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第三章 休みくらい好きにさせて

第28話 事件発生 7

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 予想よりも長くなりそうなので、話のタイトルを変更しました。

ーーーーーーー

 私は、その言葉に固まってしまう。
 異邦人が彼にとってどういう意味なのかはわからない。でも、それは別世界からやってきた人……いわゆる、転生者という意味ではないかと感じた。
 転生者が私だけなんて思っていない。ソフィアも転生者だし、ヒロインの母も転生者だと思われる。私たちの時代だけとも思えないから、過去にはいたのであろうことも。
 でも、だからと言って、私が転生者かどうかわかるというのは別物だ。一体、どの辺りで私が転生者ではないかと感づいたのだろうか。
 あのとき、私をじっと見ていたときには気づいていた?それなら、どうして今になってこんなことを言うのだろう。
 それに、もし私に気づいていたのなら、ソフィアにも気づきそうなものなのに……!

「……それは、どういう意図で?」

 いろいろと考えが巡って、少し焦ってはいるものの、なるべく平静を装う。
 あまり意味がないかもしれないけど、見せかけだけでも堂々としなければ。

「俺も長生きなんだ。それで、こういう仕事柄、情報は嫌でも入ってくる。……お嬢様みたいな、異質な存在というのもな」

 こういう仕事柄、というのは、情報屋の仕事ということだろう。

「それじゃあ、異邦人というのは……」
「ああ。異邦……つまりは、こことは異なる・・・・・・・場所からの来訪者ってことだ。俺も会ったことがある。そいつとお嬢様がなんか似てるんだよな」
「……どういうところが?」

 私は、転生者だと思われるような行動はしていないはずだ。ジュラルミン以外は。

「一つは魔魂の持ち主であることだ」
「そういえば、魔魂ってなんなのよ」
「魔魂っつうのは、魔力の塊を持つ魂のことだ。大抵は、異邦人であることが多い。魔魂の持ち主の特徴としては、やっぱり強い魔法が使えることだな」

 それを聞いて、長年……というほど長くはないけど、ずっと疑問に思っていた謎がわかった。
 私がゲームのリリアンよりも強い魔法を使えたのは、やはり麗香としての魂が原因だった。自分では自覚がないけど、魔法使いからしてみれば、私の魔力の強さには気づくものなのだろうか。周りは指摘してきた人はいないけど……

「それでお嬢様が狙われているんだ。魔魂の主の体の一部でも取り込めば、魔力が強くなるからな。喰うだけだから、何の苦労もせずに強くなれる。捕まえるまでが大変だろうけどな」

 私が転生してからいろんなやつらに狙われたのは、やっぱり麗香が原因なのか。正確には魂だけども。
 こんなんじゃ、ソフィアにトラブルホイホイと言われても仕方ないかもしれない……うん?待てよ?異邦人が転生者で、異邦人が魔魂の主なら、もしかしたら……。

「……異邦人ってみんなが魔魂の持ち主なの?」
「それはわからん。だが、見つかった魔魂の主がことごとく異邦人だから、可能性は高いだろうな」

 それなら、急がなければまずい。
 ずっと違和感があった。向こうは、私を狙っていたはずなのに、なぜソフィアとモニカちゃんを誘拐したのか。私をおびきだすためかもしれないけど、何かしらの理由で、ソフィアも転生者……つまりは、異邦人だと知ってしまったとしたら?
 もしそうだとするならば、護衛が四六時中ついている私よりも、ソフィアのほうが狙いやすかったはずだ。でも、わざわざ私の領地に遊びに来ているタイミングを狙ったのは、私を狙ったものだとカモフラージュするためだろう。
 完全にやられてしまった……!

「ねぇ!ソフィアたちはどこにいるのよ!」
「だから、それを話してほしいならお嬢様のことを……」
「異邦人っていうのは知らないわ!それに、これが片づいたらいくらでも話してあげるわよ!」

 こんなやつに自己紹介している暇があるなら、早くソフィアたちのほうに向かわなければ。あのソフィアたちがやられるとは思わないけど、可能性はないとは言えない。

「おっ、言ったな?じゃあこうしよう」

 お兄さんはパチンと指を鳴らすと、一枚の紙を出現させる。そして、万年筆と羽ペンを合わせたみたいな、奇妙なペンを渡してきた。

「なによ、これ」
「契約しようと思ってな。それに魔力を通せば字が書ける。それでここにフルネームでサインしな」
「悪徳商法な契約を結ばせようたってそうはいかないわよ?」
「アクトクショウホウってのが何なのかは知らないが、そんな悪いことは書いてねぇっつうの。交換条件が書いてあるだけだ」

 そう言われたので、目を通してみると、結構立派な契約書だった。

 私は、誘拐事件が片づいたら、自分のことを包み隠さずに話す。
 お兄さんは、誘拐事件を迅速に片づけるための情報提供と人材提供。

 これが、丁寧な自体で書いてあった。
 まさかの、情報提供だけでなく、人材提供もしてくれるそうだ。

「情報だけじゃないのね」
「それじゃあ、割に合わないってサインしてくれなさそうだからな」

 確かに、情報提供だけならサインはしなかった可能性が高い。
 包み隠さずにということは、私は一切嘘がつけないというだけでなく、聞かれたら知っていることはすべて話さなければならない。それなのに、向こうは情報提供だけなんて割に合わなさすぎるだろう。
 ……いや、まだ割に合わないだろうな。

「これだけなの?包み隠さずにってことは、私は隠し事ができないということなのよ?私に深掘りする気まんまんのくせに、これだけじゃまだ割に合わないわ」
「強欲なやつだなぁ。じゃあ、今後もお前に情報提供と人材派遣を求められたら出すってことでどうだ?」

 そう言いながら、先ほど出した紙を燃やして、新たに紙を出した。それを見ると、情報提供と人材派遣を私が死ぬまで行うそうだ。
 これなら……まぁ、いいかな。

「いいわよ。それで、これでサインすればいいのかしら」
「ああ。さすがに魔法の使い方はわかるよな?それと同じように魔力を込めたらインクが出るはずだ」

 言われたように魔力を通すと、青いインクが出てきた。そして、リリアン=ベルテルクとサインした。
 すると、お兄さんのほうもサインする。そこには、レシアンと書いてあった。

「レシアンって言うのね」
「ああ。好きなように呼べばいいさ」
「じゃあ、そのままレシアンで」

 こんな怪しいやつをあだ名とかで呼びたくはないし、これくらいがちょうどいいだろう。名前が一番いい。

「それじゃあ、付添人の元に帰してやるよ」

 レシアンはそう言って、パチンと指を鳴らした。
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