冷宮の人形姫

りーさん

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第一章 虐げられた姫

第39話 何の話?

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「皇女殿下、お目覚めですか?」

 目を開けたらセリアがいた。ハリナはどこに行ったんだろう。

 ハリナは?と聞こうとしても、なぜか声が出ない。なんでだろう。

 まぁ、いいや。別にどうでもいい。

「まさか一週間もお眠りになるとは思いませんでしたよ……」

 普通なら、これで驚くのかな。そんなに寝てたのかって。でも、私は一週間も寝てたんだ。こんな風にしか思えない。人形に戻ったみたい。何をされても、何を言われても、ふぅん、そっかという感じにしか思えない。

「皇女殿下が寝ておられる間に、皇子殿下や皇女殿下、陛下もいらしていましたよ」

「連絡してきますね」と言って、セリアも出ていった。

 皇子殿下、皇女殿下ということは、兄や姉が来たということだろうか。

 なんで私のことを気にかけるのかな。別に、放っておかれたことに怒っているわけではない。なんで今さらと思っているわけでもない。そもそも、なんで気にかけるのかが分からない。

 しばらくすると、セリアが戻ってきた。

「皇女殿下のお目覚めを連絡したところ、ここに来たがっておられるみたいですが……お入れしてもよろしいですか?」

 コクリとうなずくと、「承知しました」と返事した。そういえば、ハリナとセリアもなんで気にかけるのかな。適当にして放っておけばいいのに。少なくとも、冷宮ではそうしてても誰も怒らなかった。

 ここでは違うのかな。

「ティア!」

 誰か入ってきた。……この人は確か、第五皇子の……ローランド、だったかな。

「もう大丈夫なの?」
「……」
「話せないの?……精霊の奴らのせい?」
「……」

 何も分からない。大丈夫なのかも、話せなくなったのかも、それが精霊のせいなのかも分からない。分からないから、答えられない。

「セリア、お師匠様はなんて言ってたの?」
「精霊に触れたのではないかと。そのためにフェレス様は泉に行かれましたよ」
「じゃあ、しばらく帰ってこないかなぁ」

 そう言って、ベッドに座って、私を膝の上に乗せた。

「一週間はと行っていましたし……まぁ、サボりの口実に使っている可能性はありますけどね」
「もしそうだったなら私が直接迎えに行くから大丈夫よ」

 そう言ったのは、いつの間にか帰っていたハリナだった。

「あら、戻ってきたの?」
「大した用でもなかったしね。そして、フェレス様はまだ戻ってないと」
「……迎えに行くつもりですか?」
「そうですね。駄犬が周りにいなかったらすぐにでも行くんですが……」

 駄犬?周りに動物なんていなかったような気がするけど、何のことだろう。

「まだいるんだ。ティアのことを狙う愚か者が」
「皇妃は恨まれておりましたし……それがご息女であるフィレンティア皇女殿下に向かっているか、または……」
「父様に興味持たれて焦ってるか……ってことね」

 父様に興味持たれてる?それと駄犬の何の関係があるんだろう。こういう話はよく分からないや。

「馬鹿な奴らだよね。皇族に喧嘩売るなんて」
「それの意味を理解できないから馬鹿なんでしょう」

 さっきから何の話をしているのかと思って、ローランド兄様を見ていたら、こっちに気づいた。

「どうしたの?」
「…………」
「ティアは何も気にしなくていいからね。兄様達が何とかするから」

 そう言って頭を撫でてきた。気にしなくていいと言うなら、気にしないでおこう。

「これじゃあ、学園に行かせるのもままならないですね……」
「何言ってるの!ティアをあんな場所に放り込むわけないでしょ!ティアはずっと皇宮にいるんだから!」

 それは、外に出るなという意味だろうか。それなら、ずっと部屋にいるけれど。

「そうよ!なんでティアをあんな狸達のところに放り出さないといけないのよ!」
「ティアは学園どころか婚約者もいりません」

 今度はマリー姉様とフロー姉様が入ってきた。あの言葉からすると、さっきから話は聞いていたみたい。

 そして、フロー姉様がローランド兄様の膝の上から、自分の腕の中に私を抱えた。

「姉様。ティアをとらないでくださいよ!」
「ずっと乗せてたんでしょうし構わないでしょう?ティアはみんなの妹だもの」

 フロー姉様に抱えられていたら、なんだか眠くなってきた。

「あら、眠いの?」

 首をガクガクさせていたからか、マリー姉様に気づかれたみたい。

 でも、その眠気を覚ますようにドアが開いた音がする。

「なぁ、フィレンティアが目覚めたって本当か?」
「フィレンティア、大丈夫?」

 入ってきたのは……えっと……誰だったかな。

「アルク。ドアを開けるときはノックしなさいといつも言ってるでしょう」
「ディルもよ。もうちょっとでティアが寝そうだったのに……」

 私が寝ることはそこまで重要ではないと思うけど……まぁ、いっか。

 それで、この子達はアルクとディルって言うのか。そういえば、この宮に来たばかりのときに会ったことがあるような気がする。

「それよりもさ、手がかり見つかったのか?」
「僕たちはあまり知らされてないんですけど……」

 手がかりって何のことなんだろう。

「駄犬は捕まえたんだけどなぁ。多分、そいつ一匹じゃないんだよね」
「他国にもいそうよね。生かされている身なのに、生意気な奴らよ」
「分からないんでしょうね。私達から手をくだすことは滅多にありませんし。友好のためにと、婚約関係を結ぼうとするくらいですし、対等に見られているのだと思いますよ。それはそれで度胸があると見えますけどね」

 また何の話をしているのか分からなくなってきた。気にしなくていいと言われたから、理解する気はないけど。

 そんなことよりも、今は眠い。力が抜けて、フロー姉様に体を預けていた。

 そしてそのまま、私の意識は途切れた。
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