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公爵令嬢?それがどうした!
第5話 食の改革 4
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さて、何を作ろうかな。
あるのは、小麦粉と砂糖と……これだったら、あれくらいしか作れないかな。
何故かオーブンはあるし、これで大丈夫。
まずは、オーブンを予熱にする。ダイヤル式だから、簡単だ。えりかの家のオーブンはダイヤル式でしたからね!
次は、ボウルに塩、油、砂糖、卵を混ぜる。本当なら、泡立て器でやる方が一番良いんだけど、料理が発展していないこの国にそんな物がある訳がない。仕方ないので、ヘラを素早く切るように混ぜていく。
はぁ……はぁ……
7歳児の体だから、限界を迎え始めるのが速い!
「あの、お嬢様。私がやりましょうか?」
「大丈夫」
次は、薄力粉を混ぜる。最初はヘラ。固まってきたら手でこねる。
う~ん……7歳児の力じゃあ、もう少し固くするのは無理かなぁ……
「ミレラ、やって」
「かしこまりました」
あぁ~。腕が死んでる。カップ一つも持てないくらいに力が入らない。
「これくらいでよろしいでしょうか?」
「うん、大丈夫。後は、薄く伸ばすの」
ボウルから生地を取り出して貰い、薄く伸ばして貰う事に。泡立て器がないこの国。当然、めん棒なんて物もありません。力ずくで伸ばす事になります。そんな事は、か弱い乙女の私には出来ません。女のミレラも出来ません。残るのは、お兄さんズです。
……うん?私のどこがか弱い乙女だって?やかましいわよ?
「これくらいか?」
「うんそれだけ伸びてれば大丈夫。後は、くり抜かないと」
「「「くり抜く?」」」
あぁ~……お菓子が無いから分からないのか。
「これを、厚さはそのままで好きな形にするの。大抵は、金属で出来ているやつを嵌め込んで、好きな形にするから、くり抜くって言っただけ」
型抜きも欲しいなぁ。錬金術が使えたら試してみようかな?
「では、私がやってみましょうか」
えっ?大丈夫?型抜きなしで上手く出来るの?
……そう思っていた時期が私にもありました。ミレラは包丁の先を使って、円形や、四角形と言った定番の形の物から、リボン、花、挙げ句の果てには、人……いわゆる、ジンジャーブレッドマン──生姜は入ってない──と呼ばれる物まで作ってしまった。ミレラって、手先が器用なんだね。
さてと、後はオーブンで焼くだけ。180℃のオーブンで15~20分くらい焼く。
はぁ……暇だ。お菓子を作るときのこういう時が一番暇だ。外に出たいけど、外を見に行ってはいけない。万が一にも焦げたりしないように、見張ってなければいけないからだ。この三人は目安なんて分からない。下手に、焦げないようにとだけ言ってしまったら、まだ焼けてないなんて事もあり得る。
今後の事について考えるか。ひとまず、自分で作ればお菓子は手に入る。これで、私の欲しいものリストが一つ埋まるわけだ。服は、多分あの親バカの父親に頼めば買ってくれるだろう。後は、金か。私はまだ7歳だから、お小遣いくらいの金額しか貰えない。と言っても、さすが貴族。前世で言う、数万円は普通にくれる。でも、それは私のお金ではない。自分で稼ぐ手段を見つけないと。
じゃあ、レシピを売ってみるか?お菓子なんて、ほとんどの子供は好きだろうし、簡単な物から売っていけば、そこそこは売れるはずだ。
“エリカ”の記憶では、貴族の女性は、そういう料理もしないし、商売のような真似事はしないらしいけど、私には関係ない!貴族の暗黙の了解なぞに従ういわれはない!
さて、金の問題はこれで良いとして……後は、何がいるかな?……友達とか?“えりか”は友達がほとんどいなかったからなぁ。“エリカ”は、友達……というか、取り巻きの方が近いかな?って感じの子がいるけど……
私は、取り巻きという存在は好きじゃない。むしろ嫌いだ。取り巻きは、いわば虎の威を借る狐。一人では何にも出来ない臆病者なのだ。なので、どちらかと言えば、取り巻きを引き連れている人の方が、私は好感が持てる。
そう。俗に言う、乙女ゲームの悪役令嬢みたいな──
「──っ!」
頭がズキッとする。あれ?調子が良くないのかな?
何なんだろう、この頭痛は。
「お嬢様?どうかされましたか?」
「ううん。何でもない」
そう言えば、さっきからやけに私に優しくなったな。どういう心境の変化なの?
はぁ……いろいろあって疲れたな。頭痛もそのせいかも。帰ったら、ゆっくり休もう。
そんなこんなで、焼き上がったかな?
ミレラにオーブンから取り出して貰うと、こんがりきつね色に焼けている。
次は冷まさないと。中まで熱が通っているか確かめたいけど、素手でこれを触ったら、火傷不可避だ。まぁ、冷ますのは数分くらいで終わるだろうから、別に構わないけど。
「冷めたら教えて」
「はい、かしこまりました」
さて、お菓子が冷めるまで、お土産をどうするか考えておきますか。
「お嬢様、もう大丈夫ですよ」
そのまま数分が経過していた。ミレラに声をかけられて、私は現実に意識が戻される。
ちょんと触るけど、そこまで熱くない。これなら大丈夫だ。中まで熱が通っているか確かめるために、お菓子を割る、罪悪感が生まれないように、割るのは丸い形をした物だけ。
サクッという音がする。うん。全然問題ない。それどころか、本当に美味しい。
私が作ったのは、バターなしのクッキー。バターは高いから、お母さんが代わりに油を使って作っていた。作っているのを一度見たから記憶を頼りに作ってみた。
でも、クッキーばかりだと飽きてくるんだよなぁ。ミルクは、公爵家にあった気がするし、あれも作ってみようかな。
「みんなも食べてみて。美味しいよ」
「では……」
本当に恐る恐るという感じだけど、ミレラが食べた。
「美味しいですね」
「でしょ!」
バターを使ってない貧乏クッキーだけど、結構美味しいんだよね。バター使ってないから、普通のクッキーよりも太りづらいし。
「上手いな、これ」
お兄さんズも食べている。良かった、独りよがりみたいにならなくて。
「砂糖売ってみたら?これに使われてるって言って、レシピも一緒に売れば買ってくれるかもしれないし」
「そうだな。書いてくれるか?」
「胡椒と砂糖を定期的に同じ量を売ってくれるなら良いよ」
自分で提案しておきながら、さらっと条件をつける。“えりか”が良くやってた技。
「分かった」
条件を飲んでくれたので、紙にレシピを書いていく。庶民でも買えるような安いものばかりだし、問題はないと思う。塩が必要だけど、そこまで量は多くないから、気にならないくらいだろう。
きちんと予熱するのを忘れないようにして貰わないといけないので、目立つように印をつけておく。
「はい」
「ありがとな、お嬢様」
「じゃあ、ミレラ。胡椒と砂糖貰ったら帰ろうか」
「はい」
お土産も忘れないようにしないといけないね。
店の外に出ると、馬車がある。“エリカ”の記憶では、あれはティアンゴルグ公爵家の馬車だ。ミレラが持ってきたのかな?
私とミレラは馬車に乗る。ミレラは拒否していたけど、御者に進められてしぶしぶ乗り込んだ。
お土産を買うために途中下車しながら、屋敷に向かう。もうお土産は買い終わって屋敷に戻るだけという時に、ずっと黙っていたミレラが口を開いた。
「お嬢様、申し訳ございません」
「何が?」
「お嬢様のお気持ちも理解せずにお叱りした事です」
あぁ……その事か。私は気にしてなかったんだけど……
「だから何なの?」
「お嬢様にそのような思いをさせてしまったのは私の落ち度です。ですが、せめて護衛を一人はお連れください。道中で、お嬢様が人攫いに連れていかれそうになったとお聞きしましたので……」
だからあんなに怒ってたのか。私の我が儘で勝手に出て拐われそうになったら、当然拐う方も悪いけど、一人で出かける事も悪いと思われてもおかしくない。
「ううん。私も勝手な行動をしたのは悪いとは思ってるし……」
悪いと思ってなかったら、わざわざ門番の目を盗むように行動はしなかったし。そんな事を言ったら余計に叱られそうだな。よし、逃げるか。
「だから、今回の事はお互い様って事で良いの。はい!この話はおしまい!」
「……はい、分かりました」
何故か逃げた私に対してミレラはクスクス笑っている。子供っぽいと思って笑ってるの?
はぁ……私は中身は高校生だよ?前世と今世の年齢を合わせたらあなたよりも上だよ?
もういいわ。ミレラから見た私はどうせ子供ですよ!もうふて寝してやる!行儀悪いとか関係ないね!!
ゴロンと寝転がる。クッションが引いてあるのと、あまり衝撃がないからあまり痛くない。
適度に揺れて、電車みたいな感覚だったので、ふて寝のつもりが、本当に寝てしまった。
あるのは、小麦粉と砂糖と……これだったら、あれくらいしか作れないかな。
何故かオーブンはあるし、これで大丈夫。
まずは、オーブンを予熱にする。ダイヤル式だから、簡単だ。えりかの家のオーブンはダイヤル式でしたからね!
次は、ボウルに塩、油、砂糖、卵を混ぜる。本当なら、泡立て器でやる方が一番良いんだけど、料理が発展していないこの国にそんな物がある訳がない。仕方ないので、ヘラを素早く切るように混ぜていく。
はぁ……はぁ……
7歳児の体だから、限界を迎え始めるのが速い!
「あの、お嬢様。私がやりましょうか?」
「大丈夫」
次は、薄力粉を混ぜる。最初はヘラ。固まってきたら手でこねる。
う~ん……7歳児の力じゃあ、もう少し固くするのは無理かなぁ……
「ミレラ、やって」
「かしこまりました」
あぁ~。腕が死んでる。カップ一つも持てないくらいに力が入らない。
「これくらいでよろしいでしょうか?」
「うん、大丈夫。後は、薄く伸ばすの」
ボウルから生地を取り出して貰い、薄く伸ばして貰う事に。泡立て器がないこの国。当然、めん棒なんて物もありません。力ずくで伸ばす事になります。そんな事は、か弱い乙女の私には出来ません。女のミレラも出来ません。残るのは、お兄さんズです。
……うん?私のどこがか弱い乙女だって?やかましいわよ?
「これくらいか?」
「うんそれだけ伸びてれば大丈夫。後は、くり抜かないと」
「「「くり抜く?」」」
あぁ~……お菓子が無いから分からないのか。
「これを、厚さはそのままで好きな形にするの。大抵は、金属で出来ているやつを嵌め込んで、好きな形にするから、くり抜くって言っただけ」
型抜きも欲しいなぁ。錬金術が使えたら試してみようかな?
「では、私がやってみましょうか」
えっ?大丈夫?型抜きなしで上手く出来るの?
……そう思っていた時期が私にもありました。ミレラは包丁の先を使って、円形や、四角形と言った定番の形の物から、リボン、花、挙げ句の果てには、人……いわゆる、ジンジャーブレッドマン──生姜は入ってない──と呼ばれる物まで作ってしまった。ミレラって、手先が器用なんだね。
さてと、後はオーブンで焼くだけ。180℃のオーブンで15~20分くらい焼く。
はぁ……暇だ。お菓子を作るときのこういう時が一番暇だ。外に出たいけど、外を見に行ってはいけない。万が一にも焦げたりしないように、見張ってなければいけないからだ。この三人は目安なんて分からない。下手に、焦げないようにとだけ言ってしまったら、まだ焼けてないなんて事もあり得る。
今後の事について考えるか。ひとまず、自分で作ればお菓子は手に入る。これで、私の欲しいものリストが一つ埋まるわけだ。服は、多分あの親バカの父親に頼めば買ってくれるだろう。後は、金か。私はまだ7歳だから、お小遣いくらいの金額しか貰えない。と言っても、さすが貴族。前世で言う、数万円は普通にくれる。でも、それは私のお金ではない。自分で稼ぐ手段を見つけないと。
じゃあ、レシピを売ってみるか?お菓子なんて、ほとんどの子供は好きだろうし、簡単な物から売っていけば、そこそこは売れるはずだ。
“エリカ”の記憶では、貴族の女性は、そういう料理もしないし、商売のような真似事はしないらしいけど、私には関係ない!貴族の暗黙の了解なぞに従ういわれはない!
さて、金の問題はこれで良いとして……後は、何がいるかな?……友達とか?“えりか”は友達がほとんどいなかったからなぁ。“エリカ”は、友達……というか、取り巻きの方が近いかな?って感じの子がいるけど……
私は、取り巻きという存在は好きじゃない。むしろ嫌いだ。取り巻きは、いわば虎の威を借る狐。一人では何にも出来ない臆病者なのだ。なので、どちらかと言えば、取り巻きを引き連れている人の方が、私は好感が持てる。
そう。俗に言う、乙女ゲームの悪役令嬢みたいな──
「──っ!」
頭がズキッとする。あれ?調子が良くないのかな?
何なんだろう、この頭痛は。
「お嬢様?どうかされましたか?」
「ううん。何でもない」
そう言えば、さっきからやけに私に優しくなったな。どういう心境の変化なの?
はぁ……いろいろあって疲れたな。頭痛もそのせいかも。帰ったら、ゆっくり休もう。
そんなこんなで、焼き上がったかな?
ミレラにオーブンから取り出して貰うと、こんがりきつね色に焼けている。
次は冷まさないと。中まで熱が通っているか確かめたいけど、素手でこれを触ったら、火傷不可避だ。まぁ、冷ますのは数分くらいで終わるだろうから、別に構わないけど。
「冷めたら教えて」
「はい、かしこまりました」
さて、お菓子が冷めるまで、お土産をどうするか考えておきますか。
「お嬢様、もう大丈夫ですよ」
そのまま数分が経過していた。ミレラに声をかけられて、私は現実に意識が戻される。
ちょんと触るけど、そこまで熱くない。これなら大丈夫だ。中まで熱が通っているか確かめるために、お菓子を割る、罪悪感が生まれないように、割るのは丸い形をした物だけ。
サクッという音がする。うん。全然問題ない。それどころか、本当に美味しい。
私が作ったのは、バターなしのクッキー。バターは高いから、お母さんが代わりに油を使って作っていた。作っているのを一度見たから記憶を頼りに作ってみた。
でも、クッキーばかりだと飽きてくるんだよなぁ。ミルクは、公爵家にあった気がするし、あれも作ってみようかな。
「みんなも食べてみて。美味しいよ」
「では……」
本当に恐る恐るという感じだけど、ミレラが食べた。
「美味しいですね」
「でしょ!」
バターを使ってない貧乏クッキーだけど、結構美味しいんだよね。バター使ってないから、普通のクッキーよりも太りづらいし。
「上手いな、これ」
お兄さんズも食べている。良かった、独りよがりみたいにならなくて。
「砂糖売ってみたら?これに使われてるって言って、レシピも一緒に売れば買ってくれるかもしれないし」
「そうだな。書いてくれるか?」
「胡椒と砂糖を定期的に同じ量を売ってくれるなら良いよ」
自分で提案しておきながら、さらっと条件をつける。“えりか”が良くやってた技。
「分かった」
条件を飲んでくれたので、紙にレシピを書いていく。庶民でも買えるような安いものばかりだし、問題はないと思う。塩が必要だけど、そこまで量は多くないから、気にならないくらいだろう。
きちんと予熱するのを忘れないようにして貰わないといけないので、目立つように印をつけておく。
「はい」
「ありがとな、お嬢様」
「じゃあ、ミレラ。胡椒と砂糖貰ったら帰ろうか」
「はい」
お土産も忘れないようにしないといけないね。
店の外に出ると、馬車がある。“エリカ”の記憶では、あれはティアンゴルグ公爵家の馬車だ。ミレラが持ってきたのかな?
私とミレラは馬車に乗る。ミレラは拒否していたけど、御者に進められてしぶしぶ乗り込んだ。
お土産を買うために途中下車しながら、屋敷に向かう。もうお土産は買い終わって屋敷に戻るだけという時に、ずっと黙っていたミレラが口を開いた。
「お嬢様、申し訳ございません」
「何が?」
「お嬢様のお気持ちも理解せずにお叱りした事です」
あぁ……その事か。私は気にしてなかったんだけど……
「だから何なの?」
「お嬢様にそのような思いをさせてしまったのは私の落ち度です。ですが、せめて護衛を一人はお連れください。道中で、お嬢様が人攫いに連れていかれそうになったとお聞きしましたので……」
だからあんなに怒ってたのか。私の我が儘で勝手に出て拐われそうになったら、当然拐う方も悪いけど、一人で出かける事も悪いと思われてもおかしくない。
「ううん。私も勝手な行動をしたのは悪いとは思ってるし……」
悪いと思ってなかったら、わざわざ門番の目を盗むように行動はしなかったし。そんな事を言ったら余計に叱られそうだな。よし、逃げるか。
「だから、今回の事はお互い様って事で良いの。はい!この話はおしまい!」
「……はい、分かりました」
何故か逃げた私に対してミレラはクスクス笑っている。子供っぽいと思って笑ってるの?
はぁ……私は中身は高校生だよ?前世と今世の年齢を合わせたらあなたよりも上だよ?
もういいわ。ミレラから見た私はどうせ子供ですよ!もうふて寝してやる!行儀悪いとか関係ないね!!
ゴロンと寝転がる。クッションが引いてあるのと、あまり衝撃がないからあまり痛くない。
適度に揺れて、電車みたいな感覚だったので、ふて寝のつもりが、本当に寝てしまった。
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