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7 噂話なんて嫌いです
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執筆要望があったので書きました。短いですがお許しを。
ーーーーーーーーーーーー
次の日。あの食堂での出来事が噂になっていたようで、私を見て皆がひそひそと話している。
以前は、次期王妃として必要なことだと、噂話にも耳を傾けていたけど、今はその義務感がないからか、不快でしかない。
別に、私のことを話すなとは言わない。食堂での一件は、こうなることを覚悟の上で首を突っ込んだのだから。
でも、噂話というのは、必ず尾ひれがつくもの。それは、悪意があってのことや、ただの偶然などいろいろあるけど、私はその尾ひれが嫌だった。首を突っ込んだりして、止めていた覚えがある。
私の心情などわかっていないくせに、勝手に推測して、勝手に私の人物像を作り上げる。そして、勝手に私を悪人へと仕立て上げる。以前の、私のように。
そんな噂話を心地よいと思えるわけがない。不快でしかない。
「あ、あの!」
後ろから声をかけられ、私は無意識のうちに後ろを向いた。
そこには、あの食堂で騒ぎを起こしていた、貴族らしき少女が立っていた。
「なんですか?」
なるべく優しい口調でそう尋ねたのだけど、彼女はびくりと体を震わす。
「せ、先日のことでーー」
私は彼女がそこまで言ったところで、手で制す。彼女は、まずいと感じたのか、慌てて口を塞いだ。
先日のこと
その言葉だけで、周りが静まり返った。
歩いていた生徒は歩みを止め、楽しく談笑していた生徒は、話すのをやめるか、明らかに声が小さくなっている。
みんな、食堂の一件が気になって仕方ないのだろう。それは、野次馬根性というものもあるのかもしれないけど、大抵は弱点を探るため。それも、私の。
公爵家には、敵が多い。しかも、私はこのまま行けば次期王妃。同じ王妃の座を狙っていた令嬢から見れば、私の存在は目障り以外のなにものでもないだろう。
そんな彼女たちは、私を引きずり下ろさんと、いつも虎視眈々と狙っている。私の弱点を、常に探っている。
多くの王妃が完璧になってしまうのは、このためと言える。文句をつけられないためには、完璧になるしかない。
例に漏れず、私もそうなった。
「続く言葉が謝罪なのであれば、それは結構です。私への不満だというのであれば、そのお気持ちは受け止めておきましょう。私は、お兄さまに公爵嫡男としてふさわしい言動を心がけて頂きたかっただけですので、言葉は必要ありません」
仲裁に入ったのは、あなたのためでも平民の子のためでもないということを言外に伝える。何も飾らずに伝えてしまっては、周りにどう噂されるかわかったものではない。
彼女も貴族。私の言い回しに気づいたのか、「はい」とだけ言って、その場を去る。
その時、周りがこれ見よがしとばかりに何かこそこそと話し出した。
私を悪く言っているのかもしれない。でも、それを止めたりたしなめたりするつもりは、もうない。不快ではあるけど、止めるためにその話を聞くくらいなら、放置してでも聞かないほうが、私にとって、はるかにましな選択だった。
本当に、噂話なんて嫌い。
私は、人気のないところに早く向かおうと、歩みを速めた。
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次の日。あの食堂での出来事が噂になっていたようで、私を見て皆がひそひそと話している。
以前は、次期王妃として必要なことだと、噂話にも耳を傾けていたけど、今はその義務感がないからか、不快でしかない。
別に、私のことを話すなとは言わない。食堂での一件は、こうなることを覚悟の上で首を突っ込んだのだから。
でも、噂話というのは、必ず尾ひれがつくもの。それは、悪意があってのことや、ただの偶然などいろいろあるけど、私はその尾ひれが嫌だった。首を突っ込んだりして、止めていた覚えがある。
私の心情などわかっていないくせに、勝手に推測して、勝手に私の人物像を作り上げる。そして、勝手に私を悪人へと仕立て上げる。以前の、私のように。
そんな噂話を心地よいと思えるわけがない。不快でしかない。
「あ、あの!」
後ろから声をかけられ、私は無意識のうちに後ろを向いた。
そこには、あの食堂で騒ぎを起こしていた、貴族らしき少女が立っていた。
「なんですか?」
なるべく優しい口調でそう尋ねたのだけど、彼女はびくりと体を震わす。
「せ、先日のことでーー」
私は彼女がそこまで言ったところで、手で制す。彼女は、まずいと感じたのか、慌てて口を塞いだ。
先日のこと
その言葉だけで、周りが静まり返った。
歩いていた生徒は歩みを止め、楽しく談笑していた生徒は、話すのをやめるか、明らかに声が小さくなっている。
みんな、食堂の一件が気になって仕方ないのだろう。それは、野次馬根性というものもあるのかもしれないけど、大抵は弱点を探るため。それも、私の。
公爵家には、敵が多い。しかも、私はこのまま行けば次期王妃。同じ王妃の座を狙っていた令嬢から見れば、私の存在は目障り以外のなにものでもないだろう。
そんな彼女たちは、私を引きずり下ろさんと、いつも虎視眈々と狙っている。私の弱点を、常に探っている。
多くの王妃が完璧になってしまうのは、このためと言える。文句をつけられないためには、完璧になるしかない。
例に漏れず、私もそうなった。
「続く言葉が謝罪なのであれば、それは結構です。私への不満だというのであれば、そのお気持ちは受け止めておきましょう。私は、お兄さまに公爵嫡男としてふさわしい言動を心がけて頂きたかっただけですので、言葉は必要ありません」
仲裁に入ったのは、あなたのためでも平民の子のためでもないということを言外に伝える。何も飾らずに伝えてしまっては、周りにどう噂されるかわかったものではない。
彼女も貴族。私の言い回しに気づいたのか、「はい」とだけ言って、その場を去る。
その時、周りがこれ見よがしとばかりに何かこそこそと話し出した。
私を悪く言っているのかもしれない。でも、それを止めたりたしなめたりするつもりは、もうない。不快ではあるけど、止めるためにその話を聞くくらいなら、放置してでも聞かないほうが、私にとって、はるかにましな選択だった。
本当に、噂話なんて嫌い。
私は、人気のないところに早く向かおうと、歩みを速めた。
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