悪役令嬢?それがどうした!~好き勝手生きて何が悪い~

りーさん

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公爵令嬢?それがどうした!

第17話 婚約騒動

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「お嬢様、ミレラさんが呼んでいましたよ」
「うん、分かった」

 後ろからレイに声をかけられる。もうレイが帰ってきたのか。

 私はミレラのところ─────には向かわずに、自分の部屋に向かう。レイもその後ろについてくる。レイが使用人の誰かが私の事を呼んでいるという時は、内密な話があるという意味だ。普通の使用人は、仕えている家のお嬢様を呼ばない。でも、私はちょこちょこ(主に料理人に)呼ばれたりもするので、この会話を疑う人はいない。

 部屋に入って、防音の結界を張る。

「それで、どうだったの?」
「お嬢様が危惧していた通りだ。水面下で、お嬢様と王子の婚約を進める動きがある」

 うー……やっぱりそうなのかぁ。ゲームの強制力的なものがあるかと思って調べて貰ったけど、本当にそうなるとは。

 とっと。そう言えば、悪役令嬢はどういう立場なのか話していませんでしたね。悪役令嬢は、良くある設定で、王子の婚約者です。
 
 婚約した時期は、過去では話されていませんでしたが、ママさんを亡くした事を慰めたという会話をしているシーンがあるので、少なくとも、10歳の誕生日よりも前には婚約していた事になります。

 それでですね、私があと二週間ほどで10歳の誕生日なんですよ。なので、もしゲームの強制力というものがあるとしたら、今くらいのタイミングで動いていると思ったのですが、予想通りだったという訳ですね。

 でも私は、強制力には逆らいたいと思います。自分の望む相手と結婚したいですし、王子の事は好きではないので。

 ……えっ?建前は良いから、本音を言えって?

 勉強なんかやりたくないんじゃあ~!私はダラダラゴロゴロニート生活をしたいんだ!結婚なんかやだね!というのが本音です。

「お嬢様は変わってるな。普通の貴族の令嬢は、王子との婚約なんて大喜びだろ」

 普通はな!!でも、私は嫌なんだよ!お金持ちではあるけど、それはこの公爵家にあるお金で充分なんだから!

 王子妃って国の顔のようなものでしょ?そんな重大な役割はしとうございません。本当の本当に破滅は怖くないよ?でもさ、現実的に考えたら、王子妃って嫌な役目じゃない?

 跡継ぎをせがまられるし、自由は許されないし、常に周りに見られていて、プライバシーもあったもんじゃないし……

 それに、前世や今世の両親みたいに、恋愛結婚したいもの。私には、王族なんて性に合わないのよ。

 だから、他の攻略対象なら全く構わんよ?レナルドとかね。顔つきは王子と似てるのに、レナルドの顔だけが好みなんだよねぇ~。『Dual Eyes』で推しは誰だって聞かれたら、レナルドって答えるね。

 それに、少し影がある感じもなんか素敵なんだよねぇ。まぁ、恋愛というよりは、憧れみたいな感じが強いけど。

 恋に盲目なんて事にはなりたくないし、私は共感しにくい性格みたいで、恋という感情が全く分からない。

「王子は嫌なの」
「まぁ、俺も王子妃の護衛なんてごめんだが」

 じゃあ、何で聞いたんだよ!

 ……うん?護衛?

「私が王子妃になるくらい大きくなっても一緒にいてくれるの?」

 そういう意味だよね?だって、こどもの今は王子妃なんてなれないもの。

「あぁ……えっと、それは……」

 全く意識してなかったみたい。なんか、こういう事が多いな。他の人がいる時は、どんな無茶振りをされてもこうなる事は無いんだけど……気を抜いているのかな?もしそうなら、少し嬉しいかも。私に少しは心を開いてくれたって事だろうし。

「……何笑ってんだ」
「別にぃ~。続きどうぞ」
「……三日後くらいに城に呼ぶつもりらしいぞ」

 ほうほう、三日後か……
 
 ────三日後!?早くない!?私には全く知らされていないんですが!

「その様子だと、やっぱり知らなかったんだな」
「知らないよ!お母さんもお父さんも何も言ってないし……」
「父親は言いたくないんだろ。お前……お嬢様が、やっぱり王子と婚約したいなんて言ってほしくないから。母親はただ単に知らないんだろうさ」

 一瞬怪しかったが、言い直したからよしとしよう。そう言えば、パパさんは親バカだったな。あの時のお茶会の公爵像のせいで、忘れてた。

「早いところ婚約しないと、いつまでも縁談が持ち込まれるぞ」
「うっ……」

 実はというと、私に縁談が多く来ているんですよ。ノーレッジという事と、公爵の血を引いているからという事が理由として挙げられるでしょう。

「まぁ、盾になるとでも考えたら良いんじゃないか?」
「盾?」

 どういう意味っすか?

「誰かと婚約しないとこの縁談は止まらないだろ。王子と婚約しておけば、それからは逃れられるだろ。王子妃の勉強ももう少し後だろうさ」

 何で私が王子妃になりたくないのかも気づかれている。

「何で分かるの?」
「お嬢様なら大人びてるし、そういう事も考えそうだと思っただけだ」

 そういうものなのか。

 ……うん?それって、遠回しに老けてるって言ってないか?いや、大人びてると老けてるはちょっと意味合いが違うし……いや、でもなぁ。

 聞こうと思って「ねぇ」と話しかけようとすると、レイは外の方をチラッと見ると、小声で話しかけてきた。

「お嬢様。人が来たので結界を解いてください」
「えっ?う、うん」

 急に近づいてきてそんな事を言ってきたので、思わず言われた通りに解いてしまう。

「お嬢様。レイもいたんですね」

 来たのはミレラだった。う~ん……やっぱり使用人は分からないなぁ。パパさんやママさんが来たらすぐに察知出来るんだけど。

「ミレラ。どうしたの?」
「旦那様がお呼びですよ。レイは、お嬢様を旦那様の元に連れたら仕事に戻ってください」
「はい、ミレラさん」

 一瞬で使用人のレイになった。

「では、お嬢様。お連れいたします」
「うん!」

 私もお子様エリーちゃんにならないとね。

 レイの後ろについていくように歩く。

「またお父さんがレイをいじめたら、エリーが守ってあげるから!」
「それはありがたいですが、旦那様が悲しまれますよ」

 完全にお互い、お嬢様お気に入りの使用人レイと、レイに懐いているお子様エリーちゃんになりきっていた。

「旦那様。お嬢様をお連れしました」
「入れ」

 中からそう言われたので、ドアを開けて中に入る。

「では、お嬢様。私は仕事に戻ります」
「レイと一緒にいたいよぉ」

 一ミリもそんな事は思ってないがな!だが、こうでもしないと、パパさんがレイを追い出す口実を探そうとするんだよ。

「エリー。レイは仕事があるんだ。離してあげなさい」
「はぁい。レイ、お仕事頑張ってね」
「はい」

 レイが出ていくときに、軽く鼻で笑っていった。パパさんはエリーしか見ていないので気づいてないだろうけど、私は気づいている。

 よし。パパさんと話が終わったら覚えておけよ。休む余裕なんか与えないくらいこき使ってやる!!

「お父さん、お話って何?」
「王子殿下と婚約の話が出ていてな──」

 その話でしたか。でも、私の中ではそれはすでに解決している問題です。

「別に良いよ」
「でも、前は嫌と言っていなかったか?」
「レイとお話しして、ちょっと考えが変わったの!話がそれだけなら、エリーは部屋に戻るね!」

 レイをたっぷりこき使ってやらなきゃならないからな!

 ピョンとソファから飛び降りて「またね!」と言って部屋を出ていった。
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