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第二章 初めての領地
27 屋敷での平穏で不穏な生活 1
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リオンティールが領主邸にやってきた翌日のこと。
リオンティールは、今度こそ不幸を呼ばないためにと、毎日のルーティンに、餌やりならぬ、ラクへの魔力やりを追加していた。
(ラク~!魔力いる~?)
『もう大丈夫~!』
ラクが進化でもしたのか、そもそものスレイクスの能力なのか、リオンティールは、ラクと脳内通信のようなものができるようになっていた。
リオンティールの魔力が届く範囲なら、まるで無線機のように会話ができる。
普通の無線機と違い、会話が聞かれないのが利点だ。
逆を言えば、魔力がないと通信ができないので、そこがデメリットかもしれないが、それを差し引いたとしても、利便性が高い能力だった。
「こんな便利なことができるのなら最初からやって欲しい」とリオンティールは訴えたが、『いつの間にか使えるようになったからよくわからない』とラクに冷たく返されてしまった。
少なくとも、これでラクと会話をするときも、周りに気を遣ったりする必要がなくなったので、リオンティールとしてはありがたいことだらけだった。
(いや~。こんなラッキーなことばかり続いてていいのかなぁ?)
卑下しているような言葉遣いだが、実際は嬉しくてたまらない。
ここ最近は、いろいろとトラブルに巻き込まれることが多かったので、こんな平和を味わえることが、いつも以上に素晴らしく感じていた。
まぁ、リオンティールは持ち前のマイペースで乗りきっていたので、どちらかといえば疲れていたのは、トラブルに加えて、リオンティールのマイペースぶりに振り回されていた周りのほうだったのだが。
だが、リオンティールはそんなことなど欠片も考えていないし、思い浮かんでもいない。それが彼のマイペースたる所以なのだ。
そんなリオンティールに、天罰と言えるようなことが起きる。
「……うん?あれはーー」
リオンティールは、正面から近づいてくる何かに気づく。
最初はなんなのかわからずに、不思議そうな顔をして見ていたが、それに気づいたとき、だんだんとリオンティールの顔が青ざめていった。
「リーオーンー!」
リオンティールの正面にいたのは、満面の笑みを浮かべた姉だった。
ドレスを着ているのでゆったりとした感じではあるが、リオンティールのほうに駆けてきている。
リオンティールは、背筋に悪寒が走り、すぐさま踵を返した。
そして、脱兎のごとく走り出す。
「ちょっと~!どこに行くのよー!」
後ろから声がする。
リオンティールは、振り向くことはせずに、叫ぶように言った。
「散歩に行くんです~!」
リオンティールの言葉に、叫ぶように返事が返ってくる。
「それなら私もついていくわ!」
「お断りです!僕は一人がいいんです!」
なぜこんなところに来てまでブラコンの姉と一緒にいなければならないんだ。
そんな思いで、リオンティールは走っている。
その時、リオンティールの道を遮るように立っている存在に気づいた。
(げっ。あれは……)
それは、もう一人のブラコンである、ベルトナンドだった。
完全な挟み撃ちだ。
「おい、アリア!リオンが嫌がっているだろ!」
終わったとリオンティールが覚悟を決めたところでそんな言葉が聞こえ、リオンティールは拍子抜けしてしまう。
リオンティールの予想としては、姉と一緒に自分を追いかけ回すと思っていたからだ。
(意外と、兄上は常識があるのかな……?)
そう、リオンティールがひとつまみほど兄の株をあげたその時!
「そもそも、アリアはここに来るまでの道中は、ずっとリオンと一緒だったじゃないか!ならば、リオンは私と過ごすべきだろう!私たちにリオンを譲れ!」
兄の言葉に、リオンティールは冷める。
(ああ……期待したのが間違いだった)
そもそも、譲れというのがおかしいところだ。自分は物ではないし、ちゃんと意志を持つ人間なのだから。
「リオンとどれだけ一緒にいたとしても、私の心は満たされないんです!おはようからおはようまで一緒にいませんと!」
「一日中リオンに張りついているつもりか!?そんなのは私が許さんぞ!」
どちらが一緒にいるべきかと喧嘩しているが、そもそも、リオンティールは一人でいたいのだ。
リオンティールの意見などガン無視で喧嘩している二人に、反応するのも馬鹿らしくなってきた。
(……散歩行こう)
リオンティールは、くだらない言い合いをしている兄姉たちを尻目に、とことこと、庭のほうに向かって歩き出した。
その兄姉たちの言い合いは、姿が見えなくなっても聞こえていて、聞こえなくなったのは、声が聞き取れないほど離れてからであった。
◇◇◇
リオンティールが去って数分が経っても、二人はまだ言い争いを続けていたがーー
「リオン!お兄さまになんとかーーあれ?」
アリアーティスがリオンティールに意見を求めようと視線を下に向けたときに、初めてリオンティールの不在に気がついた。
アリアーティスのその反応で、ベルトナンドもリオンティールがいないことに気がつく。
「マイペース過ぎるな、リオンは……」
「そうですね……」
マイペースというか、今回に限っては、二人に呆れてしまっただけなのだが、そんなことには微塵も気づかない兄姉たちであった。
リオンティールは、今度こそ不幸を呼ばないためにと、毎日のルーティンに、餌やりならぬ、ラクへの魔力やりを追加していた。
(ラク~!魔力いる~?)
『もう大丈夫~!』
ラクが進化でもしたのか、そもそものスレイクスの能力なのか、リオンティールは、ラクと脳内通信のようなものができるようになっていた。
リオンティールの魔力が届く範囲なら、まるで無線機のように会話ができる。
普通の無線機と違い、会話が聞かれないのが利点だ。
逆を言えば、魔力がないと通信ができないので、そこがデメリットかもしれないが、それを差し引いたとしても、利便性が高い能力だった。
「こんな便利なことができるのなら最初からやって欲しい」とリオンティールは訴えたが、『いつの間にか使えるようになったからよくわからない』とラクに冷たく返されてしまった。
少なくとも、これでラクと会話をするときも、周りに気を遣ったりする必要がなくなったので、リオンティールとしてはありがたいことだらけだった。
(いや~。こんなラッキーなことばかり続いてていいのかなぁ?)
卑下しているような言葉遣いだが、実際は嬉しくてたまらない。
ここ最近は、いろいろとトラブルに巻き込まれることが多かったので、こんな平和を味わえることが、いつも以上に素晴らしく感じていた。
まぁ、リオンティールは持ち前のマイペースで乗りきっていたので、どちらかといえば疲れていたのは、トラブルに加えて、リオンティールのマイペースぶりに振り回されていた周りのほうだったのだが。
だが、リオンティールはそんなことなど欠片も考えていないし、思い浮かんでもいない。それが彼のマイペースたる所以なのだ。
そんなリオンティールに、天罰と言えるようなことが起きる。
「……うん?あれはーー」
リオンティールは、正面から近づいてくる何かに気づく。
最初はなんなのかわからずに、不思議そうな顔をして見ていたが、それに気づいたとき、だんだんとリオンティールの顔が青ざめていった。
「リーオーンー!」
リオンティールの正面にいたのは、満面の笑みを浮かべた姉だった。
ドレスを着ているのでゆったりとした感じではあるが、リオンティールのほうに駆けてきている。
リオンティールは、背筋に悪寒が走り、すぐさま踵を返した。
そして、脱兎のごとく走り出す。
「ちょっと~!どこに行くのよー!」
後ろから声がする。
リオンティールは、振り向くことはせずに、叫ぶように言った。
「散歩に行くんです~!」
リオンティールの言葉に、叫ぶように返事が返ってくる。
「それなら私もついていくわ!」
「お断りです!僕は一人がいいんです!」
なぜこんなところに来てまでブラコンの姉と一緒にいなければならないんだ。
そんな思いで、リオンティールは走っている。
その時、リオンティールの道を遮るように立っている存在に気づいた。
(げっ。あれは……)
それは、もう一人のブラコンである、ベルトナンドだった。
完全な挟み撃ちだ。
「おい、アリア!リオンが嫌がっているだろ!」
終わったとリオンティールが覚悟を決めたところでそんな言葉が聞こえ、リオンティールは拍子抜けしてしまう。
リオンティールの予想としては、姉と一緒に自分を追いかけ回すと思っていたからだ。
(意外と、兄上は常識があるのかな……?)
そう、リオンティールがひとつまみほど兄の株をあげたその時!
「そもそも、アリアはここに来るまでの道中は、ずっとリオンと一緒だったじゃないか!ならば、リオンは私と過ごすべきだろう!私たちにリオンを譲れ!」
兄の言葉に、リオンティールは冷める。
(ああ……期待したのが間違いだった)
そもそも、譲れというのがおかしいところだ。自分は物ではないし、ちゃんと意志を持つ人間なのだから。
「リオンとどれだけ一緒にいたとしても、私の心は満たされないんです!おはようからおはようまで一緒にいませんと!」
「一日中リオンに張りついているつもりか!?そんなのは私が許さんぞ!」
どちらが一緒にいるべきかと喧嘩しているが、そもそも、リオンティールは一人でいたいのだ。
リオンティールの意見などガン無視で喧嘩している二人に、反応するのも馬鹿らしくなってきた。
(……散歩行こう)
リオンティールは、くだらない言い合いをしている兄姉たちを尻目に、とことこと、庭のほうに向かって歩き出した。
その兄姉たちの言い合いは、姿が見えなくなっても聞こえていて、聞こえなくなったのは、声が聞き取れないほど離れてからであった。
◇◇◇
リオンティールが去って数分が経っても、二人はまだ言い争いを続けていたがーー
「リオン!お兄さまになんとかーーあれ?」
アリアーティスがリオンティールに意見を求めようと視線を下に向けたときに、初めてリオンティールの不在に気がついた。
アリアーティスのその反応で、ベルトナンドもリオンティールがいないことに気がつく。
「マイペース過ぎるな、リオンは……」
「そうですね……」
マイペースというか、今回に限っては、二人に呆れてしまっただけなのだが、そんなことには微塵も気づかない兄姉たちであった。
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