20 / 54
第三章 休みくらい好きにさせて
第2話 オーラ
しおりを挟む
……ダメだ。やっぱり寝られない。寝ても、不安になって、すぐに起きてしまう。レアは、まだ隣でグースカ眠っている。
私とは違って、レアは全然眠ることができるみたいだ。まぁ、私みたいに、何かに狙われているというわけでもないし、レアだけで私の護衛をやれるくらいには強いのだから、それも当然なのかもしれない。
少し触りたくなるけど、またナイフを突きつけられるのはごめんなので、起こさないようにベッドから降りて、部屋を出ようとすると、声が聞こえる。
「ご主人?どこ行くの?」
声がする方を見ると、レアが目を擦りながら起きた。
相変わらず、勘がいいというかなんというか。
起こさないように降りたはずなのに、私が離れようとするとすぐに勘づいて起きてしまう。
場合によっては、私が起きただけでレアが起きることもあるくらいだ。
「ちょっとぶらぶらしようかなって」
私が笑いながらそう言うと、いつもの天使のような笑みが消えて、座った目で私を見る。
レアがこんな目をするのは珍しいので、少し体が強ばる。
「……ねぇ、ご主人。寝れてないんじゃない?」
その言葉にドキッとする。演技はそこまで得意なわけではないけど、私は顔には出ないタイプだ。それでも気がつくというのだろうか。
私がじっと見ていると、レアはクスクス笑う。
「……動揺してるね。なんで気づいたのって思ってる?」
「……ええ。なんで気づいたのかしら?」
「もうレアの魔法は知ってるでしょ?」
それで私はまたドキッとする。レアは知られたくない様子だったから、知らないふりをしていたけど、どうやら気づいていたみたい。
それでも変に怒ったりとか、私の様子をうかがったりしないということは、知られてもかまわないとは思っていたのだろう。
「精神魔法なんですってね。アイリスから聞いたわ」
これでアイリスに墓石が必要になるかなと思ったけど、そんな心配は杞憂だったようで、レアは真面目なトーンで話し出す。
「そう。それでレアは、精神をオーラみたいな感じで見ることができるの。波動、色、大きさで感情とかがわかるんだ。激しく揺れるときは動揺してるってことなんだよね。ご主人、顔にはあまり出ないけど、オーラは素直だから」
ニコニコしながらそんなことを言った。トーンは真面目なままだけど。
そんなものが見られるのは初耳だ。アイリスが知らなかったのか、知ってたけどあえて話さなかったのかはわからないけど、相手の感情を理解できるのは、結構便利そうな能力だ。
自分が使うと便利そうというだけであって、相手に使われたら厄介でしかないけどね。
「それでさ、ご主人のオーラは弱々しいんだ。それってね、疲れがたまっているときなんだよね。そして、少し細かい波動だから、不安を感じてるんでしょ?」
ドンピシャだった。確かに、疲れが溜まっていて不安があると知っていれば、寝れていないんじゃないかということは想像ができるかもしれない。
「話してみない?内緒なら誰にも言わないからさ!」
「……あなたが一番信用できないんだけど」
「なぬっ!?」
私が冷たい視線を向けると、レアはわざとじゃないかというくらいに驚愕する。
「レアは約束を破ったことなんかないぞ!その証拠に、もうなんでも聞いてみろ!」
「じゃあ、なんであなたが誘拐されたのよ」
私がそう聞くと、しーんとした空気が流れて、レアは少し視線をそらす。
「……話さないとダメ?」
「だって、あなたをも拐えるような人が私を狙ってるってなれば知りたくなるわよ」
「寝れてない原因はそれかぁー!」
うーと唸りながら、ベッドの上をあっちにこっちにゴロゴロしている。
そして、はぁとため息をついた。
「アイちゃんのことはよく知らないけど、レアを誘拐したやつとどーいつ人物なんだよね」
そう言って、話し出した。
「それはわかってるのね」
「うん。相手も希少魔法を使ってるからね!おんなじ希少魔法の使い手がこの世にたんじょーすることはないのさ!」
「そうなのね」
それが、世界の理というやつなのだろうか。いくら希少魔法がレアな存在だとしても、探せば普通にいそうな気がする。だって、希少と言っておきながら、近くに6人もいるもの。
レアは、さらに言葉を続ける。
「それでね、そいつは転移魔法を使うの。だから、ご主人は一人だと危ないんよ。ちょっとでも離れてたら狙われちゃうからさ」
確かに、転移魔法なら、すぐに相手の死角を位置どることができるから、一人は危険だろう。それなりに腕が立つ者と、行動を共にしていた方がいい。
あの魔物騒動以来、いつも、白梟の誰かが視界にいると思っていたけど、それは私の護衛だったのか。まぁ、それで見たことがあるのは、このレアを始めとして、サリア、ルクト、メイア、アイリスだけで、いまだにアグニスには会ったことがないけど。
メイアが第一部隊、アイリスが第三部隊の副長なら、アグニスは第二部隊の副長だろうから、ルクトに頼めば会わせてくれるかもしれない。まぁ、そこまでして会いたいとは思わないけど。
「まぁ、そんなわけで、お出かけならレアもついてくよ!第一部隊はご主人の用事だし、第二部隊は動けないし。たいちょーはレアしかいないからね!」
私はそれを聞いて、首をかしげる。第一部隊がいないのは、私が仕事を頼んだからとわかっているけど、第二部隊が動けない理由がわからない。
でも、本当にそうなら、確かに第三部隊しか空いていないし、副長であるアイリスに任せるのは不安だ。だからといって、一般隊員に任せるのも、希少魔法相手では少し不安になる。
消去法だと、レアが一番ましだ。
「それじゃあ、頼めるかしら」
「がってんしょうち!」
まるで警察官の敬礼のようなポーズをとったレアに、いつものレアに戻ったなと笑ってしまう。
そして、私たちは寮にある部屋から出ていった。
私とは違って、レアは全然眠ることができるみたいだ。まぁ、私みたいに、何かに狙われているというわけでもないし、レアだけで私の護衛をやれるくらいには強いのだから、それも当然なのかもしれない。
少し触りたくなるけど、またナイフを突きつけられるのはごめんなので、起こさないようにベッドから降りて、部屋を出ようとすると、声が聞こえる。
「ご主人?どこ行くの?」
声がする方を見ると、レアが目を擦りながら起きた。
相変わらず、勘がいいというかなんというか。
起こさないように降りたはずなのに、私が離れようとするとすぐに勘づいて起きてしまう。
場合によっては、私が起きただけでレアが起きることもあるくらいだ。
「ちょっとぶらぶらしようかなって」
私が笑いながらそう言うと、いつもの天使のような笑みが消えて、座った目で私を見る。
レアがこんな目をするのは珍しいので、少し体が強ばる。
「……ねぇ、ご主人。寝れてないんじゃない?」
その言葉にドキッとする。演技はそこまで得意なわけではないけど、私は顔には出ないタイプだ。それでも気がつくというのだろうか。
私がじっと見ていると、レアはクスクス笑う。
「……動揺してるね。なんで気づいたのって思ってる?」
「……ええ。なんで気づいたのかしら?」
「もうレアの魔法は知ってるでしょ?」
それで私はまたドキッとする。レアは知られたくない様子だったから、知らないふりをしていたけど、どうやら気づいていたみたい。
それでも変に怒ったりとか、私の様子をうかがったりしないということは、知られてもかまわないとは思っていたのだろう。
「精神魔法なんですってね。アイリスから聞いたわ」
これでアイリスに墓石が必要になるかなと思ったけど、そんな心配は杞憂だったようで、レアは真面目なトーンで話し出す。
「そう。それでレアは、精神をオーラみたいな感じで見ることができるの。波動、色、大きさで感情とかがわかるんだ。激しく揺れるときは動揺してるってことなんだよね。ご主人、顔にはあまり出ないけど、オーラは素直だから」
ニコニコしながらそんなことを言った。トーンは真面目なままだけど。
そんなものが見られるのは初耳だ。アイリスが知らなかったのか、知ってたけどあえて話さなかったのかはわからないけど、相手の感情を理解できるのは、結構便利そうな能力だ。
自分が使うと便利そうというだけであって、相手に使われたら厄介でしかないけどね。
「それでさ、ご主人のオーラは弱々しいんだ。それってね、疲れがたまっているときなんだよね。そして、少し細かい波動だから、不安を感じてるんでしょ?」
ドンピシャだった。確かに、疲れが溜まっていて不安があると知っていれば、寝れていないんじゃないかということは想像ができるかもしれない。
「話してみない?内緒なら誰にも言わないからさ!」
「……あなたが一番信用できないんだけど」
「なぬっ!?」
私が冷たい視線を向けると、レアはわざとじゃないかというくらいに驚愕する。
「レアは約束を破ったことなんかないぞ!その証拠に、もうなんでも聞いてみろ!」
「じゃあ、なんであなたが誘拐されたのよ」
私がそう聞くと、しーんとした空気が流れて、レアは少し視線をそらす。
「……話さないとダメ?」
「だって、あなたをも拐えるような人が私を狙ってるってなれば知りたくなるわよ」
「寝れてない原因はそれかぁー!」
うーと唸りながら、ベッドの上をあっちにこっちにゴロゴロしている。
そして、はぁとため息をついた。
「アイちゃんのことはよく知らないけど、レアを誘拐したやつとどーいつ人物なんだよね」
そう言って、話し出した。
「それはわかってるのね」
「うん。相手も希少魔法を使ってるからね!おんなじ希少魔法の使い手がこの世にたんじょーすることはないのさ!」
「そうなのね」
それが、世界の理というやつなのだろうか。いくら希少魔法がレアな存在だとしても、探せば普通にいそうな気がする。だって、希少と言っておきながら、近くに6人もいるもの。
レアは、さらに言葉を続ける。
「それでね、そいつは転移魔法を使うの。だから、ご主人は一人だと危ないんよ。ちょっとでも離れてたら狙われちゃうからさ」
確かに、転移魔法なら、すぐに相手の死角を位置どることができるから、一人は危険だろう。それなりに腕が立つ者と、行動を共にしていた方がいい。
あの魔物騒動以来、いつも、白梟の誰かが視界にいると思っていたけど、それは私の護衛だったのか。まぁ、それで見たことがあるのは、このレアを始めとして、サリア、ルクト、メイア、アイリスだけで、いまだにアグニスには会ったことがないけど。
メイアが第一部隊、アイリスが第三部隊の副長なら、アグニスは第二部隊の副長だろうから、ルクトに頼めば会わせてくれるかもしれない。まぁ、そこまでして会いたいとは思わないけど。
「まぁ、そんなわけで、お出かけならレアもついてくよ!第一部隊はご主人の用事だし、第二部隊は動けないし。たいちょーはレアしかいないからね!」
私はそれを聞いて、首をかしげる。第一部隊がいないのは、私が仕事を頼んだからとわかっているけど、第二部隊が動けない理由がわからない。
でも、本当にそうなら、確かに第三部隊しか空いていないし、副長であるアイリスに任せるのは不安だ。だからといって、一般隊員に任せるのも、希少魔法相手では少し不安になる。
消去法だと、レアが一番ましだ。
「それじゃあ、頼めるかしら」
「がってんしょうち!」
まるで警察官の敬礼のようなポーズをとったレアに、いつものレアに戻ったなと笑ってしまう。
そして、私たちは寮にある部屋から出ていった。
161
あなたにおすすめの小説
困りました。縦ロールにさよならしたら、逆ハーになりそうです。
新 星緒
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢アニエス(悪質ストーカー)に転生したと気づいたけれど、心配ないよね。だってフラグ折りまくってハピエンが定番だもの。
趣味の悪い縦ロールはやめて性格改善して、ストーカーしなければ楽勝楽勝!
……って、あれ?
楽勝ではあるけれど、なんだか思っていたのとは違うような。
想定外の逆ハーレムを解消するため、イケメンモブの大公令息リュシアンと協力関係を結んでみた。だけどリュシアンは、「惚れた」と言ったり「からかっただけ」と言ったり、意地悪ばかり。嫌なヤツ!
でも実はリュシアンは訳ありらしく……
(第18回恋愛大賞で奨励賞をいただきました。応援してくださった皆様、ありがとうございました!)
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつもりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。
パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、
クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。
「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。
完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、
“何も持たずに”去ったその先にあったものとは。
これは誰かのために生きることをやめ、
「私自身の幸せ」を選びなおした、
ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。