無口令嬢は心眼王子に愛される

りーさん

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幼少期

14 アドリアンネの目覚め

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※短めです。

 アドリアンネは、目を見開き、そのまま体を起こす。

(あれ……?私、どうしてこんなところに……)

 アドリアンネは、今までのことを思い返す。

(確か、セルネス殿下に連れられて生誕パーティーに来て、クーファ殿下にご挨拶した後に、ミレージュさまに連れられてお話しして……)

 そこからの記憶が思い出せなかった。
 思い出そうとすると、なぜか頭がズキズキとする。
 頭でも打ったのかと思ったが、そんな記憶もない。

「ドリー!」

 そう言って入ってきたのは、母親のフィオリアだった。

「お母さま……?」
「ええ、お母さまよ。ドリー、大丈夫だった?」

 普段ならば、話したことに注意をしてくるはずなのに、そんなことはせずに、泣きながらアドリアンネを抱き締めてくる。

「よかった……!また・・、あなたを失うかと……!」
「また……とは?」

 アドリアンネは、二回も生まれた記憶などないし、そもそも、フィオリアの体力的に、二回も子どもを生むことは不可能のはずだ。
 それなのに、フィオリアはまたと言っている。

「い、いえ、なんでもないわ。それよりも、どうしたの?急に倒れるなんて……」
「わかーー」

 そのまま話そうとしたとき、フィオリアに口を塞がれる。
 そこで、アドリアンネは初めて、無意識に話していたことに気がついた。
 フィオリアは、近くに置いてあるペンと紙をさりげなく示す。
 アドリアンネは、それを手に取ると、文字を起こした。

『わかりません。急にひどい頭痛がして、だんだんと意識が遠くなったんです』

 そのときに、何か大事なことを思い出しそうな気がしたのが、アドリアンネはそれが何なのか思い出せなかった。

「そう。無理はしないで、ここで休んでいなさい。セルネス殿下が時間を見て見舞いに来てくださるはずよ。私は用事があるから、もう行くわね」

 フィオリアの言葉に、アドリアンネは静かに頷く。
 フィオリアがドアから出ていくと力が抜けたように、そのまま倒れた。

(なんか、力がうまく入らない気がする……疲れていたのかしら……)

 そう思うと、ずっと緊張状態であったので、疲れている可能性はあった。
 だが、疲れているのとあの激しい頭痛は関係無いような気がしていた。

「お母さまは、何か知っているようだったわ……」

 もしかしたら、こうなることを予測していたのではないか。
 そう思ってしまうくらいには、今日はおかしなことばかりだった。
 いつもはよく断っている社交界へのフィオリアの参加に、王妃の謎の質問に、ミレージュの既視感……。
 アドリアンネは、それがすべて一つに繋がっている。そう思えて仕方なかった。

(もしかしたら、お母さまの病弱も関係あったり……?いや、それはないか)

 アドリアンネは、いろいろとあったのと、疲れを感じていたことから、この後セルネスが来ることも忘れて、そのまま再び眠りこけてしまった。

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