3 / 21
3
しおりを挟む
公爵家に到着した。公爵様のエスコートで、私は馬車を降りる。
おー……。私は、馬車から降りたときに見えた屋敷の全貌に、あんぐりと口を開ける。公爵家だからと言われてしまえば、そうなのかもしれないけど、我が家の2倍は軽くありそうだ。庭もすっごく広いし、いろいろなお花が植えられそう。今は、もうすぐ春というタイミングだからか、草木は、ただの葉っぱだけか、まだつぼみをつけているものしかない。
「結婚式はどうするのですか?」
そういえばと、私は気になることを聞いてみた。
「まだ突然のことで、招待客の目処がたっていませんので、1ヶ月は先になるでしょう」
公爵様は、少し頭を抱えながら、ため息混じりに答えてくれた。
公爵様も苦労しているのだろうな。ちょっと同情しますよ。公爵家の当主なのだからと言われてしまえば、それまでかもしれないけどね。
「かしこまりました。それと、弟妹たちと定期的に会ってもよろしいでしょうか?」
「ええ、家族なのだから、自由に会うといいですよ。ですが、会うのは公爵家にしてもらえますか。公爵夫人が盾となればかまいませんが、アリジェントの血を引く娘を狙う者がいてもおかしくはありませんからね。会いたいときは、私に連絡してもらえば、ユールフェース男爵家に迎えの者をよこしましょう」
「ありがとうございます」
すんなりと許可をくれました。陛下が、私の望みを叶えるようにとおっしゃっていたのは本当みたいね。こんなに即答するなんて。
「どれくらいの頻度ならかまわないのでしょうか?」
「……さすがに、毎日とはいきませんが、週に一度ならかまわないでしょう」
少し考える素振りをしてから、公爵様が答える。思ったよりも、頻繁に会えそうなので、私は嬉しくて、思わずニヤニヤしてしまった。おかしな人だと思われないように、公爵様から目をそらす。
それを疑問に思ったのか、公爵様は「どうしましたか?」と聞いてきた。
「いえ、なんでもないです。嬉しかっただけで……」
「そうですか。それでは、そろそろ屋敷に入りましょうか」
「あっ……はい」
そういえば、ずっと足がストップしたままだった。多分、公爵様に質問してから、足が止まっていたな。公爵様は、そんな私に気遣って、足を止めて会話に応じてくれたんでしょうね。
そう思うと、とたんに恥ずかしくなってきた。私が顔を真っ赤に染めていると、公爵様が肩を震わせている。ときおり、ふふっという声も聞こえる。
もしや、笑っている?笑っている!?私が恥ずかしがっているのを見て笑っているの!?この人でなし公爵が!
「なぜ笑っているのですか」
私がじーっと見つめながらそう言うと、公爵様は慌てて弁明を始める。
「あっ、不快にさせたのでしたらすみません。ここまで素直に表情に出すご令嬢は初めてでしたので……」
まぁ、公爵ともなれば、取り繕いのうまいご令嬢しかいなかったのかもしれない。公爵家を狙っていたご令嬢もいたのかも。そうなると、貧乏貴族の娘は珍しいのかもね。
「では、屋敷に入りましょうか」
「はい」
公爵が私の手をとって扉のほうに近づくと、扉が自動的に開く。
これは、もしかして、魔道具の自動扉!?伝説だけの存在だと思っていたのに……。お金持ちのお貴族様は、こんなのも取り付けられるのかもしれない。うちは無理だけどね!
「旦那様、奥様、お帰りなさいませ」
扉を開けると、数えきれないくらいの使用人が出迎えてくれる。結婚式はなくても、もう結婚をしたも同然のようだった。
結婚式で誓いをして、初めて夫婦として認められるので、それまでは、夫婦というよりかは、婚約者との同棲というような感じだ。
使用人のお出迎えの後は、夫婦の寝室に案内された。ここで一緒に寝ることになるのか~。いや、別に気にしないけどね。でも、異性と一緒となると、少しは抵抗感がある。
「連れてきて早々にすみませんが、これから二週間ほど出張ですので、その間はここはあなただけでお使いください」
魔法騎士団長も大変なんだなぁ……。結婚して早々に出張とは。
「表向きは公爵夫人として振る舞ってくだされば、ここでは何をしていてもかまいません。外出したいときは、レーラかミリスをお連れください。護衛としての技術も持っておりますので」
レーラとミリスと言われても、誰が誰なのかわからないのですが……。
まぁ、お名前を聞けば問題ないでしょ!新たに公爵夫人となった私が、公爵家の使用人の名前を知らないのは当然のことだから!恥ずかしいと思うことではない。
「それでは、弟妹たちをここに招いても?」
「ええ。手配しましょう。私がいないときは、シアンに言ってくだされば、迎えをよこすように手配させます」
だから、シアンって誰ですか。名前の響きからして、多分、執事なんだろうけど……。あの場に男の人なんていたかなぁ……?
「すみませんが、午後から仕事ですので、失礼します」
軽く会釈をしながら、公爵様は部屋を出ていく。私は、慌てて頭を下げた。
「あっ、はい!いってらっしゃいませ!」
もしかして、私が明日がいいと言ったから、無理に時間を作ってくれたのかもしれない。そう考えると、ちょっと申し訳なくなってきた。
すみませんね、私のわがままで。騎士団の人にも迷惑をかけてしまったかもしれない。
まぁ、ともかくとして、今日から公爵家の一員として、がんばってみますかね!
おー……。私は、馬車から降りたときに見えた屋敷の全貌に、あんぐりと口を開ける。公爵家だからと言われてしまえば、そうなのかもしれないけど、我が家の2倍は軽くありそうだ。庭もすっごく広いし、いろいろなお花が植えられそう。今は、もうすぐ春というタイミングだからか、草木は、ただの葉っぱだけか、まだつぼみをつけているものしかない。
「結婚式はどうするのですか?」
そういえばと、私は気になることを聞いてみた。
「まだ突然のことで、招待客の目処がたっていませんので、1ヶ月は先になるでしょう」
公爵様は、少し頭を抱えながら、ため息混じりに答えてくれた。
公爵様も苦労しているのだろうな。ちょっと同情しますよ。公爵家の当主なのだからと言われてしまえば、それまでかもしれないけどね。
「かしこまりました。それと、弟妹たちと定期的に会ってもよろしいでしょうか?」
「ええ、家族なのだから、自由に会うといいですよ。ですが、会うのは公爵家にしてもらえますか。公爵夫人が盾となればかまいませんが、アリジェントの血を引く娘を狙う者がいてもおかしくはありませんからね。会いたいときは、私に連絡してもらえば、ユールフェース男爵家に迎えの者をよこしましょう」
「ありがとうございます」
すんなりと許可をくれました。陛下が、私の望みを叶えるようにとおっしゃっていたのは本当みたいね。こんなに即答するなんて。
「どれくらいの頻度ならかまわないのでしょうか?」
「……さすがに、毎日とはいきませんが、週に一度ならかまわないでしょう」
少し考える素振りをしてから、公爵様が答える。思ったよりも、頻繁に会えそうなので、私は嬉しくて、思わずニヤニヤしてしまった。おかしな人だと思われないように、公爵様から目をそらす。
それを疑問に思ったのか、公爵様は「どうしましたか?」と聞いてきた。
「いえ、なんでもないです。嬉しかっただけで……」
「そうですか。それでは、そろそろ屋敷に入りましょうか」
「あっ……はい」
そういえば、ずっと足がストップしたままだった。多分、公爵様に質問してから、足が止まっていたな。公爵様は、そんな私に気遣って、足を止めて会話に応じてくれたんでしょうね。
そう思うと、とたんに恥ずかしくなってきた。私が顔を真っ赤に染めていると、公爵様が肩を震わせている。ときおり、ふふっという声も聞こえる。
もしや、笑っている?笑っている!?私が恥ずかしがっているのを見て笑っているの!?この人でなし公爵が!
「なぜ笑っているのですか」
私がじーっと見つめながらそう言うと、公爵様は慌てて弁明を始める。
「あっ、不快にさせたのでしたらすみません。ここまで素直に表情に出すご令嬢は初めてでしたので……」
まぁ、公爵ともなれば、取り繕いのうまいご令嬢しかいなかったのかもしれない。公爵家を狙っていたご令嬢もいたのかも。そうなると、貧乏貴族の娘は珍しいのかもね。
「では、屋敷に入りましょうか」
「はい」
公爵が私の手をとって扉のほうに近づくと、扉が自動的に開く。
これは、もしかして、魔道具の自動扉!?伝説だけの存在だと思っていたのに……。お金持ちのお貴族様は、こんなのも取り付けられるのかもしれない。うちは無理だけどね!
「旦那様、奥様、お帰りなさいませ」
扉を開けると、数えきれないくらいの使用人が出迎えてくれる。結婚式はなくても、もう結婚をしたも同然のようだった。
結婚式で誓いをして、初めて夫婦として認められるので、それまでは、夫婦というよりかは、婚約者との同棲というような感じだ。
使用人のお出迎えの後は、夫婦の寝室に案内された。ここで一緒に寝ることになるのか~。いや、別に気にしないけどね。でも、異性と一緒となると、少しは抵抗感がある。
「連れてきて早々にすみませんが、これから二週間ほど出張ですので、その間はここはあなただけでお使いください」
魔法騎士団長も大変なんだなぁ……。結婚して早々に出張とは。
「表向きは公爵夫人として振る舞ってくだされば、ここでは何をしていてもかまいません。外出したいときは、レーラかミリスをお連れください。護衛としての技術も持っておりますので」
レーラとミリスと言われても、誰が誰なのかわからないのですが……。
まぁ、お名前を聞けば問題ないでしょ!新たに公爵夫人となった私が、公爵家の使用人の名前を知らないのは当然のことだから!恥ずかしいと思うことではない。
「それでは、弟妹たちをここに招いても?」
「ええ。手配しましょう。私がいないときは、シアンに言ってくだされば、迎えをよこすように手配させます」
だから、シアンって誰ですか。名前の響きからして、多分、執事なんだろうけど……。あの場に男の人なんていたかなぁ……?
「すみませんが、午後から仕事ですので、失礼します」
軽く会釈をしながら、公爵様は部屋を出ていく。私は、慌てて頭を下げた。
「あっ、はい!いってらっしゃいませ!」
もしかして、私が明日がいいと言ったから、無理に時間を作ってくれたのかもしれない。そう考えると、ちょっと申し訳なくなってきた。
すみませんね、私のわがままで。騎士団の人にも迷惑をかけてしまったかもしれない。
まぁ、ともかくとして、今日から公爵家の一員として、がんばってみますかね!
13
お気に入りに追加
3,820
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います
菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。
その隣には見知らぬ女性が立っていた。
二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。
両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。
メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。
数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。
彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。
※ハッピーエンド&純愛
他サイトでも掲載しております。

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます
鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────
私、この子と生きていきますっ!!
シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。
幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。
時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。
やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。
それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。
けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────
生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。
※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果
柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。
彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。
しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。
「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」
逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。
あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。
しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。
気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……?
虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。
※小説家になろうに重複投稿しています。

〖完結〗もうあなたを愛する事はありません。
藍川みいな
恋愛
愛していた旦那様が、妹と口付けをしていました…。
「……旦那様、何をしているのですか?」
その光景を見ている事が出来ず、部屋の中へと入り問いかけていた。
そして妹は、
「あら、お姉様は何か勘違いをなさってますよ? 私とは口づけしかしていません。お義兄様は他の方とはもっと凄いことをなさっています。」と…
旦那様には愛人がいて、その愛人には子供が出来たようです。しかも、旦那様は愛人の子を私達2人の子として育てようとおっしゃいました。
信じていた旦那様に裏切られ、もう旦那様を信じる事が出来なくなった私は、離縁を決意し、実家に帰ります。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全8話で完結になります。

ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します
冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」
結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。
私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。
そうして毎回同じように言われてきた。
逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。
だから今回は。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる