39 / 75
第一章 虐げられた姫
第39話 何の話?
しおりを挟む
「皇女殿下、お目覚めですか?」
目を開けたらセリアがいた。ハリナはどこに行ったんだろう。
ハリナは?と聞こうとしても、なぜか声が出ない。なんでだろう。
まぁ、いいや。別にどうでもいい。
「まさか一週間もお眠りになるとは思いませんでしたよ……」
普通なら、これで驚くのかな。そんなに寝てたのかって。でも、私は一週間も寝てたんだ。こんな風にしか思えない。人形に戻ったみたい。何をされても、何を言われても、ふぅん、そっかという感じにしか思えない。
「皇女殿下が寝ておられる間に、皇子殿下や皇女殿下、陛下もいらしていましたよ」
「連絡してきますね」と言って、セリアも出ていった。
皇子殿下、皇女殿下ということは、兄や姉が来たということだろうか。
なんで私のことを気にかけるのかな。別に、放っておかれたことに怒っているわけではない。なんで今さらと思っているわけでもない。そもそも、なんで気にかけるのかが分からない。
しばらくすると、セリアが戻ってきた。
「皇女殿下のお目覚めを連絡したところ、ここに来たがっておられるみたいですが……お入れしてもよろしいですか?」
コクリとうなずくと、「承知しました」と返事した。そういえば、ハリナとセリアもなんで気にかけるのかな。適当にして放っておけばいいのに。少なくとも、冷宮ではそうしてても誰も怒らなかった。
ここでは違うのかな。
「ティア!」
誰か入ってきた。……この人は確か、第五皇子の……ローランド、だったかな。
「もう大丈夫なの?」
「……」
「話せないの?……精霊の奴らのせい?」
「……」
何も分からない。大丈夫なのかも、話せなくなったのかも、それが精霊のせいなのかも分からない。分からないから、答えられない。
「セリア、お師匠様はなんて言ってたの?」
「精霊に触れたのではないかと。そのためにフェレス様は泉に行かれましたよ」
「じゃあ、しばらく帰ってこないかなぁ」
そう言って、ベッドに座って、私を膝の上に乗せた。
「一週間はと行っていましたし……まぁ、サボりの口実に使っている可能性はありますけどね」
「もしそうだったなら私が直接迎えに行くから大丈夫よ」
そう言ったのは、いつの間にか帰っていたハリナだった。
「あら、戻ってきたの?」
「大した用でもなかったしね。そして、フェレス様はまだ戻ってないと」
「……迎えに行くつもりですか?」
「そうですね。駄犬が周りにいなかったらすぐにでも行くんですが……」
駄犬?周りに動物なんていなかったような気がするけど、何のことだろう。
「まだいるんだ。ティアのことを狙う愚か者が」
「皇妃は恨まれておりましたし……それがご息女であるフィレンティア皇女殿下に向かっているか、または……」
「父様に興味持たれて焦ってるか……ってことね」
父様に興味持たれてる?それと駄犬の何の関係があるんだろう。こういう話はよく分からないや。
「馬鹿な奴らだよね。皇族に喧嘩売るなんて」
「それの意味を理解できないから馬鹿なんでしょう」
さっきから何の話をしているのかと思って、ローランド兄様を見ていたら、こっちに気づいた。
「どうしたの?」
「…………」
「ティアは何も気にしなくていいからね。兄様達が何とかするから」
そう言って頭を撫でてきた。気にしなくていいと言うなら、気にしないでおこう。
「これじゃあ、学園に行かせるのもままならないですね……」
「何言ってるの!ティアをあんな場所に放り込むわけないでしょ!ティアはずっと皇宮にいるんだから!」
それは、外に出るなという意味だろうか。それなら、ずっと部屋にいるけれど。
「そうよ!なんでティアをあんな狸達のところに放り出さないといけないのよ!」
「ティアは学園どころか婚約者もいりません」
今度はマリー姉様とフロー姉様が入ってきた。あの言葉からすると、さっきから話は聞いていたみたい。
そして、フロー姉様がローランド兄様の膝の上から、自分の腕の中に私を抱えた。
「姉様。ティアをとらないでくださいよ!」
「ずっと乗せてたんでしょうし構わないでしょう?ティアはみんなの妹だもの」
フロー姉様に抱えられていたら、なんだか眠くなってきた。
「あら、眠いの?」
首をガクガクさせていたからか、マリー姉様に気づかれたみたい。
でも、その眠気を覚ますようにドアが開いた音がする。
「なぁ、フィレンティアが目覚めたって本当か?」
「フィレンティア、大丈夫?」
入ってきたのは……えっと……誰だったかな。
「アルク。ドアを開けるときはノックしなさいといつも言ってるでしょう」
「ディルもよ。もうちょっとでティアが寝そうだったのに……」
私が寝ることはそこまで重要ではないと思うけど……まぁ、いっか。
それで、この子達はアルクとディルって言うのか。そういえば、この宮に来たばかりのときに会ったことがあるような気がする。
「それよりもさ、手がかり見つかったのか?」
「僕たちはあまり知らされてないんですけど……」
手がかりって何のことなんだろう。
「駄犬は捕まえたんだけどなぁ。多分、そいつ一匹じゃないんだよね」
「他国にもいそうよね。生かされている身なのに、生意気な奴らよ」
「分からないんでしょうね。私達から手をくだすことは滅多にありませんし。友好のためにと、婚約関係を結ぼうとするくらいですし、対等に見られているのだと思いますよ。それはそれで度胸があると見えますけどね」
また何の話をしているのか分からなくなってきた。気にしなくていいと言われたから、理解する気はないけど。
そんなことよりも、今は眠い。力が抜けて、フロー姉様に体を預けていた。
そしてそのまま、私の意識は途切れた。
目を開けたらセリアがいた。ハリナはどこに行ったんだろう。
ハリナは?と聞こうとしても、なぜか声が出ない。なんでだろう。
まぁ、いいや。別にどうでもいい。
「まさか一週間もお眠りになるとは思いませんでしたよ……」
普通なら、これで驚くのかな。そんなに寝てたのかって。でも、私は一週間も寝てたんだ。こんな風にしか思えない。人形に戻ったみたい。何をされても、何を言われても、ふぅん、そっかという感じにしか思えない。
「皇女殿下が寝ておられる間に、皇子殿下や皇女殿下、陛下もいらしていましたよ」
「連絡してきますね」と言って、セリアも出ていった。
皇子殿下、皇女殿下ということは、兄や姉が来たということだろうか。
なんで私のことを気にかけるのかな。別に、放っておかれたことに怒っているわけではない。なんで今さらと思っているわけでもない。そもそも、なんで気にかけるのかが分からない。
しばらくすると、セリアが戻ってきた。
「皇女殿下のお目覚めを連絡したところ、ここに来たがっておられるみたいですが……お入れしてもよろしいですか?」
コクリとうなずくと、「承知しました」と返事した。そういえば、ハリナとセリアもなんで気にかけるのかな。適当にして放っておけばいいのに。少なくとも、冷宮ではそうしてても誰も怒らなかった。
ここでは違うのかな。
「ティア!」
誰か入ってきた。……この人は確か、第五皇子の……ローランド、だったかな。
「もう大丈夫なの?」
「……」
「話せないの?……精霊の奴らのせい?」
「……」
何も分からない。大丈夫なのかも、話せなくなったのかも、それが精霊のせいなのかも分からない。分からないから、答えられない。
「セリア、お師匠様はなんて言ってたの?」
「精霊に触れたのではないかと。そのためにフェレス様は泉に行かれましたよ」
「じゃあ、しばらく帰ってこないかなぁ」
そう言って、ベッドに座って、私を膝の上に乗せた。
「一週間はと行っていましたし……まぁ、サボりの口実に使っている可能性はありますけどね」
「もしそうだったなら私が直接迎えに行くから大丈夫よ」
そう言ったのは、いつの間にか帰っていたハリナだった。
「あら、戻ってきたの?」
「大した用でもなかったしね。そして、フェレス様はまだ戻ってないと」
「……迎えに行くつもりですか?」
「そうですね。駄犬が周りにいなかったらすぐにでも行くんですが……」
駄犬?周りに動物なんていなかったような気がするけど、何のことだろう。
「まだいるんだ。ティアのことを狙う愚か者が」
「皇妃は恨まれておりましたし……それがご息女であるフィレンティア皇女殿下に向かっているか、または……」
「父様に興味持たれて焦ってるか……ってことね」
父様に興味持たれてる?それと駄犬の何の関係があるんだろう。こういう話はよく分からないや。
「馬鹿な奴らだよね。皇族に喧嘩売るなんて」
「それの意味を理解できないから馬鹿なんでしょう」
さっきから何の話をしているのかと思って、ローランド兄様を見ていたら、こっちに気づいた。
「どうしたの?」
「…………」
「ティアは何も気にしなくていいからね。兄様達が何とかするから」
そう言って頭を撫でてきた。気にしなくていいと言うなら、気にしないでおこう。
「これじゃあ、学園に行かせるのもままならないですね……」
「何言ってるの!ティアをあんな場所に放り込むわけないでしょ!ティアはずっと皇宮にいるんだから!」
それは、外に出るなという意味だろうか。それなら、ずっと部屋にいるけれど。
「そうよ!なんでティアをあんな狸達のところに放り出さないといけないのよ!」
「ティアは学園どころか婚約者もいりません」
今度はマリー姉様とフロー姉様が入ってきた。あの言葉からすると、さっきから話は聞いていたみたい。
そして、フロー姉様がローランド兄様の膝の上から、自分の腕の中に私を抱えた。
「姉様。ティアをとらないでくださいよ!」
「ずっと乗せてたんでしょうし構わないでしょう?ティアはみんなの妹だもの」
フロー姉様に抱えられていたら、なんだか眠くなってきた。
「あら、眠いの?」
首をガクガクさせていたからか、マリー姉様に気づかれたみたい。
でも、その眠気を覚ますようにドアが開いた音がする。
「なぁ、フィレンティアが目覚めたって本当か?」
「フィレンティア、大丈夫?」
入ってきたのは……えっと……誰だったかな。
「アルク。ドアを開けるときはノックしなさいといつも言ってるでしょう」
「ディルもよ。もうちょっとでティアが寝そうだったのに……」
私が寝ることはそこまで重要ではないと思うけど……まぁ、いっか。
それで、この子達はアルクとディルって言うのか。そういえば、この宮に来たばかりのときに会ったことがあるような気がする。
「それよりもさ、手がかり見つかったのか?」
「僕たちはあまり知らされてないんですけど……」
手がかりって何のことなんだろう。
「駄犬は捕まえたんだけどなぁ。多分、そいつ一匹じゃないんだよね」
「他国にもいそうよね。生かされている身なのに、生意気な奴らよ」
「分からないんでしょうね。私達から手をくだすことは滅多にありませんし。友好のためにと、婚約関係を結ぼうとするくらいですし、対等に見られているのだと思いますよ。それはそれで度胸があると見えますけどね」
また何の話をしているのか分からなくなってきた。気にしなくていいと言われたから、理解する気はないけど。
そんなことよりも、今は眠い。力が抜けて、フロー姉様に体を預けていた。
そしてそのまま、私の意識は途切れた。
34
お気に入りに追加
4,757
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ
あげは
ファンタジー
「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」
学院卒業記念パーティーで、婚約者である王太子アルフリードに突然婚約破棄された、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢。
家族にも愛されていなかったユミエラは、王太子に婚約破棄されたことで利用価値がなくなったとされ家を勘当されてしまう。
しかし、ユミエラに特に気にした様子はなく、むしろ喜んでいた。
これまでの生活に嫌気が差していたユミエラは、元孤児で転生者の侍女ミシェルだけを連れ、その日のうちに家を出て人のいない森の奥に向かい、森の中でカフェを開くらしい。
「さあ、ミシェル! 念願のスローライフよ! 張り切っていきましょう!」
王都を出るとなぜか国を守護している神獣が待ち構えていた。
どうやら国を捨てユミエラについてくるらしい。
こうしてユミエラは、転生者と神獣という何とも不思議なお供を連れ、優雅なスローライフを楽しむのであった。
一方、ユミエラを追放し、神獣にも見捨てられた王国は、愚かな王太子のせいで混乱に陥るのだった――。
なろう・カクヨムにも投稿
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
【完結】神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました
土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。
神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。
追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。
居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。
小説家になろう、カクヨムでも公開していますが、一部内容が異なります。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる