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第二章 初めての領地
17 領地へ
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蓮と再会した、およそ一ヶ月後のこと。リオンティールに、父のアルトルートからある提案がされた。
「領地視察……ですか?」
「そうだ。毎年、この時期に見に行っている。リオンも、従魔を持った頃だから、連れていこうと思ってな」
「どんなところなんですか?」
「そうだな。ロウェルトが領地としている場所は二つある。そのうちの一つは、迷宮都市と呼ばれており、近くに迷宮が二つあるんだ」
「迷宮!?」
急にファンタジーな言葉が出てきて、リオンティールは興奮する。
魔法があるのだから、ダンジョンのようなものがあってもおかしくないとは思っていたが、実際に耳にすると、それをよく実感する。
「そうだ。今回行くのはこちらのほうだな。もう一つのほうは、北のほうにあるから、冬に行こうと思っている。民の生活をよく知れるからな」
「迷宮都市はどの方角にあるの?」
「南西のほうだ。近くには海や山もある」
「海!?山!?」
リオンティールは、梨央の頃も、どちらかといえばインドアなほうではあったが、小学生くらいの頃は、蓮と一緒に外にも遊びに行っていた。
海はなかったが、近くに山があり、そこを探検したりしたものだ。その時は、活発だった蓮に引っ張られた形だったが、気づいたら立場が逆転してしまっていた。
(異世界でも付き合ってくれるのに感謝しないとなぁ)
リオンティールが城のほうへ感謝の念を送っていると、机をとんとんと叩く音がする。
はっとなって、リオンティールはアルトルートのほうを向いた。
「話は最後まで聞け。それで、その反応から予想はできているが、行きたいか?」
答えは、一つしかない。
「はい!行きたいです!」
「わかった。皆で一ヶ月後に行くから、準備をしておきなさい」
「はーい!」
そう言って勢いよく部屋を出ていったところで、父のある言葉に引っかかる。
「皆……?」
リオンティールの脳裏に、嫌な予感が過った瞬間だった。
◇◇◇
迎えた視察当日。リオンティールは外出着を着て、腕には従魔であるラクを抱えている。
父から、長く離れることになるだろうから、従魔を連れていくように指示があったためだ。
リオンティールがボーッと一人で待っていると、ラクがにゃあにゃあと鳴く。
『リオン。来たみたいだよ』
ラクの言葉にはっとなったリオンティールは、ラクの前足が指しているほうを見る。
そこには、両親と、兄姉たちの姿があった。だが、いつもと少し違う。
父親の傍らには、小さいながらも、黒い豹のようなものがおり、母の周りを無数の光が飛び回っており、姉の肩には小さな鳥がおり、兄の頭の上に、母よりも強い光が乗っかっていた。
地球人の梨央から見れば、それはなかなかシュールな光景で、サーカス団のように見える。
「えっと……その周りの子達は……?」
リオンティールがおそるおそる尋ねると、アイリーシアが答える。
「リオンは会ったことがなかったわね。私たちの従魔よ。置いていくわけにはいかないもの」
「へぇ~!それが母上たちの従魔なんですね」
兄の従魔については、以前に聞いたことがあるが、実物を見るのは初めてだ。
リオンティールが兄のほうを見ると、あれ?となりながらキョロキョロ見る。
「兄上、ブルーエレメントがいるのでは?」
「ああ。いるよ。ここに」
ベルトナンドは、腰に下げていた、木でできた筒を見せる。それは、見た目は水筒のようなものだ。
蓋を開けると、そこに液体のようなものが入っている。
「さすがに、ブルーエレメントは馬車の中に入れるのは難しいし、従魔の証も、液体だからうまくつけられないんだ。だから、体を縮めてもらって、ここに入れているんだよ。そうしないと、退治される可能性もあるからね」
「そうなんですね」
従魔は、人の手で手懐けたとはいえ、元は凶暴な魔物だ。それが二等級ともなれば、視界に入ったらすぐに討伐されてしまうだろう。
ラクが首輪のように着けている従魔の証があれば大丈夫だろうが……確かに、液体はすり抜けそうだ。エレメント自体、滅多に現れるものでもなく、それを従魔にした存在もほとんどいないのだろう。だからこそ、エレメントには使えないものが証となっているのだ。
「にゃあ?にゃにゃあ」
『リオンの家族って何者?ほとんどの魔物が珍しいやつばかりじゃん』
ラクが呆れるようにそう言う。リオンティールは、そのラクの言葉で、改めて魔物を観察する。
兄はいわずもがなだが、父の豹のようなものは、ダークレオルという魔物で、一等級。母の光は、近くで見ないとわからないが、恐らくは七~九等級のフェアリー。姉の肩の鳥は、六等級のマテリアルバード。
同じように、等級の低い魔物もいるが、どれも出会えたら奇跡というくらいのレアな魔物だ。
(確かに、僕の家族って何者なんだろう……?)
リオンティールも、珍しい魔物のスレイクスを従魔としているので、人のことは言えないのだが、そんなものは棚にあげていた。
「ほら、リオン。行くわよ!私と一緒の馬車に乗りましょう」
「あ、姉上!引っ張らないでください!」
リオンティールは、姉に手を引かれながら、駆け込むように馬車に乗り込んだ。
「領地視察……ですか?」
「そうだ。毎年、この時期に見に行っている。リオンも、従魔を持った頃だから、連れていこうと思ってな」
「どんなところなんですか?」
「そうだな。ロウェルトが領地としている場所は二つある。そのうちの一つは、迷宮都市と呼ばれており、近くに迷宮が二つあるんだ」
「迷宮!?」
急にファンタジーな言葉が出てきて、リオンティールは興奮する。
魔法があるのだから、ダンジョンのようなものがあってもおかしくないとは思っていたが、実際に耳にすると、それをよく実感する。
「そうだ。今回行くのはこちらのほうだな。もう一つのほうは、北のほうにあるから、冬に行こうと思っている。民の生活をよく知れるからな」
「迷宮都市はどの方角にあるの?」
「南西のほうだ。近くには海や山もある」
「海!?山!?」
リオンティールは、梨央の頃も、どちらかといえばインドアなほうではあったが、小学生くらいの頃は、蓮と一緒に外にも遊びに行っていた。
海はなかったが、近くに山があり、そこを探検したりしたものだ。その時は、活発だった蓮に引っ張られた形だったが、気づいたら立場が逆転してしまっていた。
(異世界でも付き合ってくれるのに感謝しないとなぁ)
リオンティールが城のほうへ感謝の念を送っていると、机をとんとんと叩く音がする。
はっとなって、リオンティールはアルトルートのほうを向いた。
「話は最後まで聞け。それで、その反応から予想はできているが、行きたいか?」
答えは、一つしかない。
「はい!行きたいです!」
「わかった。皆で一ヶ月後に行くから、準備をしておきなさい」
「はーい!」
そう言って勢いよく部屋を出ていったところで、父のある言葉に引っかかる。
「皆……?」
リオンティールの脳裏に、嫌な予感が過った瞬間だった。
◇◇◇
迎えた視察当日。リオンティールは外出着を着て、腕には従魔であるラクを抱えている。
父から、長く離れることになるだろうから、従魔を連れていくように指示があったためだ。
リオンティールがボーッと一人で待っていると、ラクがにゃあにゃあと鳴く。
『リオン。来たみたいだよ』
ラクの言葉にはっとなったリオンティールは、ラクの前足が指しているほうを見る。
そこには、両親と、兄姉たちの姿があった。だが、いつもと少し違う。
父親の傍らには、小さいながらも、黒い豹のようなものがおり、母の周りを無数の光が飛び回っており、姉の肩には小さな鳥がおり、兄の頭の上に、母よりも強い光が乗っかっていた。
地球人の梨央から見れば、それはなかなかシュールな光景で、サーカス団のように見える。
「えっと……その周りの子達は……?」
リオンティールがおそるおそる尋ねると、アイリーシアが答える。
「リオンは会ったことがなかったわね。私たちの従魔よ。置いていくわけにはいかないもの」
「へぇ~!それが母上たちの従魔なんですね」
兄の従魔については、以前に聞いたことがあるが、実物を見るのは初めてだ。
リオンティールが兄のほうを見ると、あれ?となりながらキョロキョロ見る。
「兄上、ブルーエレメントがいるのでは?」
「ああ。いるよ。ここに」
ベルトナンドは、腰に下げていた、木でできた筒を見せる。それは、見た目は水筒のようなものだ。
蓋を開けると、そこに液体のようなものが入っている。
「さすがに、ブルーエレメントは馬車の中に入れるのは難しいし、従魔の証も、液体だからうまくつけられないんだ。だから、体を縮めてもらって、ここに入れているんだよ。そうしないと、退治される可能性もあるからね」
「そうなんですね」
従魔は、人の手で手懐けたとはいえ、元は凶暴な魔物だ。それが二等級ともなれば、視界に入ったらすぐに討伐されてしまうだろう。
ラクが首輪のように着けている従魔の証があれば大丈夫だろうが……確かに、液体はすり抜けそうだ。エレメント自体、滅多に現れるものでもなく、それを従魔にした存在もほとんどいないのだろう。だからこそ、エレメントには使えないものが証となっているのだ。
「にゃあ?にゃにゃあ」
『リオンの家族って何者?ほとんどの魔物が珍しいやつばかりじゃん』
ラクが呆れるようにそう言う。リオンティールは、そのラクの言葉で、改めて魔物を観察する。
兄はいわずもがなだが、父の豹のようなものは、ダークレオルという魔物で、一等級。母の光は、近くで見ないとわからないが、恐らくは七~九等級のフェアリー。姉の肩の鳥は、六等級のマテリアルバード。
同じように、等級の低い魔物もいるが、どれも出会えたら奇跡というくらいのレアな魔物だ。
(確かに、僕の家族って何者なんだろう……?)
リオンティールも、珍しい魔物のスレイクスを従魔としているので、人のことは言えないのだが、そんなものは棚にあげていた。
「ほら、リオン。行くわよ!私と一緒の馬車に乗りましょう」
「あ、姉上!引っ張らないでください!」
リオンティールは、姉に手を引かれながら、駆け込むように馬車に乗り込んだ。
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