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公爵令嬢?それがどうした!
第15話 新たな従者
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「本日づけでお嬢様にお仕えさせていただく事となりました、レイと申します」
「よろしくね!」
子供らしく、無邪気に笑って見せる。お子様エリーちゃんだ。他の使用人はほっこりしているが、レイだけは冷たい目で見ている。
我慢だ我慢。人前でやってはならない。そんな事をしたら、いじめっ子と同類になってしまう。
部屋でレイと二人きりになって、やっと気が抜けるようになった。
「で、いつになったらこの腕輪とチョーカーは外してくれるんだ?」
「レイがそんな態度を取らなくなったらかなぁ?」
レイとは、あの時の刺客さん。あれからもう一週間が経った。ラミアは、しっかり屋敷から追い出され、アルタン伯爵も罰を受けました。私の命を狙ったんだから当然ですよね。
それで、約束通りレイを私の従者にする事が出来ました。レイとは、私が与えた名前です。この人、名前がなかったみたいなので。
ちなみにですが、腕輪とチョーカーはまだ外していません。これ、電撃を与えるだけでなく、リードみたいに、ボタンから一定以上離れる事が出来ない機能もあるみたいです。
出来るのは、私が許可を出した時だけです。
……うん?離れていて逃げないのかって?それなら大丈夫です。GPSみたいに、位置が分かる機能もついていますので。逃げたらすぐに分かります。その時は、この魔道具にあるもう一つの機能を使って、強制的に呼び戻します。
これらは、私が魔道具の主になったので、使える機能です。
魔道具に、魔力を通せば主になれるんです。乙女ゲームのファンブックに乗っていた情報ではありますが、パパさんにも確認を取ったため、間違いないでしょう。
むしろ、パパさんから進めてきました。レイを従者にしたいんなら、この魔道具の主になりなさいと。
「で、大丈夫なのか?今日はお茶会があるとか言ってた気がするが」
「あぁ……そう言えばそうだったね」
「忘れてたのかよ……」
レイは、人がいる時はきっちりと丁寧な言葉遣いをしているけど、私と二人きりになったらこんな感じです。取り繕うのが非常にお上手なので、本性はミレラにもバレておりません。たまに生意気な発言をする事もあるので、そういう時は立場の違いを分からせております。
でも、従者としての立場を分からせるだけです。前世のいじめっ子達みたいに、気に入らないからとか、そういう理由でやったりはしません。どうしても許せない私情の場合は、ほんの数秒だけですしね。
「じゃあ、その前に頼んでたやつ教えてよ」
「はいはい。お嬢様の予想通りみたいだぞ。ハルグレッド侯爵が動いてる」
「やっぱりね」
ゲームでは、伯爵の後ろ楯となっていたのが、ハルグレッド侯爵だ。ハルグレッド侯爵は、根っからの野心家で、自分の血筋を王家に入れたいと考えている。なので、伯爵に交換条件を持ちかけた。
簡単にまとめると、伯爵の願いを叶える代わりに、娘を王家に入れるのを進めて欲しいという感じだ。
「あの侯爵、密かに伯爵を釈放したらしい。王宮の奴らは脱走したって騒いでるけどな」
「ちょっと考えれば、内通者の可能性も考えられるのにね」
良くドラマとかマンガである展開だ。仲間が脱走を手伝うのは。
「でも、その事を私にしか伝えないんだね」
「もともとお前からの頼み事だし、俺のような得体の知れない奴の事なんて信用しないだろ」
「“お前”……?」
「……すいません、お嬢様」
と、こんな感じに、順調に教育が出来ています。まぁ、こうしないと、電撃か、パパさんから説教(物理)ですからね。
「それでさ、手引きした人っているの?」
「何人かいるぞ。見張りはもちろん、文官や、騎士にもいるな」
「ふーん……」
結構厄介だな。二、三人なら何とかなったかもしれないけど、そこまで数が多いと、逃してしまうかもしれない。
「どうする?処分ならしても良いが」
処分ってあれだよね?もしかしなくてもあれだよね?そんな恐ろしい事する訳ないでしょ!
思いっきり、言い返そうと思ったけど、すぐに泣き顔を浮かべた。
「そんな事したら、エリーが悪い人になっちゃうじゃん!そしたら、レイとバイバイするんでしょ?レイとは離れたくないもん!」
わざとらしく抱きつく。いきなりお子様エリーちゃんになったのには、理由がある。
「レイ。今のエリーの言葉はどういう意味だ?」
「お前、図ったな?」
「何の事かなぁ?」
小さく耳打ちしてきたので、お子様エリーちゃんの口調で返す。最近生意気盛りだったからね。少しお灸を据えておこうと思っただけだよ。
「レイ。質問に答えろ。場合によっては……」
おっと。やり過ぎたかもしれん。……仕方ない、助けるか──
「騎士の話をしていまして、お嬢様がカッコいい騎士様のようになりたいとおっしゃられたので、騎士でもないのにそのような真似をすると、悪い人だと思われるという事を教えていただけです」
助け船を出そうとした瞬間、急にペラペラと話し出した。
取り繕いのうまい奴め!さっきの私の気遣いを返せ!!
「なら良いが、エリーに悪影響を与えるなよ。私はまだお前の事を認めた訳ではないんだ。エリーがどうしてもと言うから雇っているだけでな」
「はい、私めを拾っていただいたお嬢様には感謝しております」
嘘つけ!!どうやって私から逃げ出すかという事しか考えてないだろ!
でも、こんな抱きついていて、いかにも懐いてますって感じでそんな事を言っても説得力が無いんだよね。
「そう思っているなら良い。これからも励め」
パパさん、やっぱり心の中では納得がいっていないようですね。私の前だからあまりきつくは言わないだけで、本当はいろいろ言いたい事があると思います。
パパさんは出ていってしまいました。私がレイを嵌めるのに利用してしまったので、少し申し訳ないな。
「で、何で俺を嵌めたんだ」
「だって、最近生意気なんだもん」
「頼み事はちゃんと聞いてるだろうが」
「態度だよ、た・い・ど!」
電撃は嫌だろうから、別の方法で立場を分からせただけじゃないか。
「お前やっぱり中身が───」
そこまで言って、続きを言わない。やけに私の右手を見てるけど、どうしたんだろうなぁ?
「中身が何?良いよ、続き言って?」
そう言って、ニコッと笑いかける。続きによっては、これで分からせないといけないな。
「……すみませんでした」
「次はないからね。着替えるからミレラ呼んできて」
「分かりました」
さて、お茶会の準備をしないとね。
「よろしくね!」
子供らしく、無邪気に笑って見せる。お子様エリーちゃんだ。他の使用人はほっこりしているが、レイだけは冷たい目で見ている。
我慢だ我慢。人前でやってはならない。そんな事をしたら、いじめっ子と同類になってしまう。
部屋でレイと二人きりになって、やっと気が抜けるようになった。
「で、いつになったらこの腕輪とチョーカーは外してくれるんだ?」
「レイがそんな態度を取らなくなったらかなぁ?」
レイとは、あの時の刺客さん。あれからもう一週間が経った。ラミアは、しっかり屋敷から追い出され、アルタン伯爵も罰を受けました。私の命を狙ったんだから当然ですよね。
それで、約束通りレイを私の従者にする事が出来ました。レイとは、私が与えた名前です。この人、名前がなかったみたいなので。
ちなみにですが、腕輪とチョーカーはまだ外していません。これ、電撃を与えるだけでなく、リードみたいに、ボタンから一定以上離れる事が出来ない機能もあるみたいです。
出来るのは、私が許可を出した時だけです。
……うん?離れていて逃げないのかって?それなら大丈夫です。GPSみたいに、位置が分かる機能もついていますので。逃げたらすぐに分かります。その時は、この魔道具にあるもう一つの機能を使って、強制的に呼び戻します。
これらは、私が魔道具の主になったので、使える機能です。
魔道具に、魔力を通せば主になれるんです。乙女ゲームのファンブックに乗っていた情報ではありますが、パパさんにも確認を取ったため、間違いないでしょう。
むしろ、パパさんから進めてきました。レイを従者にしたいんなら、この魔道具の主になりなさいと。
「で、大丈夫なのか?今日はお茶会があるとか言ってた気がするが」
「あぁ……そう言えばそうだったね」
「忘れてたのかよ……」
レイは、人がいる時はきっちりと丁寧な言葉遣いをしているけど、私と二人きりになったらこんな感じです。取り繕うのが非常にお上手なので、本性はミレラにもバレておりません。たまに生意気な発言をする事もあるので、そういう時は立場の違いを分からせております。
でも、従者としての立場を分からせるだけです。前世のいじめっ子達みたいに、気に入らないからとか、そういう理由でやったりはしません。どうしても許せない私情の場合は、ほんの数秒だけですしね。
「じゃあ、その前に頼んでたやつ教えてよ」
「はいはい。お嬢様の予想通りみたいだぞ。ハルグレッド侯爵が動いてる」
「やっぱりね」
ゲームでは、伯爵の後ろ楯となっていたのが、ハルグレッド侯爵だ。ハルグレッド侯爵は、根っからの野心家で、自分の血筋を王家に入れたいと考えている。なので、伯爵に交換条件を持ちかけた。
簡単にまとめると、伯爵の願いを叶える代わりに、娘を王家に入れるのを進めて欲しいという感じだ。
「あの侯爵、密かに伯爵を釈放したらしい。王宮の奴らは脱走したって騒いでるけどな」
「ちょっと考えれば、内通者の可能性も考えられるのにね」
良くドラマとかマンガである展開だ。仲間が脱走を手伝うのは。
「でも、その事を私にしか伝えないんだね」
「もともとお前からの頼み事だし、俺のような得体の知れない奴の事なんて信用しないだろ」
「“お前”……?」
「……すいません、お嬢様」
と、こんな感じに、順調に教育が出来ています。まぁ、こうしないと、電撃か、パパさんから説教(物理)ですからね。
「それでさ、手引きした人っているの?」
「何人かいるぞ。見張りはもちろん、文官や、騎士にもいるな」
「ふーん……」
結構厄介だな。二、三人なら何とかなったかもしれないけど、そこまで数が多いと、逃してしまうかもしれない。
「どうする?処分ならしても良いが」
処分ってあれだよね?もしかしなくてもあれだよね?そんな恐ろしい事する訳ないでしょ!
思いっきり、言い返そうと思ったけど、すぐに泣き顔を浮かべた。
「そんな事したら、エリーが悪い人になっちゃうじゃん!そしたら、レイとバイバイするんでしょ?レイとは離れたくないもん!」
わざとらしく抱きつく。いきなりお子様エリーちゃんになったのには、理由がある。
「レイ。今のエリーの言葉はどういう意味だ?」
「お前、図ったな?」
「何の事かなぁ?」
小さく耳打ちしてきたので、お子様エリーちゃんの口調で返す。最近生意気盛りだったからね。少しお灸を据えておこうと思っただけだよ。
「レイ。質問に答えろ。場合によっては……」
おっと。やり過ぎたかもしれん。……仕方ない、助けるか──
「騎士の話をしていまして、お嬢様がカッコいい騎士様のようになりたいとおっしゃられたので、騎士でもないのにそのような真似をすると、悪い人だと思われるという事を教えていただけです」
助け船を出そうとした瞬間、急にペラペラと話し出した。
取り繕いのうまい奴め!さっきの私の気遣いを返せ!!
「なら良いが、エリーに悪影響を与えるなよ。私はまだお前の事を認めた訳ではないんだ。エリーがどうしてもと言うから雇っているだけでな」
「はい、私めを拾っていただいたお嬢様には感謝しております」
嘘つけ!!どうやって私から逃げ出すかという事しか考えてないだろ!
でも、こんな抱きついていて、いかにも懐いてますって感じでそんな事を言っても説得力が無いんだよね。
「そう思っているなら良い。これからも励め」
パパさん、やっぱり心の中では納得がいっていないようですね。私の前だからあまりきつくは言わないだけで、本当はいろいろ言いたい事があると思います。
パパさんは出ていってしまいました。私がレイを嵌めるのに利用してしまったので、少し申し訳ないな。
「で、何で俺を嵌めたんだ」
「だって、最近生意気なんだもん」
「頼み事はちゃんと聞いてるだろうが」
「態度だよ、た・い・ど!」
電撃は嫌だろうから、別の方法で立場を分からせただけじゃないか。
「お前やっぱり中身が───」
そこまで言って、続きを言わない。やけに私の右手を見てるけど、どうしたんだろうなぁ?
「中身が何?良いよ、続き言って?」
そう言って、ニコッと笑いかける。続きによっては、これで分からせないといけないな。
「……すみませんでした」
「次はないからね。着替えるからミレラ呼んできて」
「分かりました」
さて、お茶会の準備をしないとね。
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