしたことなかったから」
「そ、そうでございますね……ですが、陛下たちともお出かけなさったことはありませんよね?」
「しょういえばしょうでしゅね」
いつも週に一度は会っているからか、あまり実感がなかった。確かに、家族とお出かけは経験ないな。
でも、今はお父さまたちよりも使用人さんと仲よくなりたいのだ!
「でも、おとーしゃまたちはいしょがしいでしゅ」
国王ともなれば、そう簡単には休めない。当然、突然出かけるなんてもってのほか。いくらお城の中とはいえ、急に予定を調整するなんて不可能だろう。
お妃さまたちは……案外なんとかなりそう。お姉さまとお兄さまも。
でも、まずは使用人さんからだ。家族とは週に一回くらいだけど、使用人たちとは毎日顔を合わせるのだから、どちらと早めに仲よくするほうがいいかと言えば使用人たちのほうだろう。
「アナはヒマリしゃんたちとお出かけしたいでしゅ!」
「そ、そうでございますか……」
てっきり喜ばれるかと思っていた私は、その微妙な反応に首を傾げてしまう。
気を遣わせてしまっているのだろうか。でも、嘘は言ってないんだけどな。
「かしこまりました。では、陛下に許可を取ってまいります」
「おにわでも許可がいるのでしゅか?」
さすがにお城の外に出るのなら外出許可はいるだろうけど、別にお庭なら報告くらいでいいんじゃない? と思ってしまう私がいる。
それに、今までもちょこちょこ外に出てたよ?
そう思ったのは私だけのようで、ザーラさんはもちろんのこと、私の部屋の掃除をしていた使用人も私の着替えを手伝っていた侍女も「「「いります!!!」」」と目力も込めて訴えてきた。
「わ、わかりまちた……」
大人三人に凄まれて、完全にビビってしまったチキンの私であった。
◇◇◇
使用人たちに提案してから三日。
いよいよ! 今日は! 使用人たちとバラ園へお出かけの日だー!! とは言っても、庭先だからピクニックみたいなものだけど……
いや~……昨日が雨だったから、お出かけ中止になるのかとハラハラしたよ!
ほとんどの使用人さんがうまく都合をつけてくれたらしく、最低限管理に必要な使用人さんは離宮に残しているものの、新入りさんの七割くらいは一緒に来てくれる。
私の離宮が小さいのもあって、前からいた使用人たちを入れても、合計は三十人くらいしかいないから、大した人数にはならないけど。
ちなみに、他のお姉さまたちのところは余裕で五十人は超えてるらしいからすごいよね。だからこそ、私に使用人たちを送る余裕があったのだろう。
「あっ、あしょこかな?」
少し歩くと、きれいなバラが広がっている美しい景色が視界に入る。
いや~、ほんとにきれい! バラなんてものを愛でるような前世ではなかったから、こういうのは本当に新鮮だった。
それぞれのバラの前に看板が立っていて、品種が書かれている。
シェーラン
一番最初に目に入ったのはそれだった。きれいな朱色で、他のバラよりも花弁が多い。
元々、花弁が多い種類なのかも。
「青いバラとかないのかな~」
なんとなく、ボソッと独り言のように呟く。
青いバラは、地球では自然界には存在しなかった。私は結構きれいで好きなんだけど、ないものはしかたない。無い物ねだりはよくないからね。
私の独り言に答えるように、ザーラさんが答えてくれる。
「青いものはありませんが、透明なバラでしたらありますよ?」
「えっ!? しょうなの!?」
透明なバラ!? 何それ! 前世だったら存在してない! 少なくとも、私は聞いたことがないよ!?
そんな好奇心をうずかせるバラは見てみたい!
「どこにあるんでしゅか!?」
「こちらです」
使用人さんの案内に、私はワクワクしながらついていく。
十分くらい歩くと、隔離されているエリアがあり、そこに透明なバラがあった。
「ふぉーーー!!!」
あまりにもきれいで、変な声が出てしまった。
てっきり、一、二本くらいだと思っていたのに、そこは透明なバラがあたり一面に広がっていた。その透明な花びら一枚一枚に陽光が当たって、キラキラと煌めいている。
私がそのバラに近づいてみると、花びらに水滴が。どうやら、透明なのもあるけど、朝露に光が当たって煌めいていたようだった。とても幻想的な光景だ。
「すっごくきれいでしゅ!」
「アナスタシアさまは、このようなものがお好きなのですか?」
近くにいる使用人さんが話しかけてくる。
……あれ? こんな人、私の離宮にいたっけな?
まぁ、少ないといってもそれなりの数の使用人さんがいるし、私とあまり顔を合わせない仕事しかしない使用人さんもいるから、知らなくてもおかしくはないかも。
とりあえず、聞かれたことには答えることとしよう。
「キラキラしているものを見るのは好きでしゅ」
キラキラしているものが好きなの~とか言おうものなら、それをどこかから聞きつけたルナティーラお姉さま辺りから宝石とかが送られかねない。
それは、私の心臓に会心の一撃を受けるかもしれないので、お断りしたいところ。
「では、アナスタシアさまは、宝石などにも興味が?」
「見るのは好きでしゅ。買ったりはしましぇん」
宝石が部屋に置いてあるなんて、絶対に耐えられませんもの。
お姫さまだろと言われても、中身は一般ピーポーの日本人だよ? ムリムリ。
「アナスタシアさま。そろそろお昼に」
「はーい」
ヒマリさんに呼ばれて、私はヒマリさんのほうに向かう。
「アナスタシアさまがご希望された通りに作らせましたが……これでよろしいのですか?」
「はい! これがいいでしゅ!」
ヒマリさんが持っていた籠の蓋をあけると、中にはぎっしりと中身がつまったサンドイッチが!
やっぱりピクニックにはサンドイッチが一番だよね! 人数が人数だから、パーティーみたいなサンドイッチの数だけどね。
実は、この国にはサンドイッチの文化がないらしいの。
それは、こういう風にお出かけする時は、ほとんどが現地のレストランなどで食べるから。つまりは、お弁当の文化がない。
だからこそ、ほとんどの食事は、手間暇かけて作られるのだ。
特に貴族は、見映えを好む。
イスに座って、テーブルの上に並べられた料理をスプーンとかフォークを使って食べるのが最低限なのだ。
そんなわけだから、この国には軽食という文化がそもそもない。祭りの日とかに、出店みたいなのがあるくらい。
それらも肉とか野菜を串に刺して豪快にだったり、一口サイズのお菓子だったりするので、それを食事にする人はほとんどいないのだ。あくまでも、間食程度なのである。
だがしかし! 私はそれを食事にしたのだ!
パンとサラダ、お肉やチーズはあるから、私がサンドイッチを提案して、料理人に作ってもらったというわけ。前世でレトルトや冷凍食品に頼ってた私でも、サンドイッチの作り方は知ってたから。
さすがに、お姫さまが直接厨房に行くのは、ザーラさんとヒマリさんを筆頭にほぼ全員に止められたので、伝言という形でレシピを伝えてもらったのです。
さすがにツナはなかったけどね。ツナサンドも食べたかったけど、ないものはしかたない。
照り焼きサンドも最高なんだけど、照り焼きもなかった。
今度、照り焼きとかも提案してみようかな。豪華な感じがするから、貴族風にアレンジすれば普通の食事としても出せそうだしね。
調味料があるかわからないけど……
照り焼きのあの甘さが最高だったなぁ……
「みんなも食べてみて~」
私はタマゴサンドを食べながらそう言うものの、誰の手も伸びない。でも、これは予想していたことなので、焦ったりはしない。
事前に考えた作戦を決行するとしよう。
私は、一人の使用人さんに視線を向ける。
私と目があった使用人さんは、遠慮なくサンドイッチに手を伸ばした。
そして、そのままぱくんと食べる。
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