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第一章 虐げられた姫
第47話 本当の理由
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「ふわぁ……眠い」
布団の上でうつらうつらとしながらそう呟いた。それに柵の向こう側にいる奴が提案してくる。
「寝ればいいじゃないか」
「目の前にいる変態に襲われそうだからね」
もう二週間以上、下手したら三週間は経ってるだろう。慣れというのは恐ろしいもので、同じ空気を吸うのも嫌だった存在が、こういう何かしきりがあるなら全然平気になった。
「そんなことはしないぞ?魔力を探るくらいだ。お前の体には何の興味もない」
前言撤回。まだまだ安心できないや。魔力を探るには自分の魔力を相手に注がないといけない。そんなことは誰にもさせたくない。少なくとも、絶対にこいつだけにはやらせない。
ここも、もう貴族が入る牢みたいな内装になっている。ベッドは平民が使うのに比べたらフカフカだし、床には絨毯が敷いてある。本などの時間潰しの道具も置いてある状況だ。それに、なぜか僕の部屋と構造も内装も似ている気がする。
そう、本当に気がついたらこうなっていた。深くは考えない。多分奴がやったんだろうけど考えない。
ともかく、そのおかげで、奴がいなければ第二の快適空間になっている。なんか、柵の向こうで文句言っている奴もいたけど、そいつらもしばらくしたら何も言わなくなった。いや、言わされなくなっていたの方が正しいか。
「そういえば、何か動きはないの?」
「大きな動きはない」
「小さな動きならあるんだ」
僕がそう指摘すると、はぁとため息をついた。話したくないならそれはそれで構わないんだけど。
「お前にはほとんど関係ないことだ」
「どんな?」
「貴族どもの権力争いが活発になってきたな。特にお前のことで」
僕が話題の中心にあるような気がするんだけど。というか、なんで貴族達が口出しするんだ?こういうのは王が舵をとるものだろう。
「……王はなんて?」
「それがな、コロコロ意見が変わるんだ。最初は殺せの一点張りだったくせに、利用価値があるから生かしてみるかって言い出して、やっぱり信用できん、だが失くすのは惜しい……って感じでな」
王がそんな優柔不断で、改めて大丈夫なのこの国。王がそんなだから貴族達が好き勝手やってるのかもしれないけど。
「じゃあ、もう一個聞きたいんだけど」
「なんだ?」
「帝国を攻める本当の理由を聞かせてくれない?」
というかそもそも、隣国がこっちに来る理由もよく分からない。土地が貧しいのは知っている。だから、奪おうとするのも。だが、冷酷と言われていても、カイルは言ってくれれば食料支援するような奴だ。
向こうが交渉で来るなら交渉で相手するし、武力行使で来るなら武力で返す。それがあいつだ。それを他の小国は分かっている。だから、大抵は交渉する。失敗したところで、武力ほどの被害はないからだ。
本当に隣国はただのバカの集まりなのか、他に何か狙いがあるのか……
「魔法バカかと思ってたら、意外と賢いんだな」
「君もそんな頭なのによく要職に就けるよね」
あと誰が魔法バカだよ。どちらかと言えば、ローランドみたいな奴だろ、魔法バカは。
「端的に言うと、お前の国の魔法使い……それが本当の狙いだ」
「……何か企んでるみたいだね」
この帝国が軍事大国になれた理由の一つに、魔法使いの質の良さがあげられる。教育の質の高さもあるが、元々の先天的な才能が他の国に生まれる者よりも高い。
教育の面で言えば、まず、魔法を無詠唱で使う者が多い。ハリナも転移は無詠唱だし、簡単な治癒なら無詠唱で可能。そして、他国にもいるはいる。無詠唱を使えるものが。でも、アベリナ帝国と比べたら圧倒的に少ない。
そして、コントロール力も高いのが多い。細かい微調整まではという者もいるが、的なら10発のうち9発はど真ん中という者が何人もいる。
先天的な面で言えば、魔力が強い者が多い。魔力は訓練すれば強くはなるが、先天的な部分がやはり多くなる。魔力量が同じくらいでも、魔力の強さに違いがあれば、それだけで勝率は大きく変わる。相手よりも少ない魔力量で魔法の相殺ができるわけだから。
そして、次に複数の属性に適性がある者、そもそも適性がある者が多い。これは完全な先天的だ。生まれてから増やすことは不可能。
そして、他国には魔力はあれど適性がないという者もいる。その者達も魔道具を使えば魔法が使えるが、他の人よりも不便なことには変わりない。
だから、この国の魔法使いを欲しがるのも分かる。そして、なぜ何度も攻めてきたのかも理解できる。孤児の魔法使いを連れ帰るつもりだったんだろう。バカな奴らだ。その戦争のせいで、余計に数が減っている。
「バカだと思わないか?」
「思うね」
心を読まれたのか分からないけど、珍しくこいつの意見に同意する。
「それで企みだけど、すんごい単純だ。帝国の戦力を削ぎつつ、自国を強化したいんだ」
アホみたいな理由だ。そんなことだろうと薄々思ってはいたが。この国の重鎮は頭がおかしい奴ばかりだ。
「あっ、帰ってきたな」
上の方を突然見上げた。理由は分かりきっている。土でできた壁をすり抜けて、僕の腕に止まった。使い魔だ。
「何も結ばれてないな。早く帰ってこいって漢メイドから言われるかと思ったけど」
「あんたのはとこのことか?それ言ったら殺されないか?」
「手紙に書いたけど?」
「……骨は拾いに行ってやる」
「来なくていいよ」
というか、こいつにはとこのことも話した覚えはないんだけど……もう深く考えたら負けな感じだな。
でも、どうせなら利用できるだけ利用してみるか。
「紙とペン持ってきて」
「魔法使ったらすぐだろ」
「使ったら枷が無意味なのがバレるからね」
こいつにはとっくにバレてるみたいだけど。でも、そう言ったら取りに行ったのか入り口の方に行った。
さて……たまには専属らしいことでもやってみるか。
布団の上でうつらうつらとしながらそう呟いた。それに柵の向こう側にいる奴が提案してくる。
「寝ればいいじゃないか」
「目の前にいる変態に襲われそうだからね」
もう二週間以上、下手したら三週間は経ってるだろう。慣れというのは恐ろしいもので、同じ空気を吸うのも嫌だった存在が、こういう何かしきりがあるなら全然平気になった。
「そんなことはしないぞ?魔力を探るくらいだ。お前の体には何の興味もない」
前言撤回。まだまだ安心できないや。魔力を探るには自分の魔力を相手に注がないといけない。そんなことは誰にもさせたくない。少なくとも、絶対にこいつだけにはやらせない。
ここも、もう貴族が入る牢みたいな内装になっている。ベッドは平民が使うのに比べたらフカフカだし、床には絨毯が敷いてある。本などの時間潰しの道具も置いてある状況だ。それに、なぜか僕の部屋と構造も内装も似ている気がする。
そう、本当に気がついたらこうなっていた。深くは考えない。多分奴がやったんだろうけど考えない。
ともかく、そのおかげで、奴がいなければ第二の快適空間になっている。なんか、柵の向こうで文句言っている奴もいたけど、そいつらもしばらくしたら何も言わなくなった。いや、言わされなくなっていたの方が正しいか。
「そういえば、何か動きはないの?」
「大きな動きはない」
「小さな動きならあるんだ」
僕がそう指摘すると、はぁとため息をついた。話したくないならそれはそれで構わないんだけど。
「お前にはほとんど関係ないことだ」
「どんな?」
「貴族どもの権力争いが活発になってきたな。特にお前のことで」
僕が話題の中心にあるような気がするんだけど。というか、なんで貴族達が口出しするんだ?こういうのは王が舵をとるものだろう。
「……王はなんて?」
「それがな、コロコロ意見が変わるんだ。最初は殺せの一点張りだったくせに、利用価値があるから生かしてみるかって言い出して、やっぱり信用できん、だが失くすのは惜しい……って感じでな」
王がそんな優柔不断で、改めて大丈夫なのこの国。王がそんなだから貴族達が好き勝手やってるのかもしれないけど。
「じゃあ、もう一個聞きたいんだけど」
「なんだ?」
「帝国を攻める本当の理由を聞かせてくれない?」
というかそもそも、隣国がこっちに来る理由もよく分からない。土地が貧しいのは知っている。だから、奪おうとするのも。だが、冷酷と言われていても、カイルは言ってくれれば食料支援するような奴だ。
向こうが交渉で来るなら交渉で相手するし、武力行使で来るなら武力で返す。それがあいつだ。それを他の小国は分かっている。だから、大抵は交渉する。失敗したところで、武力ほどの被害はないからだ。
本当に隣国はただのバカの集まりなのか、他に何か狙いがあるのか……
「魔法バカかと思ってたら、意外と賢いんだな」
「君もそんな頭なのによく要職に就けるよね」
あと誰が魔法バカだよ。どちらかと言えば、ローランドみたいな奴だろ、魔法バカは。
「端的に言うと、お前の国の魔法使い……それが本当の狙いだ」
「……何か企んでるみたいだね」
この帝国が軍事大国になれた理由の一つに、魔法使いの質の良さがあげられる。教育の質の高さもあるが、元々の先天的な才能が他の国に生まれる者よりも高い。
教育の面で言えば、まず、魔法を無詠唱で使う者が多い。ハリナも転移は無詠唱だし、簡単な治癒なら無詠唱で可能。そして、他国にもいるはいる。無詠唱を使えるものが。でも、アベリナ帝国と比べたら圧倒的に少ない。
そして、コントロール力も高いのが多い。細かい微調整まではという者もいるが、的なら10発のうち9発はど真ん中という者が何人もいる。
先天的な面で言えば、魔力が強い者が多い。魔力は訓練すれば強くはなるが、先天的な部分がやはり多くなる。魔力量が同じくらいでも、魔力の強さに違いがあれば、それだけで勝率は大きく変わる。相手よりも少ない魔力量で魔法の相殺ができるわけだから。
そして、次に複数の属性に適性がある者、そもそも適性がある者が多い。これは完全な先天的だ。生まれてから増やすことは不可能。
そして、他国には魔力はあれど適性がないという者もいる。その者達も魔道具を使えば魔法が使えるが、他の人よりも不便なことには変わりない。
だから、この国の魔法使いを欲しがるのも分かる。そして、なぜ何度も攻めてきたのかも理解できる。孤児の魔法使いを連れ帰るつもりだったんだろう。バカな奴らだ。その戦争のせいで、余計に数が減っている。
「バカだと思わないか?」
「思うね」
心を読まれたのか分からないけど、珍しくこいつの意見に同意する。
「それで企みだけど、すんごい単純だ。帝国の戦力を削ぎつつ、自国を強化したいんだ」
アホみたいな理由だ。そんなことだろうと薄々思ってはいたが。この国の重鎮は頭がおかしい奴ばかりだ。
「あっ、帰ってきたな」
上の方を突然見上げた。理由は分かりきっている。土でできた壁をすり抜けて、僕の腕に止まった。使い魔だ。
「何も結ばれてないな。早く帰ってこいって漢メイドから言われるかと思ったけど」
「あんたのはとこのことか?それ言ったら殺されないか?」
「手紙に書いたけど?」
「……骨は拾いに行ってやる」
「来なくていいよ」
というか、こいつにはとこのことも話した覚えはないんだけど……もう深く考えたら負けな感じだな。
でも、どうせなら利用できるだけ利用してみるか。
「紙とペン持ってきて」
「魔法使ったらすぐだろ」
「使ったら枷が無意味なのがバレるからね」
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