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第二章 初めての領地
24 領主邸に到着
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馬車に戻ったリオンティールの脳内には、いまだにあの男の子がちらついている。
「ラク、あの男の子、どういうやつなのかわかった?」
アリアーティスは、ベルトナンドやアルトルートと同じ馬車に乗ってしまったため、馬車にはリオンティールただ一人。
あの少年のことは、あまり家族には話したくなかったので、一人だとしても、小声でラクに聞いていた。
「にゃあ……。にゃあにゃあにゃにゃん」
『いや……。さっき言ったことしかわからないよ』
「そっか……」
何かわかるかもと言っていただけだし、断言はしていなかったところから予想はできた言葉だったが、改めて聞くと少しショックなところがある。
リオンティール自身も、なんであの少年がこんなにも気になるのかよくわからない。黒髪黒目が気になったのは事実だが、それはリオンティールが元々日本人であっただけであって、それ以上の感情はない。
「にゃあ……」
『ただ……』
「ただ?」
「にゃ~にゃ~。にゃあにゃあにゃん」
『あの子の魔力。普通の人間じゃないのは間違いないよ』
普通の人間じゃない。それは、どういう意味なのか。
リオンティールやレンノラードも、異世界からの転生者という意味では、普通の人間ではないだろう。
一体、あの少年のどこが普通じゃないのか、今のリオンティールにはわからなかった。
◇◇◇
一悶着があったが、ようやく領主邸に着いた。
都にある屋敷と比べれば見劣りするが、充分に立派な屋敷だった。
「うわぁ……!」
リオンティールは、感嘆する。
確かに屋敷は小さいのだが、知らない街のきれいな屋敷というのは、リオンティールの心をくすぐるのには充分だった。
馬車から降りたリオンティールは、さっそく屋敷の中に入る。
「「「「お帰りまさいませ、皆さま」」」」
屋敷に入った瞬間に、大勢の使用人たちに出迎えられた。
その中には、明らかに使用人らしからぬ風貌をした男がいる。
少し白髪も混じっており、年老いたおじいさんといった感じだった。
「ロイ。変わりはないか」
アルトルートは、その男をロイと呼んだ。
リオンティールは、その男の名前を把握する。
「はいーーと、言いたいところなのですが……」
「何かあったのか?」
「はい。すでに、そのことを伝えにとある方がいらして、今は応接室に待たせております。勝手に屋敷に入れてしまいましたが、内容が内容でしたのでーー」
ロイは、アルトルートに耳打ちする。
すると、アルトルートは、すぐに手で制した。
「そこまででいい。続きは、このまま応接室に向かい、話を聞くとしよう」
アルトルートはそう言うと、振り返り、リオンティールたちのほうを見る。
「お前たちは旅の疲れが残っているだろう。部屋で休むといい」
「はい。ですが、リオンの部屋はどうしましょう?まだ決まっていないのでは」
「なら、ロイ。空いている部屋にリオンを案内してくれ」
「かしこまりました」
ロイは、アルトルートに頭を下げ、リオンティールのほうに歩いてくる。
「初めまして、リオンティールさま。この街の代官を勤めさせていただいている、ロイ・ヒューラと申します」
「よろしくね、ロイ」
リオンティールは、子どもらしく無邪気に笑ってみせた。
ロイは、同じように笑みを返す。
「では、お部屋にご案内させていただき、屋敷に滞在する間、リオンティールさまの世話をする使用人を挨拶に向かわせます」
「うん、わかった」
リオンティールは、ロイの後をついていく。
その途中で、アルトルートのほうをチラリと見た。
(あの父上がすぐに向かうって……どんな内容なんだろう?)
そう思ったものの、それ以上気にすることはなく、リオンティールはアルトルートから視線を外した。
「ラク、あの男の子、どういうやつなのかわかった?」
アリアーティスは、ベルトナンドやアルトルートと同じ馬車に乗ってしまったため、馬車にはリオンティールただ一人。
あの少年のことは、あまり家族には話したくなかったので、一人だとしても、小声でラクに聞いていた。
「にゃあ……。にゃあにゃあにゃにゃん」
『いや……。さっき言ったことしかわからないよ』
「そっか……」
何かわかるかもと言っていただけだし、断言はしていなかったところから予想はできた言葉だったが、改めて聞くと少しショックなところがある。
リオンティール自身も、なんであの少年がこんなにも気になるのかよくわからない。黒髪黒目が気になったのは事実だが、それはリオンティールが元々日本人であっただけであって、それ以上の感情はない。
「にゃあ……」
『ただ……』
「ただ?」
「にゃ~にゃ~。にゃあにゃあにゃん」
『あの子の魔力。普通の人間じゃないのは間違いないよ』
普通の人間じゃない。それは、どういう意味なのか。
リオンティールやレンノラードも、異世界からの転生者という意味では、普通の人間ではないだろう。
一体、あの少年のどこが普通じゃないのか、今のリオンティールにはわからなかった。
◇◇◇
一悶着があったが、ようやく領主邸に着いた。
都にある屋敷と比べれば見劣りするが、充分に立派な屋敷だった。
「うわぁ……!」
リオンティールは、感嘆する。
確かに屋敷は小さいのだが、知らない街のきれいな屋敷というのは、リオンティールの心をくすぐるのには充分だった。
馬車から降りたリオンティールは、さっそく屋敷の中に入る。
「「「「お帰りまさいませ、皆さま」」」」
屋敷に入った瞬間に、大勢の使用人たちに出迎えられた。
その中には、明らかに使用人らしからぬ風貌をした男がいる。
少し白髪も混じっており、年老いたおじいさんといった感じだった。
「ロイ。変わりはないか」
アルトルートは、その男をロイと呼んだ。
リオンティールは、その男の名前を把握する。
「はいーーと、言いたいところなのですが……」
「何かあったのか?」
「はい。すでに、そのことを伝えにとある方がいらして、今は応接室に待たせております。勝手に屋敷に入れてしまいましたが、内容が内容でしたのでーー」
ロイは、アルトルートに耳打ちする。
すると、アルトルートは、すぐに手で制した。
「そこまででいい。続きは、このまま応接室に向かい、話を聞くとしよう」
アルトルートはそう言うと、振り返り、リオンティールたちのほうを見る。
「お前たちは旅の疲れが残っているだろう。部屋で休むといい」
「はい。ですが、リオンの部屋はどうしましょう?まだ決まっていないのでは」
「なら、ロイ。空いている部屋にリオンを案内してくれ」
「かしこまりました」
ロイは、アルトルートに頭を下げ、リオンティールのほうに歩いてくる。
「初めまして、リオンティールさま。この街の代官を勤めさせていただいている、ロイ・ヒューラと申します」
「よろしくね、ロイ」
リオンティールは、子どもらしく無邪気に笑ってみせた。
ロイは、同じように笑みを返す。
「では、お部屋にご案内させていただき、屋敷に滞在する間、リオンティールさまの世話をする使用人を挨拶に向かわせます」
「うん、わかった」
リオンティールは、ロイの後をついていく。
その途中で、アルトルートのほうをチラリと見た。
(あの父上がすぐに向かうって……どんな内容なんだろう?)
そう思ったものの、それ以上気にすることはなく、リオンティールはアルトルートから視線を外した。
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