異世界でもマイペースに行きます

りーさん

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第二章 初めての領地

21 領地への道中 4

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 一時間も経たずして、何事もなかったかのように、アリアーティスはリオンティールのいる馬車の中へと戻った。

「結局、シーリンの力は必要なかったわ」
「一体、何をしてたんですか……」

 ラクの耳のおかげで、おおよそは事態を把握しているリオンティールだが、説明がめんどくさいので、知らない振りをして尋ねる。
 アリアーティスは、一度首をかしげて悩んでいる風を見せていたが、すぐに首を横に振った。

「大したことじゃないわよ。ゴミ掃除してたの」
「そうですか……」

 ニコニコとそんなことを言う姉に、リオンティールは恐怖を覚えた。

◇◇◇

 日も暮れて、夜になり、貴族向けの宿に泊まることとなった。
 アルトルートとアイリーシアは護衛と打ち合わせをしているため、夕食を食べ終われば、兄弟水入らずの時間だ。

「はっはっは!シーリンに文句を言われたのか!」
「そんなに笑わなくてもいいじゃありませんか!」

 馬車での出来事を部屋で話していると、シーリンについてのことで、ベルトナンドにとっては、笑壷に入ったようで、大爆笑していた。

「それにしても、リオンの力はすごいな」
「いえいえ。兄上の剣聖にはきっと負けますよ」
「大したことはないんだがな。剣を握っている時に身体能力が五割増しくらいになるだけだ」
「そんなことを言うなら、私の魔力覚醒もですよ。魔力の質が五割増しするだけですもの」

 はぁとため息をついている二人に、リオンティールは何の言葉も出ない。
 リオンティールからしてみれば、それで充分すぎるどころか、お釣りが来るレベルだ。
 五割増しということは、元の1.5倍。
 確かに、素人ならば、大して変わらないかもしれないが、実力者ならば、雲泥の差だ。
 そして、ベルトナンドは剣に才能があり、身体能力も高いため、学園に敵なし。
 アリアーティスは、氷魔法はよく知らないが、回復魔法は即死でなければ瞬時に治す。
 もしかしたら、魔力覚醒や神聖の力なのかもしれないが、それを差し引いたとしても、二人にお似合いすぎるスキルと言えるだろう。
 大してリオンティールは、外国の人間と話したり、動物や魔物と話せるだけだ。
 一見、すごそうに思うかもしれないが、そうではない。向こうに会話する気がなければ、まったく意味がないからだ。
 以前に、ヒグマのような魔物に会った時は、まったく会話ができなかった。あれは、あの魔物にそれだけの知能がなかったのかもしれないし、そもそも会話する気がなかったのかもしれない。
 そこで、リオンティールはあれ?となった。
 あの時は、大して気にならなかったが、なんであそこにあんな狂暴な魔物が現れたのか。
 リオンティールは、アルトルートに愛されている自覚はある。そもそも、アルトルートは、魔物を従えろとは言っていたが、それは強くなくていいと言ってもいた。
 それなら、あの森は、元々は強い魔物が出ない森なのではないかと推測できる。
 あそこで捕まえられなければ、徐々に危険な場所にするつもりだったのだろう。
 それなら、なんであんな危険そうな魔物がいたのかわからない。

「兄上」
「うん?なんだい、リオン」
「僕がラクと契約した時に、兄上が倒した魔物って、何なんですか?」
「ああ、あれか……」
「お兄さま、何の話ですか?」

 ベルトナンドが、当時のことを思い出している横で、一人だけ事情を知らないアリアーティスが首をかしげている。
 リオンティールは、ベルトナンドに代わり説明する。

「ラク……このスレイクスと契約した森で、僕が大きな魔物に襲われちゃって……。その魔物って、普段からそこにいるのかなって」
「いや、それはない。父上にも聞いたから間違いないだろう」

 ベルトナンドは、はっきりと断言した。
 だが、そこから先は、口を開かない。
 リオンティールは、口を開けて、ふわぁとあくびする。

「僕、眠くなっちゃったぁ。兄上、姉上。僕はもう寝ますね~」

 眠い眠いと言いながら、リオンティールは布団に潜る。

「すまないな、リオン」

 ベルトナンドの謝罪に、リオンティールは何も返さない。
 ただ布団の中で、静かに口角をあげた。
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