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第三章 学園の少女達
第62話 引っかかり
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「ここが王都で有名なアクセサリー店ですわ」
翌日、本当にアクセサリーを買いに行く事になった。
護衛として、レナード様がついてきてくれている。
アクセサリー店の中に入ると、そこまできらびやかではないものの、見た目はきれいだった。
「カオルさんは、豪華な物は好まないかと思われたので、庶民も買えるような場所にしましたわ」
確かに、値段は思っていたよりも安かった。一応、多めに持ってきていたけど、こんなに必要はなかったかもしれない。
どれがいいかな?と見て回る。リーズは、人前では、余程でない限り話しかけてはこないから、自分で決めないといけない。
彼と言っていたから、男の人でも身につけられるようなものが良いよね。
そこで、私はシンプルなブレスレットが目に入った。
そんなに高くはないけど、何か宝石のようなものはついている。シンプルだけど、私は好きなタイプだ。
「それが欲しいんですの?」
「えっ……あ、はい」
急に声をかけられて、慌ててしまう。ルーフェミア様はそれを手に取ると、さっさと店員に渡して、購入してしまった。
自分で買うつもりだったのに……まぁ、このお金もクラウド様から支援されているものだけど……
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
とりあえず、これを持って四年生の所に行こう!
ーーーーーーーーーーーーーー
「カオルさん、お久しぶりです」
「そんなに久しぶりですかね……?」
「まぁ、三日ぶりですね」
ティルは相変わらずな感じだけど、よく笑うようにはなったと思う。神殿にいた時は、状況が状況だったのもあるけど、結構淡々としていた感じだったから。
でも、それは今もあまり変わってはいないようで、私に笑いかけていたのを驚いている人が多かった。
「ティルは契約しないんですか?」
精霊が見えるんだから、私なんていらないと思う。でも、周りが私に聞いてきて、契約しようとしているけど、ティルは私の側に立っているだけだった。
「一応、精霊が手を貸す魔法は全属性使えますけど、大した事はありませんし、それなら契約してもあまり意味ないですよ」
さらっと、とんでもない事を言わなかった……?気のせいでは……ないよね?
「全属性使えるんですか!?」
「聖属性と邪属性以外は。魔力が少ないので、威力は大した事はありませんがね」
それでもすごいんじゃないの……?私は、精霊がいないと攻撃手段がないし、威力が小さいって事は、加減が出来るという事だと思うし……
精霊達の魔法は威力が強いから、周りを巻き込みかねない。威力の調整が出来たのなら、あの時司教様に捕まっていた私を傷つけずに使うのは出来たはずだし。
「だったら、契約した方が……」
「人を傷つけるのは好きではありません。そのきっかけを作りたくないんです」
ティルらしい答えだ。私も、あまり人を傷つけたいとは思わない。だから、精霊術を使えと言われても、戦争とかでは多分使えない。こういうのを、宝の持ち腐れというらしいけど、それでも良いと思っている。
結構、考えが近いのかもしれない。
「そういえば、その首に下げていらっしゃるものはなんですか?」
「あっ、これは貰い物で……」
「誰から?」
えっ?言って良いの?邪神からなんて言っても良いの?神殿の時のティルの反応からして、邪神はあまり良い存在には思われていないように感じる。
接したら、レティア神と変わらないって思うけど、それは私はそう思うからであって、他の人が同じとは限らない。
「言いたくないのなら、言わなくて結構です。話せないのでしたら、笑っていると良いですよ。相手が勘違いするように仕向けるのです」
し、仕向けるって……私にそんな世渡り術はありませんよ……
ティルは、元は貴族だったのかと思ってしまうくらい礼儀正しい。神官に身分は関係ないらしいけど……
でも、何かがずっと引っかかってる……何なんだろう?
ティルと会ってからずっと、何かが……
「どうしましたか?」
「いや、何か違和感があるような気がするんですけど……」
そんな会話をしていると、遠くから声が聞こえる。
「どこにいるんだ?」
「お前、加護持ってないから見えないだろ!」
「お前だって、弱っちい加護しか持ってねぇじゃねぇか!」
加護……?そうだ、精霊は加護を持っていると見えて、加護には二種類あって、そのどちらでも精霊は見える……
もうちょっとなんだけど……攻撃の加護と支援の加護があって、支援の加護がないと神官にはなれなくて……うん?
そういえば……ナルミス様は?あの人から、精霊が見えると聞いた事がない。見えるのかもしれないけど、司教様と同じ縁故採用って奴なのかな……
「あの……ティル」
「なんですか?」
「ナルミス様は精霊は見えないのですか?」
「いいえ?見えますよ?兄さんは強化の加護を持っていますし」
強化の加護?そういえば、レティア神が言っていた加護の種類にそんなのがあったような……
「強化の加護って……」
「身体能力をあげたり、相手の魔力を強くしたりします」
そのままの効果だ……でも、身体能力が高くなったら、リーズみたいに動けるって事なのかな。
そして、魔力が強くなったら、精霊術みたいに使える……って感じなのかな。
「そもそも、加護がないと神官にはなれませんしね」
「なら、神官も数が多くないんですかね……」
「ええ、神殿の過半数が名ばかりか、司祭ですからね」
司祭は、母様から聞いた事がある。加護は、ほとんどが生まれ持っているものだけど、成長してからも貰う事がある。逆に、取り上げられる事もある。
そして司祭は、加護を貰って神官になるために修行している……らしい。
ティルと会話しているうちに、授業が終わってしまった。そして、次は四年生なので、ティルにさよならをして、四年生の所まで向かう事にした。
翌日、本当にアクセサリーを買いに行く事になった。
護衛として、レナード様がついてきてくれている。
アクセサリー店の中に入ると、そこまできらびやかではないものの、見た目はきれいだった。
「カオルさんは、豪華な物は好まないかと思われたので、庶民も買えるような場所にしましたわ」
確かに、値段は思っていたよりも安かった。一応、多めに持ってきていたけど、こんなに必要はなかったかもしれない。
どれがいいかな?と見て回る。リーズは、人前では、余程でない限り話しかけてはこないから、自分で決めないといけない。
彼と言っていたから、男の人でも身につけられるようなものが良いよね。
そこで、私はシンプルなブレスレットが目に入った。
そんなに高くはないけど、何か宝石のようなものはついている。シンプルだけど、私は好きなタイプだ。
「それが欲しいんですの?」
「えっ……あ、はい」
急に声をかけられて、慌ててしまう。ルーフェミア様はそれを手に取ると、さっさと店員に渡して、購入してしまった。
自分で買うつもりだったのに……まぁ、このお金もクラウド様から支援されているものだけど……
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
とりあえず、これを持って四年生の所に行こう!
ーーーーーーーーーーーーーー
「カオルさん、お久しぶりです」
「そんなに久しぶりですかね……?」
「まぁ、三日ぶりですね」
ティルは相変わらずな感じだけど、よく笑うようにはなったと思う。神殿にいた時は、状況が状況だったのもあるけど、結構淡々としていた感じだったから。
でも、それは今もあまり変わってはいないようで、私に笑いかけていたのを驚いている人が多かった。
「ティルは契約しないんですか?」
精霊が見えるんだから、私なんていらないと思う。でも、周りが私に聞いてきて、契約しようとしているけど、ティルは私の側に立っているだけだった。
「一応、精霊が手を貸す魔法は全属性使えますけど、大した事はありませんし、それなら契約してもあまり意味ないですよ」
さらっと、とんでもない事を言わなかった……?気のせいでは……ないよね?
「全属性使えるんですか!?」
「聖属性と邪属性以外は。魔力が少ないので、威力は大した事はありませんがね」
それでもすごいんじゃないの……?私は、精霊がいないと攻撃手段がないし、威力が小さいって事は、加減が出来るという事だと思うし……
精霊達の魔法は威力が強いから、周りを巻き込みかねない。威力の調整が出来たのなら、あの時司教様に捕まっていた私を傷つけずに使うのは出来たはずだし。
「だったら、契約した方が……」
「人を傷つけるのは好きではありません。そのきっかけを作りたくないんです」
ティルらしい答えだ。私も、あまり人を傷つけたいとは思わない。だから、精霊術を使えと言われても、戦争とかでは多分使えない。こういうのを、宝の持ち腐れというらしいけど、それでも良いと思っている。
結構、考えが近いのかもしれない。
「そういえば、その首に下げていらっしゃるものはなんですか?」
「あっ、これは貰い物で……」
「誰から?」
えっ?言って良いの?邪神からなんて言っても良いの?神殿の時のティルの反応からして、邪神はあまり良い存在には思われていないように感じる。
接したら、レティア神と変わらないって思うけど、それは私はそう思うからであって、他の人が同じとは限らない。
「言いたくないのなら、言わなくて結構です。話せないのでしたら、笑っていると良いですよ。相手が勘違いするように仕向けるのです」
し、仕向けるって……私にそんな世渡り術はありませんよ……
ティルは、元は貴族だったのかと思ってしまうくらい礼儀正しい。神官に身分は関係ないらしいけど……
でも、何かがずっと引っかかってる……何なんだろう?
ティルと会ってからずっと、何かが……
「どうしましたか?」
「いや、何か違和感があるような気がするんですけど……」
そんな会話をしていると、遠くから声が聞こえる。
「どこにいるんだ?」
「お前、加護持ってないから見えないだろ!」
「お前だって、弱っちい加護しか持ってねぇじゃねぇか!」
加護……?そうだ、精霊は加護を持っていると見えて、加護には二種類あって、そのどちらでも精霊は見える……
もうちょっとなんだけど……攻撃の加護と支援の加護があって、支援の加護がないと神官にはなれなくて……うん?
そういえば……ナルミス様は?あの人から、精霊が見えると聞いた事がない。見えるのかもしれないけど、司教様と同じ縁故採用って奴なのかな……
「あの……ティル」
「なんですか?」
「ナルミス様は精霊は見えないのですか?」
「いいえ?見えますよ?兄さんは強化の加護を持っていますし」
強化の加護?そういえば、レティア神が言っていた加護の種類にそんなのがあったような……
「強化の加護って……」
「身体能力をあげたり、相手の魔力を強くしたりします」
そのままの効果だ……でも、身体能力が高くなったら、リーズみたいに動けるって事なのかな。
そして、魔力が強くなったら、精霊術みたいに使える……って感じなのかな。
「そもそも、加護がないと神官にはなれませんしね」
「なら、神官も数が多くないんですかね……」
「ええ、神殿の過半数が名ばかりか、司祭ですからね」
司祭は、母様から聞いた事がある。加護は、ほとんどが生まれ持っているものだけど、成長してからも貰う事がある。逆に、取り上げられる事もある。
そして司祭は、加護を貰って神官になるために修行している……らしい。
ティルと会話しているうちに、授業が終わってしまった。そして、次は四年生なので、ティルにさよならをして、四年生の所まで向かう事にした。
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