19 / 31
第二章 初めての領地
19 領地への道中 2
しおりを挟む
昼休憩が終わり、再び馬車が進む。
リオンティールは、馬車の中で悶々としていた。
(めちゃくちゃ恥ずかしい……!)
リオンティールからしてみれば、ラクにお仕置きする意味合いで、ラクの腹をくすぐっていたのだが、今のリオンティールは五歳。端から見れば、猫のようなかわいらしい魔物と戯れるかわいらしい子どもにしか見えない。
だが、リオンティールの中身には、高校生の梨央も入っているのだ。そんな微笑ましく見られてしまうと、開き直るよりも、羞恥心のほうが勝ってしまう。
「にゃあにゃあ。にゃにゃん」
『まあまあ。可愛かったからいいじゃん』
「誰のせいだと思ってるんだ!」
「にゃ~」
『リオン』
「うっ……!」
ラクに一瞬で言い負かされたリオンティールは、さらに気分が落ち込む。
だが、そんな気分は、大きな馬車の揺れと共にどこかに行ってしまった。
「うわぁっ!な、なに!?」
急に馬車が大きく揺れたため、リオンティールは前屈みになって倒れる。
それを、咄嗟にアリアーティスが支えたので、事なきを得た。
「……リオン。ここにいなさい。何があっても、外に出たらダメよ」
「姉上……?」
いつものアリアーティスからは考えられないくらいに、冷たい表情でリオンティールに告げる。
それはいつか聞いた、ロウェルトの氷姫と呼ぶにふさわしい気迫だった。
「シーリン。行くわよ」
「ピィ!」
『お任せを!』
シーリンは元気よく鳴き、アリアーティスの後に続いて、馬車を出た。
何事だろうと、リオンティールは馬車の窓から外の様子を伺おうとするが、よく見えない。
「何があったのかな……」
リオンティールのその一人言のような呟きに、ラクが答える。
「にゃ~にゃ~。にゃにゃん」
『盗賊に襲われたみたいだよ。五人くらいかな』
「わかるの!?」
リオンティールが驚愕すると、ラクを誇らしげに話す。
「にゃ、にゃあにゃあ」
『ボク、耳はいいからね』
「そういえば、そんなこと聞いたような……」
リオンティールではなく、梨央としての記憶だが、猫は人間の何倍も聴力が優れていると聞いたことがある。
猫とスレイクスがまったく同じなのかはわからないが、そう言われると納得できる部分があった。
「幸運を招くって言われてるのに、なんで不幸を招くのさ~!」
「にゃにゃあ!」
『君がボクに魔力を与えてないからだろ!』
「えっ!?魔力あげないとダメなの!?」
「にゃお。にゃあ、にゃあにゃあ」
『当然でしょ。魔物の能力は全部魔力を消費するんだから』
「早く言ってよー!」
すべてが寝耳に水だったリオンティールは、再び落胆する。
だが、起こってしまったことを嘆いていても、解決するわけではない。これからはちゃんとあげるようにすればいいだけだ。
それに、あの盗賊たちがどのくらいの実力者かはわからないが、あの兄姉たちが負けることはないような気がしてならない。
(せめて、僕が巻き込まれないように祈っていよう)
リオンティールは、静かに手を合わせた。
リオンティールは、馬車の中で悶々としていた。
(めちゃくちゃ恥ずかしい……!)
リオンティールからしてみれば、ラクにお仕置きする意味合いで、ラクの腹をくすぐっていたのだが、今のリオンティールは五歳。端から見れば、猫のようなかわいらしい魔物と戯れるかわいらしい子どもにしか見えない。
だが、リオンティールの中身には、高校生の梨央も入っているのだ。そんな微笑ましく見られてしまうと、開き直るよりも、羞恥心のほうが勝ってしまう。
「にゃあにゃあ。にゃにゃん」
『まあまあ。可愛かったからいいじゃん』
「誰のせいだと思ってるんだ!」
「にゃ~」
『リオン』
「うっ……!」
ラクに一瞬で言い負かされたリオンティールは、さらに気分が落ち込む。
だが、そんな気分は、大きな馬車の揺れと共にどこかに行ってしまった。
「うわぁっ!な、なに!?」
急に馬車が大きく揺れたため、リオンティールは前屈みになって倒れる。
それを、咄嗟にアリアーティスが支えたので、事なきを得た。
「……リオン。ここにいなさい。何があっても、外に出たらダメよ」
「姉上……?」
いつものアリアーティスからは考えられないくらいに、冷たい表情でリオンティールに告げる。
それはいつか聞いた、ロウェルトの氷姫と呼ぶにふさわしい気迫だった。
「シーリン。行くわよ」
「ピィ!」
『お任せを!』
シーリンは元気よく鳴き、アリアーティスの後に続いて、馬車を出た。
何事だろうと、リオンティールは馬車の窓から外の様子を伺おうとするが、よく見えない。
「何があったのかな……」
リオンティールのその一人言のような呟きに、ラクが答える。
「にゃ~にゃ~。にゃにゃん」
『盗賊に襲われたみたいだよ。五人くらいかな』
「わかるの!?」
リオンティールが驚愕すると、ラクを誇らしげに話す。
「にゃ、にゃあにゃあ」
『ボク、耳はいいからね』
「そういえば、そんなこと聞いたような……」
リオンティールではなく、梨央としての記憶だが、猫は人間の何倍も聴力が優れていると聞いたことがある。
猫とスレイクスがまったく同じなのかはわからないが、そう言われると納得できる部分があった。
「幸運を招くって言われてるのに、なんで不幸を招くのさ~!」
「にゃにゃあ!」
『君がボクに魔力を与えてないからだろ!』
「えっ!?魔力あげないとダメなの!?」
「にゃお。にゃあ、にゃあにゃあ」
『当然でしょ。魔物の能力は全部魔力を消費するんだから』
「早く言ってよー!」
すべてが寝耳に水だったリオンティールは、再び落胆する。
だが、起こってしまったことを嘆いていても、解決するわけではない。これからはちゃんとあげるようにすればいいだけだ。
それに、あの盗賊たちがどのくらいの実力者かはわからないが、あの兄姉たちが負けることはないような気がしてならない。
(せめて、僕が巻き込まれないように祈っていよう)
リオンティールは、静かに手を合わせた。
11
お気に入りに追加
1,225
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
前世の幸福ポイントを使用してチート冒険者やってます。
サツキ コウ
ファンタジー
俗に言う異世界転生物。
人生の幸福ポイントを人一倍残した状態で不慮の死を遂げた主人公が、
前世のポイントを使ってチート化!
新たな人生では柵に囚われない為に一流の冒険者を目指す。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる