異世界でもマイペースに行きます

りーさん

文字の大きさ
上 下
27 / 31
第二章 初めての領地

27 屋敷での平穏で不穏な生活 1

しおりを挟む
 リオンティールが領主邸にやってきた翌日のこと。
 リオンティールは、今度こそ不幸を呼ばないためにと、毎日のルーティンに、餌やりならぬ、ラクへの魔力やりを追加していた。

(ラク~!魔力いる~?)
『もう大丈夫~!』

 ラクが進化でもしたのか、そもそものスレイクスの能力なのか、リオンティールは、ラクと脳内通信のようなものができるようになっていた。
 リオンティールの魔力が届く範囲なら、まるで無線機のように会話ができる。
 普通の無線機と違い、会話が聞かれないのが利点だ。
 逆を言えば、魔力がないと通信ができないので、そこがデメリットかもしれないが、それを差し引いたとしても、利便性が高い能力だった。
 「こんな便利なことができるのなら最初からやって欲しい」とリオンティールは訴えたが、『いつの間にか使えるようになったからよくわからない』とラクに冷たく返されてしまった。
 少なくとも、これでラクと会話をするときも、周りに気を遣ったりする必要がなくなったので、リオンティールとしてはありがたいことだらけだった。

(いや~。こんなラッキーなことばかり続いてていいのかなぁ?)

 卑下しているような言葉遣いだが、実際は嬉しくてたまらない。
 ここ最近は、いろいろとトラブルに巻き込まれることが多かったので、こんな平和を味わえることが、いつも以上に素晴らしく感じていた。
 まぁ、リオンティールは持ち前のマイペースで乗りきっていたので、どちらかといえば疲れていたのは、トラブルに加えて、リオンティールのマイペースぶりに振り回されていた周りのほうだったのだが。
 だが、リオンティールはそんなことなど欠片も考えていないし、思い浮かんでもいない。それが彼のマイペースたる所以なのだ。

 そんなリオンティールに、天罰と言えるようなことが起きる。

「……うん?あれはーー」

 リオンティールは、正面から近づいてくる何かに気づく。
 最初はなんなのかわからずに、不思議そうな顔をして見ていたが、それに気づいたとき、だんだんとリオンティールの顔が青ざめていった。

「リーオーンー!」

 リオンティールの正面にいたのは、満面の笑みを浮かべた姉だった。
 ドレスを着ているのでゆったりとした感じではあるが、リオンティールのほうに駆けてきている。
 リオンティールは、背筋に悪寒が走り、すぐさま踵を返した。
 そして、脱兎のごとく走り出す。

「ちょっと~!どこに行くのよー!」

 後ろから声がする。
 リオンティールは、振り向くことはせずに、叫ぶように言った。

「散歩に行くんです~!」

 リオンティールの言葉に、叫ぶように返事が返ってくる。

「それなら私もついていくわ!」
「お断りです!僕は一人がいいんです!」

 なぜこんなところに来てまでブラコンの姉と一緒にいなければならないんだ。
 そんな思いで、リオンティールは走っている。
 その時、リオンティールの道を遮るように立っている存在に気づいた。

(げっ。あれは……)

 それは、もう一人のブラコンである、ベルトナンドだった。
 完全な挟み撃ちだ。

「おい、アリア!リオンが嫌がっているだろ!」

 終わったとリオンティールが覚悟を決めたところでそんな言葉が聞こえ、リオンティールは拍子抜けしてしまう。
 リオンティールの予想としては、姉と一緒に自分を追いかけ回すと思っていたからだ。

(意外と、兄上は常識があるのかな……?)

 そう、リオンティールがひとつまみほど兄の株をあげたその時!

「そもそも、アリアはここに来るまでの道中は、ずっとリオンと一緒だったじゃないか!ならば、リオンは私と過ごすべきだろう!私たちにリオンを譲れ!」

 兄の言葉に、リオンティールは冷める。

(ああ……期待したのが間違いだった)

 そもそも、譲れというのがおかしいところだ。自分は物ではないし、ちゃんと意志を持つ人間なのだから。

「リオンとどれだけ一緒にいたとしても、私の心は満たされないんです!おはようからおはようまで一緒にいませんと!」
「一日中リオンに張りついているつもりか!?そんなのは私が許さんぞ!」

 どちらが一緒にいるべきかと喧嘩しているが、そもそも、リオンティールは一人でいたいのだ。
 リオンティールの意見などガン無視で喧嘩している二人に、反応するのも馬鹿らしくなってきた。

(……散歩行こう)

 リオンティールは、くだらない言い合いをしている兄姉たちを尻目に、とことこと、庭のほうに向かって歩き出した。
 その兄姉たちの言い合いは、姿が見えなくなっても聞こえていて、聞こえなくなったのは、声が聞き取れないほど離れてからであった。

◇◇◇

 リオンティールが去って数分が経っても、二人はまだ言い争いを続けていたがーー

「リオン!お兄さまになんとかーーあれ?」

 アリアーティスがリオンティールに意見を求めようと視線を下に向けたときに、初めてリオンティールの不在に気がついた。
 アリアーティスのその反応で、ベルトナンドもリオンティールがいないことに気がつく。

「マイペース過ぎるな、リオンは……」
「そうですね……」

 マイペースというか、今回に限っては、二人に呆れてしまっただけなのだが、そんなことには微塵も気づかない兄姉たちであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

前世の幸福ポイントを使用してチート冒険者やってます。

サツキ コウ
ファンタジー
俗に言う異世界転生物。 人生の幸福ポイントを人一倍残した状態で不慮の死を遂げた主人公が、 前世のポイントを使ってチート化! 新たな人生では柵に囚われない為に一流の冒険者を目指す。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

処理中です...