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第三章 休みくらい好きにさせて
第10話 なんでここにいる?
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この領地に来て3日。長期休暇が始まってから約一週間が経過した。レアは話があるという言葉通りに、私の前に姿を現すことはなかった。
その代わりーー
「お嬢様。今日はどこかにお出かけはしないのですか~?」
「お嬢様。今日はお部屋でのんびりしているのですか~?」
この二人がいる。緑鷺の、リーナとルーナ。メイアも匙を投げるような存在だ。気持ちはわかるけど。
メイアから話を聞いたかぎりでは、レアのことを尊敬しているというか、神格化していて、レアの意見に反する物は、容赦なく潰すらしい。……場合によっては、物理的にも。想像したくないけど。
そして、二人には私のことをお嬢様と呼ばせている。白梟は私に与えられたから、私をご主人様とか呼んでいても問題ないだろうが、さすがに緑鷺の二人はまずい。正式に白梟になったらいいけど、多分無理そうだし。
「別に。最近は眠れてなかったから、寝たいのよ」
ソフィアの薬は効果抜群で、ぐっすりと眠ることができた。お礼を言ったら、「気にすることはありませんよ」と笑顔で言ってくれた。だけど、目の前の魔法使いと思われる死屍累々を見てしまったら、お世辞にも優しいとは思えなかった。
どうやら、酸素の概念がないので、教えるのが難しく、スパルタ教育は長引いているらしい。
本当にすみません、魔法使いさんたち。
そんなこんなで、予定外の領地滞在だけど、わりと好き勝手に暮らしていたら、ある人物が部屋を訪問してきた。ノックもしないで入ってくるので、そろそろイライラしているところだ。
本当に、着替え中とかだったらどうするつもりなのだろうか。
「私の部屋に来いと言ったよな?」
「…………」
そういえば、そんなことも言われていたな~と思いながら、私はベッドでゴロゴロしながら、本を読んでいる。無視には読書が一番だからと本を読んでいたら、なぜか私が読書好きということになっていて、以前に領地に来たときはなかったいろんな本が、私の部屋に置かれていた。
そして、どうやって知ったんだろうと思うくらいに、私好みの本ばかりだ。まぁ、十中八九マナかメイアあたりが教えたのだろうけど。
そういえば、最近マナに会っていないな。白梟のキャラが濃すぎるというのもあるのだろうけど、そもそもマナに会っていないような気がする。最近は、メイアばかりを見かけるようになった。私に何の一言もなく、担当を外されるなんてことはないはずなんだけど……。
う~んと本を読み進めながら考えていると、急に本が上にいく。本の動きを首で追うと、そこにはお兄様がいる。
「人の話は聞け」
「返してくれません?良いところだったんですけど」
ちょうど読んでいたのは、いわゆるミステリーというやつで、もう少しで犯人がわかる……というあたりだったのだ。テレビなら、CMに入るようなタイミング。そんなタイミングで本を取り上げられたら、誰だってイライラするだろう。
そして、お前の話はどうでもいいんだよ。お前の話を聞くくらいなら、まだ緑鷺の悪魔の双子を相手している方が遥かにましだから。今は大人しいからね。
現に、私が返してくれと言ったからか、リーナがお兄様から本を取り上げて、私に渡してくれる。この二人は、私の言うことには従ってくれる。理由を聞いたら、「レア様のお気に入りなのですから!」と胸を張って言われてしまった。それに、ちょっとだけ感謝した。これなら、私に危害が加えられることはなさそうだから。
「ありがとう」
リーナにそれだけ言うと、私はさっきまで読んでいたページを探す。取り上げたときに、お兄様が閉じてしまったから。こういうときに、栞が欲しいと思ってしまう。どうやら、この世界には栞という文化がないらしい。読書は、時間に余裕がある者が嗜むものという文化があるので、栞はあまり意味がないのだそうだ。一気読みしてしまうから。
まぁ、間違ってはいないと思う。時間に余裕がない人が、のんびりと読書はしないだろうから。
「……なんでお前らがここにいる」
「若様に言う必要はないのです」
「若様が知る必要はないのです」
リーナとルーナがそう言うと、こちらの方に寄ってくる。お兄様は、説明しろとばかりにこちらを見てくる。私も、わざわざお兄様に言わないといけない理由がわからないので、気づかなかったことにした。
「……それよりも、今回はちゃんと応じろ。無視するわけにはいかない方が来られている」
「誰ですか?」
公爵家であるお兄様がそんな言葉遣いをするなんて、公爵家よりも上の存在というわけだから……。
私が考えを巡らせていると、ドアをノックする音が聞こえる。
「わたくしのことですわ。リリアン様」
そんなほんわかするような声で入ってきたのは、シェリー王女様。
それを見たとき、私は思考が停止した。そして、数秒後に自我を取り戻す。
いや、なんでここにいるの!?もしかして、この前のお兄様の大事な話ってこのこと!?めんどくさいから無視してたのが裏目に出るとは……!
「あの……シェリー殿下がなぜこちらに?」
「ミィファに働きすぎだと追い出されましたの。休養地と言われているこちらに休暇に行ってこいと」
なんでよりによってここにと思ったのは私だけではないはずだ。だって、最近……というほどではないけど、数ヵ月前にここはスタンピードが起きている。それなのに、ここに王女が休養に来るのはおかしくないだろうか。他に何か目的があるのではないかと勘ぐってしまう。
でも、シェリー王女に悪意のようなものは感じられない……ような気がする。ような気がするとつけたのは、悪意とまでは言いきれないが、それに近いようなものがこちらに向けられているような気がする。例えるのなら、物欲という感じだ。私の気のせいという可能性もなくはないが。
「ですが、わたくしのことは気にすることはありませんわ。ご迷惑をかけないようにはいたしますので」
「わかりました」
それならお言葉に甘えてと、私はそれだけ言って、再びベッドインする。
近くでため息が聞こえたような気がしたが、そんなのは気にせずに布団にくるまった。
その代わりーー
「お嬢様。今日はどこかにお出かけはしないのですか~?」
「お嬢様。今日はお部屋でのんびりしているのですか~?」
この二人がいる。緑鷺の、リーナとルーナ。メイアも匙を投げるような存在だ。気持ちはわかるけど。
メイアから話を聞いたかぎりでは、レアのことを尊敬しているというか、神格化していて、レアの意見に反する物は、容赦なく潰すらしい。……場合によっては、物理的にも。想像したくないけど。
そして、二人には私のことをお嬢様と呼ばせている。白梟は私に与えられたから、私をご主人様とか呼んでいても問題ないだろうが、さすがに緑鷺の二人はまずい。正式に白梟になったらいいけど、多分無理そうだし。
「別に。最近は眠れてなかったから、寝たいのよ」
ソフィアの薬は効果抜群で、ぐっすりと眠ることができた。お礼を言ったら、「気にすることはありませんよ」と笑顔で言ってくれた。だけど、目の前の魔法使いと思われる死屍累々を見てしまったら、お世辞にも優しいとは思えなかった。
どうやら、酸素の概念がないので、教えるのが難しく、スパルタ教育は長引いているらしい。
本当にすみません、魔法使いさんたち。
そんなこんなで、予定外の領地滞在だけど、わりと好き勝手に暮らしていたら、ある人物が部屋を訪問してきた。ノックもしないで入ってくるので、そろそろイライラしているところだ。
本当に、着替え中とかだったらどうするつもりなのだろうか。
「私の部屋に来いと言ったよな?」
「…………」
そういえば、そんなことも言われていたな~と思いながら、私はベッドでゴロゴロしながら、本を読んでいる。無視には読書が一番だからと本を読んでいたら、なぜか私が読書好きということになっていて、以前に領地に来たときはなかったいろんな本が、私の部屋に置かれていた。
そして、どうやって知ったんだろうと思うくらいに、私好みの本ばかりだ。まぁ、十中八九マナかメイアあたりが教えたのだろうけど。
そういえば、最近マナに会っていないな。白梟のキャラが濃すぎるというのもあるのだろうけど、そもそもマナに会っていないような気がする。最近は、メイアばかりを見かけるようになった。私に何の一言もなく、担当を外されるなんてことはないはずなんだけど……。
う~んと本を読み進めながら考えていると、急に本が上にいく。本の動きを首で追うと、そこにはお兄様がいる。
「人の話は聞け」
「返してくれません?良いところだったんですけど」
ちょうど読んでいたのは、いわゆるミステリーというやつで、もう少しで犯人がわかる……というあたりだったのだ。テレビなら、CMに入るようなタイミング。そんなタイミングで本を取り上げられたら、誰だってイライラするだろう。
そして、お前の話はどうでもいいんだよ。お前の話を聞くくらいなら、まだ緑鷺の悪魔の双子を相手している方が遥かにましだから。今は大人しいからね。
現に、私が返してくれと言ったからか、リーナがお兄様から本を取り上げて、私に渡してくれる。この二人は、私の言うことには従ってくれる。理由を聞いたら、「レア様のお気に入りなのですから!」と胸を張って言われてしまった。それに、ちょっとだけ感謝した。これなら、私に危害が加えられることはなさそうだから。
「ありがとう」
リーナにそれだけ言うと、私はさっきまで読んでいたページを探す。取り上げたときに、お兄様が閉じてしまったから。こういうときに、栞が欲しいと思ってしまう。どうやら、この世界には栞という文化がないらしい。読書は、時間に余裕がある者が嗜むものという文化があるので、栞はあまり意味がないのだそうだ。一気読みしてしまうから。
まぁ、間違ってはいないと思う。時間に余裕がない人が、のんびりと読書はしないだろうから。
「……なんでお前らがここにいる」
「若様に言う必要はないのです」
「若様が知る必要はないのです」
リーナとルーナがそう言うと、こちらの方に寄ってくる。お兄様は、説明しろとばかりにこちらを見てくる。私も、わざわざお兄様に言わないといけない理由がわからないので、気づかなかったことにした。
「……それよりも、今回はちゃんと応じろ。無視するわけにはいかない方が来られている」
「誰ですか?」
公爵家であるお兄様がそんな言葉遣いをするなんて、公爵家よりも上の存在というわけだから……。
私が考えを巡らせていると、ドアをノックする音が聞こえる。
「わたくしのことですわ。リリアン様」
そんなほんわかするような声で入ってきたのは、シェリー王女様。
それを見たとき、私は思考が停止した。そして、数秒後に自我を取り戻す。
いや、なんでここにいるの!?もしかして、この前のお兄様の大事な話ってこのこと!?めんどくさいから無視してたのが裏目に出るとは……!
「あの……シェリー殿下がなぜこちらに?」
「ミィファに働きすぎだと追い出されましたの。休養地と言われているこちらに休暇に行ってこいと」
なんでよりによってここにと思ったのは私だけではないはずだ。だって、最近……というほどではないけど、数ヵ月前にここはスタンピードが起きている。それなのに、ここに王女が休養に来るのはおかしくないだろうか。他に何か目的があるのではないかと勘ぐってしまう。
でも、シェリー王女に悪意のようなものは感じられない……ような気がする。ような気がするとつけたのは、悪意とまでは言いきれないが、それに近いようなものがこちらに向けられているような気がする。例えるのなら、物欲という感じだ。私の気のせいという可能性もなくはないが。
「ですが、わたくしのことは気にすることはありませんわ。ご迷惑をかけないようにはいたしますので」
「わかりました」
それならお言葉に甘えてと、私はそれだけ言って、再びベッドインする。
近くでため息が聞こえたような気がしたが、そんなのは気にせずに布団にくるまった。
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